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二章 無事を祈って【オーギュスト】
第10話 魔獣を呼ぶ方法
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オーギュストの求める本は、長い渦のような特別室の中間くらいの本棚に昔と変わらず収納されていた。
「懐かしいな」
オーギュストは薄手の手袋をつけて、本をゆっくりと引き抜く。題名さえ書かれていないその本は、浄化の水晶が作られてから二百年ほどが経った時代に書かれた、とある人物の研究日誌だ。当時は現代とは逆に、魔素が薄くなり魔獣が減っていた時代だったようだ。
フルーナ王国の王家は、今でこそ謙虚で穏やかな統治を目指しているが、昔は横暴な行いをする王ばかりだった。それが王家を肯定する歴史書の中からも読み取れるのだから、実際は相当なものだったのだろう。
一番恐ろしい行いは、異世界からの聖女召喚だ。世界をまたいだ誘拐と言い換えることもできる。我が国にだけあった技術だが、誇れるところはどこにもない。今でも王宮の神殿には、儀式に使用された部屋が地下に残されている。歴史に残っている聖女だけでも、かなりの人数なので、被害者は百人以上いたのではないかとも言われている。
聖女の力は子供に引き継がれることも多い。しかし、異世界から召喚された聖女は、この世界の人間との間に生まれた聖女とは比べものになられないほどの力を持っていた。そのため、異世界召喚は聖女が増えても続けられていたようだ。
その召喚が行われなくなったのは、王家が改心したからではない。異世界から連れてこられた一人の聖女が一生をかけて作り出した水晶のおかげだ。各地に置かれた水晶により、神官だけで魔素の浄化ができるようになった。
「せっかく聖女様のおかげで手に入れた平和なのに、それを自ら手放したわけだから、どうしようもないよな」
フルーナ王国は魔獣から得られる資源を輸出することにより成り立っている国家である。魔素が他国よりも発生しやすく、魔獣に悩まされてきたが少なくなりすぎても困る。魔獣が減った時代には、異世界人の子孫である聖女が迫害されていたという。水晶さえなければ、浄化さえしなければ、という身勝手な理由だ。
そんな中で王族が聖女を処刑する事件が起こった。理由はあってないようなもので、その王族が聖女との婚約を疎ましく思っていたからではないかと、この書物には書かれている。この事件をきっかけに、聖女の国外への亡命が多発したようだ。この書物を書いた研究者は、フルーナ王国から聖女が居なくなることを危惧し研究をはじめたと記している。
魔獣が増え生活が落ち着けば、聖女を迫害する者も居なくなる。研究者はそんな想いで魔獣を呼び寄せる方法を模索したようだ。
現在、この国にいる聖女がミシュリーヌだけであることを考えれば、研究は間に合わなかったのだろう。だが、方法は見つかったようなのだ。研究者はいろいろな地方で禁忌とされている迷信などを集め、実験を繰り返し、魔獣を集める方法を導き出した。
『土を掘って作った穴に魔獣草5000束を入れて燃やし、炎が紫色になるまで風の魔石を加える。そこに魔獣の新鮮な血肉を加えて煙が広がるのを待つ』
本には効率的な方法なども詳しく書かれている。人々の生活を守るために、かなり研究を積んだのだろう。その知識が人を殺すために使われたと思うと、やりきれない。
「本来の使用法を考えれば、本を燃やしてしまうわけにもいかないんだよな」
子供の頃に見つけたときには気づかなかったが、本当に隠したい本だからこそ、この書物は中途半端な場所に保管されているのかもしれない。
オーギュストはこの本に読んだ者の痕跡が残っていないか確認してから本棚に戻した。今回の犯人もこの本を読んだ可能性が高い。しかし、予想はしていたがなんの証拠も残されていなかった。きちんと手袋をして読んでいたのだろう。
