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本音の露吐
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姉を差し置いて、婚約している男に物をねだったのか?
華やかさのある娘だと分かっていたが、それを利用するような、そんな娘だったか。
ショックでどうしていいか分からなくなる。
私の知る可愛いアレシアではないのか。
「お、お父様、私は、そんな」
うるうると光る目元に娘への可愛さと初めて感じる不快感に顔をしかめて、それを見たアレシアからボタッと涙がこぼれた。
「勘違いなさらないでくださいませ。我が家のアレシアは婚約中の殿方から頂いたものを身に付けるようなことはしません」
「そうですわねぇ。いつも身に付けるのは私達が買い与えたものだけです」
ピシャリと叩き切る物言いのグロッサとゆったりと呟く私の妻。
「だが、高額な貴金属はアレシアの部屋から見つけた」
「我が家も明細がある。婚約者のグロッサ嬢に渡したものとばかり。婚約者としてみっともないことを申し訳ないとは思うが、まあ、うちとしては息子のしたことだ。若い二人にとやかくは言うつもりもない。このまますんなり妹御が我が家に来るのなら、もうこれ以上の話し合いは不要だろう」
当主はまだアレシアを貰うことに反対はないらしい。
みっともないということは激しく同意だ。
私が諾と言えば済む。
しかしグロッサは何か言いたいことがあるようでうつ向いて静かに泣くアレシアを厳しく見つめていた。
妻も珍しくため息をついて苦笑いをしている。
首を捻って二人の話を待った。
「アレシア、いい加減おっしゃい。私を頼らないでちゃんと自分で言うのよ?いつも言うでしょう?そうやって愛想ばかり振り撒くからそうなるの。我が家の令嬢としてしっかりなさいっ!」
「ふえ!う、うえぇ、ふえ、ふえええっ!ご、ごめんなさいぃぃっ、お姉様ぁぁっ」
「まあまあ、グロッサったら。また泣かせて。お客様の前だと言うのに」
ほほほと妻はのんびりと笑い、メラメラと覇気を溢れさせたグロッサはアレシアを威圧している。
「甘やかしてはいけませんわ。お母様、アレシアは愛想ばかり上手で、そのくせお人好しの口下手。さあ、泣いてはいけませんっ。アレシア、早くおっしゃい!」
白状しないなら泣き止んで公爵家の嫁として毅然としなさいと怒鳴った。
「これから婚約者として、未来の夫としてこの方を、」
「いやー!ほ、本当はいや!こ、公爵夫人なんかイヤだぁ!もうこの人もいやぁ!大嫌いだもん!」
不敬にも、びっと嫡男に指をさして大っっ嫌い!と、号泣しながらもう一度怒鳴り付けた。
あまりの勢いに私達は呆然としたまま何も言えない。
「ずーっと我慢してた!義理のお兄さんになるから仲良くしてたのに!いつもうちとお姉様の悪口ばかり!愚痴ばっかりの嫌な人!違うって言うのに聞いてないぃ!もうやだぁぁ!」
立ち上がってグロッサと妻に抱きついてわんわん泣く。
「嫌って言ったの!結婚式までしちゃだめだから!私、嫌だったのにチューされたぁ!」
「このっ、」
気づいた自分が座っていた椅子を頭上に持ち上げて嫡男に襲いかかっていた。
叫んで逃げていたが頭に振り落とした。
うちの娘によくも、死ねと思いながら。
もう一度、振り上げたら妻の待てという言葉に反応して手が止まった。
「殿方は本当に騒がしいこと」
振り返ると、いつもと変わらない笑みだが頬がひくひくと引きつって隣のグロッサと同じ怒気を見せていた。
アレシアだけが大人しくグロッサの腕に抱かれて小さく、ひっく、ひっくと泣いていた。
「だから誰にも相談出来なかったのね。そんな望まない不埒なことをされて、恐ろしく恥ずかしかったでしょう」
グロッサが声を低く震わせた。
「ふえ、ひっく、もうやだよぉ。怖いもん」
「アレシア、もう泣かないのよ?お客様の前でしっかりなさい」
「お母様ぁ」
「私の婚約者と慕った結果がこういうことになってしまったのね。だから愛想ばかり振り撒くなというのよ。あなたは人だけでなく殿方にも好かれやすいのだから」
「ご、ごめんなさい。でもニコニコするしか出来ないもん」
いつもの大人びた様子はなく幼い子供のように甘えて舌っ足らず。
「さて、ご当主。話し合いはまだ終わりそうにありませんわね?お父様も続きをよろしいかしら?」
「私もよろしいかしら?母として物申したいわぁ」
「私も姉として、もと婚約者として。もちろんお話をする資格がございますわよね?」
