91 / 180
第九章 異議あり!学校法廷
EP 1
しおりを挟む
【悲報】入学式、校長の挨拶がポテチを食べながら
カイト農場の北側の丘に、威容を誇る巨大建造物が完成していた。
建材は神話級の世界樹。窓ガラスはダイヤモンド。外壁は元・魔人が築いた絶対防御の石垣。
『カイト分校(仮)』。
その記念すべき第一回入学式が、今日、執り行われようとしていた。
「ううむ……これ、本当に学校か? 魔王軍の最終要塞の間違いではないのか?」
「パパ、怖いよぉ……」
校門の前では、新入生となる魔族や亜人の子供たち、そしてその保護者たちが、あまりのプレッシャーに震え上がっていた。
だが、中に入ればそこはカイト農場。
講堂(体育館)には、紅白の幕が張られ、のどかな雰囲気が漂っている……はずだった。
「えー。あー。マイクテス、マイクテス」
ステージの中央。
金色の演台に肘をつき、気だるげにマイクを叩いているのは、この学校の初代校長・創造神ルチアナである。
彼女の左手には、袋から直接掴んだポテチ(のり塩)が握られていた。
「校長先生、挨拶をお願いします……(早く食べてください)」
司会進行役の事務長ルーベンスが、こめかみに青筋を浮かべて囁く。
ルチアナは「バリボリ」と盛大な咀嚼音をマイクに乗せてから、口を開いた。
「えー、新入生諸君。校長のルチアナです」
バリボリ。
「学校っていうのはね、まあ、適当に賢くなって、適当に遊ぶ場所よ」
グビッ(コーラを飲む音)。
「怪我しない程度に暴れていいけど、校舎壊したら修理費は実費請求だからね。あと、給食は残さず食え。龍魔呂がキレると怖いから。以上」
「……み、短い! そして威厳がない!」
保護者席からざわめきが起こる。
「あれが創造神様?」「ただの駄菓子好きの姉ちゃんじゃ……」という困惑の声。
だが、カイトだけは最前列でパチパチと手を叩いていた。
「うんうん、ルチアナらしい、飾らない良い挨拶だね!」
「(カイト殿のフィルターはどうなっているんだ……)」
ルーベンスが頭を抱える中、式は進行する。
「続きまして、『校歌斉唱』です。音楽担当のリーザ先生、お願いします」
「はーい! みんな、聴いてね!」
ステージ袖から飛び出してきたのは、フリフリの衣装に身を包んだアイドル、リーザだ。
彼女はキラキラした笑顔でマイクを握りしめた。
「この曲は、勉強の大切さを伝えるために、ルチアナ校長と徹夜で作った新曲よ! 題して……『最低賃金(ライフ・イズ・ハード)』!」
「タイトルが不穏すぎるだろ!!」
ルーベンスのツッコミを無視して、イントロなしのアカペラが始まった。
「ガンガンガンガン ガッコウガガン!♪」
重い。
歌い出しから、メロディが演歌のように重い。
「最低賃金! 最低賃金!♪
夕暮れ公園 路地裏の隅♪
スーパーでもらった みかん箱♪
ここが私の 武道館♪」
リーザの歌声は、プロ級に上手い。
だからこそ、歌詞の悲壮感がダイレクトに鼓膜を震わせる。
「マイクは空き缶 愛をこめて♪
魂削って 歌うわ♪
投げ銭なんて ありゃしない♪」
保護者席の魔族たちが涙ぐみ始めた。
「うぅ……なんて哀しい歌だ……」「この世の地獄か……」
「誰も~ 誰も~ 聞いてくれない~♪
聞いてる奴らは 暇な奴♪
観客席には 野良の犬♪
あくびしている 三毛の猫♪」
ポチ(始祖竜)とフェンリル(狼王)が、「俺たちのことか?」という顔でステージを見上げている。
そして、サビでリーザの絶叫が響き渡った。
「最低賃金! 最低賃金!♪
私の値段は これっきり!♪
時給換算 命の安売り♪
バーゲンセールは 終わらない!♪」
もはや校歌ではない。労働争議のシュプレヒコールだ。
だが、ここからが「教育的」なCメロだった。
「あの時学校行って勉強してれば 高時給♪
因数分解 できてれば♪
タワマン・パーティ・シャンパンタワー♪
ラーラララ~ 幻さ……♪」
ジャーン。
歌が終わると同時に、リーザはその場に膝をつき、スポットライトの下で項垂れた。
