田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一

文字の大きさ
168 / 180
第十六章 月兎の初陣と、鬼神の深夜食堂

EP 8

しおりを挟む
【飯テロ】絶品! 砂肝のアヒージョと出汁巻き卵
​「お待たせした」
​龍魔呂が、グツグツと音を立てる耐熱陶器(カスエラ)をカウンターに置いた。
立ち上る湯気と共に、ニンニクと鷹の爪、そして芳醇なオリーブオイルの香りが、爆発的に広がる。
​「わぁぁ……!」
​キャルルが目を輝かせた。
一品目は、『Sランク砂肝と人参のアヒージョ』だ。
​「熱いから気をつけろ。……バゲットを浸して食うのが流儀だ」
​「い、いただきます!」
​キャルルはフォークを手に取り、まずはオイルの中で踊る「砂肝」を刺した。
フーフーと息を吹きかけ、口へ運ぶ。
​カリッ、コリッ……!
​「んんっ!? お、美味しいっ!!」
​キャルルの目がまん丸になった。
表面はオイルでカリッと揚がり、中は砂肝特有のコリコリとした弾力。
噛めば噛むほど、肉の旨味とニンニクのパンチが口の中で暴れまわる。
​「そして……私の大好きな人参さん!」
​次は、一口大にカットされた鮮やかなオレンジ色。
パクり。
​ホクッ……ジュワァ……♡
​「あまーーーーいッ!!」
​キャルルがカウンターをバンバン叩いた。
油で煮込まれたカイト農場の人参は、驚くほど甘く、ホクホクとした食感に変わっていた。
​「信じられない……! オイルの塩気とニンニクの刺激が、人参の甘さを極限まで引き立てています! これは永久機関です!」
​「ふっ、分かってるじゃないか」
隣でリュウがニヤリと笑う。
「そこに、バゲットを浸してみな」
​言われた通り、オイルをたっぷり吸わせたバゲットを齧る。
サクッ、ジュワッ。
小麦の香りと旨味オイルの洪なだれ水。
キャルルの脳内で、幸せの鐘が鳴り響いた。
​「んぐ、んぐ……! し、幸せぇぇ……!」
​そこへ、龍魔呂がスッと細長いグラスを差し出した。
​「口直しだ。『キャロット・フィズ』」
​鮮やかなオレンジ色のカクテル。
キャルルが口をつける。
シュワワ……。
炭酸の刺激と共に、フレッシュな人参の香りと、柑橘系の爽やかな酸味が駆け抜ける。
​「うわぁっ! さっぱり! アヒージョの油を一瞬でリセットしてくれます!」
​「計算尽くされてるだろ?」
リュウが得意げだ。
​「さて、次は……少し趣向を変えるぞ」
​龍魔呂が再び厨房に向いた。
今度は四角い銅製の卵焼き器だ。
ジューッという優しい音が響く。
卵液を注ぎ、手首を返して巻く。その所作は、剣の達人のように無駄がなく美しい。
​「へい、お待ち」
​出されたのは、湯気を上げる『黄金出汁巻き卵』。
大根おろしが添えられている。
​「き、綺麗……。まるで宝石箱やぁ……」
​キャルルが箸を入れる。
その瞬間だった。
​ジュワアァァァァ……!
​卵の断面から、閉じ込められていた「お出汁」が滝のように溢れ出したのだ。
​「ええっ!? スープ!? 中からスープが!?」
​「Sランク地鶏の卵と、特製のアゴ出汁を限界まで含ませている。……こいつは飲む卵焼きだ」
​龍魔呂が静かに告げる。
キャルルは震える手で、熱々の卵を口へ放り込んだ。
​フルフルッ、トロォ……。
​「はふっ、はふっ……ん~~~~っ♡」
​噛む必要すらなかった。
舌の上で卵が解け、濃厚な出汁の旨味が五臓六腑に染み渡る。
優しい。
激戦で疲れた身体を、内側から癒やしてくれる慈愛の味だ。
​「……龍魔呂さん」
​キャルルは空になった皿を見つめ、潤んだ瞳で龍魔呂を見上げた。
​「私……決めました」
​「ん?」
​龍魔呂がグラスを拭く手を止める。
キャルルは真剣な眼差しで、爆弾発言をした。
​「私、このお店に就職します! いえ、むしろ永久就職(結婚)させてください! 私の胃袋は、もう貴方なしでは生きていけません!」
​「……そうか。だが求人は出してないぞ」
​龍魔呂は困ったように眉を下げ、しかし少しだけ嬉しそうに、サービスのアイスクリームを出してくれた。
​最高の料理と、最高の男。
キャルルの心と胃袋は、完全に陥落した。
……だが、この「抜け駆け」が、翌日とんでもない修羅場を招くことを、今の彼女は知る由もなかった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

