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第十七章 金塊、、そしてヤニ、、海鮮鍋へ
EP 9
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紫煙と男の美学。俺たちは「金」より「静寂」が欲しい
農場の裏手。
そこは、母屋からの喧騒が遠く聞こえるだけの、静寂に包まれた場所だった。
頭上には満天の星空。
虫の声だけが、心地よいBGMとして流れている。
そこに、男たちが並んで立っていた。
カキン。シュボッ。
ジッポライターの開閉音と、オイルの燃える音が静けさを切り裂く。
竜王デュークが、極太の葉巻をくゆらせた。
狼王フェンリルが、指先の冷気でタバコに火を灯した。
勇者リュウ、魔族ルーベンスもそれに続く。
ふぅぅぅぅ――――。
プハァ――――。
四本の紫煙が、夜空へと昇り、混じり合い、そして消えていく。
「……結局、パチンコには行けなかったな」
沈黙を破ったのは、勇者リュウだった。
彼が吸うのは『メビウス』。
日本のサラリーマンが愛する、スタンダードで飾らない味。
その煙には、小遣い制の哀愁と、家庭を守る男の疲れが滲んでいる。
「ガハハ。まあ、一瞬でも夢は見れただろう?」
豪快に笑うのは、竜王デューク。
甘い香りのする高級葉巻を噛み締めながら、彼は夜空を見上げた。
「金塊なんぞ、所詮は石だ。だが、この葉巻の香りと、友と吸うこの時間は、金では買えん」
「……負け惜しみにしか聞こえんがな」
ぼそりと呟いたのは、魔族ルーベンスだ。
彼の手には『マルボロ・メンソール(緑)』。
競馬(ジオ・リザード)ですべてを失った男の背中は煤けているが、その横顔はどこか憑き物が落ちたように清々しい。
「だが、同意しよう。あの騒がしい女たちの声を聞くより、この安っぽいメンソールの刺激の方が、今の俺には心地いい」
「ケッ、辛気臭ぇ連中だぜ」
狼王フェンリルが、氷のように冷たい煙を吐き出した。
銘柄は『マルボロ・アイスブラスト』。
最強のカプセルメンソールが、彼の喉を凍らせる。
「俺は金なんぞ最初から興味ねぇ。美味い飯と、強い敵。それ以外はノイズだ。……ただ、今のこの静けさは悪くねぇ」
男たちは、言葉少なに煙をくゆらせる。
先ほどまでの「数億円争奪戦」が嘘のような、穏やかな時間。
そこへ、カツカツと足音が近づいてきた。
「……ここにいたか」
現れたのは、鬼神・龍魔呂。
エプロンを外し、仕事終わりの一服を求めてやってきた、農場の料理番だ。
「おう、大将。仕事は終わったか?」
「……ああ。厨房の片付けは済んだ。……一本くれ」
龍魔呂が差し出した手に、リュウが自分のライターを投げる。
龍魔呂が取り出したのは『マルボロ(赤)』。
ガツンとくる重い吸いごたえ。職人のタバコだ。
シュボッ。
龍魔呂が深く、長く吸い込む。
その煙は、他の誰よりも濃厚で、そして重厚だった。
「……ふぅ。……騒がしい夜だったな」
「違いない」
「全くだ」
男たちの間に、奇妙な連帯感が流れる。
種族も、立場も、吸っている銘柄も違う。
だが、「女たちの欲望に振り回され、結局何も得られなかった」という一点において、彼らは戦友(とも)だった。
チリチリ……。
タバコの火が根本まで燃え尽きる。
龍魔呂が、携帯灰皿に吸い殻を押し付けた。
それが合図だった。
「……気が済んだか?」
龍魔呂の静かな問いに、全員が無言で頷く。
紫煙と共に、未練も、後悔も、すべて夜空に吐き出した。
あとは、腹を満たすだけだ。
「なら、戻れ。……最高の鍋を用意してある」
「へへっ、待ってました!」
「やはり最後はそれか。悪くない」
男たちはニヤリと笑い、背を向けて歩き出す。
その背中は、来る時よりも少しだけ大きく、そして軽やかに見えた。
