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第十七章 金塊、、そしてヤニ、、海鮮鍋へ
EP 2
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漬物石を巡る仁義なき戦い
「非常事態よぉぉぉッ!! 全員集合ぉぉぉッ!!」
早朝のシェアハウス・リビングに、リーザの絶叫が木霊した。
まだ眠い目をこすりながら、あるいは朝の優雅なコーヒータイムを過ごしていた住人たちが、何事かと顔を上げる。
ジャージ姿でポテチを齧る創造神、ルチアナ。
最新のコスメ雑誌を熟読する魔王、ラスティア。
自分の羽の手入れに余念がない不死鳥、フレア。
「……何よ朝から。私の肌のゴールデンタイムを邪魔しないでくれる?」
ルチアナが不機嫌そうに睨むが、今のリーザには神の威光など通じない。彼女は血走った目で、窓の外の農場を指差した。
「肌とか言ってる場合じゃないわよルチアナ! 今すぐ外を見て! カイトが! 私たちの『夢』と『希望』と『欲望』を、白菜と一緒に塩漬けにしてるのよぉ!!」
「ハァ? 意味が分からな……って、ええええッ!?」
窓から覗き込んだルチアナが、ポテチを落として硬直する。
続いてラスティア、フレアも窓辺に殺到し、そして息を呑んだ。
そこには、納屋の軒先で楽しそうに鼻歌を歌うカイトの姿。
そして、その手元の樽の上に鎮座する、眩いばかりの巨大な金塊。
「あ、あれは……!!」
「推定20キロ……今の金相場で計算すると……ごくり」
「なんて輝きですの……! 私のコレクションルームに飾るべき至宝!」
三者三様の瞳に、「¥(エン)」マークが浮かび上がる。
リーザが畳み掛けるように叫んだ。
「でしょ!? あの金塊があれば、私の借金完済どころか、ドームツアーだって開催できるのよ! なのにカイトったら、『ちょうどいい重さだから』って漬物石にしてるのよ! 信じられる!?」
その瞬間、リビングに戦慄が走った。
国が買えるほどの財宝を、ただの「重石」として使う。
それは、金欠に喘ぐリーザや、物欲まみれの女神たちに対する、最大級の冒涜だった。
「許せない……! 日本の最高級大吟醸『獺祭』が何千本買えると思ってるのよ!」
「天魔窟のエステサロン、VIPロイヤルコース(全身金粉パック付き)が一生通い放題だわ……!」
ガタッ。
ルチアナとラスティアが同時に立ち上がった。
その背後には、修羅のようなオーラが立ち昇っている。
「行くわよ、みんな。あの哀れな金塊を、私たちの手で『正しく』使ってあげるのよ」
「ええ。カイトには、あの石の芸術的価値(と換金率)は分からないでしょうからね」
「そうですわ! 私が磨いて差し上げますわ!」
ここに、『漬物石奪還・女子連合軍』が結成された。
彼女たちは鼻息荒く、カイトのいる納屋へと進軍を開始する。
◇ ◇ ◇
「ふふふ~ん♪ 美味しくなぁれ、美味しくなぁれ♪」
カイトは樽の中の白菜に愛を囁いていた。
Sランク白菜は、金塊の重みでいい具合に水分が抜け、極上の浅漬けへと進化しつつある。
「カイト! ちょっと話があるの!」
そこへ、ズカズカとルチアナたちが現れた。
カイトは屈託のない笑顔で振り返る。
「おや、みんな揃ってどうしたの? 朝ごはん? もうすぐできるよ」
「ご飯の話じゃないわよ! その……石のことよ!」
ルチアナは指を突きつけた。
「あんたねぇ、それを何だと思ってるの? それは神である私が創造した(ことになっている)神聖な鉱石よ! 漬物なんかに乗せていい代物じゃないわ!」
「え? そうなの?」
カイトはきょとんとして、金塊をポンポンと叩いた。
「でもルチアナ、これすごいんだよ。底の窪みが樽の蓋にジャストフィットしてて、重さも均一にかかるんだ。こんなに優秀な漬物石、初めてだよ」
「だから石じゃないって言ってるでしょ! それを私に渡しなさい! 地球から最高級の酒を取り寄せるための……い、いや、研究のために必要なのよ!」