異世界の底辺村で静かに暮らしたいだけなのに、気づけば世界最強の勇者だった件

fuwamofu
ファンタジー
「村の畑を守りたいだけなんだが…?」──勇者召喚に巻き込まれて異世界に来た青年レオン。しかし才能を測る水晶が“無能”を示したため、勇者パーティから追放される。失意のまま辺境の小村でのんびりスローライフを目指すが、土を耕せば豊穣の奇跡、狩りに出れば魔王級を一撃、助けた少女たちは次々と彼に恋をする。 本人はただ平穏に暮らしたいだけなのに、気づけば国を救い、人々に「救世の英雄」と讃えられていた──。 ざまぁ、逆転、ハーレム、爽快、全部乗せ! 無自覚最強スローライフ・ファンタジー開幕!

もふもふ精霊に愛された召喚士、実はエルフだった!? ~精霊の森の生き残りはやがて英雄となる~

しゃぼてん
ファンタジー
すぐに精霊と仲良しになれる孤児のイーアは、召喚術の才能を最強の召喚士に認められ、帝国の名門魔術学校グランドールに入学した。召喚術だけはすごいけどほかはだめ、そんなイーアは、万能天才少年な幼なじみや、いいところも悪いところもある同級生たちといっしょに学園生活を楽しんでいた。だけど、なぜかいつもイーアのことを見守る黄金色の霊獣がいる。  実はイーアは帝国の魔導士に滅ぼされた精霊とともに生きる民の生き残りだった。記憶がもどったイーアは、故郷を滅ぼした白装束の魔導士たちの正体、そして、学校の地下にかくされた秘密を追う。その結果、自分が世界を大きく変えることになるとは知らずに。 (ゆっくり成長。召喚獣は多いけど、バトルは少なめ、10万字に1回くらい戦闘しますが、主人公が強くなるのはだいぶ後です) 小説家になろう、カクヨムにも投稿しました。