オーギュストは、他の方法があった可能性も考えて、近くの本を時間が許す限り調べた。しかし、幼い頃の記憶通り、他に魔獣を呼び寄せる方法が記載された本は見当たらなかった。
「懐かしいな」
オーギュストは薄手の手袋をつけて、本をゆっくりと引き抜く。題名さえ書かれていないその本は、浄化の水晶が作られてから二百年ほどが経った時代に書かれた、とある人物の研究日誌だ。当時は現代とは逆に、魔素が薄くなり魔獣が減っていた時代だったようだ。
フルーナ王国の王家は、今でこそ謙虚で穏やかな統治を目指しているが、昔は横暴な行いをする王ばかりだった。それが王家を肯定する歴史書の中からも読み取れるのだから、実際は相当なものだったのだろう。
一番恐ろしい行いは、異世界からの聖女召喚だ。世界をまたいだ誘拐と言い換えることもできる。我が国にだけあった技術だが、誇れるところはどこにもない。今でも王宮の神殿には、儀式に使用された部屋が地下に残されている。歴史に残っている聖女だけでも、かなりの人数なので、被害者は百人以上いたのではないかとも言われている。
聖女の力は子供に引き継がれることも多い。しかし、異世界から召喚された聖女は、この世界の人間との間に生まれた聖女とは比べものになられないほどの力を持っていた。そのため、異世界召喚は聖女が増えても続けられていたようだ。
その召喚が行われなくなったのは、王家が改心したからではない。異世界から連れてこられた一人の聖女が一生をかけて作り出した水晶のおかげだ。各地に置かれた水晶により、神官だけで魔素の浄化ができるようになった。
「せっかく聖女様のおかげで手に入れた平和なのに、それを自ら手放したわけだから、どうしようもないよな」
フルーナ王国は魔獣から得られる資源を輸出することにより成り立っている国家である。魔素が他国よりも発生しやすく、魔獣に悩まされてきたが少なくなりすぎても困る。魔獣が減った時代には、異世界人の子孫である聖女が迫害されていたという。水晶さえなければ、浄化さえしなければ、という身勝手な理由だ。
そんな中で王族が聖女を処刑する事件が起こった。理由はあってないようなもので、その王族が聖女との婚約を疎ましく思っていたからではないかと、この書物には書かれている。この事件をきっかけに、聖女の国外への亡命が多発したようだ。この書物を書いた研究者は、フルーナ王国から聖女が居なくなることを危惧し研究をはじめたと記している。
魔獣が増え生活が落ち着けば、聖女を迫害する者も居なくなる。研究者はそんな想いで魔獣を呼び寄せる方法を模索したようだ。
現在、この国にいる聖女がミシュリーヌだけであることを考えれば、研究は間に合わなかったのだろう。だが、方法は見つかったようなのだ。研究者はいろいろな地方で禁忌とされている迷信などを集め、実験を繰り返し、魔獣を集める方法を導き出した。
『土を掘って作った穴に魔獣草5000束を入れて燃やし、炎が紫色になるまで風の魔石を加える。そこに魔獣の新鮮な血肉を加えて煙が広がるのを待つ』
本には効率的な方法なども詳しく書かれている。人々の生活を守るために、かなり研究を積んだのだろう。その知識が人を殺すために使われたと思うと、やりきれない。
「本来の使用法を考えれば、本を燃やしてしまうわけにもいかないんだよな」
子供の頃に見つけたときには気づかなかったが、本当に隠したい本だからこそ、この書物は中途半端な場所に保管されているのかもしれない。
オーギュストはこの本に読んだ者の痕跡が残っていないか確認してから本棚に戻した。今回の犯人もこの本を読んだ可能性が高い。しかし、予想はしていたがなんの証拠も残されていなかった。きちんと手袋をして読んでいたのだろう。
オーギュストは、他の方法があった可能性も考えて、近くの本を時間が許す限り調べた。しかし、幼い頃の記憶通り、他に魔獣を呼び寄せる方法が記載された本は見当たらなかった。
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