【完結】異世界から来た聖女ではありません!

五色ひわ

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二章 無事を祈って【オーギュスト】

第9話 図書館

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 オーギュストは馬を使って、王宮内を移動する。王宮の北の端まで来ると、窓の少ない大きな建物が見えてきた。フルーナ王国の知識が集められた王立の図書館だ。申請をすれば、誰でも利用することができるため、正面の入口には開館直後だというのに列ができている。警備をする魔導師団員の姿も見えた。

 オーギュストは人の多い正面には近づかず、裏側に回り込む。木々に隠されていて周囲からは見にくいが、そこには王族のみが使用できる専用の入口がある。

 オーギュストは馬を降りて、近づいてきた近衛騎士に預けた。他の騎士が静かに扉を開けて待機している。

「誰か利用しているか?」

「いいえ。本日は、どなたもいらっしゃっておりません」

 オーギュストは近衛騎士の言葉に頷いて、建物の中に入る。貸出もできるので王族本人が来ることは稀だが、鉢合わせしなくて何よりだ。今日は誰にも邪魔されたくない。

 近衛騎士が護衛のために付いて来ようとしたが、ジョエルがやんわりと断っていた。

「今日は上を使わせてもらう」

「畏まりました」
 
 オーギュストは司書に声をかけてから、簡素な階段を登る。王族専用に作られた空間には、本をゆっくり読むための応接室がいくつもある。だが、今回は応接室のある二階ではなく、さらに上を目指した。

「私は一般エリアでフリルネロ公爵領についての資料を集めて、三階の待機室でお待ちしております」

「どうせ話すことになるんだ。ジョエルも来れば良い」

 最上階の四階には、禁書を保管する特別室がある。原則として王族しか入れないが、侍従を連れて入る者もいる。国王か王太子に申し出れば、国の重役も使用可能だ。

「必要のない知識は、持たないに限ります。現に、オーギュスト殿下の記憶が正しければ、特別室に入った者の中に犯人がいるんですよね?」

「そういうことになるな」

 オーギュストが調べようとしているのは、魔獣を人工的に集める方法だ。浄化が終わる前でも、フリルネロ公爵領のような襲われ方をした場所はなかった。何らかの方法で人為的に魔獣を集めたと考えるのが自然だ。そして、オーギュストには、その方法について心当たりがある。

「では、私は失礼いたします」

 ジョエルはそれだけ言って、一般エリアに続く扉を開けて去っていく。オーギュストは、それを見届けて四階へと登った。ジョエルに手伝ってもらうことはないので、無理を強いる必要はない。

 四階に着くと、大きな扉がオーギュストを出迎える。魔力の壁を通過した気配を感じながら扉に手を触れると、オーギュストの魔力から王族の血統を感知して、扉がゆっくりと開かれた。

「相変わらず、異様な雰囲気だな」

 特別室の中は古い書物を守るためにいくつもの魔法がかけられている。魔力が低い者が入ると、多すぎる魔法の気配によって具合が悪くなると聞いている。オーギュストは薄暗く寒い部屋を、魔法で足元を照らしながら、ゆっくりと進んだ。狭い通路は、両側にそびえ立つ本の壁に挟まれている。

 特別室は渦を巻くように作られており、進むごとに建物の中央へと近づいていく。大まかに分野わけされているが、中央に近づくほどに貴重で危険な書物が増える印象だ。

 最奥の部屋には、異世界からの聖女召喚魔法など、現在では禁術に指定されている知識も眠っている。

 オーギュストは忌み嫌われていた子供時代に入り浸っていたので、誰よりもこの空間を把握している。オーギュストが知識を得ることを怖がる人間もいたが、ノルベルトや前魔導師団長のおかげで、今日までここに入る権利を奪われることはなかった。

 しかし、多くの人を苦しめる知識が収められている場所だ。今後は閲覧者について、もう少し厳しく制限すべきではないかとオーギュストは思っている。
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