田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一

文字の大きさ
62 / 180
第六章 鬼神龍魔呂、ハーレムをしてしまう

EP 2

しおりを挟む
オーダーは「私に似合う一杯」
 地下3階、『BAR 煉獄』。
 カウンターには、世界の支配者クラスの美女たちがずらりと並んでいた。
 空気は重い。香水の香りと、女たちの火花散るマウント合戦の気配が充満している。
 その中心で、鬼神龍魔呂は静かに氷を砕いていた。
 アイスピックを扱う手つきは、かつてナイフで敵を屠った時と同じくらい鋭く、しかし繊細だ。
「さて、龍魔呂」
 沈黙を破ったのは、魔王ラスティアだった。
 彼女は妖艶に足を組み、扇子で口元を隠しながら、上目遣いで龍魔呂を見つめた。
「メニューにあるお酒なんて飲みたくないわ。……今の私の気分に合わせて、最高の一杯を作ってくださる?」
 面倒くさいオーダーである。
 だが、龍魔呂は眉一つ動かさず、低く答えた。
「……承知した。今の気分とは?」
「フフ……。そうね、『燃えるような情熱』と、『隠しきれない独占欲』かしら?」
 ラスティアは隣のルチアナをチラリと挑発しながら言った。
 龍魔呂は一瞬だけ思考し、すぐにバックバーから赤いボトルを取り出した。
 シャカシャカシャカッ……。
 リズミカルなシェイク音。
 彼がカクテルグラスに注いだのは、鮮血のように美しい深紅の液体だった。縁には、氷細工で作られた一輪の薔薇が添えられている。
「……『クリムゾン・ローズ(深紅の薔薇)』だ。ベースはローズ・リキュール。口当たりは甘いが、度数は高い」
 龍魔呂がグラスを滑らせる。
「……アンタに似合う色だ」
 ドクンッ。
 ラスティアの心臓が跳ねた。
「ば、薔薇……? それに『私に似合う』ですって……?」
 (これって……薔薇の花言葉は『愛』! つまり、これはプロポーズ!? 私の独占欲ごと受け入れるっていう愛の告白なの!?)
 ラスティアの顔が、カクテル以上に赤く染まった。
「も、もう……龍魔呂ったら、情熱的すぎるわ……♡」
 ラスティアはふにゃふにゃになってグラスを抱きしめた。
 龍魔呂は単に「赤いドレス着てるから赤でいいか」と選んだだけなのだが、効果は抜群だった。
 †
「ちょっと! ラスティアだけズルいわよ!」
 黙っていないのは女神ルチアナだ。
 彼女は身を乗り出し、カウンターをバンと叩いた。
「私にも作りなさいよ! 私のオーダーはねぇ……『頂点に立つ者の孤独』と『甘えたい本音』よ! さあ、これに応えられる!?」
 さらに面倒なオーダーだ。
 だが、龍魔呂は「やれやれ」と小さく吐息を漏らすと、今度は透明なボトルと、カイト農場のハチミツを取り出した。
 ステア(撹拌)。
 静かに、しかし力強くマドラーを回す。
 出されたのは、氷が入ったロックグラス。液体は無色透明だが、とろりとした粘度がある。
「……『堕天使の涙』。ベースはスピリタス(度数96%)だ」
「ス、スピリタス!? そんなの飲んだら喉が焼けるわよ!」
「……だが、たっぷりのハチミツとレモンで中和してある。最初はキツいが、後味はどこまでも甘い」
 龍魔呂はルチアナの目を真っ直ぐに見た。
「……強がってばかりでは疲れるだろう。たまには甘えればいい」
 ズキューンッ!!
 ルチアナの胸を何かが貫いた。
 (嘘……。私の「キツい性格(スピリタス)」を、「優しさ(ハチミツ)」で包み込んでくれるっていうの……? 私の全てを理解してくれてるのね……!)
「龍魔呂ぉぉ……! あんたって奴はぁぁ……!」
 ルチアナはグラスを煽り、その強烈なアルコールと甘美な優しさに酔いしれ、カウンターに突っ伏した。
 龍魔呂は「強い酒を飲ませて黙らせる作戦」が成功したと思い、満足げに頷いた。
 †
「次は私ですわ!」
「私も!」
 不死鳥フレアと天使長ヴァルキュリアも続く。
 フレアには、燃え上がる炎をイメージした『ボルケーノ・ショット』。
 「……火遊びはほどほどにな」と囁かれ、フレアは「火傷させられたい……♡」と悶絶。
 ヴァルキュリアには、純白のミルクカクテル『スノー・ホワイト』。
 「……純白だが、中には強いジンが隠れている。お前と同じだ」と言われ、ヴァルキュリアは「私の隠れた欲望を見抜いているのですか……!?」と顔を覆った。
 †
 数分後。
 カウンターの美女たちは、全員がとろんとした目で龍魔呂を見つめていた。
 店内はピンク色の吐息で充満している。
(……ふむ。全員、静かになったな)
 龍魔呂はグラスを拭きながら、心の中で安堵していた。
 面倒なオーダーを適当に(プロの技術で)あしらった結果、なぜか全員が乙女モードに入ってしまったことには、微塵も気づいていない。
「……ルナ。おかわりはどうだ?」
 龍魔呂は、端っこでメロンソーダを飲んでいたルナに声をかけた。
「いりませんわ! 皆さんズルいです! 私も『大人な一杯』が欲しいです!」
 ルナが頬を膨らませる。
 そこへ、カランカランとドアベルが鳴った。
 現れたのは、疲れ切った顔をした聖女セーラだった。
「あら……混んでるのね。……ごめんなさい、出直すわ」
 勇者リュウの借金と育児に疲弊した人妻の登場。
 龍魔呂はすかさず動いた。
「……待て。席ならある」
 龍魔呂はスッと椅子を引き、温かいおしぼりを手渡した。
「……顔色が悪いぞ。無理をしているな」
 その一言と包容力が、お疲れ人妻の心に火をつけるとは知らずに。
 次回、聖女セーラ、人妻のときめき!
 「聖女セーラ、人妻のときめき」へ続く!
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~