完璧な演出だ。
静まり返る講堂。
数秒の沈黙の後、アレン(勇者の息子)がポツリと言った。
「……父ちゃんみたいになりたくない」
その言葉が引き金となり、子供たちの目に「炎」が宿った。
「べ、勉強しなきゃ……!」
「因数分解って魔法を覚えれば、タワマン(城)に住めるんだ!」
「俺、頑張る! 最低賃金はいやだぁぁぁ!」
ワァァァァッ!! と沸き起こる拍手喝采。
子供たちは恐怖によって学習意欲を爆発させていた。
「すごいよリーザちゃん! 子供たちのやる気を引き出したね!」
カイトは大絶賛だ。
ルーベンスは胃薬を飲み込みながら、遠い目をした。
「(……まあ、結果オーライか。動機が不純すぎる気もするが)」
カオス極まる入学式。
だが、その様子を校舎の外、はるか遠くの丘から「双眼鏡」で覗いている人影があった。
「……何という野蛮な式典。教育基本法、労働基準法、児童福祉法……ツッコミどころが多すぎますわ」
ゆるふわな金髪を風になびかせ、六法全書を片手に持つ美女。
ゴルド商会の令嬢にして、最強の弁護士、リベラ・ゴルドである。
「カイト農場……噂以上の無法地帯(アウトロー)。この『法廷の聖女』が、法に代わって裁いて差し上げますわ!」
彼女がポケットから取り出したのは、手作りクッキーではなく、分厚い「訴状」だった。
カイト分校に、法的バトルという新たな嵐が迫ろうとしていた。
カイト農場の北側の丘に、威容を誇る巨大建造物が完成していた。
建材は神話級の世界樹。窓ガラスはダイヤモンド。外壁は元・魔人が築いた絶対防御の石垣。
『カイト分校(仮)』。
その記念すべき第一回入学式が、今日、執り行われようとしていた。
「ううむ……これ、本当に学校か? 魔王軍の最終要塞の間違いではないのか?」
「パパ、怖いよぉ……」
校門の前では、新入生となる魔族や亜人の子供たち、そしてその保護者たちが、あまりのプレッシャーに震え上がっていた。
だが、中に入ればそこはカイト農場。
講堂(体育館)には、紅白の幕が張られ、のどかな雰囲気が漂っている……はずだった。
「えー。あー。マイクテス、マイクテス」
ステージの中央。
金色の演台に肘をつき、気だるげにマイクを叩いているのは、この学校の初代校長・創造神ルチアナである。
彼女の左手には、袋から直接掴んだポテチ(のり塩)が握られていた。
「校長先生、挨拶をお願いします……(早く食べてください)」
司会進行役の事務長ルーベンスが、こめかみに青筋を浮かべて囁く。
ルチアナは「バリボリ」と盛大な咀嚼音をマイクに乗せてから、口を開いた。
「えー、新入生諸君。校長のルチアナです」
バリボリ。
「学校っていうのはね、まあ、適当に賢くなって、適当に遊ぶ場所よ」
グビッ(コーラを飲む音)。
「怪我しない程度に暴れていいけど、校舎壊したら修理費は実費請求だからね。あと、給食は残さず食え。龍魔呂がキレると怖いから。以上」
「……み、短い! そして威厳がない!」
保護者席からざわめきが起こる。
「あれが創造神様?」「ただの駄菓子好きの姉ちゃんじゃ……」という困惑の声。
だが、カイトだけは最前列でパチパチと手を叩いていた。
「うんうん、ルチアナらしい、飾らない良い挨拶だね!」
「(カイト殿のフィルターはどうなっているんだ……)」
ルーベンスが頭を抱える中、式は進行する。
「続きまして、『校歌斉唱』です。音楽担当のリーザ先生、お願いします」
「はーい! みんな、聴いてね!」
ステージ袖から飛び出してきたのは、フリフリの衣装に身を包んだアイドル、リーザだ。
彼女はキラキラした笑顔でマイクを握りしめた。
「この曲は、勉強の大切さを伝えるために、ルチアナ校長と徹夜で作った新曲よ! 題して……『最低賃金(ライフ・イズ・ハード)』!」
「タイトルが不穏すぎるだろ!!」
ルーベンスのツッコミを無視して、イントロなしのアカペラが始まった。
「ガンガンガンガン ガッコウガガン!♪」
重い。
歌い出しから、メロディが演歌のように重い。
