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市場地区の煤けたレンガと湿った石畳が支配する世界から、エーテルポート地区のガラスと鋼鉄が織りなす摩天楼への移動は、まるで一夜にして別の国へ、あるいは別の時代へと跳躍したかのような感覚をセラフィナにもたらした。
「ようこそ、セラフィナ。ここが君の新しい事業の拠点だ」
セバスチャン・モラン公爵は、誇らしげな響きを声に含ませて言った。
彼の背後には、湾曲したガラスの壁面が空の青を映し込む、優美でありながらも機能的な高層ビルのエントランスが口を開けていた。
モラン公爵が所有するこのビルは、エーテルポート地区でもひときわ高く、最新の魔導技術研究の粋を集めた拠点として知られている。
セラフィナは、忠実な侍女クロエ、そして不承不承ながらも付いてきた師のギルバートと共に、息をのんでその光景を見上げていた。
「これが……。まるで夢のようです。私のような者には、あまりに過分な……」
セラフィナがかすれた声で呟くと、セバスチャンは彼女に向き直り、その灰色の瞳に真摯な光を宿した。
「過分ではない。君の才能に対する正当な投資だ。眩しいのは当然だろう、ここは王国中の才能と資本、その光を集める場所なのだから。そして君こそが、その中心で最も強い光を放つことになる」
彼の言葉は、甘い囁きではなく、事実を告げる科学者のように淡々としていた。それがかえって、セラフィナの胸に深く、確かなものとして響いた。
彼らに案内されたのは、ビルの最上階に近い、ワンフロアを丸ごと使った広大な空間だった。
床から天井まで続く一面のガラス窓からは、王都アストラリスの壮大なパノラマが一望できた。
磨き上げられた床に空の光が反射し、まるで雲の上に立っているかのような錯覚を覚える。
歴史的な旧市街、権力の象徴である王宮の丘、そして活気あふれる港まで。
かつて自分が属していた世界、そして追放された世界が、今は遥か眼下に広がっている。
「まあ……! お嬢様、見てください! まるで雲の上のお城ですわ! ここからなら、あのベルフォート公爵家のお屋敷だって、米粒みたいに見えますわね!」
クロエが感嘆の声を漏らした。彼女の目は、室内に設えられた最新鋭の設備に釘付けになっている。
魔力を安定供給する大型のエーテル循環器が静かなハミングを響かせ、様々な素材の物性を瞬時に解析するスペクトル分析盤が虹色の光を点滅させている。
そして中央に鎮座するのは、複雑なエーテル織のパターンを編むための演算補助装置。どれもギルバートの古びた工房にあったものとは、世代が三つも四つも違う代物だった。
「ふん、最新の筐体(きょうたい)を並べただけでは意味がない。中身が伴っていなければ、ただの鉄屑だ」
ギルバートは腕を組み、わざとらしく鼻を鳴らしたが、その目が子供のように輝いているのをセラフィナは見逃さなかった。
彼は早速、演算補助装置に近づき、その制御パネルにそっと触れる。
かすかに震える指先が、老いた技術者の魂が最高の玩具を与えられて歓喜していることを物語っていた。
「気に入ってもらえたようで何よりだ、ナイジェル元王宮技術師」
セバスチャンの言葉に、ギルバートはびくりと肩を震わせ、気まずそうに咳払いをした。
「別に……。まあ、埃を被っていないだけマシだということだ」
セラフィナは、そんな師の姿に思わず笑みをこぼした。そして、広大な空間の中心に歩みを進める。
ここが、彼女の戦場。彼女の聖域。
「名前を、決めました」
窓の外に広がる景色を見つめながら、彼女は言った。
「このアトリエの名前です」
セバスチャンは黙って彼女の言葉を待った。
「『アウラ』と名付けます」
「アウラ……。なるほど、ラテン語の『微風』、あるいは『輝き』か。慧眼な名だ」
「ええ。ドレスはただの布ではありません。かつての私のように、ただの『飾り物』でもない」
「それを纏う人の内なる輝き、その人だけのオーラを引き出し、増幅させるためのもの。私の創る服は、着る人の尊厳を守る鎧であり、未来へ羽ばたくための翼であってほしいのです」
セバスチャンは満足げに頷いた。
「素晴らしい名前だ。君の哲学そのものを表している。この『アウラ』から、リリア王国に新しい風を、そして新しい輝きを吹き込むことになるだろう」
彼の言葉に、セラフィナは強く頷いた。
失われたものはあまりに大きい。しかし、今、彼女の手の中には、無限の可能性を秘めた未来が、確かな手触りをもって存在していた。
■ ■ ■ ■ ■ ■
アトリエ「アウラ」の始動は、静かだが迅速に進められた。
クロエは、持ち前の明るさと人当たりの良さを活かし、顧客管理と広報の役割を担うことになった。
彼女はセバスチャンが手配した専門家から、新興の魔術的情報網「エーテルネット」を用いた宣伝方法や予約システムの管理について、驚くべき速さで吸収していった。
ギルバートは、水を得た魚のように研究開発室に籠った。
彼はセラフィナが設計した新しい魔導具の試作や、エーテル織をより安定させるための基礎研究に没頭している。
時折、彼の部屋から「そうだ、この共振周波数だ!」「うわっ!」という歓声や、失敗したらしい小規模な爆発音が聞こえてくるのが、アトリエの日常になりつつあった。
そしてセラフィナは、セバスチャンと事業の骨子を詰めるための会議を重ねていた。
「最初の事業として、私は『リメイク』を提案します」
エーテル・プロジェクションで投影された仮想の設計図を指しながら、セラフィナは言った。
「新作のオートクチュールをいきなり売り出すのは、リスクが高すぎます。まだ『アウラ』にも、私自身にも、公的な名声はありませんから」
「ふむ。堅実な判断だ。だが、リメイクでは大きな利益は見込めないのではないか? 伝統派の仕立て屋ギルドも、古くから手掛けている分野だ」
セバスチャンは、投資家としての冷静な視点で問いかける。
「彼らの行うリメイクは、あくまで『修繕』や『寸法直し』の延長です。私がやろうとしているのは、それとは全く異なる『再創造(リ・クリエイション)』です」
セラフィナは指先で空中に新たな図形を描いた。それは、古い繭が解かれ、新しい蝶が生まれるイメージだった。
「ターゲットは二層です。一つは、高価な新作ドレスを買う余裕はないけれど、社交界での見栄えを気にしなければならない下級貴族の令嬢たちです」
「彼女たちは、母親やお姉様から譲り受けた流行遅れのドレスを、少ない予算で最新のデザインに変えたいと切望しています」
「なるほど。潜在的な需要は大きいだろうな」
「もう一つのターゲットは、むしろ富裕層です」
「特に、先代から受け継いだ思い出のドレス……例えば、亡き母の形見のウェディングドレスなどを、ただ仕舞っておくのではなく、現代的なパーティードレスとして蘇らせたいと願う貴婦人たちです」
「こちらには、感性という付加価値で、高額な料金を設定できます」
セバスチャンの目が、興味深そうに細められた。
「面白い。需要の異なる二つの市場を、同じ技術で同時に開拓するのか。そして何より……」
「ええ」
セラフィナは彼の言わんとすることを正確に理解し、頷いた。
「私の『エーテル織』の技術を、最も効果的に、そして最も劇的に見せることができます」
「布を裁断し、縫い合わせるのではありません。糸の一本一本を魔力で解き、顧客の目の前で、全く新しい形に編み直してみせるのです」
「……ギルドの職人たちには、理解すらできないでしょう。あれはもはや仕立てではなく、魔法そのものですから」
セバスチャンは満足げに呟いた。
「……破壊的イノベーション、だな。単なる服飾業界の革命ではない」
「ええ。彼らが拠り所とする伝統や権威そのものを、根底から覆す『破壊』です」
「そうだ。これは、服飾業界における『魔導技術革命』の始まりとなる」
二人の視線が交錯する。そこにあるのは、男女の甘い駆け引きではない。同じ未来を見つめる、共犯者たちの鋭い輝きだった。
「最初の顧客は、私が手配しよう」
セバスチャンは言った。
「口コミの効果を最大化するには、最初の一歩が肝心だ。信頼できる人物を選ぶ必要がある」
こうして、「アウラ」の最初の挑戦が、静かに幕を開けた。
■ ■ ■ ■ ■ ■
数日後、アトリエ「アウラ」に最初の顧客が訪れた。
やってきたのは、ロザリンド・アシュフォード男爵夫人。
