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第八章 スローライフな学校を作る
EP 10
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女子トイレという名の戦場(コスメ・ウォーズ)
カイト分校の校舎内には、カイトの謎のこだわりによって建設された、王宮のサロンよりも豪華な『女子パウダールーム』が存在する。
壁はローズクォーツ、鏡は真実を映すミスリルミラー。
そこは男たちには決して踏み込めない、聖域にして――最前線の戦場であった。
「……ねぇ、ルチアナぁ」
巨大な鏡の前で、魔王ラスティアが冷ややかな視線を横に送った。
そこには、地球産の高級ファンデーションをバフバフと叩き込んでいる創造神ルチアナの姿があった。
「あんた、その化粧……ちょっと濃すぎない? 舞台女優でも目指してるの?」
「あら、失礼ね」
ルチアナは手を止めず、鏡越しにラスティアを睨み返す。
「これは『ナチュラルメイク』よ。地球の最新トレンドなんだから。それに、神の肌は発光するから、これくらい抑えないと眩しいのよ」
「へぇ、くすみ隠しじゃなくて?」
「ぶっ飛ばすわよ?」
一瞬、パウダールームの重力が歪んだ気がしたが、ルチアナはふふんと鼻で笑った。
「それにラスティアこそ、ガツガツしすぎよ? 香水臭いし、胸元の開いた服ばっかり着て。そんなんじゃ、カイトみたいな朴念仁な男は来ないわよ? 『引く』わよ?」
「なっ……!?」
ラスティアの眉がピクリと跳ねる。
「ガツガツしている」――それは彼女が一番気にしていることだ。カイトへのアプローチが空回りし続けている自覚があるだけに、ダメージは深い。
「まぁまぁ、お二人とも。見苦しいですわよ?」
その間に割って入ったのは、不死鳥フレアだ。
彼女は優雅にリップグロスを塗りながら、うっとりと自分の唇を眺めている。
「化粧とは、私みたいな『元から美しい女』がしてこそ相応しいのよ? 素材が良いからこそ、装飾が映える……分かります? 私は塗らなくても美しいですけど、世界への配慮として塗ってあげているんですの」
圧倒的なナルシズム。
だが、誰も否定できない。黙っていれば彼女は世界屈指の美女だからだ。
「……あら、フレアさん。若さだけが美しさではありませんわよ?」
静かな、しかし芯の通った声が響く。
元聖女セーラだ。彼女は落ち着いた手つきで髪を整えている。
「私は一線を退きましたけど……まだまだ、落ちぶれてませんわ。夫(リュウ)はアレですけど、母親としての包容力、そして酸いも甘いも噛み分けた『大人の魅力』……カイト様や龍魔呂さんが求めているのは、そういう癒やしではありませんこと?」
セーラの背後に、聖母のようなオーラ(既婚者の余裕)が立ち昇る。
未婚の三柱(ルチアナ・ラスティア・フレア)にとって、「人妻」というブランドは未知の脅威だ。
ピリリリリ……。
鏡が微振動を始める。
魔王の殺気、神の威圧、不死鳥の自意識、聖女の意地。
四つの巨大なエゴが衝突し、パウダールームの空間が歪み始めたその時。
「――お化粧って、何かしらぁ?」
空気を読まない、甘ったるい声が落ちた。
洗面台に踏み台を置いて、ちょこんと手を洗っていたエルフのルナだ。
彼女は鏡の中の、濃い化粧をしたお姉様たちを不思議そうに見上げ、首をコテンと傾げた。
「お顔に色を塗って……『小ジワ』や『シミ』を隠す事? 大変ねぇ」
ドゴォォォォンッ!!(精神的爆発音)
四人の動きが完全に停止した。
「小ジワ」。
「シミ」。
永遠の命を持つ彼女たちにとって、それは禁句中の禁句。
ルナは悪気のない(ように見える)満面の笑みで、自身のプルプルの頬を指差した。
「私みたいな、若くて可愛い娘には必要ないもん。だって、お肌ツルツルだもの。ね?」
クリティカルヒット。
効果は抜群だ。
ルチアナ(数億歳)、ラスティア(数千歳)、フレア(3000歳)、セーラ(30代)。
全員が、ルナ(見た目10歳前後)の圧倒的な「ロリ属性」と「天然の暴力」の前に沈黙した。
※なお、ルナの実年齢は20歳だが、エルフ基準では子供であり、見た目の説得力が違いすぎる。
「……ラスティア」
「……何よ、ルチアナ」
ルチアナが低く呟く。
「……ブラック・ホールって、ここ(女子トイレ)で出せる?」
「……出せるわよ。今なら、喜んで」
「ま、待ちなさいお二人とも!」
セーラが慌てて止めるが、フレアも目が据わっている。
「焼きましょう。この生意気なエルフごと、若さという概念を……!」
「きゃあ~、お姉様たちが怖~い! カイト様ぁ~!」
ルナは素早く察知し、脱兎のごとくパウダールームから逃げ出した。
そのあざとい背中を見送りながら、残された四人の大人の女性たちは、鏡の前で深く、深くため息をついた。
「……厚塗り、しようかしら」
「……ええ。コンシーラー貸して」
