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一章 役目を終えて【ミシュリーヌ】
第19話 治療
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しばらく頑張ってみたが、リュックは目を覚まさない。ミシュリーヌは誰も帰って来ないことを確認して、バッグから杖を取り出した。
リュックの服をめくって、杖を腹部に押し付ける。
「ごめんなさい。でも、この方が効率的なんです」
ミシュリーヌは眠るリュックに謝罪する。
本当は手で触れたほうが早いが、オーギュストが許してくれなかった。代わりに渡されたのが、この杖だ。どういう仕組みなのかは分からないが、ミシュリーヌへの負担を軽減し、効果を最大限に発揮してくれる。
『大きな魔法を使うときには必ず杖を使うんだよ』
何度も注意されていたのに、肝心なときに忘れていた。ミシュリーヌのこういう性格を熟知していたからこそ、耳にタコができるほど繰り返し言っていたのだろう。
ミシュリーヌが目を瞑ると、狭い部屋が淡い光に包まれる。浄化の光はリュックだけでなく、空気中に漂う魔素も同時に浄化していった。
……
どのくらい時間が経っただろう。ミシュリーヌは、リュックの中から完全に魔素が消え去ったのを確認して、杖を下ろした。一つの山を越えたと言って良い。ただ、目覚めるかどうかはリュックに残された生命力次第だ。
「お願い」
ミシュリーヌは祈る思いで、リュックを見つめた。しばらく見守っていると、リュックの瞼がピクピクと動き出す。
「リュック!」
サビーヌがミシュリーヌの横をすり抜けて、リュックの枕元に駆け寄る。いつの間に戻って来たのだろう?
ミシュリーヌは疑問に思いながら、慌てて杖をバッグに戻した。
「……サビー……ヌ?」
「リュック、良かった! リュック!」
リュックは、ポロポロと泣き出したサビーヌにゆっくりと手を伸ばしている。ミシュリーヌはそれを見て、ホッと息を吐き出した。問題なく効いたようだ。
「何をしたんだ?」
背中から声が聞こえて振り返ると、ニコラが喜びと戸惑いが混ざったような顔で立っていた。その後ろには、シモーヌの姿もある。
「わ、私はリュックさんに危害を加えるようなことはしていません!」
「叫ぶなよ」
ニコラが呆れたように言って、サビーヌをチラリと見るので、ミシュリーヌは慌てて口を閉じる。
「それくらいは俺にも分かる。その……兄貴を助けてくれて……」
「違います! 私は何もしていません! 浄化薬の力です!」
ミシュリーヌはきっぱりと否定した。ただ、信じてはもらえなかったようで、ニコラは残念なものを見るようにミシュリーヌを見ている。ミシュリーヌは視線の意味が分からなくて、コテンと首を傾げた。視線から悪意は感じない。
「あんな奇跡みたいな光を見せられたらさ。誤魔化しても無駄だと思うぞ。神官なんだろう?」
「奇跡みたいな光?」
ニコラはため息交じりに言った。少しだけ魔力が漏れていた気がするが、そのせいだろうか?