「最低賃金! 最低賃金!♪
夕暮れ公園 路地裏の隅♪
スーパーでもらった みかん箱♪
ここが私の 武道館♪」
リーザの歌声は、プロ級に上手い。
だからこそ、歌詞の悲壮感がダイレクトに鼓膜を震わせる。
「マイクは空き缶 愛をこめて♪
魂削って 歌うわ♪
投げ銭なんて ありゃしない♪」
保護者席の魔族たちが涙ぐみ始めた。
「うぅ……なんて哀しい歌だ……」「この世の地獄か……」
「誰も~ 誰も~ 聞いてくれない~♪
聞いてる奴らは 暇な奴♪
観客席には 野良の犬♪
あくびしている 三毛の猫♪」
ポチ(始祖竜)とフェンリル(狼王)が、「俺たちのことか?」という顔でステージを見上げている。
そして、サビでリーザの絶叫が響き渡った。
「最低賃金! 最低賃金!♪
私の値段は これっきり!♪
時給換算 命の安売り♪
バーゲンセールは 終わらない!♪」
もはや校歌ではない。労働争議のシュプレヒコールだ。
だが、ここからが「教育的」なCメロだった。
「あの時学校行って勉強してれば 高時給♪
因数分解 できてれば♪
タワマン・パーティ・シャンパンタワー♪
ラーラララ~ 幻さ……♪」
ジャーン。
歌が終わると同時に、リーザはその場に膝をつき、スポットライトの下で項垂れた。
完璧な演出だ。
静まり返る講堂。
数秒の沈黙の後、アレン(勇者の息子)がポツリと言った。
「……父ちゃんみたいになりたくない」
その言葉が引き金となり、子供たちの目に「炎」が宿った。
「べ、勉強しなきゃ……!」
「因数分解って魔法を覚えれば、タワマン(城)に住めるんだ!」
「俺、頑張る! 最低賃金はいやだぁぁぁ!」
ワァァァァッ!! と沸き起こる拍手喝采。
子供たちは恐怖によって学習意欲を爆発させていた。
「すごいよリーザちゃん! 子供たちのやる気を引き出したね!」
カイトは大絶賛だ。
ルーベンスは胃薬を飲み込みながら、遠い目をした。
「(……まあ、結果オーライか。動機が不純すぎる気もするが)」
カオス極まる入学式。
だが、その様子を校舎の外、はるか遠くの丘から「双眼鏡」で覗いている人影があった。
「……何という野蛮な式典。教育基本法、労働基準法、児童福祉法……ツッコミどころが多すぎますわ」
ゆるふわな金髪を風になびかせ、六法全書を片手に持つ美女。
ゴルド商会の令嬢にして、最強の弁護士、リベラ・ゴルドである。
「カイト農場……噂以上の無法地帯(アウトロー)。この『法廷の聖女』が、法に代わって裁いて差し上げますわ!」
彼女がポケットから取り出したのは、手作りクッキーではなく、分厚い「訴状」だった。
カイト分校に、法的バトルという新たな嵐が迫ろうとしていた。
50
あなたにおすすめの小説
私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~
Ss侍
ファンタジー
"私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。
動けない、何もできない、そもそも身体がない。
自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。
ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。
それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!
追放されたけど気づいたら最強になってました~無自覚チートで成り上がる異世界自由旅~
eringi
ファンタジー
勇者パーティーから「役立たず」と追放された青年アルト。
行くあてもなく森で倒れていた彼は、実は“失われし最古の加護”を持つ唯一の存在だった。
無自覚のまま魔王を倒し、国を救い、人々を惹きつけていくアルト。
彼が気づかないうちに、世界は彼中心に回り始める——。
ざまぁ、勘違い、最強無自覚、チート成り上がり要素満載の異世界ファンタジー!