ルチアナが手を伸ばそうとするが、カイトはひょいと体をずらしてガードした。
「だめだよ」
その声は、普段のほのぼのとしたトーンとは違い、どこか芯の通った「生産者の威厳」を帯びていた。
「え?」
「今動かしたら、空気が入っちゃうじゃないか」
カイトは真剣な眼差しで説いた。
「漬物はね、最初の数時間の加圧が命なんだ。ここで重石を外したら、塩の浸透圧が狂って、味がボケちゃうんだよ。Sランク白菜に対して、そんな失礼なことできないよね?」
「ぐぬっ……!」
「味……味と言われては……」
ルチアナとラスティアがたじろぐ。
彼女たちもまた、カイトの料理の虜。
「味が落ちる」という言葉は、呪文のように彼女たちの動きを封じた。
そこで、フレアがお嬢様口調で切り込む。
「で、ですがカイト様! 代わりの石なら、わたくしが持ってきますわ! だからその輝く石をわたくしに……!」
「うーん、でもフレアちゃん。この金塊、ほのかに温かいんだよね。たぶん魔力を含んでると思うんだけど、この微熱が発酵を促進してる気がするんだ」
カイトは愛おしそうに金塊を撫でた。
「この石のおかげで、今日の夕飯の『豚バラと白菜のミルフィーユ鍋』は、過去最高傑作になる予感がするよ」
「「「っ!?」」」
ミルフィーユ鍋。
その単語が出た瞬間、連合軍の連携が崩れた。
豚バラの脂と、とろとろになった白菜。それがSランク野菜とSランク漬物で作られるとなれば……。
(……金塊は欲しい。でも、今夜の鍋が不味くなるのは嫌!)
ラスティアがゴクリと喉を鳴らす。
リーザが涙目で訴える。
「で、でもぉ! 夕飯の後ならいいのよね!? 漬け終わったら、その石くれるのよね!?」
「えー? どうしようかなぁ。これ、形がいいから『ずっと』使いたいんだけど……」
カイトの天然発言に、女性陣が膝から崩れ落ちる。
数億円の漬物石。恒久使用宣言。
「ま、まあ、とりあえず夕飯まで待っててよ。最高の漬物をご馳走するからさ!」
爽やかな笑顔でトドメを刺され、女子連合軍は敗走を余儀なくされた。
畑の真ん中で、リーザの叫びだけが虚しく響く。
「私の借金返済計画がぁぁぁ! 白菜に負けたぁぁぁ!!」
「非常事態よぉぉぉッ!! 全員集合ぉぉぉッ!!」
早朝のシェアハウス・リビングに、リーザの絶叫が木霊した。
まだ眠い目をこすりながら、あるいは朝の優雅なコーヒータイムを過ごしていた住人たちが、何事かと顔を上げる。
ジャージ姿でポテチを齧る創造神、ルチアナ。
最新のコスメ雑誌を熟読する魔王、ラスティア。
自分の羽の手入れに余念がない不死鳥、フレア。
「……何よ朝から。私の肌のゴールデンタイムを邪魔しないでくれる?」
ルチアナが不機嫌そうに睨むが、今のリーザには神の威光など通じない。彼女は血走った目で、窓の外の農場を指差した。
「肌とか言ってる場合じゃないわよルチアナ! 今すぐ外を見て! カイトが! 私たちの『夢』と『希望』と『欲望』を、白菜と一緒に塩漬けにしてるのよぉ!!」
「ハァ? 意味が分からな……って、ええええッ!?」
窓から覗き込んだルチアナが、ポテチを落として硬直する。
続いてラスティア、フレアも窓辺に殺到し、そして息を呑んだ。
そこには、納屋の軒先で楽しそうに鼻歌を歌うカイトの姿。
そして、その手元の樽の上に鎮座する、眩いばかりの巨大な金塊。
「あ、あれは……!!」
「推定20キロ……今の金相場で計算すると……ごくり」
「なんて輝きですの……! 私のコレクションルームに飾るべき至宝!」
三者三様の瞳に、「¥(エン)」マークが浮かび上がる。
リーザが畳み掛けるように叫んだ。
「でしょ!? あの金塊があれば、私の借金完済どころか、ドームツアーだって開催できるのよ! なのにカイトったら、『ちょうどいい重さだから』って漬物石にしてるのよ! 信じられる!?」
その瞬間、リビングに戦慄が走った。
国が買えるほどの財宝を、ただの「重石」として使う。
それは、金欠に喘ぐリーザや、物欲まみれの女神たちに対する、最大級の冒涜だった。