夫を早くに亡くし、女手一つで幼い息子を育てている、控えめで心優しい女性だった。
彼女の家格は低く、裕福とは言えないが、その清廉な人柄は一部の貴族たちの間で知られていた。
セバスチャンが選んだ、まさにうってつけの人物だった。
「こ、こんにちは……。こちらで、古いドレスを新しくしていただけると伺いまして」
ロザリンド夫人は、アトリエの壮麗さに気圧されたのか、少し緊張した面持ちでクロエに話しかけた。彼女が抱えているのは、丁寧に布で包まれた古いドレスボックスだった。
「ようこそお越しくださいました、アシュフォード男爵夫人。デザイナーのセラフィナが、奥のサロンでお待ちしております」
クロエの柔らかな笑顔に、ロザリンド夫人の緊張が少しだけほぐれたようだった。
ガラス張りのサロンに通された彼女を、セラフィナは穏やかな微笑みで迎えた。
「私がセラフィナです。本日はお越しいただき、ありがとうございます。どうぞ、そのドレスを見せていただけますか?」
ロザリンド夫人は、おずおずとドレスボックスの蓋を開けた。
中から現れたのは、生成り色のシルクでできた、ハイウエストでパフスリーブの、一目で二十年以上前のものとわかるデザインのドレスだった。上質な生地ではあるが、全体的に黄ばみ、いくつか小さな染みも見受けられる。
「これは……私が結婚する時に、亡き母が作ってくれたものなのです」
ロザリンド夫人は、愛おしそうにドレスの生地を撫でた。
「母は刺繍が得意で……見てください、この胸元の小さなスズランの刺繍を」
「でも、このままではもう着ることはできません。けれど、捨てることも、ただ仕舞っておくこともできなくて……」
「もし、このドレスが、今度の王宮の季節の茶会で着られるようなものに生まれ変わったら、どんなに素敵だろうと……」
彼女の声は、次第に涙で潤んでいった。
セラフィナは、そのドレスに込められた想いの深さを感じ取り、静かに頷いた。
「お母様の愛情が、たくさん詰まった素敵なドレスですね。ご安心ください。このドレスの魂はそのままに、新しい命を吹き込んでみせます」
セラフィナは立ち上がると、サロンの中央にドレスを掲げた。
「まず、完成のイメージを共有しましょう」
彼女が指を鳴らすと、室内の照明が落ち、ドレスの周囲に淡い光の粒子が集まり始めた。エーテル・プロジェクターが起動したのだ。
光は、古いドレスのシルエットをなぞり、やがて全く新しい形を描き出す。
ハイウエストは、流れるようなエンパイアラインへと変化し、古風なパフスリーブは、片方の肩を大胆に露出させる、優雅なアシンメトリーなデザインへと変わっていく。
「まあ……!」
ロザリンド夫人は、目の前で起きている魔法のような光景に、驚きの声を上げた。投影された立体的なドレスは、彼女が夢に見た以上に洗練され、美しかった。
「そして、お母様の刺繍ですが……」
セラフィナは微笑んだ。
「このスズランのモチーフを、ドレス全体に散りばめましょう。光の加減で、まるで銀糸の刺繍のように、さりげなく浮かび上がるように」
その言葉と共に、投影されたドレスの上に、無数の小さなスズランが、星屑のようにきらめきながら現れた。
「……お願いします! ぜひ、そのようにお願いします!」
ロザリンド夫人は、興奮で頬を上気させながら懇願した。
「かしこまりました。では、始めます」
セラフィナは、水晶でできた片眼鏡型の「ニューロ・レンズ」をそっと装着した。彼女の視界に、現実世界と重なるようにして、無数の魔術的な設計図と青白い数式が網膜の上に浮かび上がる。
彼女はドレスに向かって、そっと両手を差し伸べた。
深呼吸一つ。彼女の意識は、ニューロ・レンズを通じて魔力回路と直結し、エーテル織の根源へと深く潜っていく。
次の瞬間、信じられない光景が広がった。
ロザリンド夫人の母の形見であるドレスが、ふわりと宙に浮き上がったのだ。
そして、その生地を構成していた絹糸が、一本、また一本と、まるで意思を持っているかのようにひとりでに解けていく。
静かな共鳴音が空間に満ち、古い魔力が浄化されていく清浄な匂いがした。
ドレスは形を失い、光り輝く無数の糸の奔流となった。
それはまるで、天の川がサロンの中に出現したかのようだった。