異世界スローライフ希望なのに、女神の過保護が止まらない
葉泪秋
ファンタジー
HOTランキング1位感謝です!(2/3)
「小説家になろう」日間ランキング最高11位!(ハイファンタジー)
ブラック企業で過労死した俺、佐久間遼。
神様に願ったのは、ただ「異世界で、畑でも耕しながらのんびり暮らしたい」ということだけ。
そうして手に入れた、辺境の村での穏やかな日々。現状に満足し、今度こそは平穏なスローライフを……と思っていたのだが、俺の妙なスキルと前世の社畜根性が、そうはさせない。
ふとした善意で枯れた井戸を直したことから、堅物の騎士団長やら、過保護な女神やらに目をつけられることになる。
早く穏やかに暮らしたい。
俺は今日も、規格外に育った野菜を手に、皆の姿を眺めている。
【毎日18:00更新】
※表紙画像はAIを使用しています
元公爵令嬢は年下騎士たちに「用済みのおばさん」と捨てられる 〜今更戻ってこいと泣きつかれても献身的な美少年に溺愛されているのでもう遅いです〜
日々埋没。
ファンタジー
「新しい従者を雇うことにした。おばさんはもう用済みだ。今すぐ消えてくれ」
かつて婚約破棄され、実家を追放された元公爵令嬢のレアーヌ。
その身分を隠し、年下の冒険者たちの身の回りを世話する『メイド』として献身的に尽くしてきた彼女に突きつけられたのは、あまりに非情な追放宣告だった。
レアーヌがこれまで教育し、支えてきた若い男たちは、新しく現れた他人の物を欲しがり子悪魔メイドに骨抜きにされ、彼女を「加齢臭のする汚いおばさん」と蔑み、笑いながら追い出したのだ。
地位も、居場所も、信じていた絆も……すべてを失い、絶望する彼女の前に現れたのは、一人の美少年だった。
「僕とパーティーを組んでくれませんか? 貴方が必要なんです」
新米ながら将来の可能性を感じさせる彼は、レアーヌを「おばさん」ではなく「一人の女性」として、甘く狂おしく溺愛し始める。
一方でレアーヌという『真の支柱』を失った元パーティーは、自分たちがどれほど愚かな選択をしたかを知る由もなかった。
やがて彼らが地獄の淵で「戻ってきてくれ」と泣きついてきても、もう遅い。
レアーヌの隣には、彼女を離さないと誓った執着愛の化身が微笑んでいるのだから。
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~
よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】
多くの応援、本当にありがとうございます!
職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。
持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。
偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。
「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。
草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。
頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男――
年齢なんて関係ない。
五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!
最弱職〈祈祷士〉だった俺、実は神々の加護持ちでした~追放されたけど無自覚チートで世界最強~
eringi
ファンタジー
パーティから「役立たず」と言われ追放された祈祷士ルーク。だが彼の祈りは神々に届いており、あらゆる奇跡を現実にする「神の権能」だった。本人は気づかぬまま無双し、救った相手や元パーティの女性たちから次々想いを寄せられる。裏切った者たちへの“ざまぁ”も、神の御業のうちに。無自覚チート祈祷士が、神々さえも動かす伝説を紡ぐ──!
転生辺境の雑用兵、知らぬ間に世界最強になっていた件 〜追放されたけど美女たちに囲まれて安寧生活〜
eringi
ファンタジー
辺境軍の雑用兵として転生した青年・レオン。異世界に転生したのに、剣も魔法も地味でパッとしない日々。ところが彼の“地味な努力”が、実は世界の理をゆるがすほどの能力だと気づく者が次々と現れる。貴族令嬢、魔族の姫、神官少女──気づけばハーレム状態に。追放された元仲間が破滅していく流れの中、本人だけは「俺、そんな強いかな?」と首をかしげる。無自覚最強×ざまぁ×追放後スローライフ×英雄伝説が交錯する、異世界逆転ストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる