53 / 100
第五章 最凶ダンジョン天魔窟
EP 3
しおりを挟む
ドワーフ王、ロボットを持って殴り込み
地下遊楽施設『天魔窟』のB2階、マグナギア闘技場。
普段は手のひらサイズのロボットで遊ぶ場所だが、キュルリンの悪ふざけ(技術力)により、人間が乗り込める実物大の機体で戦える「スペシャル・リング」も併設されていた。
そのリングに、怒号が響き渡った。
「なんじゃこりゃあぁぁぁッ!! ワシらの技術がパクられとるぞぉぉッ!!」
入り口に仁王立ちしていたのは、身長140センチほどの筋骨隆々とした老人だった。
立派な白髭を三つ編みにし、頭にはゴーグル、腰には巨大なスパナを下げている。
ドワーフ族の王にして、世界最高のマイスター、ガンテツだ。
「誰じゃ! 神聖な『マグナギア』を、こんなチャラチャラした娯楽にしおって!」
彼の背後には、全高3メートルほどの鋼鉄の巨人が立っていた。
重厚な装甲、背中に背負ったキャノン砲、右腕には巨大なドリル。
ドワーフの技術の結晶、最新鋭機『アイアン・カイザー』である。
「あーっ! おじいちゃん、ダメだよ土足で入っちゃ!」
管理人の妖精キュルリンが飛んできた。
「なんだこの虫ケラは! ワシはドワーフ王ガンテツじゃ! この施設を作ったのはお前か!?」
「そうだよ! ボクが作ったの! すごいでしょ!」
「凄くないわ! この関節の処理! 魔力回路の配置! ワシらが百年かけて開発した特許技術を、なんで丸パクリしとるんじゃ!」
ガンテツは職人としてのプライドを傷つけられ、顔を真っ赤にして怒っていた。
天魔窟のマグナギアは、キュルリンが地上の流行を見て「あ、これ面白そう」と見様見真似(完コピ以上)で作ったものだ。
「えー? だって構造簡単だったし……」
「簡単じゃと!? ワシの技術を愚弄するか!」
ブチッ。ガンテツの血管が切れた。
「ええい、許さん! こんな違法建築、ワシの『アイアン・カイザー』で更地にしてやるわ!」
ガンテツが乗り込もうとした、その時だった。
「うおおおおっ! かっこいいーーっ!!」
キラキラした目を向けながら、一人の青年が駆け寄ってきた。
カイトだ。
「すごい! すごいよこれ! ドリルだ! キャタピラだ! 男のロマンの塊だ!」
カイトはガンテツの怒りなどお構いなしに、アイアン・カイザーを撫で回した。
「このリベットの打ち方! 無骨な塗装! もしかして、工業用ロボットですか!? このドリルでトンネルとか掘るんですか!?」
「ぬ、ぬぅ?」
ガンテツは毒気を抜かれた。
敵意を向けてくると思いきや、純粋な憧れの眼差しを向けられている。
職人として、自分の作品を褒められて悪い気はしない。
「ふ、ふん。見る目があるのう若造。これはトンネルどころか、要塞の城壁も貫く最強の戦闘用……」
「なるほど! 『超・重機』ってことですね!」
カイトは勝手に納得した。
「ようこそお越しくださいました! もしかして、今日は『ロボット相撲大会』のエキシビションマッチに来てくれたんですか?」
「ろ、ろぼっと……すもう……?」
「はい! 僕も機械いじりが好きで、農作業用のゴーレムを作ってるんです! ぜひ、お手合わせ願えませんか?」
カイトはワクワクしながら提案した。
ガンテツは少し考え込み、ニヤリと笑った。
(ほう……。この若造、ワシに技術勝負を挑むと言うか。面白い)
ドワーフにとって、技術への挑戦は受けて立つのが礼儀だ。
「よかろう! その勝負、受けたわ!」
ガンテツはスパナを突きつけた。
「ただし! ワシが勝ったら、この施設は解体させてもらう! そしてお前らは、ワシの工房で一生タダ働きじゃ!」
「わかりました! 僕が勝ったら……そうだなあ、このロボットの整備技術を教えてください!」
「生意気な! 後悔させてやるわ!」
こうして、成り行きで「マグナギア・トーナメント」の開催が決定した。
参加者は、ドワーフ王ガンテツ、カイト、そして面白がって参加表明した神々たち。
カイトは急いでバックヤードへ走った。
「大変だ! 急いで僕の『耕運丸(こううんまる)』を調整しないと!」
彼が取り出したのは、どう見てもただの「二足歩行型トラクター」だったが、その装甲にはダンジョン産の超硬金属が使われ、エンジンにはポチの魔力が供給される予定だった。
技術の粋を集めたドワーフの最終兵器か。
それとも、農夫の狂気が産んだ魔改造トラクターか。
史上最悪(最高)のロボット大戦が幕を開ける!
次回、予選開始!
「マグナギア・トーナメント(予選)」へ続く!