黄ばみや染みといった不純物は、この分解の過程で浄化され、光の粒子となって音もなく消えていく。
セラフィナは、指揮者のように優雅に腕を動かした。彼女の思考の速度に合わせ、ニューロ・レンズが複雑なエーテル織のパターンを生成し、光の糸たちに命令を下す。
糸の奔流は、渦を巻き、収束し、新たな形を編み始める。それは、先ほどエーテル・プロジェクションで見た、最新のデザインそのものだった。
裁断も、縫製も、一切ない。ただ、純粋な魔力によって、糸が織り上げられ、布となり、立体的なフォルムが構築されていく。
その光景は、あまりに幻想的で、神聖でさえあった。ロザリンド夫人は、祈るように両手を胸の前で組み、瞬きも忘れて見入っている。まるで、亡き母の優しい手が、目の前で奇跡を紡いでいるかのように感じられた。
やがて、光が収まり、再創造されたドレスが、静かにマネキンの上へと舞い降りた。
そこに在ったのは、古びた形見の面影を残しながらも、完全に生まれ変わった、息をのむほど美しい一着のドレスだった。
生成り色だったシルクは、月の光を浴びたかのような、清らかなパールホワイトに輝いている。
そして、その生地の至る所に、かつて胸元にだけあったスズランの刺繍が、銀色の幻のように、見る角度によって淡く浮かび上がっていた。
「……ああ……」
ロザリンド夫人は、震える手でドレスに触れた。その生地は、新品以上の滑らかさと、魔力を帯びた不思議な温かみを持っていた。
「ああ……母が……。まるで、天国にいる母が、私のためにこのドレスをもう一度仕立ててくれたようです……! 母の想いも、温もりも、この中に生きている……!」
彼女の瞳から、大粒の涙がとめどなく溢れ落ちた。それは、悲しみの涙ではない。感謝と、感動と、そして純粋な喜びの涙だった。
セラフィナはニューロ・レンズを外し、安堵の息をついた。初めての「リメイク」は、完璧な成功を収めた。
■ ■ ■ ■ ■ ■
その夜、アトリエのサロンで、セラフィナたちはささやかな祝杯をあげていた。
「いやはや、大したもんだ。あのエーテル織の安定性は、王宮の連中でもそうそう実現できんぞ」
ギルバートが、上機嫌で高級なエールを呷っている。
「ロザリンド様、本当に喜んでいらっしゃいましたね! きっと、お茶会で注目の的になりますわ!」
クロエも、自分のことのように嬉しそうだ。
そこへ、セバスチャンが祝いの花束を手に現れた。
「見事な船出だったと聞いたよ、セラフィナ」
彼は、ギルバートが魔導カメラで記録していたリメイクの様子の映像水晶を受け取ると、興味深そうにそれを再生した。光の糸が舞い、ドレスが再創造される光景に、彼の瞳が鋭く輝く。
「……素晴らしい。これは単なるファッションではない。記憶と技術の融合だ」
「物語を売っていると言ってもいい」
「ベルフォート家の瘴気反応炉が生み出す、魂のない無機質なエネルギーとは、まさに対極にあるものだ」
彼はセラフィナに向き直った。
「これは、始まりに過ぎない。ロザリンド夫人のような人々が、君の最高の広告塔になるだろう」
「そして、次はいよいよ本丸だ。王都デザインコンペ。君の才能を、王国全土に知らしめる時が来た」
セバスチャンの言葉に、セラフィナは力強く頷いた。
「はい。最高の『フェニックス』を、創り上げてみせます」
その頃、王宮で開かれていた夜会では、ジュリアン・ベルフォートが、新しい婚約者ヴィヴィアン・ルクレールを伴い、取り巻きたちに囲まれていた。
「そういえば、あのヴァレンシア家の娘はどうしたのかね? すっかり姿を見せなくなったが」
誰かが興味本位に尋ねた。
「ああ、セラフィナのことか」
ジュリアンは、ワイングラスを退屈そうに揺らしながら答えた。
「さあな、どこかの田舎で相変わらず地味な刺繍でもしているんじゃないか? あれくらいしか能のない、退屈で時代遅れの女だ。それが分相応というものだろう」
その言葉に、ヴィヴィアンが甲高い声で笑った。
「まあ、ジュリアン様ったら、お優しいのね。あんな華もなければ愛嬌もない方のことなど、もうお忘れになって。あの方の時代は、あの古臭いドレスと一緒に終わったのですわ。これからの王国を導くのは、ジュリアン様と、わたくしのような未来を見据えた力ですもの。ね?」
