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第十二章 ファミレス12時間耐久レース
EP 3
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【入店】天魔窟のファミレス『デモンズ・ガスト』へようこそ
天魔窟のネオン街の一角に、その店はあった。
赤と黒の看板に、蝙蝠(コウモリ)のマーク。
24時間営業の魔界ファミリーレストラン、『デモンズ・ガスト』である。
「……着いた……」
「……ここが、約束の地(オアシス)……」
自動ドアの前に立ったのは、カイト農場から命からがら逃げ出してきた女性陣だった。
創造神ルチアナ、魔王ラスティア、風紀委員長リベラ、不死鳥フレア、アイドル・リーザ、そしてオーナー・ルナ。
全員、髪はボサボサ、足取りは生まれたての子鹿のようにプルプルと震えている。
まるで敗残兵のような一行だが、その目は「座りたい」という執念だけで燃えていた。
ウィィィィン……。
自動ドアが開く。
「いらっしゃいませぇ~。デモンズ・ガストへようこそぉ~」
気だるげな声と共に、冷房の冷気がフワッと顔に当たった。
「「「あぁぁぁ……涼しいぃぃぃ……!!」」」
全員がその場で崩れ落ちそうになった。
デュークのブレスで焼かれた肌に、人工的な冷気が染み渡る。これぞ文明の利器。
「……何名様ですかぁ?」
現れたのは、ボンテージ風の制服を着たサキュバスの店員だった。
尻尾をパタパタさせながら、ガムを噛んでいる。接客態度は極めて「塩対応」だ。
「……6名よ」
ルチアナが、カウンターに手をついて身体を支えながら言った。
「できれば、奥の……ドリンクバーに近いボックス席をお願い。……絶対に、動きたくないの」
「はいはい、6名様ご案内~。禁煙席でいいですかぁ?」
サキュバス店員は、客が「神」だろうが「魔王」だろうが気にしない。彼女にとって重要なのは、シフトが終わる時間だけだ。
◇
「失礼しまぁす。お冷とおしぼりでぇす」
案内されたのは、ふかふかの赤いソファ席だった。
ドサッ、ドサッ。
女性陣が吸い込まれるようにソファに沈み込む。
「……はふぅ。お尻が……お尻が守られているわ……」
ラスティアが涙ぐむ。
さっきまで砂利道でスクワットをさせられていた臀部が、ベルベットの感触に癒やされていく。
「……ご注文はお決まりですかぁ?」
店員がハンディ(注文端末)を構える。
さあ、戦いの始まりだ。
彼女たちはカイト農場から着の身着のままで逃げてきた。所持金は少ない。
だが、時間は無限にある。
ルチアナがメニュー表をバサッと広げ、キリッとした顔で宣言した。
「『プレミアム・ドリンクバーセット』。……人数分で」
「……お食事は?」
「いらないわ。……あ、ポテトだけ一つ頂戴。『山盛りマグマポテト(Lサイズ)』を」
「以上で?」
「以上よ」
チッ。
サキュバス店員の舌打ちが聞こえた気がした。
客単価の低い、最も嫌われるタイプの注文だ。
「……かしこまりましたぁ。ドリンクバーはあちらになりまぁす」
店員が去っていくと、リベラが恐縮しながら小声で言った。
「ルチアナ様……さすがに申し訳なくないですの? 6人で席を占領して、ドリンクバーだけなんて」
「何言ってるのよリベラ」
ルチアナは、おしぼりで顔を拭きながら、ふてぶてしく笑った。
「私、神よ? 言わば『お客様は神様』の語源よ? 私が座っているだけで、この店のご利益になるんだから感謝してほしいくらいだわ」
「その理屈は人間界では通じませんわ……」
「それにね」
ルナがストローを弄りながら補足した。
「ここは『天魔窟』ですよぉ。私、ここのオーナーですからぁ。文句は言わせませんよぉ」
「権力の私物化……!」
リベラは頭を抱えた。
だが、もう後戻りはできない。
彼女たちは、デュークの筋肉地獄から逃れるため、このファミレスという砦に立て籠もることを選んだのだ。
「さあ、行くわよ皆!」
ルチアナが号令をかける。
「まずは一杯目……『メロンソーダ』で乾杯よ! 朝まで粘るわよ!」
「「「おー!!」」」
こうして、伝説の「12時間耐久女子会」の火蓋が切って落とされた。
