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おまけ2▶微笑みの理由【ミシュリーヌ】一話完結
微笑みの理由
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【終章16話の後、社交デビューのパーティーでのお話です】
国王一家への挨拶が終わると、パーティー会場に華やかな音楽が流れ出す。今日のダンスの主役は成人を迎えた聖女ミシュリーヌだ。ミシュリーヌは弦楽器の美しい音色に導かれて、オーギュストとともに二曲踊った。昨年の祝賀パーティーのときとは違い何の憂いもなく、二人で踊るダンスは純粋に楽しい。
「ミシュリーヌ。誰かに何か言われたら、すぐに私に報告するんだよ」
オーギュストは曲が変わると念押しするように言って、ミシュリーヌを会場の隅にエスコートする。
「分かっておりますわ」
ミシュリーヌは会場入り前にも聞いた言葉に笑顔で了承した。昨年の祝賀パーティーがオーギュストの頭を過ぎったのだろう。この会場にヘクターやヴァネッサの姿はもちろんないが、ミシュリーヌも同じなので気持ちは分かる。
オーギュストが向かった先で待っていたのは、予定通りフリルネロ公爵夫妻だった。ガエルに頼まれて、オーギュストがオレリーと踊ることになっている。ガエルが結婚してから発覚したのだが、彼も本気の相手には過保護だったらしい。
「ミシュリーヌ妃殿下、僕とも一曲お願いできますか?」
ガエルが笑顔で歩み寄り、ミシュリーヌに王子らしい礼をとる。
「はい、よろしくお願いいたします」
ミシュリーヌはオーギュストに促されてガエルの手をとった。オーギュストもすぐにオレリーに申し出て、四人でダンスの輪に再び加わる。
「僕だってモテる方なのに、オーギュストが安心しきっているのが納得いかないな」
ガエルが笑顔で踊りながら不満を漏らす。どうやら、パートナーの入れ替えはオレリーだけへの計らいではないようだ。相変わらずのオーギュストの過保護さに、ミシュリーヌはクスリと笑う。ガエルの視線を辿ると、オーギュストはオレリーと優雅に踊っていた。オーギュストの動きがミシュリーヌと踊るときより滑らかな気がする。オレリーは久しぶりの社交だと聞いていたが、ダンスは得意のようだ。
ミシュリーヌが二人のダンスを思わず目で追っていると、オーギュストの表情が一瞬ほころぶ。すぐに無表情に戻ったが、大勢の前であんな表情をするなんてあまりない。去年の祝賀パーティーでヴァネッサと踊っていたときの姿と重なる。
「やっぱり、気にはなっていたみたいだね」
「えっ?」
ミシュリーヌがガエルに視線を戻すと、意味深に笑った。
「オーギュストだよ。ミシュリーヌ妃が自分を見ていることに気づいて安心したみたい」
「そうでしょうか? オレリー様とのダンスを楽しんでいるように見えますよ」
ミシュリーヌは、オレリーがガエルの妻だと分かっていても複雑な気持ちになる。無意識にオーギュストを見つめていると、こちらに気づいて『どうした?』と聞くように見つめてくる。ミシュリーヌは『何でもない』とオーギュストに表情で伝えた。
「ミシュリーヌ妃は可愛いね。オーギュストが過保護になるのも分かるよ。さぁ、オーギュストを見るのはそのくらいにしよう。ダンスのパートナーは僕だよ」
ガエルが楽しそうに言ってステップを変える。華やかなダンスだが、ミシュリーヌの技量を把握して踊ってくれているのが分かる。ミシュリーヌが優雅で美しく見えるように引き立て役に徹している。これが多くの女性を虜にしてきた『みんなの王子様』の片鱗なのだろう。
「楽しかったよ。また、踊ろうね」
曲が変わるとガエルが妖艶な笑みを浮かべて言う。その笑顔はオーギュストにそっくりで、やはり兄弟なのだと実感する。ミシュリーヌは自然に微笑んでお礼を言った。
「ミシュリーヌ?」
呼ばれてそちらに視線を向けると、オーギュストがオレリーをエスコートして歩いてきていた。表情に警戒の色が見えて、ミシュリーヌは首を傾げる。
「僕の弟も可愛いよね」
ガエルがミシュリーヌにだけ聞こえるように呟いて、オレリーとともに去っていく。女性たちがガエルの周りに集まってきていたが、ガエルは笑顔のまま遠ざけていた。『みんなの王子様』は卒業らしい。
「ずいぶん楽しそうだったけど、ガエル兄上と何を話してたんだ?」
「内緒ですわ」
「内緒なのか?」
いつものオーギュストならすぐに引いてくれるのに、なぜか不機嫌そうな顔でジーッと見つめてくる。自惚れかもしれないが、オーギュストはガエルに嫉妬しているように見えた。
『ミシュリーヌ妃が自分を見ていることに気づいて安心したみたい』
ガエルの指摘は、あながち間違いでもないのかもしれない。
「オーギュスト様は素敵だなって話していただけですわ」
ミシュリーヌは緩みそうになった頬を引き締めて、愛しい青い瞳を見上げた。
終
―――――
【あとがき】
お読みいただきありがとうございます。本編に入り切らなかった一章の6話目に出てくるオーギュストの微笑みの理由について書いてみました。楽しんでいただけたら嬉しいです。
