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四章 平和を願って【ミシュリーヌ】
第13話 再会
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マリエルたちと合流してからは、馬の速度を下げてフリルネロ公爵領を目指した。領境が近づき魔獣の数が増えて来たので、そうするしかなかったとも言える。調査隊が間引いてくれているようだが、浄化の水晶の影響が薄い地域は生まれる魔獣の数も多い。
「左前方から三匹接近中」
「今回は私がいきますね」
団員の一人が馬の速度を上げる。皆が追いついたときには、三匹とも仕留められていた。オーギュストがマジックバッグにしまい、そのまま駆け抜ける。
オーギュストのみで戦っていた今までとは違い、マリエルたち四人も戦闘に加わっている。そのおかげで、魔獣は多くとも戦闘事態は危なげない。陣形は明らかに、ミシュリーヌだけでなく王都から同行した四人も守る形で作られていた。ジュリーとブノワは悔しそうにしていたが、手を出す隙もないようだ。
ミシュリーヌの役割は今までと変わらず、休憩のたびに馬に癒やしの魔法をかけるのみだ。移動中は相変わらず、オーギュストの操る馬に相乗りさせてもらっている。
「妃殿下がいらっしゃると、長距離移動が可能になるので助かります」
「馬を取り替えるのは難しいですからね」
休憩中も、マリエルたちは疲れた様子を見せない。そのおかげで隊の雰囲気も明るくなった。
アニェスは相変わらずだが、直接何かを言ってくることはないので放置している。オーギュストたちがミシュリーヌと接触しないように気遣ってくれているおかげでもある。そういった負担も、マリエルたちが合流したことにより分散したので良かった。申し訳ないとは思っていたが、ミシュリーヌが動いて好転することではない。
ただ、せっかくうまく回っているが、この人数での行動は調査隊と合流するまでだと聞いている。オーギュストがマリエルからの報告を受けて、二手に分かれることを決めたからだ。報告の内容については、ミシュリーヌも概要だけ教えてもらっている。
公爵邸は今どのようになっているのだろう。偽物の聖女の件も気になるし、ガエルのことも心配だ。
ガエルがエレオノーレとの結婚を先延ばしにしていたのも、不貞を知っていたからかもしれない。オーギュストとヴァネッサの関係を誤解していたときのことを思い出せば、ミシュリーヌには他人事とは思えない。ガエルは優しい人だ。他の軽薄な男性とは何かが違う。女遊びが盛んだったのも、自分に非がある形で婚約を解消するための演技だったのではないだろうか?
オーギュストに話したら、難しい顔をして悩みだしてしまった。オーギュストはガエルがエレオノーレの不貞に気づいていなかったとみているらしい。ミシュリーヌが、黙ってしまったオーギュストを見つめていると、『ミシュリーヌはガエル兄上贔屓だね』と笑っていたが、本音は聞かせてもらえなかった。
フリルネロ公爵領に入ってしばらく進むと、サビーヌたちが暮らす街が見えてきた。ジュリーたち四人を宿で休ませ、ミシュリーヌはオーギュストとともに、まずは冒険者ギルドに向かった。調査隊の本隊は出発した後だが、何班かが残って冒険者と協力し街の防衛にあたっている。拠点はギルド内に借りているので、現在の状況を聞くためだ。
調査隊の行軍は、魔導師団については問題なく行われているらしい。この街に残った調査隊の魔導師団員は『他の団のことなので』と言葉を濁していたが、騎士団側でアニェスのように貴族らしさを捨てきれない者が問題を起こしているようだ。オーギュストは『魔獣の方がマシだな』と苦笑していた。
調査隊と協力する冒険者の中にはヤニックもいて、冒険者ギルドで会ったので少し話をすることもできた。強行日程で王都に行ってもらったが、帰領後もすぐに活動を再開しており問題なく過ごしているようだ。
逆にミシュリーヌの方が無茶をしたのではないかと心配されてしまった。ヤニックは二人の関係修復も喜んでくれていた。
『お二人の様子を見て安心しました』
