田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一

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第十七章 金塊、、そしてヤニ、、海鮮鍋へ

EP 8

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祭りのあと。残ったのは美味い漬物と、虚しい財布だけ
​ 日は落ち、カイト農場に夜の帳(とばり)が下りた。
 普段なら虫の声が響く静かな時間だが、今夜の農場の庭は、場末の居酒屋のような喧騒に包まれていた。
​「飲まなきゃやってられないわよぉぉぉ!!」
​ ドンッ!
 テーブルに空になった一升瓶が叩きつけられる。
 叫んだのは、顔を真っ赤にした駄女神ルチアナだ。
​「私の……私の『獺祭』純米大吟醸・磨き二割三分がぁ……! ただの白菜になっちゃったのよぉ!」
「ルチアナ様、飲みすぎですわ……ヒック。でも、この安酒も意外とイケますわね……」
​ 隣で優雅に(しかし目は座っている)グラスを傾けるのは、不死鳥フレア。
 彼女たちの周りには、数億円の夢破れた「負け組」たちが車座になっていた。
​「うぅぅ……結局、借金が減るどころか、納屋の修理代で増えたんですけどぉ……」
​ リーザが膝を抱えてシクシクと泣いている。その手には、安物の缶チューハイ(ストロング系)。
​「龍魔呂さんへのプレゼントが……あ、でも、この漬物食べさせれば胃袋は掴めるかも? えへへ……」
​ キャルルは妄想と現実の狭間で揺れていた。
​ そんなカオスな状況の中、農場主カイトがニコニコと大皿を運んできた。
​「はい、お待たせ。例の『黄金白菜』の浅漬けだよ。刻んで鰹節と少しの醤油を垂らしてみたんだ」
​ ゴクリ。
 酔っ払い美女たちの喉が鳴る。
 皿に盛られたそれは、淡い黄金色の光を放ち、発酵食品特有の芳醇な香りを漂わせていた。
​「……食べるわよ。元は私の(はずだった)金塊なんだから!」
​ ルチアナが箸を伸ばし、シャクッと口に入れる。
 その瞬間。
​ カァァァァァッ!!
​ ルチアナの背後から後光が差した。
​「んんっ……!? なにこれ……悔しいけど、めちゃくちゃ美味しいじゃないのよぉぉ!!」
​ 涙を流しながら絶叫するルチアナ。
 精霊の力が凝縮された白菜は、噛むたびに細胞の一つ一つが歓喜の歌を歌うような、暴力的な旨味を持っていた。
 酒のアテとして、これ以上の物は世界に存在しない。
​「はぐっ、はぐっ……! 美味しい……借金の味がする……じゃなくて、大地の恵みの味がするわぁ!」
「シャキシャキ感が凄いです! この咀嚼音だけで白飯3杯いけます!」
「お酒が進む……あぁ、嫌なこと全部忘れちゃう……」
​ 箸が止まらない。
 酒も止まらない。
 失った金額はデカいが、得られた幸福感(ドーパミン)もまた、プライスレスだった。
​「あはは、みんな気に入ってくれてよかった。おかわりもあるからね」
​ カイトは満足げに頷き、自身も麦茶を啜った。
​ ――そんな狂乱の宴の隅で。
 スッと静かに席を立つ男たちがいた。
​ 竜王デューク。
 狼王フェンリル。
 魔族ルーベンス。
 勇者リュウ。
 そして、料理番の龍魔呂。
​ 彼らは言葉を交わさず、ただ目配せだけで意思を通じ合わせた。
​(……行くぞ)
(ああ。ここは騒がしすぎる)
(女どもの愚痴を聞くのは御免だ)
​ 男たちは、影のように気配を消し、農場の裏手――星空がよく見える「特等席」へと移動を開始した。
 彼らが求めているのは、黄金でも、美食でもない。
 ただ一つの「静寂」と、口元に燻らせる「紫煙」だけだ。
​「……カイト。俺たちは少し風に当たってくる」
「ん? ああ、いってらっしゃい」
​ カイトに見送られ、男たちは闇夜へと消えていく。
 それが、この夜の本当の「メインイベント」の始まりだった。
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