女子トイレという戦場。
今日の勝者は、化粧など必要としない「圧倒的若さ(ロリ)」であった。
カイトがこの後、泣きついてきたルナを慰め、それを追ってきた四人に囲まれて修羅場になるのは、また別の話である。
カイト分校の校舎内には、カイトの謎のこだわりによって建設された、王宮のサロンよりも豪華な『女子パウダールーム』が存在する。
壁はローズクォーツ、鏡は真実を映すミスリルミラー。
そこは男たちには決して踏み込めない、聖域にして――最前線の戦場であった。
「……ねぇ、ルチアナぁ」
巨大な鏡の前で、魔王ラスティアが冷ややかな視線を横に送った。
そこには、地球産の高級ファンデーションをバフバフと叩き込んでいる創造神ルチアナの姿があった。
「あんた、その化粧……ちょっと濃すぎない? 舞台女優でも目指してるの?」
「あら、失礼ね」
ルチアナは手を止めず、鏡越しにラスティアを睨み返す。
「これは『ナチュラルメイク』よ。地球の最新トレンドなんだから。それに、神の肌は発光するから、これくらい抑えないと眩しいのよ」
「へぇ、くすみ隠しじゃなくて?」
「ぶっ飛ばすわよ?」
一瞬、パウダールームの重力が歪んだ気がしたが、ルチアナはふふんと鼻で笑った。
「それにラスティアこそ、ガツガツしすぎよ? 香水臭いし、胸元の開いた服ばっかり着て。そんなんじゃ、カイトみたいな朴念仁な男は来ないわよ? 『引く』わよ?」
「なっ……!?」
ラスティアの眉がピクリと跳ねる。
「ガツガツしている」――それは彼女が一番気にしていることだ。カイトへのアプローチが空回りし続けている自覚があるだけに、ダメージは深い。
「まぁまぁ、お二人とも。見苦しいですわよ?」
その間に割って入ったのは、不死鳥フレアだ。
彼女は優雅にリップグロスを塗りながら、うっとりと自分の唇を眺めている。
「化粧とは、私みたいな『元から美しい女』がしてこそ相応しいのよ? 素材が良いからこそ、装飾が映える……分かります? 私は塗らなくても美しいですけど、世界への配慮として塗ってあげているんですの」
圧倒的なナルシズム。
だが、誰も否定できない。黙っていれば彼女は世界屈指の美女だからだ。
「……あら、フレアさん。若さだけが美しさではありませんわよ?」
静かな、しかし芯の通った声が響く。
元聖女セーラだ。彼女は落ち着いた手つきで髪を整えている。
「私は一線を退きましたけど……まだまだ、落ちぶれてませんわ。夫(リュウ)はアレですけど、母親としての包容力、そして酸いも甘いも噛み分けた『大人の魅力』……カイト様や龍魔呂さんが求めているのは、そういう癒やしではありませんこと?」
セーラの背後に、聖母のようなオーラ(既婚者の余裕)が立ち昇る。
未婚の三柱(ルチアナ・ラスティア・フレア)にとって、「人妻」というブランドは未知の脅威だ。
ピリリリリ……。
鏡が微振動を始める。
魔王の殺気、神の威圧、不死鳥の自意識、聖女の意地。
四つの巨大なエゴが衝突し、パウダールームの空間が歪み始めたその時。
「――お化粧って、何かしらぁ?」
空気を読まない、甘ったるい声が落ちた。
洗面台に踏み台を置いて、ちょこんと手を洗っていたエルフのルナだ。
彼女は鏡の中の、濃い化粧をしたお姉様たちを不思議そうに見上げ、首をコテンと傾げた。
「お顔に色を塗って……『小ジワ』や『シミ』を隠す事? 大変ねぇ」
ドゴォォォォンッ!!(精神的爆発音)
四人の動きが完全に停止した。
「小ジワ」。
「シミ」。
永遠の命を持つ彼女たちにとって、それは禁句中の禁句。
ルナは悪気のない(ように見える)満面の笑みで、自身のプルプルの頬を指差した。
「私みたいな、若くて可愛い娘には必要ないもん。だって、お肌ツルツルだもの。ね?」
クリティカルヒット。
効果は抜群だ。
ルチアナ(数億歳)、ラスティア(数千歳)、フレア(3000歳)、セーラ(30代)。
全員が、ルナ(見た目10歳前後)の圧倒的な「ロリ属性」と「天然の暴力」の前に沈黙した。
※なお、ルナの実年齢は20歳だが、エルフ基準では子供であり、見た目の説得力が違いすぎる。
「……ラスティア」
「……何よ、ルチアナ」
ルチアナが低く呟く。
「……ブラック・ホールって、ここ(女子トイレ)で出せる?」
「……出せるわよ。今なら、喜んで」
「ま、待ちなさいお二人とも!」
セーラが慌てて止めるが、フレアも目が据わっている。
「焼きましょう。この生意気なエルフごと、若さという概念を……!」
「きゃあ~、お姉様たちが怖~い! カイト様ぁ~!」
ルナは素早く察知し、脱兎のごとくパウダールームから逃げ出した。
そのあざとい背中を見送りながら、残された四人の大人の女性たちは、鏡の前で深く、深くため息をついた。
「……厚塗り、しようかしら」
「……ええ。コンシーラー貸して」
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