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四章 平和を願って【ミシュリーヌ】
第10話 野菜とケーキ
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馬に乗ってやってきたのは、マリエルが率いる隊だった。ミシュリーヌが公爵領でともに旅をしていた者たちだ。
「妃殿下、ご無事で何よりです」
「心配かけてごめんなさい」
マリエルたちはミシュリーヌのことをずっと心配してくれていたようだ。ミシュリーヌも四人が健康そうで安心する。公爵領で過ごしていたようなので、過酷な生活だっただろう。
「迎えに越させて悪いな」
「いいえ。もう少し早く合流すべきでした」
マリエルが王都から同行した四人の顔を見ながら小声で言う。マリエルから見ると、ジュリーやブノワも護衛としては不安があるらしい。
「ブノワ先輩、気づいていたんですか?」
「ああ。魔法で検索をしたら、魔導師団員だと向こうから合図が返ってきた」
ミシュリーヌはブノワの言葉にドキリとする。打ち消してしまったのは、マリエルたちからの合図だったらしい。
「何で言ってくれないんですか~」
「団長が何も言わないから意図があると判断した」
オーギュストをチラリと見ると、慰めるように髪を撫でられる。ポールが気付けなかったのは、ミシュリーヌが対抗魔法を放ったせいだ。
「団員でないミシュリーヌに気づかれる方が悪い」
「団長、『聖女様』から隠せと言う方が無茶ですよ。伝わるべき人には伝わったのですから、良いではありませんか」
マリエルがオーギュストの言葉に反論する。オーギュストは笑って流していた。
ミシュリーヌから見るとオーギュストの表情が柔らかくなった気がする。五人を守りながらの移動は、オーギュストでも大変だったのかもしれない。何の手助けも出来なかった事が悲しい。愚痴すら言ってくれないなんて寂しい。
「ミシュリーヌ、どうかしたか?」
「何でもありませんわ」
「マリエルと合流して安心したか? 何だかぼんやりしているように見えるよ。夕食まで部屋で休むと良い」
オーギュストに言われて、ミシュリーヌも疲れを自覚する。もしかしたら、オーギュストも自身の疲れに気づいていなかっただけなのかもしれない。
「ジュリー、ここまでご苦労。四人ともマリエルの指揮下に入ってくれ。マリエル、私が四人をかなり虐めた。今晩はゆっくり休ませてやれ。明日以降は任せる」
「畏まりました。団長のことは戦力に入れさせていただいてもよろしいですか?」
「構わない。夜間の警備にも加わる。今すぐやってほしいことがあるなら指示をくれ」
マリエルがミシュリーヌの手元をチラリと見るので、慌ててオーギュストのローブから手を離す。
「いいえ、今は大丈夫です。夕食の準備が済みましたらお声がけします」
「来たばかりで悪いな。これもよかったら使ってくれ」
オーギュストは大きな麻袋をドカリと置いた。マリエルが開けると、いろいろな野菜が出てくる。
「野菜!」
マリエルの部下が声を上げる。マリエルの視線を受けて、慌てて頭を下げた。
「公爵領には野菜がないのか?」
「はい。領地に入った頃にはあったのですが、今は市場では見かけません。もっとも、はじめから我々が購入して良いと判断できる量は流通しておりませんでしたので、持参したものを食べていました。まだ、残っているのですが、長期化を考えて節約しておりまして……」
ミシュリーヌがいた頃より状況は悪化しているようだ。同行させてもらった商会が公爵領に野菜なども持ち込んでいた。あのときも魔獣に襲われたことを思い出せば、その後は続けられなかったことも想像できる。
「先行組は離脱させたほうが良さそうだな」
「いいえ。他の隊は先日公爵領に入った調査隊から必要物資を受け取っていると思います。我々は移動を繰り返しておりますので、妃殿下と合流してからと思い後回しにしてしまいました」
ミシュリーヌは申し訳なく思うが、マリエルたちからは仕事に誇りを持っていることが伝わってくる。謝罪するのは違う気がして、ミシュリーヌはお礼を言った。
「マジックバッグに空きがあるなら、一人一袋ずつ持っておけ。途中で二手に別れることもあるだろう」
オーギュストがマジックバッグから麻袋を出していく。人数分並べると、団員たちが嬉しそうに中を確認していた。
「こんなに支給していただいて大丈夫ですか?」
「ここに来るまでに購入したものもあるから問題ない。今晩、仕分けるから欲しい野菜があったら、そちらからも出せるぞ」
「ここに出ているだけで十分です。ありがとうございます」
その後、マリエルたちはオーギュストが出した倉庫から武器や薬なども補充していた。それを建物の中から眺めていると、野営であることを忘れそうになる。
部屋に戻ってきたオーギュストが、内緒だと言って王都の有名店のケーキまで出してくれたからなおさらだ。
「クリストフと二人で行ったのですか?」
「ああ、そうだ」
ミシュリーヌには、クリストフとオーギュストが仲良くケーキを食べる姿が想像できない。オーギュストにその時のことを尋ねても、曖昧に笑うだけだ。