『迷惑をかけたな』
オーギュストは何やら気まずそうにしていたので、ヤニックに相談でもしたのかもしれない。
オーギュストが挨拶に行くと言うので、サビーヌとも再会することができた。サビーヌはミシュリーヌの正体に気がついていたのか、夫としてオーギュストを紹介したら恭しく対応していた。
「妻が世話になった。世間知らずのミーシャが無事でいられたのは、あなたのおかげだ。感謝する」
オーギュストがミシュリーヌの保護者のように、サビーヌにお礼を言う。なんとなくムズムズしたが、今回は黙って一緒に頭を下げるに留めた。
オーギュストは急ぎで行きたい場所があると言うので一旦分かれたが、ミシュリーヌはサビーヌの家にお邪魔して話をすることもできた。サビーヌが緊張していたので、気を使って席を外してくれたのだろう。
「ミーシャのおかげで穏やかな暮らしができているわ。本当にありがとう」
サビーヌの夫であるリュックは順調に回復しており、冒険者業を近々再開する予定らしい。ミシュリーヌが診察してみたが、魔素はきちんと抜けているようで何よりだ。あそこまで進行している状態での治療はあまりなかったので、後遺症もないと聞いて安心する。
「何か困っていることはありますか? 流通が悪いと聞きました」
「この街は比較的落ち着いているわ。ただ……」
サビーヌの街は領境に近いため、商会と冒険者が協力して流通を保っているらしい。ただ、他の街を助ける余力まではない。親類を頼ってこの街に逃げて来る者の話を聞くと、他の街はかなり困っているらしい。
「……」
「王都から支援が入っているので、少しずつ改善してくると思います」
言葉を詰まらせたミシュリーヌの代わりに、護衛をしていたマリエルがにこやかに伝えてくれる。ミシュリーヌが倒れなければ、もう少し早く助けられたかもしれない。そんなふうに思っても、謝罪を伝えることは叶わない。一緒に旅をしていたサビーヌが相手でも、聖女の謝罪は重すぎるのだ。ミシュリーヌは心の中で謝罪して、オーギュストの待つ宿へと戻った。
「左前方から三匹接近中」
「今回は私がいきますね」
団員の一人が馬の速度を上げる。皆が追いついたときには、三匹とも仕留められていた。オーギュストがマジックバッグにしまい、そのまま駆け抜ける。
オーギュストのみで戦っていた今までとは違い、マリエルたち四人も戦闘に加わっている。そのおかげで、魔獣は多くとも戦闘事態は危なげない。陣形は明らかに、ミシュリーヌだけでなく王都から同行した四人も守る形で作られていた。ジュリーとブノワは悔しそうにしていたが、手を出す隙もないようだ。
ミシュリーヌの役割は今までと変わらず、休憩のたびに馬に癒やしの魔法をかけるのみだ。移動中は相変わらず、オーギュストの操る馬に相乗りさせてもらっている。
「妃殿下がいらっしゃると、長距離移動が可能になるので助かります」
「馬を取り替えるのは難しいですからね」
休憩中も、マリエルたちは疲れた様子を見せない。そのおかげで隊の雰囲気も明るくなった。
アニェスは相変わらずだが、直接何かを言ってくることはないので放置している。オーギュストたちがミシュリーヌと接触しないように気遣ってくれているおかげでもある。そういった負担も、マリエルたちが合流したことにより分散したので良かった。申し訳ないとは思っていたが、ミシュリーヌが動いて好転することではない。
ただ、せっかくうまく回っているが、この人数での行動は調査隊と合流するまでだと聞いている。オーギュストがマリエルからの報告を受けて、二手に分かれることを決めたからだ。報告の内容については、ミシュリーヌも概要だけ教えてもらっている。
公爵邸は今どのようになっているのだろう。偽物の聖女の件も気になるし、ガエルのことも心配だ。
ガエルがエレオノーレとの結婚を先延ばしにしていたのも、不貞を知っていたからかもしれない。オーギュストとヴァネッサの関係を誤解していたときのことを思い出せば、ミシュリーヌには他人事とは思えない。ガエルは優しい人だ。他の軽薄な男性とは何かが違う。女遊びが盛んだったのも、自分に非がある形で婚約を解消するための演技だったのではないだろうか?
