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第十一章 健康帝国とレジスタンス
EP 6
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【誘惑】リベラ理事長、深夜の『飯テロ』に屈する
時刻は深夜3時。
カイト分校の理事長室には、まだ明かりが灯っていた。
「……はぁ。ルチアナ様の補習計画に、ラスティアの更生プログラム……やることが山積みですわ」
デスクに向かうリベラは、疲れ切った顔で書類に判子を押していた。
彼女のデスクの脇にあるのは、ルナから差し入れられた『特製野菜スティック(味付けなし)』と『常温の水』のみ。
「……健康的。ええ、とても健康的ですわ。体が軽いですもの」
リベラは自分に言い聞かせながら、セロリを齧った。
シャクッ。
青臭い水分が口に広がる。
空腹は紛れるが、心は満たされない。脳の奥底で、何かが悲鳴を上げている気がした。
(……何か、ガツンとくるものが食べたい……)
ふと、そんな思考が過った瞬間。
『クンッ……?』
リベラは鼻をひくつかせた。
換気ダクトの方から、奇妙な風が流れてきている。
それは、彼女がここ数日嗅いでいなかった匂い。
焦げた醤油? いや、もっと動物的な……牛脂の焼ける香り。
そして、鼻腔をくすぐるスパイシーな刺激臭。
「な、何ですの……? この暴力的な匂いは……」
リベラの胃袋が、意思に反して「ギュルルルッ!」と盛大な音を立てた。
彼女はフラフラと立ち上がり、匂いの発生源――廊下へと続くドアに近づいた。
コンコン。
控えめなノックの音がした。
「……どなた?」
「ルームサービスだよ」
聞き覚えのある声と共に、ドアの隙間からスッ……と「皿」が差し入れられた。
そこに乗っているのは、黄金色に輝くスティック状の物体。
「……っ!?」
リベラは後ずさった。
フライドポテトだ。
しかも、ただのポテトではない。揚げたてで、表面に岩塩がキラキラと光り、湯気と共に濃厚な油の香りを放っている。
「こ、これは……! 校則で禁止されている『高温で揚げた炭水化物』……!」
リベラは震える声で警告した。
「カイト様ですね!? 没収します! 直ちに撤収しなさい!」
だが、ドアの向こうから悪魔の囁きが聞こえた。
「冷めちゃうよ? 揚げたてだよ? 龍魔呂さんが作った、Sランクポテトだよ?」
「くっ……!」
リベラの理性が揺らぐ。
深夜3時。最も判断力が低下し、最もカロリーを欲する魔の時間帯。
目の前の黄金(ポテト)が、「私を食べて」と誘惑している。
(一口だけ……味見として没収するだけなら……)
リベラの震える指が、ポテトに伸びた。
まだ熱い。指先に伝わる油の感触。
彼女はそれを口に運んだ。
カリッ……。
ホクホク……。
その瞬間。
リベラの脳内で、何かが爆発した。
「んんんんんッッ!?!?」
彼女は目を見開き、天を仰いだ。
(何これ……!? 美味しい……! 暴力的に美味しいですわッ!!)
口の中に広がる、爆裂ポテトの濃厚な甘み。
それを引き締める岩塩の塩気。
そして何より、「油」。
数日間、青汁と野菜で清められていた乾いた細胞に、熱い油が染み渡っていく。
「あ、あぁぁ……! 塩が! 油が! 五臓六腑に駆け巡りますわぁぁ!」
リベラはその場に崩れ落ち、夢中で二本目、三本目を口に放り込んだ。
止まらない。理性の堤防が決壊した。
「……お口に合いましたか?」
ガチャリ。ドアが開いた。
そこには、トレイを持ったカイトと、ニヤリと笑う龍魔呂が立っていた。
トレイの上には、肉汁滴る『ダブルチーズバーガー』と、黒く輝く『コーラ』。
「な、何ですのそれは……! そんな茶色の塊……!」
リベラは涙目で抗議しようとしたが、龍魔呂が無言でコーラを差し出した。
ポテトで油っぽくなった口が、炭酸を求めている。
彼女はグラスを奪い取り、一気に煽った。
ゴクッ、ゴクッ、ゴクッ……プハァッ!!
「……ッ!! シュワシュワしますわぁぁぁ! 喉が焼けるようですわぁぁ!」
脳天を突き抜けるカフェインと糖分の衝撃。
リベラの眼鏡がズレ、瞳がトロンと潤んだ。
「……理事長。ハンバーガーもいかがですか?」
カイトが悪魔の笑顔でバーガーを差し出す。
リベラはもう、抵抗できなかった。
彼女は震える手でバーガーを受け取り、大口を開けてかぶりついた。
ガブリッ。
ジュワワァァァ……!