周囲から、追従の笑いが起こる。
彼らは誰も知らない。自分たちが嘲笑している「堕ちた星屑」が、今まさに天穹を創るための光を放ち始めたことなど、知る由もなかった。
セラフィナは、アトリエの窓から、無数の光がきらめく王都の夜景を見下ろしていた。
あの夜会の屈辱から、まだ数ヶ月しか経っていない。だが、世界はすっかり姿を変えていた。
いや、世界が変わったのではない。
自分が、世界を変え始めたのだ。
彼女の胸に、静かだが燃えるような闘志が満ちてくる。
これはまだ、序章に過ぎない。本当の戦いは、これから始まるのだ。
「ようこそ、セラフィナ。ここが君の新しい事業の拠点だ」
セバスチャン・モラン公爵は、誇らしげな響きを声に含ませて言った。
彼の背後には、湾曲したガラスの壁面が空の青を映し込む、優美でありながらも機能的な高層ビルのエントランスが口を開けていた。
モラン公爵が所有するこのビルは、エーテルポート地区でもひときわ高く、最新の魔導技術研究の粋を集めた拠点として知られている。
セラフィナは、忠実な侍女クロエ、そして不承不承ながらも付いてきた師のギルバートと共に、息をのんでその光景を見上げていた。
「これが……。まるで夢のようです。私のような者には、あまりに過分な……」
セラフィナがかすれた声で呟くと、セバスチャンは彼女に向き直り、その灰色の瞳に真摯な光を宿した。
「過分ではない。君の才能に対する正当な投資だ。眩しいのは当然だろう、ここは王国中の才能と資本、その光を集める場所なのだから。そして君こそが、その中心で最も強い光を放つことになる」
彼の言葉は、甘い囁きではなく、事実を告げる科学者のように淡々としていた。それがかえって、セラフィナの胸に深く、確かなものとして響いた。
彼らに案内されたのは、ビルの最上階に近い、ワンフロアを丸ごと使った広大な空間だった。
床から天井まで続く一面のガラス窓からは、王都アストラリスの壮大なパノラマが一望できた。
磨き上げられた床に空の光が反射し、まるで雲の上に立っているかのような錯覚を覚える。
歴史的な旧市街、権力の象徴である王宮の丘、そして活気あふれる港まで。
かつて自分が属していた世界、そして追放された世界が、今は遥か眼下に広がっている。
「まあ……! お嬢様、見てください! まるで雲の上のお城ですわ! ここからなら、あのベルフォート公爵家のお屋敷だって、米粒みたいに見えますわね!」
クロエが感嘆の声を漏らした。彼女の目は、室内に設えられた最新鋭の設備に釘付けになっている。
魔力を安定供給する大型のエーテル循環器が静かなハミングを響かせ、様々な素材の物性を瞬時に解析するスペクトル分析盤が虹色の光を点滅させている。
そして中央に鎮座するのは、複雑なエーテル織のパターンを編むための演算補助装置。どれもギルバートの古びた工房にあったものとは、世代が三つも四つも違う代物だった。
「ふん、最新の筐体(きょうたい)を並べただけでは意味がない。中身が伴っていなければ、ただの鉄屑だ」
ギルバートは腕を組み、わざとらしく鼻を鳴らしたが、その目が子供のように輝いているのをセラフィナは見逃さなかった。
彼は早速、演算補助装置に近づき、その制御パネルにそっと触れる。
かすかに震える指先が、老いた技術者の魂が最高の玩具を与えられて歓喜していることを物語っていた。
「気に入ってもらえたようで何よりだ、ナイジェル元王宮技術師」
セバスチャンの言葉に、ギルバートはびくりと肩を震わせ、気まずそうに咳払いをした。
「別に……。まあ、埃を被っていないだけマシだということだ」
セラフィナは、そんな師の姿に思わず笑みをこぼした。そして、広大な空間の中心に歩みを進める。
ここが、彼女の戦場。彼女の聖域。
「名前を、決めました」
窓の外に広がる景色を見つめながら、彼女は言った。
「このアトリエの名前です」
セバスチャンは黙って彼女の言葉を待った。
「『アウラ』と名付けます」
「アウラ……。なるほど、ラテン語の『微風』、あるいは『輝き』か。慧眼な名だ」
「ええ。ドレスはただの布ではありません。かつての私のように、ただの『飾り物』でもない」