地下遊楽施設『天魔窟』のB2階、マグナギア闘技場。
普段は手のひらサイズのロボットで遊ぶ場所だが、キュルリンの悪ふざけ(技術力)により、人間が乗り込める実物大の機体で戦える「スペシャル・リング」も併設されていた。
そのリングに、怒号が響き渡った。
「なんじゃこりゃあぁぁぁッ!! ワシらの技術がパクられとるぞぉぉッ!!」
入り口に仁王立ちしていたのは、身長140センチほどの筋骨隆々とした老人だった。
立派な白髭を三つ編みにし、頭にはゴーグル、腰には巨大なスパナを下げている。
ドワーフ族の王にして、世界最高のマイスター、ガンテツだ。
「誰じゃ! 神聖な『マグナギア』を、こんなチャラチャラした娯楽にしおって!」
彼の背後には、全高3メートルほどの鋼鉄の巨人が立っていた。
重厚な装甲、背中に背負ったキャノン砲、右腕には巨大なドリル。
ドワーフの技術の結晶、最新鋭機『アイアン・カイザー』である。
「あーっ! おじいちゃん、ダメだよ土足で入っちゃ!」
管理人の妖精キュルリンが飛んできた。
「なんだこの虫ケラは! ワシはドワーフ王ガンテツじゃ! この施設を作ったのはお前か!?」
「そうだよ! ボクが作ったの! すごいでしょ!」
「凄くないわ! この関節の処理! 魔力回路の配置! ワシらが百年かけて開発した特許技術を、なんで丸パクリしとるんじゃ!」
ガンテツは職人としてのプライドを傷つけられ、顔を真っ赤にして怒っていた。
天魔窟のマグナギアは、キュルリンが地上の流行を見て「あ、これ面白そう」と見様見真似(完コピ以上)で作ったものだ。
「えー? だって構造簡単だったし……」
「簡単じゃと!? ワシの技術を愚弄するか!」
ブチッ。ガンテツの血管が切れた。
「ええい、許さん! こんな違法建築、ワシの『アイアン・カイザー』で更地にしてやるわ!」
ガンテツが乗り込もうとした、その時だった。
「うおおおおっ! かっこいいーーっ!!」
キラキラした目を向けながら、一人の青年が駆け寄ってきた。
カイトだ。
「すごい! すごいよこれ! ドリルだ! キャタピラだ! 男のロマンの塊だ!」
カイトはガンテツの怒りなどお構いなしに、アイアン・カイザーを撫で回した。
「このリベットの打ち方! 無骨な塗装! もしかして、工業用ロボットですか!? このドリルでトンネルとか掘るんですか!?」
「ぬ、ぬぅ?」
ガンテツは毒気を抜かれた。
敵意を向けてくると思いきや、純粋な憧れの眼差しを向けられている。
職人として、自分の作品を褒められて悪い気はしない。
「ふ、ふん。見る目があるのう若造。これはトンネルどころか、要塞の城壁も貫く最強の戦闘用……」
「なるほど! 『超・重機』ってことですね!」
カイトは勝手に納得した。
「ようこそお越しくださいました! もしかして、今日は『ロボット相撲大会』のエキシビションマッチに来てくれたんですか?」
「ろ、ろぼっと……すもう……?」
「はい! 僕も機械いじりが好きで、農作業用のゴーレムを作ってるんです! ぜひ、お手合わせ願えませんか?」
カイトはワクワクしながら提案した。
ガンテツは少し考え込み、ニヤリと笑った。
(ほう……。この若造、ワシに技術勝負を挑むと言うか。面白い)
ドワーフにとって、技術への挑戦は受けて立つのが礼儀だ。
「よかろう! その勝負、受けたわ!」
ガンテツはスパナを突きつけた。
「ただし! ワシが勝ったら、この施設は解体させてもらう! そしてお前らは、ワシの工房で一生タダ働きじゃ!」
「わかりました! 僕が勝ったら……そうだなあ、このロボットの整備技術を教えてください!」
「生意気な! 後悔させてやるわ!」
こうして、成り行きで「マグナギア・トーナメント」の開催が決定した。
参加者は、ドワーフ王ガンテツ、カイト、そして面白がって参加表明した神々たち。
カイトは急いでバックヤードへ走った。
「大変だ! 急いで僕の『耕運丸(こううんまる)』を調整しないと!」
彼が取り出したのは、どう見てもただの「二足歩行型トラクター」だったが、その装甲にはダンジョン産の超硬金属が使われ、エンジンにはポチの魔力が供給される予定だった。
技術の粋を集めたドワーフの最終兵器か。
それとも、農夫の狂気が産んだ魔改造トラクターか。
史上最悪(最高)のロボット大戦が幕を開ける!
次回、予選開始!
「マグナギア・トーナメント(予選)」へ続く!
