田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一

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第十七章 金塊、、そしてヤニ、、海鮮鍋へ

EP 4

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競馬狂いの魔族ルーベンス、一世一代の大博打
​「……ふぅ。世知辛い世の中になったものだ」
​ 農場の片隅にあるベンチで、魔族の騎士団長クラスの実力者、ルーベンスは紫煙を吐き出した。
 彼が愛飲するのは『マルボロ・メンソール(緑)』。
 クールな彼に似合う銘柄だが、その表情は渋い。
​「タバコ税の増税……さらに円安(ゴールド安)の影響で、一箱の値段がランチ一食分とはな。これでは競馬(ジオ・リザードレース)の軍資金が捻出できん」
​ 彼は手元の競馬新聞『日刊トカゲ』を握りしめた。
 今週末はG1レース『有魔記念』。
 彼には絶対の自信がある大穴(万馬券)の予想があった。だが、肝心の種銭がない。
​ 彼の視線が、納屋の軒先に突き刺さる。
 そこには、相変わらずカイトが漬物石として使っている**「数億円の金塊」**がある。
​「……盗めばポチに焼かれる。ならば、合法的に手に入れるまで」
​ ルーベンスは立ち上がり、シェアハウスの1階へと向かった。
 そこには、この農場の頭脳が存在する。
​ ◇ ◇ ◇
​「いらっしゃいませ、ルーベンスさん。法律相談ですか? 30分で銀貨5枚になりますが」
​ 『リベラ法律事務所』の看板を掲げた部屋で、眼鏡をかけた美女、リベラが紅茶を淹れていた。
 ゴルド商会の令嬢にして、無敗の弁護士だ。
​「リベラ君。単刀直入に聞くが……あの漬物石を、カイトから合法的に譲り受ける方法はないか?」
「ありません(即答)」
​ リベラはにっこりと微笑んだ。
​「カイトさんにとって、あの金塊は『優秀な漬物石』です。所有権の移転には、相応の対価が必要です」
「対価、か。金なら無いぞ」
「お金じゃありません。カイトさんの価値観(ニーズ)を理解するのです。彼が金塊以上に欲しがるもの……それは何だと思いますか?」
​ ルーベンスは腕を組み、カイトの行動パターンを分析する。
 野菜。土。肥料。……そして。
​「……『種』か」
「正解です。それも、ただの種ではありません。カイトさんの好奇心を刺激する、未知の植物の種。それとなら、彼は喜んであの石を手放すでしょう」
​ リベラの眼鏡がキラリと光った。
 なるほど、とルーベンスは膝を打つ。
 金塊など、農夫カイトにとっては石ころ。だが、見たこともない野菜の種ならば、等価交換以上の価値を持つのだ。
​「感謝する、リベラ君。勝機が見えた」
​ ◇ ◇ ◇
​ 意気揚々と畑に向かったルーベンスは、作業中のカイトに声をかけた。
​「やあ、カイト。精が出るな」
「あ、ルーベンスさん。こんにちは」
「単刀直入に言おう。あの漬物石を私に譲ってはくれないか? ……代わりに、とっておきの『種』を提供しよう」
​ カイトの手が止まった。
 その瞳が、金塊を見た時とは比べ物にならないほど輝き出す。
​「種!? なになに、どんな種!?」
「フッ……食いついたな。私が知っているのは、魔界の奥地、奈落の森にのみ自生するという幻の植物……『デモン・マンドラゴラ』の種だ」
​ それは、引き抜いた瞬間に悲鳴を上げ、聞いた者を即死させるという最悪の植物である。
 だが、カイトの反応は予想の斜め上を行っていた。
​「マンドラゴラ! それ、煮込むと滋養強壮にいいって聞いたことがあるよ! 育ててみたいなぁ!」
「(……正気か?)ああ、その種を手に入れてくれば、あの石と交換してくれるか?」
「もちろん! あの石より、新しい野菜の方がずっと魅力的だよ!」
​ 交渉成立(ディール)。
 ルーベンスは心の中でガッツポーズをした。
​(勝った! 『デモン・マンドラゴラ』の種など、魔界の市場に行けば手に入る。それを渡して数億円の金塊を手にし、全額を今週末のレースに突っ込めば……私は億万長者だ!)
​ ルーベンスの脳内で、札束の風呂に入る自分の姿が再生される。
 彼はカイトと固い握手を交わし、その足で「冒険者ギルド」の購買部へと走った。
​「おやじ! 魔界行きの転移スクロールと、毒無効の装備、それに防音イヤーマフを一式くれ!」
「へい毎度。全部で金貨50枚になりやす」
「……何? 高いな……だが、先行投資だ。これを払えば億が手に入る……!」
​ ルーベンスは震える手で、生活費とタバコ代、そして虎の子の競馬資金をすべて叩き出し、装備を購入した。
​「待っていろカイト! すぐに種を持って戻ってくる!」
​ 彼は颯爽と転移魔法陣へと飛び込んだ。
 目指すは魔界。
 危険を顧みず、彼は突き進む。すべては金塊のため。
​ ……しかし。
 彼は致命的なミスを犯していた。
​ 数日後。
 ボロボロになりながら、奇跡的に『デモン・マンドラゴラ』の種を入手して帰還したルーベンス。
 彼が農場に戻ると、そこでは男たちがラジオを囲んで盛り上がっていた。
​『おおっと! 1着は大穴、12番人気「ハシリマクリ」だぁぁぁ!! 単勝オッズは驚異の500倍!!』
​ 実況の声が響く。
 ルーベンスの顔色が青ざめる。
​「……おい、デューク。そのレースは……いつの開催だ?」
「あん? 今日のメインレース、『有魔記念』だが?」
「きょ、今日……だと……?」
​ ルーベンスは膝から崩れ落ちた。
 魔界の時空の歪みにより、時間の感覚がズレていたのだ。
 そして何より。
 彼が全財産をはたいて装備を買ってしまったため、もしこの場にいたとしても、馬券を買う金は一銭も残っていなかった。
​「あ、ルーベンスさんおかえり! 種、あった?」
​ カイトが無邪気に駆け寄ってくる。
​「……ああ。あるぞ。これが種だ……」
「わぁ、ありがとう! じゃあ約束通り、あの漬物石あげるね!」
​ カイトから数億円の金塊を受け取るルーベンス。
 だが、レースは終わった。
 手元には金塊があるが、大穴を当てて数百億を得るという夢は散った。
 そして何より、種を入手するための旅費で、彼の財布はすっからかんだった。
​「……金はある。だが、夢がない」
​ 彼は金塊の上に腰を下ろし、最後の一本となったシケモク(マルボロ緑)に火をつけた。
 煙が目に染みる。
 結局、彼が得たのは「プラマイゼロの収支」と「徒労感」だけだったのだ。
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