「それを纏う人の内なる輝き、その人だけのオーラを引き出し、増幅させるためのもの。私の創る服は、着る人の尊厳を守る鎧であり、未来へ羽ばたくための翼であってほしいのです」
セバスチャンは満足げに頷いた。
「素晴らしい名前だ。君の哲学そのものを表している。この『アウラ』から、リリア王国に新しい風を、そして新しい輝きを吹き込むことになるだろう」
彼の言葉に、セラフィナは強く頷いた。
失われたものはあまりに大きい。しかし、今、彼女の手の中には、無限の可能性を秘めた未来が、確かな手触りをもって存在していた。
■ ■ ■ ■ ■ ■
アトリエ「アウラ」の始動は、静かだが迅速に進められた。
クロエは、持ち前の明るさと人当たりの良さを活かし、顧客管理と広報の役割を担うことになった。
彼女はセバスチャンが手配した専門家から、新興の魔術的情報網「エーテルネット」を用いた宣伝方法や予約システムの管理について、驚くべき速さで吸収していった。
ギルバートは、水を得た魚のように研究開発室に籠った。
彼はセラフィナが設計した新しい魔導具の試作や、エーテル織をより安定させるための基礎研究に没頭している。
時折、彼の部屋から「そうだ、この共振周波数だ!」「うわっ!」という歓声や、失敗したらしい小規模な爆発音が聞こえてくるのが、アトリエの日常になりつつあった。
そしてセラフィナは、セバスチャンと事業の骨子を詰めるための会議を重ねていた。
「最初の事業として、私は『リメイク』を提案します」
エーテル・プロジェクションで投影された仮想の設計図を指しながら、セラフィナは言った。
「新作のオートクチュールをいきなり売り出すのは、リスクが高すぎます。まだ『アウラ』にも、私自身にも、公的な名声はありませんから」
「ふむ。堅実な判断だ。だが、リメイクでは大きな利益は見込めないのではないか? 伝統派の仕立て屋ギルドも、古くから手掛けている分野だ」
セバスチャンは、投資家としての冷静な視点で問いかける。
「彼らの行うリメイクは、あくまで『修繕』や『寸法直し』の延長です。私がやろうとしているのは、それとは全く異なる『再創造(リ・クリエイション)』です」
セラフィナは指先で空中に新たな図形を描いた。それは、古い繭が解かれ、新しい蝶が生まれるイメージだった。
「ターゲットは二層です。一つは、高価な新作ドレスを買う余裕はないけれど、社交界での見栄えを気にしなければならない下級貴族の令嬢たちです」
「彼女たちは、母親やお姉様から譲り受けた流行遅れのドレスを、少ない予算で最新のデザインに変えたいと切望しています」
「なるほど。潜在的な需要は大きいだろうな」
「もう一つのターゲットは、むしろ富裕層です」
「特に、先代から受け継いだ思い出のドレス……例えば、亡き母の形見のウェディングドレスなどを、ただ仕舞っておくのではなく、現代的なパーティードレスとして蘇らせたいと願う貴婦人たちです」
「こちらには、感性という付加価値で、高額な料金を設定できます」
セバスチャンの目が、興味深そうに細められた。
「面白い。需要の異なる二つの市場を、同じ技術で同時に開拓するのか。そして何より……」
「ええ」
セラフィナは彼の言わんとすることを正確に理解し、頷いた。
「私の『エーテル織』の技術を、最も効果的に、そして最も劇的に見せることができます」
「布を裁断し、縫い合わせるのではありません。糸の一本一本を魔力で解き、顧客の目の前で、全く新しい形に編み直してみせるのです」
「……ギルドの職人たちには、理解すらできないでしょう。あれはもはや仕立てではなく、魔法そのものですから」
セバスチャンは満足げに呟いた。
「……破壊的イノベーション、だな。単なる服飾業界の革命ではない」
「ええ。彼らが拠り所とする伝統や権威そのものを、根底から覆す『破壊』です」
「そうだ。これは、服飾業界における『魔導技術革命』の始まりとなる」
二人の視線が交錯する。そこにあるのは、男女の甘い駆け引きではない。同じ未来を見つめる、共犯者たちの鋭い輝きだった。
「最初の顧客は、私が手配しよう」
セバスチャンは言った。
「口コミの効果を最大化するには、最初の一歩が肝心だ。信頼できる人物を選ぶ必要がある」
