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第十七章 金塊、、そしてヤニ、、海鮮鍋へ
EP 10
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龍魔呂特製・Sランク海鮮鍋! 胃袋に染み渡る「幸せの味」
農場の庭に設置された特大の土鍋から、幸せの白い湯気が立ち昇っていた。
グツグツ、コトコト。
出汁の香りが、夜風に乗って鼻腔をくすぐる。
その破壊力は凄まじく、ヤケ酒で荒れていた女性陣も、タバコで黄昏れていた男性陣も、全員が吸い寄せられるように席についた。
「待たせたな。……食うぞ」
料理番・龍魔呂が、重々しく鍋の蓋を取る。
パァァァァァァッ……!!
蓋を開けた瞬間、まるで宝箱を開けたかのような光が溢れ出した。
透き通った黄金色のスープ。
その海を泳ぐのは、魚人族の国『シーラン』から直送された、プリプリのタラバガニ、大ぶりの牡蠣、脂の乗った寒ブリ。
そして、主役は中央に鎮座する野菜たち。
カイトが育てたSランク長ネギ、春菊、シイタケ。
何より、ひときわ輝きを放っているのが――
「わぁ……! すごい、白菜が光ってる!」
カイトが歓声を上げた。
『Sランク黄金白菜(精霊核仕込み)』である。
煮込まれてクタクタになっているはずなのに、その繊維一本一本が宝石のように発光し、スープに溶け出した旨味が対流となって鍋の中で踊っている。
「いただきまーす!」
カイトの号令と共に、全員が箸を伸ばした。
まずは、主役の白菜から。
フーフーと息を吹きかけ、口へと運ぶ。
ハフッ、ジュワァァァ……。
その瞬間、全員の動きが止まった。
「…………ッ!!」
言葉が出ない。
噛んだ瞬間、白菜の細胞が解け、中から熱々のスープと共に「大地の甘み」が爆発したのだ。
それは野菜の甘みを超越していた。
精霊核から吸い上げた数億円分のエネルギーが、純粋な「コク」へと変換され、脳髄を直撃する。
「な、何これぇぇぇ!? 甘い! 砂糖なんて入ってないのに、フルーツみたいに甘いわよ!?」
リーザが目を見開いて絶叫する。
「いえ、甘いだけじゃありませんわ! 魚介の出汁を吸ったスポンジのような食感……噛むたびに口の中が『旨味の洪水』になりますの!」
フレアが頬を赤らめて身悶える。
「……んんっ♡ これ、龍魔呂さんの愛の味だわ……。胃袋が……子宮が熱くなるぅ……!」
ルチアナは完全にトリップし、虚空を見つめながら白菜を咀嚼し続けている。
男たちも負けてはいない。
デュークが蟹の足を割り、身を啜る。
ズズッ、プリッ。
「ガハハ! 良い蟹だ! 濃厚な味噌と、この白菜の甘みが合わさって、酒が進んで仕方がないわ!」
リュウもまた、無心で箸を動かしていた。
「あぁ……染みる……。パチンコで負けた心の傷も、嫁に怒られたトラウマも、全部このスープが洗い流してくれる……」
龍魔呂が作ったのは、ただの鍋ではない。
カイトの最強素材と、龍魔呂の神業調理、そして「数億円の出汁(元・金塊)」が融合した、食べる精神安定剤だったのだ。
「みんな、美味しい?」
カイトがニコニコと尋ねる。
その問いに、新入りのキャルルが涙目で答えた。
「はいぃっ! 私、金塊がなくなってショックでしたけど……こんなに美味しいなら、漬物石にして正解でしたぁ! 龍魔呂さんの料理、世界一ですぅ!!」
「……フン。お世辞はいい。食え」
龍魔呂は素っ気なく答えるが、その口元はわずかに緩んでいた。
彼は知っている。
どんな宝石よりも、客の「美味い」という一言の方が、料理人にとっては価値があることを。