肉汁とチーズの濁流が、彼女の全てを飲み込んだ。
「……はふッ、んぐッ……!!」
リベラは咀嚼しながら、恍惚の表情で呟いた。
「……美味しい……。規則なんて……健康なんて……どうでもいいですわ……!!」
【陥落】。
鉄壁の風紀委員長は、深夜のジャンクフードの前にひれ伏した。
「……ふふ。ようこそ、こちらの世界へ」
龍魔呂が満足げにタバコ(Lark)を取り出した。
「さあ、リベラ。次は貴女が『共犯者』になる番だ」
「……ええ。分かりましたわ」
リベラは口元のケチャップを舐め取り、眼鏡をクイッと押し上げた。
その瞳には、かつての「法と秩序の番人」の光はない。あるのは「カロリーの信徒」としての狂気だけだ。
「ルナ様にも……この『幸せ』を教えて差し上げなくてはなりませんわね?」
最強の参謀が寝返った。
レジスタンスは今、勝利への確信と共に、次なるターゲット(女子寮)へと向かう。
時刻は深夜3時。
カイト分校の理事長室には、まだ明かりが灯っていた。
「……はぁ。ルチアナ様の補習計画に、ラスティアの更生プログラム……やることが山積みですわ」
デスクに向かうリベラは、疲れ切った顔で書類に判子を押していた。
彼女のデスクの脇にあるのは、ルナから差し入れられた『特製野菜スティック(味付けなし)』と『常温の水』のみ。
「……健康的。ええ、とても健康的ですわ。体が軽いですもの」
リベラは自分に言い聞かせながら、セロリを齧った。
シャクッ。
青臭い水分が口に広がる。
空腹は紛れるが、心は満たされない。脳の奥底で、何かが悲鳴を上げている気がした。
(……何か、ガツンとくるものが食べたい……)
ふと、そんな思考が過った瞬間。
『クンッ……?』
リベラは鼻をひくつかせた。
換気ダクトの方から、奇妙な風が流れてきている。
それは、彼女がここ数日嗅いでいなかった匂い。
焦げた醤油? いや、もっと動物的な……牛脂の焼ける香り。
そして、鼻腔をくすぐるスパイシーな刺激臭。
「な、何ですの……? この暴力的な匂いは……」
リベラの胃袋が、意思に反して「ギュルルルッ!」と盛大な音を立てた。
彼女はフラフラと立ち上がり、匂いの発生源――廊下へと続くドアに近づいた。
コンコン。
控えめなノックの音がした。
「……どなた?」
「ルームサービスだよ」
聞き覚えのある声と共に、ドアの隙間からスッ……と「皿」が差し入れられた。
そこに乗っているのは、黄金色に輝くスティック状の物体。
「……っ!?」
リベラは後ずさった。
フライドポテトだ。
しかも、ただのポテトではない。揚げたてで、表面に岩塩がキラキラと光り、湯気と共に濃厚な油の香りを放っている。
「こ、これは……! 校則で禁止されている『高温で揚げた炭水化物』……!」
リベラは震える声で警告した。
「カイト様ですね!? 没収します! 直ちに撤収しなさい!」
だが、ドアの向こうから悪魔の囁きが聞こえた。
「冷めちゃうよ? 揚げたてだよ? 龍魔呂さんが作った、Sランクポテトだよ?」
「くっ……!」
リベラの理性が揺らぐ。
深夜3時。最も判断力が低下し、最もカロリーを欲する魔の時間帯。
目の前の黄金(ポテト)が、「私を食べて」と誘惑している。
(一口だけ……味見として没収するだけなら……)
リベラの震える指が、ポテトに伸びた。
まだ熱い。指先に伝わる油の感触。
彼女はそれを口に運んだ。
カリッ……。
ホクホク……。
その瞬間。
リベラの脳内で、何かが爆発した。
「んんんんんッッ!?!?」
彼女は目を見開き、天を仰いだ。
(何これ……!? 美味しい……! 暴力的に美味しいですわッ!!)
口の中に広がる、爆裂ポテトの濃厚な甘み。
それを引き締める岩塩の塩気。
そして何より、「油」。
数日間、青汁と野菜で清められていた乾いた細胞に、熱い油が染み渡っていく。
「あ、あぁぁ……! 塩が! 油が! 五臓六腑に駆け巡りますわぁぁ!」
リベラはその場に崩れ落ち、夢中で二本目、三本目を口に放り込んだ。
止まらない。理性の堤防が決壊した。
「……お口に合いましたか?」
ガチャリ。ドアが開いた。
そこには、トレイを持ったカイトと、ニヤリと笑う龍魔呂が立っていた。
トレイの上には、肉汁滴る『ダブルチーズバーガー』と、黒く輝く『コーラ』。
「な、何ですのそれは……! そんな茶色の塊……!」
リベラは涙目で抗議しようとしたが、龍魔呂が無言でコーラを差し出した。
ポテトで油っぽくなった口が、炭酸を求めている。
彼女はグラスを奪い取り、一気に煽った。
ゴクッ、ゴクッ、ゴクッ……プハァッ!!
「……ッ!! シュワシュワしますわぁぁぁ! 喉が焼けるようですわぁぁ!」
脳天を突き抜けるカフェインと糖分の衝撃。
リベラの眼鏡がズレ、瞳がトロンと潤んだ。
「……理事長。ハンバーガーもいかがですか?」
カイトが悪魔の笑顔でバーガーを差し出す。
リベラはもう、抵抗できなかった。
彼女は震える手でバーガーを受け取り、大口を開けてかぶりついた。
ガブリッ。
ジュワワァァァ……!
肉汁とチーズの濁流が、彼女の全てを飲み込んだ。
「……はふッ、んぐッ……!!」
リベラは咀嚼しながら、恍惚の表情で呟いた。
「……美味しい……。規則なんて……健康なんて……どうでもいいですわ……!!」
【陥落】。
鉄壁の風紀委員長は、深夜のジャンクフードの前にひれ伏した。
「……ふふ。ようこそ、こちらの世界へ」
龍魔呂が満足げにタバコ(Lark)を取り出した。
「さあ、リベラ。次は貴女が『共犯者』になる番だ」
「……ええ。分かりましたわ」
リベラは口元のケチャップを舐め取り、眼鏡をクイッと押し上げた。
その瞳には、かつての「法と秩序の番人」の光はない。あるのは「カロリーの信徒」としての狂気だけだ。
「ルナ様にも……この『幸せ』を教えて差し上げなくてはなりませんわね?」
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