女ふたりの圧に圧倒された。
当主を見ると、こめかみを強く押さえながら倒れた嫡男をゴミのように見つめていた。
「……構わない。どうやら思っていた以上に息子は愚か者だったようだ」
華やかさのある娘だと分かっていたが、それを利用するような、そんな娘だったか。
ショックでどうしていいか分からなくなる。
私の知る可愛いアレシアではないのか。
「お、お父様、私は、そんな」
うるうると光る目元に娘への可愛さと初めて感じる不快感に顔をしかめて、それを見たアレシアからボタッと涙がこぼれた。
「勘違いなさらないでくださいませ。我が家のアレシアは婚約中の殿方から頂いたものを身に付けるようなことはしません」
「そうですわねぇ。いつも身に付けるのは私達が買い与えたものだけです」
ピシャリと叩き切る物言いのグロッサとゆったりと呟く私の妻。
「だが、高額な貴金属はアレシアの部屋から見つけた」
「我が家も明細がある。婚約者のグロッサ嬢に渡したものとばかり。婚約者としてみっともないことを申し訳ないとは思うが、まあ、うちとしては息子のしたことだ。若い二人にとやかくは言うつもりもない。このまますんなり妹御が我が家に来るのなら、もうこれ以上の話し合いは不要だろう」
当主はまだアレシアを貰うことに反対はないらしい。
みっともないということは激しく同意だ。
私が諾と言えば済む。
しかしグロッサは何か言いたいことがあるようでうつ向いて静かに泣くアレシアを厳しく見つめていた。
妻も珍しくため息をついて苦笑いをしている。
首を捻って二人の話を待った。
「アレシア、いい加減おっしゃい。私を頼らないでちゃんと自分で言うのよ?いつも言うでしょう?そうやって愛想ばかり振り撒くからそうなるの。我が家の令嬢としてしっかりなさいっ!」
「ふえ!う、うえぇ、ふえ、ふえええっ!ご、ごめんなさいぃぃっ、お姉様ぁぁっ」
「まあまあ、グロッサったら。また泣かせて。お客様の前だと言うのに」
ほほほと妻はのんびりと笑い、メラメラと覇気を溢れさせたグロッサはアレシアを威圧している。
「甘やかしてはいけませんわ。お母様、アレシアは愛想ばかり上手で、そのくせお人好しの口下手。さあ、泣いてはいけませんっ。アレシア、早くおっしゃい!」
白状しないなら泣き止んで公爵家の嫁として毅然としなさいと怒鳴った。
「これから婚約者として、未来の夫としてこの方を、」
「いやー!ほ、本当はいや!こ、公爵夫人なんかイヤだぁ!もうこの人もいやぁ!大嫌いだもん!」
不敬にも、びっと嫡男に指をさして大っっ嫌い!と、号泣しながらもう一度怒鳴り付けた。
あまりの勢いに私達は呆然としたまま何も言えない。
「ずーっと我慢してた!義理のお兄さんになるから仲良くしてたのに!いつもうちとお姉様の悪口ばかり!愚痴ばっかりの嫌な人!違うって言うのに聞いてないぃ!もうやだぁぁ!」
立ち上がってグロッサと妻に抱きついてわんわん泣く。
「嫌って言ったの!結婚式までしちゃだめだから!私、嫌だったのにチューされたぁ!」
「このっ、」
気づいた自分が座っていた椅子を頭上に持ち上げて嫡男に襲いかかっていた。
叫んで逃げていたが頭に振り落とした。
うちの娘によくも、死ねと思いながら。
もう一度、振り上げたら妻の待てという言葉に反応して手が止まった。
「殿方は本当に騒がしいこと」
振り返ると、いつもと変わらない笑みだが頬がひくひくと引きつって隣のグロッサと同じ怒気を見せていた。
アレシアだけが大人しくグロッサの腕に抱かれて小さく、ひっく、ひっくと泣いていた。
「だから誰にも相談出来なかったのね。そんな望まない不埒なことをされて、恐ろしく恥ずかしかったでしょう」
グロッサが声を低く震わせた。
「ふえ、ひっく、もうやだよぉ。怖いもん」
「アレシア、もう泣かないのよ?お客様の前でしっかりなさい」
「お母様ぁ」
「私の婚約者と慕った結果がこういうことになってしまったのね。だから愛想ばかり振り撒くなというのよ。あなたは人だけでなく殿方にも好かれやすいのだから」
「ご、ごめんなさい。でもニコニコするしか出来ないもん」
いつもの大人びた様子はなく幼い子供のように甘えて舌っ足らず。
「さて、ご当主。話し合いはまだ終わりそうにありませんわね?お父様も続きをよろしいかしら?」
「私もよろしいかしら?母として物申したいわぁ」
「私も姉として、もと婚約者として。もちろんお話をする資格がございますわよね?」
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