ぼっちな幼女は異世界で愛し愛され幸せになりたい

珂里

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狼vs熊

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サイラスに抱きかかえられキス攻撃を受けていたら、何やら鋭い視線を感じる。


「ユーカは王子様ととっても仲良しなんだね。」


……ヤバイ。サイラスに会えた嬉しさで、ジョシュア君の存在を忘れていた。


ジョシュア君を見ると…………ん?サイラスとメッチャ睨み合ってるんですけど……何で?


「ジョシュアく……」

「お前、誰?」


私の声を遮って、サイラスがジョシュア君を睨みながら聞く。

サイラス~、何を怒ってるの?声にドスがきいていて怖いから!


「サイラス、あのね……」

「僕は騎士団長の息子のジョシュアと申します。はじめまして、サイラス王子。」


……今度はジョシュア君に遮られてしまった。

何?何で2人ともこんなにバチバチに睨み合ってるの?

2人とも、今が「はじめまして」だよね?


っていうか、クレイブさんって騎士団長さんなんだね。初めて知ったよ。

凄い人なんじゃん。


「クレイブの息子か。何しに来た?」

「ユーカに会うためです。僕達は同じ歳なので、ユーカの友達候補として呼ばれたのだと思います。」

「ユーカ、ユーカって馴れ馴れしく呼ぶなよ。まだ会ってそんなに時間も経ってないだろ。」

「出会った時間なんて関係ないです。ユーカがそう呼んでって言ってくれましたし。それに、僕達はもう友達ですから。ねえ、ユーカ、そうだよね?」


ーー友達!!ジョシュア君が友達って!!


「うんっ!!サイラス!!こっちの世界での、初めての友達なのっ!!」

「ーーっく!!そんなキラキラな笑顔で……悔しい!!悔しいけど……ユーカが可愛い!!」



サイラスが私をギュウギュウと抱き締めながら、悶え苦しんでいる。


…………大丈夫かな?


「ねえサイラス、知ってた?クレイブさんとジョシュア君は熊さんなんだよ!私ってば、クレイブさんは犬だと思い込んじゃってたの。ビックリだよね!今度ね、ジョシュア君が変身して見せてくれるって!それでね、モフモフさせてもらう約束もしちゃった!」

「っ!?なんで!?」


サイラスがギョッとして私を見る。


「え?なんでって、なんで?」

「モフモフなら、俺にすればいいだろ!?何もコイツを変身させてモフモフしなくてもいいじゃないか!」


プクッと頬を膨らませてサイラスが怒っている。

ーー何それ、可愛いんですけど?


「でもでも、サイラス~、熊さんだよ?モフラーとしては、是非とも熊さんはモフモフしたいんだよ~!」


チャンスがあるのならば、この手で熊さんの毛並みを堪能したいじゃないですか!!

両手をにぎにぎと動かしてアピールすると、サイラスはムスッと不機嫌そうに顔を背けた。


「ユーカは狼の俺なんかより、熊のそいつがいいんだね。」

「んもうっ!!いじけないのー!サイラスは私の特別なんだから、他の人と比べようがないでしょ!」

「…………俺は、ユーカの特別?」


サイラスが顔を背けたまま、目だけをチラッとこっちに向けた。

…………う~ん……なんか、サイラスにまんまと言わされた感があるけど……まあ、いいか。

私はコクリと頷いて見せる。


「いつも言ってるじゃん。サイラスは私の特別だって。」

「フフッ、そうだよね。ユーカの特別は俺だけだもんね?」


うん、と頷くと、さっきまでとは打って変わって上機嫌なサイラス。

そんな私達のやり取りを、じっと見ていたジョシュア君だったけど。


「2人は兄妹ですよね?」


確認するみたいに、私とサイラスを交互に見ながら、ジョシュア君にそう言われて。

私はサイラスと顔を見合わせる。


兄妹、になったけど。

兄妹よりも、家族よりも、特別な存在。

私にとってサイラスはそんな存在で、サイラスにとっての私も、きっとそんな存在なんだと思う。


そうやって、改めてお互いの存在意義を確認すると、なんだか照れ臭くって。


サイラスと顔を見合わせて、クスクスと笑ってしまった。


そんな私達を見て、今度はジョシュア君がムスッとして顔を背ける。


「…………僕も、いつかユーカの特別になれるように頑張るから。」


ボソッと呟いたジョシュア君の声は、私にはよく聞こえなかったけれど、サイラスには届いていたみたいで。

眉間に皺を寄せて、思いっきりジョシュア君を睨んでいた。


「ユーカの特別は俺だけだから。」

ですよね。これから先の事なんて、誰にも分からないじゃないですか。」



バチバチ、と、サイラスとジョシュア君の間に火花が散ったように見えたのは…………多分、きっと、私だけじゃないはず……。


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