63
あなたにおすすめの小説
追放されたので田舎でスローライフするはずが、いつの間にか最強領主になっていた件
言諮 アイ
ファンタジー
「お前のような無能はいらない!」
──そう言われ、レオンは王都から盛大に追放された。
だが彼は思った。
「やった!最高のスローライフの始まりだ!!」
そして辺境の村に移住し、畑を耕し、温泉を掘り当て、牧場を開き、ついでに商売を始めたら……
気づけば村が巨大都市になっていた。
農業改革を進めたら周囲の貴族が土下座し、交易を始めたら王国経済をぶっ壊し、温泉を作ったら各国の王族が観光に押し寄せる。
「俺はただ、のんびり暮らしたいだけなんだが……?」
一方、レオンを追放した王国は、バカ王のせいで経済崩壊&敵国に占領寸前!
慌てて「レオン様、助けてください!!」と泣きついてくるが……
「ん? ちょっと待て。俺に無能って言ったの、どこのどいつだっけ?」
もはや世界最強の領主となったレオンは、
「好き勝手やった報い? しらんな」と華麗にスルーし、
今日ものんびり温泉につかるのだった。
ついでに「真の愛」まで手に入れて、レオンの楽園ライフは続く──!
『しろくま通りのピノ屋さん 〜転生モブは今日もお菓子を焼く〜』
miigumi
ファンタジー
前世では病弱で、病室の窓から空を見上げることしかできなかった私。
そんな私が転生したのは、魔法と剣があるファンタジーの世界。
……とはいえ、勇者でも聖女でもなく、物語に出てこない“モブキャラ”でした。
貴族の家に生まれるも馴染めず、破門されて放り出された私は、街の片隅――
「しろくま通り」で、小さなお菓子屋さんを開くことにしました。
相棒は、拾ったまんまるのペンギンの魔物“ピノ”。
季節の果物を使って、前世の記憶を頼りに焼いたお菓子は、
気づけばちょっぴり評判に。
できれば平和に暮らしたいのに、
なぜか最近よく現れるやさしげな騎士さん――
……って、もしかして勇者パーティーの人なんじゃ?!
静かに暮らしたい元病弱転生モブと、
彼女の焼き菓子に癒される人々の、ちょっと甘くて、ほんのり騒がしい日々の物語。
メインをはれない私は、普通に令嬢やってます
かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール
けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・
だから、この世界での普通の令嬢になります!
↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・
最強陛下の育児論〜5歳児の娘に振り回されているが、でもやっぱり可愛くて許してしまうのはどうしたらいいものか〜
楠ノ木雫
ファンタジー
孤児院で暮らしていた女の子リンティの元へ、とある男達が訪ねてきた。その者達が所持していたものには、この国の紋章が刻まれていた。そう、この国の皇城から来た者達だった。その者達は、この国の皇女を捜しに来ていたようで、リンティを見た瞬間間違いなく彼女が皇女だと言い出した。
言い合いになってしまったが、リンティは皇城に行く事に。だが、この国の皇帝の二つ名が〝冷血の最強皇帝〟。そして、タイミング悪く首を撥ねている瞬間を目の当たりに。
こんな無慈悲の皇帝が自分の父。そんな事実が信じられないリンティ。だけど、あれ? 皇帝が、ぬいぐるみをプレゼントしてくれた?
リンティがこの城に来てから、どんどん皇帝がおかしくなっていく姿を目の当たりにする周りの者達も困惑。一体どうなっているのだろうか?
※他の投稿サイトにも掲載しています。
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
あっ、追放されちゃった…。
satomi
恋愛
ガイダール侯爵家の長女であるパールは精霊の話を聞くことができる。がそのことは誰にも話してはいない。亡き母との約束。
母が亡くなって喪も明けないうちに義母を父は連れてきた。義妹付きで。義妹はパールのものをなんでも欲しがった。事前に精霊の話を聞いていたパールは対処なりをできていたけれど、これは…。
ついにウラルはパールの婚約者である王太子を横取りした。
そのことについては王太子は特に魅力のある人ではないし、なんにも感じなかったのですが、王宮内でも噂になり、家の恥だと、家まで追い出されてしまったのです。
精霊さんのアドバイスによりブルハング帝国へと行ったパールですが…。
追放された公爵令息、神竜と共に辺境スローライフを満喫する〜無敵領主のまったり改革記〜
たまごころ
ファンタジー
無実の罪で辺境に追放された公爵令息アレン。
だが、その地では神竜アルディネアが眠っていた。
契約によって最強の力を得た彼は、戦いよりも「穏やかな暮らし」を選ぶ。
農地改革、温泉開発、魔導具づくり──次々と繁栄する辺境領。
そして、かつて彼を貶めた貴族たちが、その繁栄にひれ伏す時が来る。
戦わずとも勝つ、まったりざまぁ無双ファンタジー!
追放された薬師でしたが、特に気にもしていません
志位斗 茂家波
ファンタジー
ある日、自身が所属していた冒険者パーティを追い出された薬師のメディ。
まぁ、どうでもいいので特に気にもせずに、会うつもりもないので別の国へ向かってしまった。
だが、密かに彼女を大事にしていた人たちの逆鱗に触れてしまったようであった‥‥‥
たまにやりたくなる短編。
ちょっと連載作品
「拾ったメイドゴーレムによって、いつの間にか色々されていた ~何このメイド、ちょっと怖い~」に登場している方が登場したりしますが、どうぞ読んでみてください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる