田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一

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第十章 ザワザワするカイト達

EP 4

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【男の聖域】カジノの裏路地。負けた男たちのヤニ休憩
煌びやかなネオンが支配する天魔窟の表通り。
その一本裏に入った薄暗い路地裏に、紫煙をくゆらせる男たちの姿があった。
そこは、勝負に勝った者の高笑いと、負けた者の嗚咽が入り混じる、この街の澱(おり)のような場所。
だが、彼らにとっては心安らぐ「聖域」だった。
「……ふぅ」
魔族宰相ルーベンスが、壁に背を預けて煙を吐き出した。
普段の神経質な表情とは違い、今はどこか憑き物が落ちたような、晴れやかな顔をしている。
「……珍しいな、ルーベンス。お前がそんなに穏やかな顔をしているとは」
隣で携帯灰皿を持っていた鬼神・龍魔呂が、Larkを吸いながら声をかけた。
彼は市場で仕入れた「謎の香辛料」の入った紙袋を抱えている。
「龍魔呂、お前は遊ばないのか?」
「俺は明日の飯の仕込みがあるからな。ここの市場には、魔界特有の面白いスパイスがあるんだ」
龍魔呂は相変わらずだ。
カジノに来てまで、考えるのは家族(農場の皆)の胃袋のことばかり。
「そうか……まあ、お前らしいな」
ルーベンスは口元を緩め、懐から一枚の馬券(トトカルチョ)を取り出した。
「私は少し遊ばせてもらったよ。あっちに『競竜(けいりゅう)』のコーナーがあってな」
「競竜? ドラゴンレースか」
「ああ。そこで伝説のジオ・リザード、『ゴールドシップ号』という暴れ馬(竜)が出ていてな」
ルーベンスの目が、少年のように輝き出した。
「凄かったぞ。ゲートが開いた瞬間に立ち上がって出遅れたかと思えば、道中で騎手を振り落とさんばかりに暴れ回り、最後は他の竜を蹴散らしてごぼう抜きのG1優勝だ。……あれは熱かった」
「……へぇ」
「あの大暴れする姿がな、なんだかウチの連中(カイトやポチ)と重なって見えてな……つい、大穴に賭けてしまったんだ」
ルーベンスはニヤリと笑った。
その手にある配当金は、彼の数ヶ月分の給料に匹敵する額だ。
カイト農場で培われた「混沌への耐性」が、ここに来てまさかのギャンブル運として開花したらしい。
「悪くない休日だ。……さて、この勝ち分で何を――」
「おい、辛気臭い顔して何処で油を売っておる」
低い声と共に、路地の奥から巨漢が現れた。
ジャージ姿の竜王デュークだ。その横には、少し気だるげな狼王フェンリルもいる。
「デュークか。お前たちはどうだったんだ?」
「フン、スロットなぞ子供騙しだ。ボタンを押すだけで何が面白い」
デュークは鼻を鳴らした。どうやら負けたらしい。
「俺はルーレットで少し巻き上げたけどな。……それより、疲れたぜ。人混みは嫌いだ」
フェンリルが首をコキコキと鳴らす。
彼らにとって、この街の空気は少し騒がしすぎる。
「龍魔呂、ルーベンス。男の休息と言えば……決まっておろう?」
デュークが親指でビシッと、ある建物を指差した。
「サウナだ」
その看板には『灼熱地獄サウナ ~溶岩ロウリュあり〼~』と書かれている。
「汗と共に雑念を流し、水風呂で魂を締める。これぞ至高の整いよ」
「いいな。行こうぜ、サウナ」
フェンリルも乗り気だ。
野生の王たちも、温かい風呂とサウナには抗えない。
龍魔呂は少し考え、抱えていたスパイスの袋を持ち直した。
「……ああ、分かった。仕込みの前には身を清めないとな」
「決まりだな。リベラ殿たちには『男同士の付き合いだ』と伝えておこう」
ルーベンスが吸い殻を消し、立ち上がった。
競馬で勝った男。
料理一筋の男。
威厳ある竜王。
野生の狼王。
種族も立場も違う四人の男たちが、タオル片手に「裸の付き合い」へと向かう。
その背中は、カジノのネオンよりも哀愁と男気に満ちていた。
「……あ、俺サウナハット忘れた」
「安心しろフェンリル、余分に持っておる」
そんな会話が、路地裏の風に消えていった。
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