オーギュストに話したら、難しい顔をして悩みだしてしまった。オーギュストはガエルがエレオノーレの不貞に気づいていなかったとみているらしい。ミシュリーヌが、黙ってしまったオーギュストを見つめていると、『ミシュリーヌはガエル兄上贔屓だね』と笑っていたが、本音は聞かせてもらえなかった。
フリルネロ公爵領に入ってしばらく進むと、サビーヌたちが暮らす街が見えてきた。ジュリーたち四人を宿で休ませ、ミシュリーヌはオーギュストとともに、まずは冒険者ギルドに向かった。調査隊の本隊は出発した後だが、何班かが残って冒険者と協力し街の防衛にあたっている。拠点はギルド内に借りているので、現在の状況を聞くためだ。
調査隊の行軍は、魔導師団については問題なく行われているらしい。この街に残った調査隊の魔導師団員は『他の団のことなので』と言葉を濁していたが、騎士団側でアニェスのように貴族らしさを捨てきれない者が問題を起こしているようだ。オーギュストは『魔獣の方がマシだな』と苦笑していた。
調査隊と協力する冒険者の中にはヤニックもいて、冒険者ギルドで会ったので少し話をすることもできた。強行日程で王都に行ってもらったが、帰領後もすぐに活動を再開しており問題なく過ごしているようだ。
逆にミシュリーヌの方が無茶をしたのではないかと心配されてしまった。ヤニックは二人の関係修復も喜んでくれていた。
『お二人の様子を見て安心しました』
『迷惑をかけたな』
オーギュストは何やら気まずそうにしていたので、ヤニックに相談でもしたのかもしれない。
オーギュストが挨拶に行くと言うので、サビーヌとも再会することができた。サビーヌはミシュリーヌの正体に気がついていたのか、夫としてオーギュストを紹介したら恭しく対応していた。
「妻が世話になった。世間知らずのミーシャが無事でいられたのは、あなたのおかげだ。感謝する」
オーギュストがミシュリーヌの保護者のように、サビーヌにお礼を言う。なんとなくムズムズしたが、今回は黙って一緒に頭を下げるに留めた。
オーギュストは急ぎで行きたい場所があると言うので一旦分かれたが、ミシュリーヌはサビーヌの家にお邪魔して話をすることもできた。サビーヌが緊張していたので、気を使って席を外してくれたのだろう。
「ミーシャのおかげで穏やかな暮らしができているわ。本当にありがとう」
サビーヌの夫であるリュックは順調に回復しており、冒険者業を近々再開する予定らしい。ミシュリーヌが診察してみたが、魔素はきちんと抜けているようで何よりだ。あそこまで進行している状態での治療はあまりなかったので、後遺症もないと聞いて安心する。
「何か困っていることはありますか? 流通が悪いと聞きました」
「この街は比較的落ち着いているわ。ただ……」
サビーヌの街は領境に近いため、商会と冒険者が協力して流通を保っているらしい。ただ、他の街を助ける余力まではない。親類を頼ってこの街に逃げて来る者の話を聞くと、他の街はかなり困っているらしい。
「……」
「王都から支援が入っているので、少しずつ改善してくると思います」
言葉を詰まらせたミシュリーヌの代わりに、護衛をしていたマリエルがにこやかに伝えてくれる。ミシュリーヌが倒れなければ、もう少し早く助けられたかもしれない。そんなふうに思っても、謝罪を伝えることは叶わない。一緒に旅をしていたサビーヌが相手でも、聖女の謝罪は重すぎるのだ。ミシュリーヌは心の中で謝罪して、オーギュストの待つ宿へと戻った。
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