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第十六章 月兎の初陣と、鬼神の深夜食堂
EP 7
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【開店】BAR『龍魔呂』の夜
「龍魔呂さーーん!」
リザードマンを撃退し、意気揚々と農場へ戻ってきたキャルル。
すると、農場の離れにある小さなログハウスの前で、腕組みをした龍魔呂が待っていた。
「おかえり。……派手にやったな」
「は、はいっ! 敵は全滅させました! カイトさんの野菜には指一本触れさせていません!」
キャルルは泥だらけの顔で、尻尾をブンブン振る犬のように報告した。
龍魔呂はふっと口元を緩め、彼女の肩にタオルを投げ渡した。
「ああ、見ていたぞ。……あの雷撃、見事だった」
「へ……? 見ててくれたんですか!?」
「厨房の窓からな。……よく守りきった」
龍魔呂の低い声が、夜風に乗って鼓膜を揺らす。
キャルルはタオルに顔を埋め、感極まって昇天しかけた。
(み、見ててくれた……! しかも褒められた……!)
「ついてこい。……褒美に、何か食わせてやる」
龍魔呂が顎でログハウスを示した。
その扉には、小さく『BAR 龍魔呂』と書かれた木の看板が掛かっている。
「えっ? ほ、褒美? ……これって、お食事デート!?」
キャルルの心臓が早鐘を打つ。
彼女は慌てて安全靴の土を落とし、髪を整えてから、恐る恐る扉を開けた。
◇
カランコロン……♪
扉を開けた瞬間、そこは別世界だった。
農場の牧歌的な雰囲気とは一線を画す、洗練された大人の空間。
ダウンライトの薄暗い照明。
棚にずらりと並んだ世界各国の銘酒。
そして、静かに流れるジャズの調べ。
「す、すごい……。こんな場所があったなんて……」
キャルルが呆然としていると、カウンターの奥に入った龍魔呂が、手際よく法被(はっぴ)からバーテンダー風のベスト姿に着替えていた。
和と洋が融合した、ダンディな男の装い。
「座れ。……腹は減っているか?」
「は、はいっ! ペコペコです!」
キャルルはカウンター席にちょこんと座った。
目の前には、鬼神ではなく「マスター」の顔をした龍魔呂がいる。
(か、かっこいい……! 私のために料理を……!)
「おっ、新入りか。いらっしゃい」
と、隣の席から声がかかった。
そこには、スーツ姿のリュウが、ロックグラスを片手にくつろいでいた。
「あれ? リュウさん?」
「ここはな、仕事に疲れた男たちが羽を休める『聖域(サンクチュアリ)』なんだよ」
リュウが氷をカランと揺らす。
彼は昼間の農作業や営業の疲れを、ここの酒と料理で癒やしているらしい。
「龍魔呂サンの飯は、そこらの店とは次元が違うぞ。……今日は何が出るかな」
リュウがニヤリと笑う。
龍魔呂は無言のまま、包丁を取り出した。
その眼光は鋭く、しかし食材を見る目は慈愛に満ちている。
「戦いの後だ。……まずはスタミナと、優しい味が必要だな」
龍魔呂が取り出したのは、新鮮なSランク砂肝と、採れたてのSランク人参。
そして、黄金色に輝く地鶏の卵。
「待っていろ。……最高の夜食を出してやる」
ジュワァァァ……。
フライパンから、ニンニクとオリーブオイルの香ばしい匂いが立ち上る。
キャルルはゴクリと喉を鳴らした。
愛する人が作る手料理。
薄暗い照明。
響くジャズ。
(これって……完全にプロポーズの前哨戦ですよね!?)
勘違い乙女の妄想は止まらない。
だが、これから出てくる料理は、そんな甘い妄想すら吹き飛ばすほどの「暴力的な美味さ」を持っていた。
「龍魔呂さーーん!」
リザードマンを撃退し、意気揚々と農場へ戻ってきたキャルル。
すると、農場の離れにある小さなログハウスの前で、腕組みをした龍魔呂が待っていた。
「おかえり。……派手にやったな」
「は、はいっ! 敵は全滅させました! カイトさんの野菜には指一本触れさせていません!」
キャルルは泥だらけの顔で、尻尾をブンブン振る犬のように報告した。
龍魔呂はふっと口元を緩め、彼女の肩にタオルを投げ渡した。
「ああ、見ていたぞ。……あの雷撃、見事だった」
「へ……? 見ててくれたんですか!?」
「厨房の窓からな。……よく守りきった」
龍魔呂の低い声が、夜風に乗って鼓膜を揺らす。
キャルルはタオルに顔を埋め、感極まって昇天しかけた。
(み、見ててくれた……! しかも褒められた……!)
「ついてこい。……褒美に、何か食わせてやる」
龍魔呂が顎でログハウスを示した。
その扉には、小さく『BAR 龍魔呂』と書かれた木の看板が掛かっている。
「えっ? ほ、褒美? ……これって、お食事デート!?」
キャルルの心臓が早鐘を打つ。
彼女は慌てて安全靴の土を落とし、髪を整えてから、恐る恐る扉を開けた。
◇
カランコロン……♪
扉を開けた瞬間、そこは別世界だった。
農場の牧歌的な雰囲気とは一線を画す、洗練された大人の空間。
ダウンライトの薄暗い照明。
棚にずらりと並んだ世界各国の銘酒。
そして、静かに流れるジャズの調べ。
「す、すごい……。こんな場所があったなんて……」
キャルルが呆然としていると、カウンターの奥に入った龍魔呂が、手際よく法被(はっぴ)からバーテンダー風のベスト姿に着替えていた。
和と洋が融合した、ダンディな男の装い。
「座れ。……腹は減っているか?」
「は、はいっ! ペコペコです!」
キャルルはカウンター席にちょこんと座った。
目の前には、鬼神ではなく「マスター」の顔をした龍魔呂がいる。
(か、かっこいい……! 私のために料理を……!)
「おっ、新入りか。いらっしゃい」
と、隣の席から声がかかった。
そこには、スーツ姿のリュウが、ロックグラスを片手にくつろいでいた。
「あれ? リュウさん?」
「ここはな、仕事に疲れた男たちが羽を休める『聖域(サンクチュアリ)』なんだよ」
リュウが氷をカランと揺らす。
彼は昼間の農作業や営業の疲れを、ここの酒と料理で癒やしているらしい。
「龍魔呂サンの飯は、そこらの店とは次元が違うぞ。……今日は何が出るかな」
リュウがニヤリと笑う。
龍魔呂は無言のまま、包丁を取り出した。
その眼光は鋭く、しかし食材を見る目は慈愛に満ちている。
「戦いの後だ。……まずはスタミナと、優しい味が必要だな」
龍魔呂が取り出したのは、新鮮なSランク砂肝と、採れたてのSランク人参。
そして、黄金色に輝く地鶏の卵。
「待っていろ。……最高の夜食を出してやる」
ジュワァァァ……。
フライパンから、ニンニクとオリーブオイルの香ばしい匂いが立ち上る。
キャルルはゴクリと喉を鳴らした。
愛する人が作る手料理。
薄暗い照明。
響くジャズ。
(これって……完全にプロポーズの前哨戦ですよね!?)
勘違い乙女の妄想は止まらない。
だが、これから出てくる料理は、そんな甘い妄想すら吹き飛ばすほどの「暴力的な美味さ」を持っていた。
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