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第十一章 健康帝国とレジスタンス
EP 7
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【決起】深夜2時。女子寮に『ピザ』をデリバリーせよ
深夜2時30分。
カイト農場の女子寮の裏庭にある植え込みに、黒い影たちが潜んでいた。
「……リベラ殿。警備システム(魔法結界)の状況は?」
「問題ありませんわ。私が先ほど、メンテナンス名目で一時的に解除しました。……今なら『ブツ』を通せます」
風紀委員長リベラが、ケチャップのついた口元を拭いながら、冷静に報告した。
彼女は完全に「こちら側(カロリーの信徒)」に堕ちていた。その瞳は、獲物を狙う鷹のように鋭い。
「よし。……行くぞ、ポチ」
カイトが振り返る。
そこには、背中に巨大な保温バッグを背負わされた、漆黒の始祖竜ポチがいた。
『……おい。俺は誇り高きドラゴンだぞ。なんでピザの配達員(デリバリー)なんか……』
「成功したら、ポチにも『Lサイズ・ペパロニ増し増し』あげるから」
『……チッ。仕方ねぇな。住所はどこだ』
ポチは舌なめずりをして、翼を広げた。
食欲の前には、ドラゴンのプライドなど紙切れ同然だ。
「目標は2階、ルチアナ様とラスティアの部屋の窓だ。……行け! 『オペレーション・チーズ・メルト』開始!」
ルーベンスの号令と共に、ポチが無音で夜空へ舞い上がった。
◇
女子寮、205号室。
そこは、地獄の底のような空気が漂っていた。
「……お腹すいた……」
「……ひもじい……」
ベッドの上で、元・創造神ルチアナと、魔王ラスティアが死体のように転がっていた。
夕食は「温野菜サラダ(ドレッシングなし)」のみ。
彼女たちの胃袋は限界を超え、お互いの腹の虫の音で会話ができるレベルに達していた。
「ねぇラスティア……私、もうダメかも。天井のシミがポテトチップスに見えてきた……」
「奇遇ねルチアナ……私にはカーテンの柄が霜降り肉に見えるわ……」
二人は虚ろな目で笑い合った。
かつて世界を争った神と魔王が、空腹によって奇妙な連帯感で結ばれている。
「……ねぇ。なんか匂わない?」
ルチアナがふと鼻を動かした。
窓の外から、風に乗って漂ってくる香り。
それは、青汁の青臭さではない。もっと芳醇で、暴力的で、幸せな香り。
「……小麦が焼ける匂い……? それに、トマトソースと……焦げたチーズ……?」
「まさか……そんな……」
コンコン。
窓ガラスが叩かれた。
二人が弾かれたように起き上がり、窓を開けると――。
『へい、お待ち』
巨大なドラゴンの顔がニューッと現れ、保温バッグから「平たい箱」を差し出した。
「ポ、ポチ!? ……え、これって……」
ルチアナが震える手で箱を受け取り、蓋を開けた。
パカッ……!
その瞬間、部屋中に黄金色の輝きが満ち溢れた。
「ひぃぃっ……!!」
そこに鎮座していたのは、直径40センチはある『特製クワトロ・フォルマッジ(4種のチーズ)』と『ミート・ラバーズ(肉尽くし)』のハーフ&ハーフ。
Sランク小麦で作られた生地の上で、チーズが海のように波打ち、サラミとベーコンが山脈のように隆起している。
「あ、あぁぁ……! チーズが……お肉が……!」
「食べて……いいの……?」
二人が顔を見合わせる。
そして、次の瞬間、理性が崩壊した。
「いただきまぁぁぁすッ!!」
ルチアナがピザを鷲掴みにする。
持ち上げた瞬間、チーズが糸を引き、どこまでも伸びていく。
ガブリッ!
「んん~ッ!! 濃厚ぉぉぉ! チーズの塩気が脳みそに直撃するぅぅ!」
「こっちのお肉も最高よ! サラミの脂と生地のモチモチ感が……あぁん、幸せぇぇ!」
二人は貪り食った。
口の周りをソースでベタベタにし、カロリーという名のガソリンを枯渇した体に注ぎ込んでいく。
「野菜? 知るかそんなもの!」という心の叫びが聞こえてきそうだ。
「……ちょっと! あんたたちだけズルいわよ!」
バンッ! ドアが開いた。
隣の部屋から、不死鳥フレアとアイドル・リーザが飛び込んできた。
匂いに釣られたのだ。
「アイドルは深夜に食べちゃダメだって!? 知るもんか! 私は今、猛烈に炭水化物が欲しいのよ!」
リーザが目を血走らせてピザにダイブした。
フレアも続く。
「この匂い……! 私の炎でも再現できない『石窯焼き』の香ばしさ! よこしなさい!」
「あっ、こら! 私のサラミ取らないでよ!」
「早い者勝ちよ!」
女子寮の一室で、深夜のピザパーティー(争奪戦)が始まった。
彼女たちの顔には、久しく忘れていた「生気」と「油」が戻っていた。
◇
「……よし。堕ちたな」
庭の茂みからその様子を確認した龍魔呂が、ニヤリと笑った。
「外堀は埋まった。女性陣もこちら側だ」
「作戦成功だね!」
カイトが親指を立てる。
残る敵は、この健康帝国の頂点に君臨する、たった一人の少女のみ。
「行くぞ。……本丸、ルナ様のいる食堂へ」
ルーベンスが眼鏡を直した。
彼の手には、龍魔呂が心血を注いで作り上げた『最終決戦兵器(究極のジャンクセット)』が握られている。