「お兄さんを助けて下さって、ありがとうございます」
シモーヌはキラキラした笑顔をミシュリーヌに向けている。それが『聖女』に向ける視線と同じであることに気づいて、ミシュリーヌは誤魔化すのを諦めた。
「ありがとう。本当に感謝している。もちろん、あんたに不利益になるようなことはしないよ」
ニコラに言われて、ミシュリーヌは小さく頷く。ニコラはシモーヌの説教を受けて、サビーヌに謝罪することも約束していた。
ミシュリーヌは、喜びを分かち合うサビーヌたちを遠巻きにしながら考える。浄化薬作りをしてきたのは、リュックのような人を出さないためだった。なぜ、療養所にも入らずに自宅で苦しんでいたのだろう。家族二人だけで面倒を見ていたからこそ、ニコラが煮詰まってしまったようにも思う。
「お二人に聞きたいことがあります」
「向こうの部屋でお茶でも淹れるよ」
ミシュリーヌはニコラに促されて部屋を出た。ここだと、サビーヌたちの邪魔になる。サビーヌの見たこともない笑顔を見れば、しばらく、二人っきりにしてあげた方が良さそうだ。
リュックの服をめくって、杖を腹部に押し付ける。
「ごめんなさい。でも、この方が効率的なんです」
ミシュリーヌは眠るリュックに謝罪する。
本当は手で触れたほうが早いが、オーギュストが許してくれなかった。代わりに渡されたのが、この杖だ。どういう仕組みなのかは分からないが、ミシュリーヌへの負担を軽減し、効果を最大限に発揮してくれる。
『大きな魔法を使うときには必ず杖を使うんだよ』
何度も注意されていたのに、肝心なときに忘れていた。ミシュリーヌのこういう性格を熟知していたからこそ、耳にタコができるほど繰り返し言っていたのだろう。
ミシュリーヌが目を瞑ると、狭い部屋が淡い光に包まれる。浄化の光はリュックだけでなく、空気中に漂う魔素も同時に浄化していった。
……
どのくらい時間が経っただろう。ミシュリーヌは、リュックの中から完全に魔素が消え去ったのを確認して、杖を下ろした。一つの山を越えたと言って良い。ただ、目覚めるかどうかはリュックに残された生命力次第だ。
「お願い」
ミシュリーヌは祈る思いで、リュックを見つめた。しばらく見守っていると、リュックの瞼がピクピクと動き出す。
「リュック!」
サビーヌがミシュリーヌの横をすり抜けて、リュックの枕元に駆け寄る。いつの間に戻って来たのだろう?
ミシュリーヌは疑問に思いながら、慌てて杖をバッグに戻した。
「……サビー……ヌ?」
「リュック、良かった! リュック!」
リュックは、ポロポロと泣き出したサビーヌにゆっくりと手を伸ばしている。ミシュリーヌはそれを見て、ホッと息を吐き出した。問題なく効いたようだ。
「何をしたんだ?」
背中から声が聞こえて振り返ると、ニコラが喜びと戸惑いが混ざったような顔で立っていた。その後ろには、シモーヌの姿もある。
「わ、私はリュックさんに危害を加えるようなことはしていません!」
「叫ぶなよ」
ニコラが呆れたように言って、サビーヌをチラリと見るので、ミシュリーヌは慌てて口を閉じる。
「それくらいは俺にも分かる。その……兄貴を助けてくれて……」
「違います! 私は何もしていません! 浄化薬の力です!」
ミシュリーヌはきっぱりと否定した。ただ、信じてはもらえなかったようで、ニコラは残念なものを見るようにミシュリーヌを見ている。ミシュリーヌは視線の意味が分からなくて、コテンと首を傾げた。視線から悪意は感じない。
「あんな奇跡みたいな光を見せられたらさ。誤魔化しても無駄だと思うぞ。神官なんだろう?」
「奇跡みたいな光?」
ニコラはため息交じりに言った。少しだけ魔力が漏れていた気がするが、そのせいだろうか?
「お兄さんを助けて下さって、ありがとうございます」
シモーヌはキラキラした笑顔をミシュリーヌに向けている。それが『聖女』に向ける視線と同じであることに気づいて、ミシュリーヌは誤魔化すのを諦めた。
「ありがとう。本当に感謝している。もちろん、あんたに不利益になるようなことはしないよ」
ニコラに言われて、ミシュリーヌは小さく頷く。ニコラはシモーヌの説教を受けて、サビーヌに謝罪することも約束していた。
ミシュリーヌは、喜びを分かち合うサビーヌたちを遠巻きにしながら考える。浄化薬作りをしてきたのは、リュックのような人を出さないためだった。なぜ、療養所にも入らずに自宅で苦しんでいたのだろう。家族二人だけで面倒を見ていたからこそ、ニコラが煮詰まってしまったようにも思う。
「お二人に聞きたいことがあります」
「向こうの部屋でお茶でも淹れるよ」
ミシュリーヌはニコラに促されて部屋を出た。ここだと、サビーヌたちの邪魔になる。サビーヌの見たこともない笑顔を見れば、しばらく、二人っきりにしてあげた方が良さそうだ。
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