ミシュリーヌは首を傾げつつ、美味しいケーキをオーギュストと分け合った。
「妃殿下、ご無事で何よりです」
「心配かけてごめんなさい」
マリエルたちはミシュリーヌのことをずっと心配してくれていたようだ。ミシュリーヌも四人が健康そうで安心する。公爵領で過ごしていたようなので、過酷な生活だっただろう。
「迎えに越させて悪いな」
「いいえ。もう少し早く合流すべきでした」
マリエルが王都から同行した四人の顔を見ながら小声で言う。マリエルから見ると、ジュリーやブノワも護衛としては不安があるらしい。
「ブノワ先輩、気づいていたんですか?」
「ああ。魔法で検索をしたら、魔導師団員だと向こうから合図が返ってきた」
ミシュリーヌはブノワの言葉にドキリとする。打ち消してしまったのは、マリエルたちからの合図だったらしい。
「何で言ってくれないんですか~」
「団長が何も言わないから意図があると判断した」
オーギュストをチラリと見ると、慰めるように髪を撫でられる。ポールが気付けなかったのは、ミシュリーヌが対抗魔法を放ったせいだ。
「団員でないミシュリーヌに気づかれる方が悪い」
「団長、『聖女様』から隠せと言う方が無茶ですよ。伝わるべき人には伝わったのですから、良いではありませんか」
マリエルがオーギュストの言葉に反論する。オーギュストは笑って流していた。
ミシュリーヌから見るとオーギュストの表情が柔らかくなった気がする。五人を守りながらの移動は、オーギュストでも大変だったのかもしれない。何の手助けも出来なかった事が悲しい。愚痴すら言ってくれないなんて寂しい。
「ミシュリーヌ、どうかしたか?」
「何でもありませんわ」
「マリエルと合流して安心したか? 何だかぼんやりしているように見えるよ。夕食まで部屋で休むと良い」
オーギュストに言われて、ミシュリーヌも疲れを自覚する。もしかしたら、オーギュストも自身の疲れに気づいていなかっただけなのかもしれない。
「ジュリー、ここまでご苦労。四人ともマリエルの指揮下に入ってくれ。マリエル、私が四人をかなり虐めた。今晩はゆっくり休ませてやれ。明日以降は任せる」
「畏まりました。団長のことは戦力に入れさせていただいてもよろしいですか?」
「構わない。夜間の警備にも加わる。今すぐやってほしいことがあるなら指示をくれ」
マリエルがミシュリーヌの手元をチラリと見るので、慌ててオーギュストのローブから手を離す。
「いいえ、今は大丈夫です。夕食の準備が済みましたらお声がけします」
「来たばかりで悪いな。これもよかったら使ってくれ」
オーギュストは大きな麻袋をドカリと置いた。マリエルが開けると、いろいろな野菜が出てくる。
「野菜!」
マリエルの部下が声を上げる。マリエルの視線を受けて、慌てて頭を下げた。
「公爵領には野菜がないのか?」
「はい。領地に入った頃にはあったのですが、今は市場では見かけません。もっとも、はじめから我々が購入して良いと判断できる量は流通しておりませんでしたので、持参したものを食べていました。まだ、残っているのですが、長期化を考えて節約しておりまして……」
ミシュリーヌがいた頃より状況は悪化しているようだ。同行させてもらった商会が公爵領に野菜なども持ち込んでいた。あのときも魔獣に襲われたことを思い出せば、その後は続けられなかったことも想像できる。
「先行組は離脱させたほうが良さそうだな」
「いいえ。他の隊は先日公爵領に入った調査隊から必要物資を受け取っていると思います。我々は移動を繰り返しておりますので、妃殿下と合流してからと思い後回しにしてしまいました」
ミシュリーヌは申し訳なく思うが、マリエルたちからは仕事に誇りを持っていることが伝わってくる。謝罪するのは違う気がして、ミシュリーヌはお礼を言った。
「マジックバッグに空きがあるなら、一人一袋ずつ持っておけ。途中で二手に別れることもあるだろう」
オーギュストがマジックバッグから麻袋を出していく。人数分並べると、団員たちが嬉しそうに中を確認していた。
「こんなに支給していただいて大丈夫ですか?」
「ここに来るまでに購入したものもあるから問題ない。今晩、仕分けるから欲しい野菜があったら、そちらからも出せるぞ」
「ここに出ているだけで十分です。ありがとうございます」
その後、マリエルたちはオーギュストが出した倉庫から武器や薬なども補充していた。それを建物の中から眺めていると、野営であることを忘れそうになる。
部屋に戻ってきたオーギュストが、内緒だと言って王都の有名店のケーキまで出してくれたからなおさらだ。
「クリストフと二人で行ったのですか?」
「ああ、そうだ」
ミシュリーヌには、クリストフとオーギュストが仲良くケーキを食べる姿が想像できない。オーギュストにその時のことを尋ねても、曖昧に笑うだけだ。
ミシュリーヌは首を傾げつつ、美味しいケーキをオーギュストと分け合った。
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