Ss侍
ファンタジー
 "私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。  動けない、何もできない、そもそも身体がない。  自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。 ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。  それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!

追放されたけど気づいたら最強になってました~無自覚チートで成り上がる異世界自由旅~

eringi
ファンタジー
勇者パーティーから「役立たず」と追放された青年アルト。 行くあてもなく森で倒れていた彼は、実は“失われし最古の加護”を持つ唯一の存在だった。 無自覚のまま魔王を倒し、国を救い、人々を惹きつけていくアルト。 彼が気づかないうちに、世界は彼中心に回り始める——。 ざまぁ、勘違い、最強無自覚、チート成り上がり要素満載の異世界ファンタジー!

異世界スローライフ希望なのに、女神の過保護が止まらない

葉泪秋
ファンタジー
HOTランキング1位感謝です!(2/3) 「小説家になろう」日間ランキング最高11位!(ハイファンタジー) ブラック企業で過労死した俺、佐久間遼。 神様に願ったのは、ただ「異世界で、畑でも耕しながらのんびり暮らしたい」ということだけ。 そうして手に入れた、辺境の村での穏やかな日々。現状に満足し、今度こそは平穏なスローライフを……と思っていたのだが、俺の妙なスキルと前世の社畜根性が、そうはさせない。 ふとした善意で枯れた井戸を直したことから、堅物の騎士団長やら、過保護な女神やらに目をつけられることになる。 早く穏やかに暮らしたい。 俺は今日も、規格外に育った野菜を手に、皆の姿を眺めている。 【毎日18:00更新】 ※表紙画像はAIを使用しています

元公爵令嬢は年下騎士たちに「用済みのおばさん」と捨てられる 〜今更戻ってこいと泣きつかれても献身的な美少年に溺愛されているのでもう遅いです〜

日々埋没。
ファンタジー
​「新しい従者を雇うことにした。おばさんはもう用済みだ。今すぐ消えてくれ」  ​かつて婚約破棄され、実家を追放された元公爵令嬢のレアーヌ。  その身分を隠し、年下の冒険者たちの身の回りを世話する『メイド』として献身的に尽くしてきた彼女に突きつけられたのは、あまりに非情な追放宣告だった。  ​レアーヌがこれまで教育し、支えてきた若い男たちは、新しく現れた他人の物を欲しがり子悪魔メイドに骨抜きにされ、彼女を「加齢臭のする汚いおばさん」と蔑み、笑いながら追い出したのだ。 ​ 地位も、居場所も、信じていた絆も……すべてを失い、絶望する彼女の前に現れたのは、一人の美少年だった。 ​「僕とパーティーを組んでくれませんか? 貴方が必要なんです」  ​新米ながら将来の可能性を感じさせる彼は、レアーヌを「おばさん」ではなく「一人の女性」として、甘く狂おしく溺愛し始める。  一方でレアーヌという『真の支柱』を失った元パーティーは、自分たちがどれほど愚かな選択をしたかを知る由もなかった。  ​やがて彼らが地獄の淵で「戻ってきてくれ」と泣きついてきても、もう遅い。  レアーヌの隣には、彼女を離さないと誓った執着愛の化身が微笑んでいるのだから。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

最弱職〈祈祷士〉だった俺、実は神々の加護持ちでした~追放されたけど無自覚チートで世界最強~

eringi
ファンタジー
パーティから「役立たず」と言われ追放された祈祷士ルーク。だが彼の祈りは神々に届いており、あらゆる奇跡を現実にする「神の権能」だった。本人は気づかぬまま無双し、救った相手や元パーティの女性たちから次々想いを寄せられる。裏切った者たちへの“ざまぁ”も、神の御業のうちに。無自覚チート祈祷士が、神々さえも動かす伝説を紡ぐ──!

転生辺境の雑用兵、知らぬ間に世界最強になっていた件 〜追放されたけど美女たちに囲まれて安寧生活〜

eringi
ファンタジー
辺境軍の雑用兵として転生した青年・レオン。異世界に転生したのに、剣も魔法も地味でパッとしない日々。ところが彼の“地味な努力”が、実は世界の理をゆるがすほどの能力だと気づく者が次々と現れる。貴族令嬢、魔族の姫、神官少女──気づけばハーレム状態に。追放された元仲間が破滅していく流れの中、本人だけは「俺、そんな強いかな?」と首をかしげる。無自覚最強×ざまぁ×追放後スローライフ×英雄伝説が交錯する、異世界逆転ストーリー。

処理中です...