こうして、「アウラ」の最初の挑戦が、静かに幕を開けた。
■ ■ ■ ■ ■ ■
数日後、アトリエ「アウラ」に最初の顧客が訪れた。
やってきたのは、ロザリンド・アシュフォード男爵夫人。
夫を早くに亡くし、女手一つで幼い息子を育てている、控えめで心優しい女性だった。
彼女の家格は低く、裕福とは言えないが、その清廉な人柄は一部の貴族たちの間で知られていた。
セバスチャンが選んだ、まさにうってつけの人物だった。
「こ、こんにちは……。こちらで、古いドレスを新しくしていただけると伺いまして」
ロザリンド夫人は、アトリエの壮麗さに気圧されたのか、少し緊張した面持ちでクロエに話しかけた。彼女が抱えているのは、丁寧に布で包まれた古いドレスボックスだった。
「ようこそお越しくださいました、アシュフォード男爵夫人。デザイナーのセラフィナが、奥のサロンでお待ちしております」
クロエの柔らかな笑顔に、ロザリンド夫人の緊張が少しだけほぐれたようだった。
ガラス張りのサロンに通された彼女を、セラフィナは穏やかな微笑みで迎えた。
「私がセラフィナです。本日はお越しいただき、ありがとうございます。どうぞ、そのドレスを見せていただけますか?」
ロザリンド夫人は、おずおずとドレスボックスの蓋を開けた。
中から現れたのは、生成り色のシルクでできた、ハイウエストでパフスリーブの、一目で二十年以上前のものとわかるデザインのドレスだった。上質な生地ではあるが、全体的に黄ばみ、いくつか小さな染みも見受けられる。
「これは……私が結婚する時に、亡き母が作ってくれたものなのです」
ロザリンド夫人は、愛おしそうにドレスの生地を撫でた。
「母は刺繍が得意で……見てください、この胸元の小さなスズランの刺繍を」
「でも、このままではもう着ることはできません。けれど、捨てることも、ただ仕舞っておくこともできなくて……」
「もし、このドレスが、今度の王宮の季節の茶会で着られるようなものに生まれ変わったら、どんなに素敵だろうと……」
彼女の声は、次第に涙で潤んでいった。
セラフィナは、そのドレスに込められた想いの深さを感じ取り、静かに頷いた。
「お母様の愛情が、たくさん詰まった素敵なドレスですね。ご安心ください。このドレスの魂はそのままに、新しい命を吹き込んでみせます」
セラフィナは立ち上がると、サロンの中央にドレスを掲げた。
「まず、完成のイメージを共有しましょう」
彼女が指を鳴らすと、室内の照明が落ち、ドレスの周囲に淡い光の粒子が集まり始めた。エーテル・プロジェクターが起動したのだ。
光は、古いドレスのシルエットをなぞり、やがて全く新しい形を描き出す。
ハイウエストは、流れるようなエンパイアラインへと変化し、古風なパフスリーブは、片方の肩を大胆に露出させる、優雅なアシンメトリーなデザインへと変わっていく。
「まあ……!」
ロザリンド夫人は、目の前で起きている魔法のような光景に、驚きの声を上げた。投影された立体的なドレスは、彼女が夢に見た以上に洗練され、美しかった。
「そして、お母様の刺繍ですが……」
セラフィナは微笑んだ。
「このスズランのモチーフを、ドレス全体に散りばめましょう。光の加減で、まるで銀糸の刺繍のように、さりげなく浮かび上がるように」
その言葉と共に、投影されたドレスの上に、無数の小さなスズランが、星屑のようにきらめきながら現れた。
「……お願いします! ぜひ、そのようにお願いします!」
ロザリンド夫人は、興奮で頬を上気させながら懇願した。
「かしこまりました。では、始めます」
セラフィナは、水晶でできた片眼鏡型の「ニューロ・レンズ」をそっと装着した。彼女の視界に、現実世界と重なるようにして、無数の魔術的な設計図と青白い数式が網膜の上に浮かび上がる。
彼女はドレスに向かって、そっと両手を差し伸べた。
深呼吸一つ。彼女の意識は、ニューロ・レンズを通じて魔力回路と直結し、エーテル織の根源へと深く潜っていく。
次の瞬間、信じられない光景が広がった。
ロザリンド夫人の母の形見であるドレスが、ふわりと宙に浮き上がったのだ。