男の幸せとは、億万の金貨ではない。
一服のタバコと、これから食う美味い鍋。
それだけで十分なのだ。
農場の裏手。
そこは、母屋からの喧騒が遠く聞こえるだけの、静寂に包まれた場所だった。
頭上には満天の星空。
虫の声だけが、心地よいBGMとして流れている。
そこに、男たちが並んで立っていた。
カキン。シュボッ。
ジッポライターの開閉音と、オイルの燃える音が静けさを切り裂く。
竜王デュークが、極太の葉巻をくゆらせた。
狼王フェンリルが、指先の冷気でタバコに火を灯した。
勇者リュウ、魔族ルーベンスもそれに続く。
ふぅぅぅぅ――――。
プハァ――――。
四本の紫煙が、夜空へと昇り、混じり合い、そして消えていく。
「……結局、パチンコには行けなかったな」
沈黙を破ったのは、勇者リュウだった。
彼が吸うのは『メビウス』。
日本のサラリーマンが愛する、スタンダードで飾らない味。
その煙には、小遣い制の哀愁と、家庭を守る男の疲れが滲んでいる。
「ガハハ。まあ、一瞬でも夢は見れただろう?」
豪快に笑うのは、竜王デューク。
甘い香りのする高級葉巻を噛み締めながら、彼は夜空を見上げた。
「金塊なんぞ、所詮は石だ。だが、この葉巻の香りと、友と吸うこの時間は、金では買えん」
「……負け惜しみにしか聞こえんがな」
ぼそりと呟いたのは、魔族ルーベンスだ。
彼の手には『マルボロ・メンソール(緑)』。
競馬(ジオ・リザード)ですべてを失った男の背中は煤けているが、その横顔はどこか憑き物が落ちたように清々しい。
「だが、同意しよう。あの騒がしい女たちの声を聞くより、この安っぽいメンソールの刺激の方が、今の俺には心地いい」
「ケッ、辛気臭ぇ連中だぜ」
狼王フェンリルが、氷のように冷たい煙を吐き出した。
銘柄は『マルボロ・アイスブラスト』。
最強のカプセルメンソールが、彼の喉を凍らせる。
「俺は金なんぞ最初から興味ねぇ。美味い飯と、強い敵。それ以外はノイズだ。……ただ、今のこの静けさは悪くねぇ」
男たちは、言葉少なに煙をくゆらせる。
先ほどまでの「数億円争奪戦」が嘘のような、穏やかな時間。
そこへ、カツカツと足音が近づいてきた。
「……ここにいたか」
現れたのは、鬼神・龍魔呂。
エプロンを外し、仕事終わりの一服を求めてやってきた、農場の料理番だ。
「おう、大将。仕事は終わったか?」
「……ああ。厨房の片付けは済んだ。……一本くれ」
龍魔呂が差し出した手に、リュウが自分のライターを投げる。
龍魔呂が取り出したのは『マルボロ(赤)』。
ガツンとくる重い吸いごたえ。職人のタバコだ。
シュボッ。
龍魔呂が深く、長く吸い込む。
その煙は、他の誰よりも濃厚で、そして重厚だった。
「……ふぅ。……騒がしい夜だったな」
「違いない」
「全くだ」
男たちの間に、奇妙な連帯感が流れる。
種族も、立場も、吸っている銘柄も違う。
だが、「女たちの欲望に振り回され、結局何も得られなかった」という一点において、彼らは戦友(とも)だった。
チリチリ……。
タバコの火が根本まで燃え尽きる。
龍魔呂が、携帯灰皿に吸い殻を押し付けた。
それが合図だった。
「……気が済んだか?」
龍魔呂の静かな問いに、全員が無言で頷く。
紫煙と共に、未練も、後悔も、すべて夜空に吐き出した。
あとは、腹を満たすだけだ。
「なら、戻れ。……最高の鍋を用意してある」
「へへっ、待ってました!」
「やはり最後はそれか。悪くない」
男たちはニヤリと笑い、背を向けて歩き出す。
その背中は、来る時よりも少しだけ大きく、そして軽やかに見えた。
男の幸せとは、億万の金貨ではない。
一服のタバコと、これから食う美味い鍋。
それだけで十分なのだ。
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