宴は続く。
具材がなくなると、最後はご飯と溶き卵を投入し、全ての旨味を閉じ込めた「黄金雑炊」で〆る。
その一口は、もはや暴力的なまでの幸福感で、全員をKO(満腹)させた。
◇ ◇ ◇
翌朝。
農場の面々は、昨夜の暴飲暴食が嘘のようにスッキリとした顔で目覚めた(Sランク野菜の回復効果である)。
「あ、カイトさん。おはようございます」
「おはよう、リベラちゃん」
カイトは今日も元気に畑を耕していた。
鍬を振るうたびに、ザクッ、ザクッと心地よい音がする。
ガチンッ。
また、硬い音がした。
カイトが土を掘り返すと、そこには――。
「あ、また石だ。……うわ、これまた綺麗だなぁ」
出てきたのは、拳大の透明な石。
朝日に透かすと、七色に光り輝いている。
どう見ても、「最高純度のダイヤモンド原石(推定数十億円)」だった。
「キラキラしてて綺麗だねぇ。……これ、水槽に入れたらメダカが喜ぶかな?」
カイトが独り言を呟く。
それを、シェアハウスの窓から見ていたリーザ、ルチアナ、龍魔呂たちが目撃した。
一瞬の沈黙。
全員の脳裏に、昨日の騒動がよぎる。
欲望、争い、絶望、そして……あの最高の鍋の味。
バタンッ。
全員が示し合わせたように、そっと窓を閉め、カーテンを引いた。
「……見なかったことにしよう」
「ええ。今の私たちは、お金よりも朝ごはんが大事ですもの」
「カイトに関わるとロクなことにならん。放っておけ」
彼らは学習したのだ。
この農場において、金銀財宝はただのトラブルの種であり、カイトの前では「漬物石」や「水槽の砂利」以上の価値を持たないことを。
カイトは不思議そうに首を傾げ、ダイヤの原石をポイッと用水路に放り込んだ。
「よし、今日も美味しい野菜を作るぞー!」
平和な(?)朝が、また始まる。
Sランク農場の日常は、今日も平常運転である。
(第180話 完・黄金の漬物石編 終了)
農場の庭に設置された特大の土鍋から、幸せの白い湯気が立ち昇っていた。
グツグツ、コトコト。
出汁の香りが、夜風に乗って鼻腔をくすぐる。
その破壊力は凄まじく、ヤケ酒で荒れていた女性陣も、タバコで黄昏れていた男性陣も、全員が吸い寄せられるように席についた。
「待たせたな。……食うぞ」
料理番・龍魔呂が、重々しく鍋の蓋を取る。
パァァァァァァッ……!!
蓋を開けた瞬間、まるで宝箱を開けたかのような光が溢れ出した。
透き通った黄金色のスープ。
その海を泳ぐのは、魚人族の国『シーラン』から直送された、プリプリのタラバガニ、大ぶりの牡蠣、脂の乗った寒ブリ。
そして、主役は中央に鎮座する野菜たち。
カイトが育てたSランク長ネギ、春菊、シイタケ。
何より、ひときわ輝きを放っているのが――
「わぁ……! すごい、白菜が光ってる!」
カイトが歓声を上げた。
『Sランク黄金白菜(精霊核仕込み)』である。
煮込まれてクタクタになっているはずなのに、その繊維一本一本が宝石のように発光し、スープに溶け出した旨味が対流となって鍋の中で踊っている。
「いただきまーす!」
カイトの号令と共に、全員が箸を伸ばした。
まずは、主役の白菜から。
フーフーと息を吹きかけ、口へと運ぶ。
ハフッ、ジュワァァァ……。
その瞬間、全員の動きが止まった。
「…………ッ!!」
言葉が出ない。
噛んだ瞬間、白菜の細胞が解け、中から熱々のスープと共に「大地の甘み」が爆発したのだ。
それは野菜の甘みを超越していた。
精霊核から吸い上げた数億円分のエネルギーが、純粋な「コク」へと変換され、脳髄を直撃する。