「許せない……! 日本の最高級大吟醸『獺祭』が何千本買えると思ってるのよ!」
「天魔窟のエステサロン、VIPロイヤルコース(全身金粉パック付き)が一生通い放題だわ……!」
ガタッ。
ルチアナとラスティアが同時に立ち上がった。
その背後には、修羅のようなオーラが立ち昇っている。
「行くわよ、みんな。あの哀れな金塊を、私たちの手で『正しく』使ってあげるのよ」
「ええ。カイトには、あの石の芸術的価値(と換金率)は分からないでしょうからね」
「そうですわ! 私が磨いて差し上げますわ!」
ここに、『漬物石奪還・女子連合軍』が結成された。
彼女たちは鼻息荒く、カイトのいる納屋へと進軍を開始する。
◇ ◇ ◇
「ふふふ~ん♪ 美味しくなぁれ、美味しくなぁれ♪」
カイトは樽の中の白菜に愛を囁いていた。
Sランク白菜は、金塊の重みでいい具合に水分が抜け、極上の浅漬けへと進化しつつある。
「カイト! ちょっと話があるの!」
そこへ、ズカズカとルチアナたちが現れた。
カイトは屈託のない笑顔で振り返る。
「おや、みんな揃ってどうしたの? 朝ごはん? もうすぐできるよ」
「ご飯の話じゃないわよ! その……石のことよ!」
ルチアナは指を突きつけた。
「あんたねぇ、それを何だと思ってるの? それは神である私が創造した(ことになっている)神聖な鉱石よ! 漬物なんかに乗せていい代物じゃないわ!」
「え? そうなの?」
カイトはきょとんとして、金塊をポンポンと叩いた。
「でもルチアナ、これすごいんだよ。底の窪みが樽の蓋にジャストフィットしてて、重さも均一にかかるんだ。こんなに優秀な漬物石、初めてだよ」
「だから石じゃないって言ってるでしょ! それを私に渡しなさい! 地球から最高級の酒を取り寄せるための……い、いや、研究のために必要なのよ!」
ルチアナが手を伸ばそうとするが、カイトはひょいと体をずらしてガードした。
「だめだよ」
その声は、普段のほのぼのとしたトーンとは違い、どこか芯の通った「生産者の威厳」を帯びていた。
「え?」
「今動かしたら、空気が入っちゃうじゃないか」
カイトは真剣な眼差しで説いた。
「漬物はね、最初の数時間の加圧が命なんだ。ここで重石を外したら、塩の浸透圧が狂って、味がボケちゃうんだよ。Sランク白菜に対して、そんな失礼なことできないよね?」
「ぐぬっ……!」
「味……味と言われては……」
ルチアナとラスティアがたじろぐ。
彼女たちもまた、カイトの料理の虜。
「味が落ちる」という言葉は、呪文のように彼女たちの動きを封じた。
そこで、フレアがお嬢様口調で切り込む。
「で、ですがカイト様! 代わりの石なら、わたくしが持ってきますわ! だからその輝く石をわたくしに……!」
「うーん、でもフレアちゃん。この金塊、ほのかに温かいんだよね。たぶん魔力を含んでると思うんだけど、この微熱が発酵を促進してる気がするんだ」
カイトは愛おしそうに金塊を撫でた。
「この石のおかげで、今日の夕飯の『豚バラと白菜のミルフィーユ鍋』は、過去最高傑作になる予感がするよ」
「「「っ!?」」」
ミルフィーユ鍋。
その単語が出た瞬間、連合軍の連携が崩れた。
豚バラの脂と、とろとろになった白菜。それがSランク野菜とSランク漬物で作られるとなれば……。
(……金塊は欲しい。でも、今夜の鍋が不味くなるのは嫌!)
ラスティアがゴクリと喉を鳴らす。
リーザが涙目で訴える。
「で、でもぉ! 夕飯の後ならいいのよね!? 漬け終わったら、その石くれるのよね!?」
「えー? どうしようかなぁ。これ、形がいいから『ずっと』使いたいんだけど……」
カイトの天然発言に、女性陣が膝から崩れ落ちる。
数億円の漬物石。恒久使用宣言。
「ま、まあ、とりあえず夕飯まで待っててよ。最高の漬物をご馳走するからさ!」
爽やかな笑顔でトドメを刺され、女子連合軍は敗走を余儀なくされた。
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