国王一家への挨拶が終わると、パーティー会場に華やかな音楽が流れ出す。今日のダンスの主役は成人を迎えた聖女ミシュリーヌだ。ミシュリーヌは弦楽器の美しい音色に導かれて、オーギュストとともに二曲踊った。昨年の祝賀パーティーのときとは違い何の憂いもなく、二人で踊るダンスは純粋に楽しい。
「ミシュリーヌ。誰かに何か言われたら、すぐに私に報告するんだよ」
オーギュストは曲が変わると念押しするように言って、ミシュリーヌを会場の隅にエスコートする。
「分かっておりますわ」
ミシュリーヌは会場入り前にも聞いた言葉に笑顔で了承した。昨年の祝賀パーティーがオーギュストの頭を過ぎったのだろう。この会場にヘクターやヴァネッサの姿はもちろんないが、ミシュリーヌも同じなので気持ちは分かる。
オーギュストが向かった先で待っていたのは、予定通りフリルネロ公爵夫妻だった。ガエルに頼まれて、オーギュストがオレリーと踊ることになっている。ガエルが結婚してから発覚したのだが、彼も本気の相手には過保護だったらしい。
「ミシュリーヌ妃殿下、僕とも一曲お願いできますか?」
ガエルが笑顔で歩み寄り、ミシュリーヌに王子らしい礼をとる。
「はい、よろしくお願いいたします」
ミシュリーヌはオーギュストに促されてガエルの手をとった。オーギュストもすぐにオレリーに申し出て、四人でダンスの輪に再び加わる。
「僕だってモテる方なのに、オーギュストが安心しきっているのが納得いかないな」
ガエルが笑顔で踊りながら不満を漏らす。どうやら、パートナーの入れ替えはオレリーだけへの計らいではないようだ。相変わらずのオーギュストの過保護さに、ミシュリーヌはクスリと笑う。ガエルの視線を辿ると、オーギュストはオレリーと優雅に踊っていた。オーギュストの動きがミシュリーヌと踊るときより滑らかな気がする。オレリーは久しぶりの社交だと聞いていたが、ダンスは得意のようだ。
ミシュリーヌが二人のダンスを思わず目で追っていると、オーギュストの表情が一瞬ほころぶ。すぐに無表情に戻ったが、大勢の前であんな表情をするなんてあまりない。去年の祝賀パーティーでヴァネッサと踊っていたときの姿と重なる。
「やっぱり、気にはなっていたみたいだね」
「えっ?」
ミシュリーヌがガエルに視線を戻すと、意味深に笑った。
「オーギュストだよ。ミシュリーヌ妃が自分を見ていることに気づいて安心したみたい」
「そうでしょうか? オレリー様とのダンスを楽しんでいるように見えますよ」
ミシュリーヌは、オレリーがガエルの妻だと分かっていても複雑な気持ちになる。無意識にオーギュストを見つめていると、こちらに気づいて『どうした?』と聞くように見つめてくる。ミシュリーヌは『何でもない』とオーギュストに表情で伝えた。
「ミシュリーヌ妃は可愛いね。オーギュストが過保護になるのも分かるよ。さぁ、オーギュストを見るのはそのくらいにしよう。ダンスのパートナーは僕だよ」
ガエルが楽しそうに言ってステップを変える。華やかなダンスだが、ミシュリーヌの技量を把握して踊ってくれているのが分かる。ミシュリーヌが優雅で美しく見えるように引き立て役に徹している。これが多くの女性を虜にしてきた『みんなの王子様』の片鱗なのだろう。
「楽しかったよ。また、踊ろうね」
曲が変わるとガエルが妖艶な笑みを浮かべて言う。その笑顔はオーギュストにそっくりで、やはり兄弟なのだと実感する。ミシュリーヌは自然に微笑んでお礼を言った。
「ミシュリーヌ?」
呼ばれてそちらに視線を向けると、オーギュストがオレリーをエスコートして歩いてきていた。表情に警戒の色が見えて、ミシュリーヌは首を傾げる。
「僕の弟も可愛いよね」
ガエルがミシュリーヌにだけ聞こえるように呟いて、オレリーとともに去っていく。女性たちがガエルの周りに集まってきていたが、ガエルは笑顔のまま遠ざけていた。『みんなの王子様』は卒業らしい。
「ずいぶん楽しそうだったけど、ガエル兄上と何を話してたんだ?」
「内緒ですわ」
「内緒なのか?」
いつものオーギュストならすぐに引いてくれるのに、なぜか不機嫌そうな顔でジーッと見つめてくる。自惚れかもしれないが、オーギュストはガエルに嫉妬しているように見えた。
『ミシュリーヌ妃が自分を見ていることに気づいて安心したみたい』
ガエルの指摘は、あながち間違いでもないのかもしれない。
「オーギュスト様は素敵だなって話していただけですわ」
ミシュリーヌは緩みそうになった頬を引き締めて、愛しい青い瞳を見上げた。
終
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【あとがき】
お読みいただきありがとうございます。本編に入り切らなかった一章の6話目に出てくるオーギュストの微笑みの理由について書いてみました。楽しんでいただけたら嬉しいです。
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