「な、何これぇぇぇ!? 甘い! 砂糖なんて入ってないのに、フルーツみたいに甘いわよ!?」
リーザが目を見開いて絶叫する。
「いえ、甘いだけじゃありませんわ! 魚介の出汁を吸ったスポンジのような食感……噛むたびに口の中が『旨味の洪水』になりますの!」
フレアが頬を赤らめて身悶える。
「……んんっ♡ これ、龍魔呂さんの愛の味だわ……。胃袋が……子宮が熱くなるぅ……!」
ルチアナは完全にトリップし、虚空を見つめながら白菜を咀嚼し続けている。
男たちも負けてはいない。
デュークが蟹の足を割り、身を啜る。
ズズッ、プリッ。
「ガハハ! 良い蟹だ! 濃厚な味噌と、この白菜の甘みが合わさって、酒が進んで仕方がないわ!」
リュウもまた、無心で箸を動かしていた。
「あぁ……染みる……。パチンコで負けた心の傷も、嫁に怒られたトラウマも、全部このスープが洗い流してくれる……」
龍魔呂が作ったのは、ただの鍋ではない。
カイトの最強素材と、龍魔呂の神業調理、そして「数億円の出汁(元・金塊)」が融合した、食べる精神安定剤だったのだ。
「みんな、美味しい?」
カイトがニコニコと尋ねる。
その問いに、新入りのキャルルが涙目で答えた。
「はいぃっ! 私、金塊がなくなってショックでしたけど……こんなに美味しいなら、漬物石にして正解でしたぁ! 龍魔呂さんの料理、世界一ですぅ!!」
「……フン。お世辞はいい。食え」
龍魔呂は素っ気なく答えるが、その口元はわずかに緩んでいた。
彼は知っている。
どんな宝石よりも、客の「美味い」という一言の方が、料理人にとっては価値があることを。
宴は続く。
具材がなくなると、最後はご飯と溶き卵を投入し、全ての旨味を閉じ込めた「黄金雑炊」で〆る。
その一口は、もはや暴力的なまでの幸福感で、全員をKO(満腹)させた。
◇ ◇ ◇
翌朝。
農場の面々は、昨夜の暴飲暴食が嘘のようにスッキリとした顔で目覚めた(Sランク野菜の回復効果である)。
「あ、カイトさん。おはようございます」
「おはよう、リベラちゃん」
カイトは今日も元気に畑を耕していた。
鍬を振るうたびに、ザクッ、ザクッと心地よい音がする。
ガチンッ。
また、硬い音がした。
カイトが土を掘り返すと、そこには――。
「あ、また石だ。……うわ、これまた綺麗だなぁ」
出てきたのは、拳大の透明な石。
朝日に透かすと、七色に光り輝いている。
どう見ても、「最高純度のダイヤモンド原石(推定数十億円)」だった。
「キラキラしてて綺麗だねぇ。……これ、水槽に入れたらメダカが喜ぶかな?」
カイトが独り言を呟く。
それを、シェアハウスの窓から見ていたリーザ、ルチアナ、龍魔呂たちが目撃した。
一瞬の沈黙。
全員の脳裏に、昨日の騒動がよぎる。
欲望、争い、絶望、そして……あの最高の鍋の味。
バタンッ。
全員が示し合わせたように、そっと窓を閉め、カーテンを引いた。
「……見なかったことにしよう」
「ええ。今の私たちは、お金よりも朝ごはんが大事ですもの」
「カイトに関わるとロクなことにならん。放っておけ」
彼らは学習したのだ。
この農場において、金銀財宝はただのトラブルの種であり、カイトの前では「漬物石」や「水槽の砂利」以上の価値を持たないことを。
カイトは不思議そうに首を傾げ、ダイヤの原石をポイッと用水路に放り込んだ。
「よし、今日も美味しい野菜を作るぞー!」
平和な(?)朝が、また始まる。
Sランク農場の日常は、今日も平常運転である。
(第180話 完・黄金の漬物石編 終了)
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