外ではポチが「俺のポテトまだか……」と駐車場で待機している中、店内では、神々による終わらないお喋りが始まろうとしていた。
天魔窟のネオン街の一角に、その店はあった。
赤と黒の看板に、蝙蝠(コウモリ)のマーク。
24時間営業の魔界ファミリーレストラン、『デモンズ・ガスト』である。
「……着いた……」
「……ここが、約束の地(オアシス)……」
自動ドアの前に立ったのは、カイト農場から命からがら逃げ出してきた女性陣だった。
創造神ルチアナ、魔王ラスティア、風紀委員長リベラ、不死鳥フレア、アイドル・リーザ、そしてオーナー・ルナ。
全員、髪はボサボサ、足取りは生まれたての子鹿のようにプルプルと震えている。
まるで敗残兵のような一行だが、その目は「座りたい」という執念だけで燃えていた。
ウィィィィン……。
自動ドアが開く。
「いらっしゃいませぇ~。デモンズ・ガストへようこそぉ~」
気だるげな声と共に、冷房の冷気がフワッと顔に当たった。
「「「あぁぁぁ……涼しいぃぃぃ……!!」」」
全員がその場で崩れ落ちそうになった。
デュークのブレスで焼かれた肌に、人工的な冷気が染み渡る。これぞ文明の利器。
「……何名様ですかぁ?」
現れたのは、ボンテージ風の制服を着たサキュバスの店員だった。
尻尾をパタパタさせながら、ガムを噛んでいる。接客態度は極めて「塩対応」だ。
「……6名よ」
ルチアナが、カウンターに手をついて身体を支えながら言った。
「できれば、奥の……ドリンクバーに近いボックス席をお願い。……絶対に、動きたくないの」
「はいはい、6名様ご案内~。禁煙席でいいですかぁ?」
サキュバス店員は、客が「神」だろうが「魔王」だろうが気にしない。彼女にとって重要なのは、シフトが終わる時間だけだ。
◇
「失礼しまぁす。お冷とおしぼりでぇす」
案内されたのは、ふかふかの赤いソファ席だった。
ドサッ、ドサッ。
女性陣が吸い込まれるようにソファに沈み込む。
「……はふぅ。お尻が……お尻が守られているわ……」
ラスティアが涙ぐむ。
さっきまで砂利道でスクワットをさせられていた臀部が、ベルベットの感触に癒やされていく。
「……ご注文はお決まりですかぁ?」
店員がハンディ(注文端末)を構える。
さあ、戦いの始まりだ。
彼女たちはカイト農場から着の身着のままで逃げてきた。所持金は少ない。
だが、時間は無限にある。
ルチアナがメニュー表をバサッと広げ、キリッとした顔で宣言した。
「『プレミアム・ドリンクバーセット』。……人数分で」
「……お食事は?」
「いらないわ。……あ、ポテトだけ一つ頂戴。『山盛りマグマポテト(Lサイズ)』を」
「以上で?」
「以上よ」
チッ。
サキュバス店員の舌打ちが聞こえた気がした。
客単価の低い、最も嫌われるタイプの注文だ。
「……かしこまりましたぁ。ドリンクバーはあちらになりまぁす」
店員が去っていくと、リベラが恐縮しながら小声で言った。
「ルチアナ様……さすがに申し訳なくないですの? 6人で席を占領して、ドリンクバーだけなんて」
「何言ってるのよリベラ」
ルチアナは、おしぼりで顔を拭きながら、ふてぶてしく笑った。
「私、神よ? 言わば『お客様は神様』の語源よ? 私が座っているだけで、この店のご利益になるんだから感謝してほしいくらいだわ」
「その理屈は人間界では通じませんわ……」
「それにね」
ルナがストローを弄りながら補足した。
「ここは『天魔窟』ですよぉ。私、ここのオーナーですからぁ。文句は言わせませんよぉ」
「権力の私物化……!」
リベラは頭を抱えた。
だが、もう後戻りはできない。
彼女たちは、デュークの筋肉地獄から逃れるため、このファミレスという砦に立て籠もることを選んだのだ。
「さあ、行くわよ皆!」
ルチアナが号令をかける。
「まずは一杯目……『メロンソーダ』で乾杯よ! 朝まで粘るわよ!」
「「「おー!!」」」
こうして、伝説の「12時間耐久女子会」の火蓋が切って落とされた。
外ではポチが「俺のポテトまだか……」と駐車場で待機している中、店内では、神々による終わらないお喋りが始まろうとしていた。
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