夜明け前。
カイト農場の命運を懸けた、最後の戦いが始まろうとしていた。
深夜2時30分。
カイト農場の女子寮の裏庭にある植え込みに、黒い影たちが潜んでいた。
「……リベラ殿。警備システム(魔法結界)の状況は?」
「問題ありませんわ。私が先ほど、メンテナンス名目で一時的に解除しました。……今なら『ブツ』を通せます」
風紀委員長リベラが、ケチャップのついた口元を拭いながら、冷静に報告した。
彼女は完全に「こちら側(カロリーの信徒)」に堕ちていた。その瞳は、獲物を狙う鷹のように鋭い。
「よし。……行くぞ、ポチ」
カイトが振り返る。
そこには、背中に巨大な保温バッグを背負わされた、漆黒の始祖竜ポチがいた。
『……おい。俺は誇り高きドラゴンだぞ。なんでピザの配達員(デリバリー)なんか……』
「成功したら、ポチにも『Lサイズ・ペパロニ増し増し』あげるから」
『……チッ。仕方ねぇな。住所はどこだ』
ポチは舌なめずりをして、翼を広げた。
食欲の前には、ドラゴンのプライドなど紙切れ同然だ。
「目標は2階、ルチアナ様とラスティアの部屋の窓だ。……行け! 『オペレーション・チーズ・メルト』開始!」
ルーベンスの号令と共に、ポチが無音で夜空へ舞い上がった。
◇
女子寮、205号室。
そこは、地獄の底のような空気が漂っていた。
「……お腹すいた……」
「……ひもじい……」
ベッドの上で、元・創造神ルチアナと、魔王ラスティアが死体のように転がっていた。
夕食は「温野菜サラダ(ドレッシングなし)」のみ。
彼女たちの胃袋は限界を超え、お互いの腹の虫の音で会話ができるレベルに達していた。
「ねぇラスティア……私、もうダメかも。天井のシミがポテトチップスに見えてきた……」
「奇遇ねルチアナ……私にはカーテンの柄が霜降り肉に見えるわ……」
二人は虚ろな目で笑い合った。
かつて世界を争った神と魔王が、空腹によって奇妙な連帯感で結ばれている。
「……ねぇ。なんか匂わない?」
ルチアナがふと鼻を動かした。
窓の外から、風に乗って漂ってくる香り。
それは、青汁の青臭さではない。もっと芳醇で、暴力的で、幸せな香り。
「……小麦が焼ける匂い……? それに、トマトソースと……焦げたチーズ……?」
「まさか……そんな……」
コンコン。
窓ガラスが叩かれた。
二人が弾かれたように起き上がり、窓を開けると――。
『へい、お待ち』
巨大なドラゴンの顔がニューッと現れ、保温バッグから「平たい箱」を差し出した。
「ポ、ポチ!? ……え、これって……」
ルチアナが震える手で箱を受け取り、蓋を開けた。
パカッ……!
その瞬間、部屋中に黄金色の輝きが満ち溢れた。
「ひぃぃっ……!!」
そこに鎮座していたのは、直径40センチはある『特製クワトロ・フォルマッジ(4種のチーズ)』と『ミート・ラバーズ(肉尽くし)』のハーフ&ハーフ。
Sランク小麦で作られた生地の上で、チーズが海のように波打ち、サラミとベーコンが山脈のように隆起している。
「あ、あぁぁ……! チーズが……お肉が……!」
「食べて……いいの……?」
二人が顔を見合わせる。
そして、次の瞬間、理性が崩壊した。
「いただきまぁぁぁすッ!!」
ルチアナがピザを鷲掴みにする。
持ち上げた瞬間、チーズが糸を引き、どこまでも伸びていく。
ガブリッ!
「んん~ッ!! 濃厚ぉぉぉ! チーズの塩気が脳みそに直撃するぅぅ!」
「こっちのお肉も最高よ! サラミの脂と生地のモチモチ感が……あぁん、幸せぇぇ!」
二人は貪り食った。
口の周りをソースでベタベタにし、カロリーという名のガソリンを枯渇した体に注ぎ込んでいく。
「野菜? 知るかそんなもの!」という心の叫びが聞こえてきそうだ。
「……ちょっと! あんたたちだけズルいわよ!」
バンッ! ドアが開いた。
隣の部屋から、不死鳥フレアとアイドル・リーザが飛び込んできた。
匂いに釣られたのだ。
「アイドルは深夜に食べちゃダメだって!? 知るもんか! 私は今、猛烈に炭水化物が欲しいのよ!」
リーザが目を血走らせてピザにダイブした。
フレアも続く。
「この匂い……! 私の炎でも再現できない『石窯焼き』の香ばしさ! よこしなさい!」
「あっ、こら! 私のサラミ取らないでよ!」
「早い者勝ちよ!」
女子寮の一室で、深夜のピザパーティー(争奪戦)が始まった。
彼女たちの顔には、久しく忘れていた「生気」と「油」が戻っていた。
◇
「……よし。堕ちたな」
庭の茂みからその様子を確認した龍魔呂が、ニヤリと笑った。
「外堀は埋まった。女性陣もこちら側だ」
「作戦成功だね!」
カイトが親指を立てる。
残る敵は、この健康帝国の頂点に君臨する、たった一人の少女のみ。
「行くぞ。……本丸、ルナ様のいる食堂へ」
ルーベンスが眼鏡を直した。
彼の手には、龍魔呂が心血を注いで作り上げた『最終決戦兵器(究極のジャンクセット)』が握られている。
夜明け前。
カイト農場の命運を懸けた、最後の戦いが始まろうとしていた。
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