田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一

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第十七章 金塊、、そしてヤニ、、海鮮鍋へ

EP 3

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借金アイドル・リーザと、小遣い制勇者・リュウの悲しき同盟
​ 深夜の農場。
 草木も眠る丑三つ時、納屋の裏手に二つの影が蠢いていた。
​ 一人は、ボロボロのジャージを着たアイドル、リーザ。
 もう一人は、疲れ切った顔の勇者、リュウ。
​「……リュウさん。状況確認を」
「ああ。妻(セーラ)の財布の紐は、ミスリルの鎖より硬い。今月の俺の小遣いは……ゼロだ」
​ リュウが震える手でタバコの空箱『メビウス』を握り潰した。
​「パチンコはおろか、明日の一服すらままならない。かつて魔神王を倒したこの俺が、だぞ?」
「奇遇ね。私もよ。今月の家賃とボイトレ代、それに新衣装のローン……計算したら、あと銅貨3枚しか残らないわ」
​ リーザが虚ろな目で遠くを見る。
​「このままじゃ、私はアイドルじゃなくて『歌うホームレス』よ。……やるしかないわね」
「ああ。ターゲットは、あの漬物石(数億円)だ」
​ 二人の利害は完全に一致していた。
 カイトの漬物石を奪取し、換金し、山分けする。
 これは犯罪ではない。世直し(と自己救済)である。
​「作戦名は『オペレーション・ローリング・ストーン』。行くぞ」
​ ◇ ◇ ◇
​ 二人は匍匐(ほふく)前進で納屋へと接近する。
 BGMは脳内で再生されるスパイ映画のテーマ曲(※口で「ダダン、ダ、ダダン♪」と言っている)。
​ 納屋の前まで到達したリュウが、懐から「何か」を取り出した。
​「見ろ、リーザ。俺のユニークスキル【ウェポンズマスター】の無駄遣いだ」
​ リュウが差し出したのは、カイトの金塊とサイズも形状も瓜二つの「ただの石」だった。
 表面には金色のペンキが塗られ、暗闇では見分けがつかないほどの完成度だ。
​「す、すごぉい! さすが器用貧乏!」
「褒め言葉として受け取っておく。……俺の亜空間収納を使えば、一瞬で『本物』と『偽物』を入れ替えられる。カイトが気づく頃には、俺たちは換金所(ゴルド商会)で祝杯をあげているはずだ」
「完璧ね! さあ、やりましょ!」
​ 勝利を確信した二人は、漬物樽へと忍び寄る。
 樽の上には、月明かりを浴びて鈍く光る黄金の塊。
 手が届く距離まであと数メートル。
​ だが。
 彼らの前には、世界最強のセキュリティシステムが設置されていた。
​「……くぅ~ん……むにゃむにゃ……」
​ 樽の横で、気持ちよさそうに腹を出して眠る犬が一匹。
 カイトの愛犬ポチこと、始祖竜(幼体)である。
​「ひっ……! ポ、ポチがいるわよ!?」
「しっ! 声がデカい! ……大丈夫だ、あいつは一度寝たら起きない。カイト譲りの図太い神経をしてる」
​ リュウは冷や汗を拭いながら、慎重に、慎重に足を運ぶ。
 ポチの寝息に合わせて動く、プロの所作だ。
​ ズリッ……ズリッ……。
 樽の前へ到着。
 ポチとの距離、わずか30センチ。
​(よし……今だ!)
​ リュウがスキルを発動しようと手をかざす。
 リーザが唾を飲み込む。
 数億円が、手に入る。
 その瞬間。
​「……肉ぅ……」
​ ポチが寝言を漏らした。
​「!?」
「……骨付き肉ぅ……よこせぇ……!!」
​ ドクンッ。
 ポチの体から、尋常ではない魔力が溢れ出した。
 夢の中で獲物を追っているのだろうか。可愛らしい口元がカッと開き、その奥で極小の、しかし圧縮されたエネルギーが輝く。
​「ま、まずい! 退避ッ!!」
「いやぁぁぁぁ!!」
​ リュウがリーザの首根っこを掴んで横に飛んだ、コンマ1秒後。
​ ズドォォォォォンッ!!
​ ポチの口から放たれた「寝言ブレス(水爆級)」が、二人がいた空間を焼き尽くし、納屋の壁を貫通して夜空へと消えていった。
 農場全体が昼間のように明るくなり、衝撃波でビニールハウスが揺れる。
​ ◇ ◇ ◇
​「……けほっ、けほっ」
​ 黒煙が立ち込める中。
 アフロヘアーのようにチリチリに焼けたリュウとリーザが、煤(すす)だらけの顔で体を起こした。
​「……死ぬかと思った……」
「私の……自慢の鱗(肌)が……焼き魚になっちゃう……」
​ 命からがら回避したものの、作戦は完全なる失敗。
 騒ぎを聞きつけた足音が、母屋の方から近づいてくる。
​「こらーっ! 誰だ夜中に花火なんかしてるのは!」
​ カイトの声だ。
 それに続いて、さらに恐ろしい声が響く。
​「リュウ? ……あなた、こんな夜中に何をしてるのかしら?」
​ 背筋が凍るような冷たい声。
 仁王立ちする妻、セーラだった。
 彼女の手には「お仕置き用のハリセン」が握られている。
​「あ、いや、セーラ、これは……その、夜の散歩というか……」
「散歩で消し炭になる馬鹿がどこにいるの! 今月のお小遣い、さらに50%カットです!!」
「そ、そんなぁぁぁ!!」
​ 絶望するリュウ。
 そして、その横でリーザもまた、カイトに捕獲されていた。
​「リーザちゃんも怪我はない? ……あ、そうだ。壊れた納屋の壁の修理代、リーザちゃんのツケにしておくね」
「いやぁぁぁぁ! 借金が増えたぁぁぁ!!」
​ 夜空に二人の悲鳴が木霊する。
 その騒ぎの中心で、ポチだけが「……むにゃ? お肉焼けた?」と呑気に欠伸をするのだった。
​ 金塊への道は、あまりにも遠く、険しい。
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