『推しの「貧乏騎士」を養うつもりでしたが、正体は「王弟殿下」だったようです。

とびぃ
ファンタジー
応援ありがとうございます。 本作は多くの方にお届けする準備のため、2月6日(金)で、一旦、非公開といたします。 今後の展開については、是非、各電子書籍ストアなどでチェックいただければ幸いです。 短い間でしたが、たくさんのハートとお気に入りを ありがとうございました。 〜「管理人のふり」をして別荘に連れ込まれましたが、過保護な溺愛が止まりません〜 【作品紹介】社畜根性が染み付いた悪役令嬢、推しの『モブ騎士』を養うつもりが、国の裏支配者に溺愛されていました!? ◆あらすじ 「貴方を、私が養います!」  前世はブラック企業の社畜、現世は借金のカタに「豚侯爵」へ売られそうになっていた伯爵令嬢エリーゼ。  絶望的な状況の中、彼女が起死回生の一手として選んだのは、夜会で誰の目にも留まらずに立っていた「推し」の『背景(モブ)騎士』への求婚だった!  実家を捨て、身分を捨て、愛する推しを支える慎ましいスローライフを夢見て駆け落ちしたエリーゼ。  しかし、彼女は知らなかった。  自分が拾ったその騎士の正体が、実は冷酷無比な『影の宰相』にして、国一番の権力者である王弟殿下レオンハルトその人であることを――! ◆見どころポイント ① 勘違いが止まらない!「福利厚生」という名の規格外な溺愛  逃避行の馬車は王族仕様の超高級車、新居は湖畔の豪華別荘、家事は精鋭部隊(暗殺者)が神速で完遂!  あまりの厚遇に「近衛騎士団の福利厚生ってすごいのね!」と斜め上の解釈で感動する元社畜のエリーゼと、そんな彼女を「俺の全権力を使って守り抜く」と誓うレオンハルト様の、噛み合っているようで全く噛み合っていない甘々な新婚(?)生活は必見です。 ② 伝説の魔獣も「わんこ」扱い!?  庭で拾った泥だらけの毛玉を「お洗濯(浄化魔法)」したら、出てきたのは伝説の終焉魔獣フェンリル!  「ポチ」と名付けられ、エリーゼの膝の上を巡ってレオンハルト様と大人気ないマウント合戦を繰り広げる最強のペット(?)との癒やしの日々も見逃せません。 ③ 迫りくる追手は、玄関先で「お掃除(物理)」  エリーゼを連れ戻そうと迫る実家の魔手や悪徳侯爵の刺客たち。  しかし、彼らがエリーゼの目に触れることはありません。なぜなら、最強の執事と「お掃除スタッフ」たちが、文字通り塵一つ残さず「処理」してしまうから!  本人が鼻歌交じりにお菓子を焼いている裏で、敵が完膚なきまでに叩き潰される爽快な「ざまぁ」展開をお楽しみください。 ◆こんな方におすすめ! すれ違い勘違いラブコメが好き! ハイスペックなヒーローによる重すぎる溺愛を浴びたい! 無自覚な主人公が、周りを巻き込んで幸せになる話が読みたい! 悪役たちがコテンパンにされるスカッとする展開が好き!

転生したら追放されたけど、無自覚で世界最強の聖魔導士になっていた件〜気ままに旅したら美女たちに囲まれていた〜

にゃ-さん
ファンタジー
無能と蔑まれ、勇者パーティから追放された青年リオン。だがその正体は、神々の加護を複数受けた唯一の存在だった——。 聖属性と魔属性の両方を操る“聖魔導士”として、彼は無自覚に世界最強の存在へと成り上がっていく。 行く先々で起こる騒動を、本人はただ助けただけのつもり。しかし気づけば国を救い、王女や騎士、魔族の姫まで彼に惹かれていく。 裏切った仲間たちが後悔の涙を流す頃、本人は今日ものんびり旅の途中——。 無自覚最強×スローライフ×ざまぁ×ハーレム。王道異世界系最強譚、ここに開幕!

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

追放された雑用係、実は神々の隠し子でした~無自覚に世界最強で、気づいたら女神と姫と勇者パーティがハーレム化していた件~

fuwamofu
ファンタジー
異世界ギルドの「雑用係」としてコキ使われていた青年レオン。だが彼は、自分が神々の血を継ぐ存在だとは知らなかった。追放をきっかけに本来の力が目覚め、魔王軍・帝国・勇者をも圧倒する無自覚最強へと覚醒する。 皮肉にも、かつて見下していた仲間たちは再び彼に跪き、女神、聖女、王女までが彼の味方に!? 誰もが予想しなかった「ざまぁ」の嵐が、今、幕を開ける——!

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

転生辺境の雑用兵、知らぬ間に世界最強になっていた件 〜追放されたけど美女たちに囲まれて安寧生活〜

eringi
ファンタジー
辺境軍の雑用兵として転生した青年・レオン。異世界に転生したのに、剣も魔法も地味でパッとしない日々。ところが彼の“地味な努力”が、実は世界の理をゆるがすほどの能力だと気づく者が次々と現れる。貴族令嬢、魔族の姫、神官少女──気づけばハーレム状態に。追放された元仲間が破滅していく流れの中、本人だけは「俺、そんな強いかな?」と首をかしげる。無自覚最強×ざまぁ×追放後スローライフ×英雄伝説が交錯する、異世界逆転ストーリー。

処理中です...