そして、その生地を構成していた絹糸が、一本、また一本と、まるで意思を持っているかのようにひとりでに解けていく。
静かな共鳴音が空間に満ち、古い魔力が浄化されていく清浄な匂いがした。
ドレスは形を失い、光り輝く無数の糸の奔流となった。
それはまるで、天の川がサロンの中に出現したかのようだった。
黄ばみや染みといった不純物は、この分解の過程で浄化され、光の粒子となって音もなく消えていく。
セラフィナは、指揮者のように優雅に腕を動かした。彼女の思考の速度に合わせ、ニューロ・レンズが複雑なエーテル織のパターンを生成し、光の糸たちに命令を下す。
糸の奔流は、渦を巻き、収束し、新たな形を編み始める。それは、先ほどエーテル・プロジェクションで見た、最新のデザインそのものだった。
裁断も、縫製も、一切ない。ただ、純粋な魔力によって、糸が織り上げられ、布となり、立体的なフォルムが構築されていく。
その光景は、あまりに幻想的で、神聖でさえあった。ロザリンド夫人は、祈るように両手を胸の前で組み、瞬きも忘れて見入っている。まるで、亡き母の優しい手が、目の前で奇跡を紡いでいるかのように感じられた。
やがて、光が収まり、再創造されたドレスが、静かにマネキンの上へと舞い降りた。
そこに在ったのは、古びた形見の面影を残しながらも、完全に生まれ変わった、息をのむほど美しい一着のドレスだった。
生成り色だったシルクは、月の光を浴びたかのような、清らかなパールホワイトに輝いている。
そして、その生地の至る所に、かつて胸元にだけあったスズランの刺繍が、銀色の幻のように、見る角度によって淡く浮かび上がっていた。
「……ああ……」
ロザリンド夫人は、震える手でドレスに触れた。その生地は、新品以上の滑らかさと、魔力を帯びた不思議な温かみを持っていた。
「ああ……母が……。まるで、天国にいる母が、私のためにこのドレスをもう一度仕立ててくれたようです……! 母の想いも、温もりも、この中に生きている……!」
彼女の瞳から、大粒の涙がとめどなく溢れ落ちた。それは、悲しみの涙ではない。感謝と、感動と、そして純粋な喜びの涙だった。
セラフィナはニューロ・レンズを外し、安堵の息をついた。初めての「リメイク」は、完璧な成功を収めた。
■ ■ ■ ■ ■ ■
その夜、アトリエのサロンで、セラフィナたちはささやかな祝杯をあげていた。
「いやはや、大したもんだ。あのエーテル織の安定性は、王宮の連中でもそうそう実現できんぞ」
ギルバートが、上機嫌で高級なエールを呷っている。
「ロザリンド様、本当に喜んでいらっしゃいましたね! きっと、お茶会で注目の的になりますわ!」
クロエも、自分のことのように嬉しそうだ。
そこへ、セバスチャンが祝いの花束を手に現れた。
「見事な船出だったと聞いたよ、セラフィナ」
彼は、ギルバートが魔導カメラで記録していたリメイクの様子の映像水晶を受け取ると、興味深そうにそれを再生した。光の糸が舞い、ドレスが再創造される光景に、彼の瞳が鋭く輝く。
「……素晴らしい。これは単なるファッションではない。記憶と技術の融合だ」
「物語を売っていると言ってもいい」
「ベルフォート家の瘴気反応炉が生み出す、魂のない無機質なエネルギーとは、まさに対極にあるものだ」
彼はセラフィナに向き直った。
「これは、始まりに過ぎない。ロザリンド夫人のような人々が、君の最高の広告塔になるだろう」
「そして、次はいよいよ本丸だ。王都デザインコンペ。君の才能を、王国全土に知らしめる時が来た」
セバスチャンの言葉に、セラフィナは力強く頷いた。
「はい。最高の『フェニックス』を、創り上げてみせます」
その頃、王宮で開かれていた夜会では、ジュリアン・ベルフォートが、新しい婚約者ヴィヴィアン・ルクレールを伴い、取り巻きたちに囲まれていた。
「そういえば、あのヴァレンシア家の娘はどうしたのかね? すっかり姿を見せなくなったが」
誰かが興味本位に尋ねた。
「ああ、セラフィナのことか」
ジュリアンは、ワイングラスを退屈そうに揺らしながら答えた。
「さあな、どこかの田舎で相変わらず地味な刺繍でもしているんじゃないか? あれくらいしか能のない、退屈で時代遅れの女だ。それが分相応というものだろう」
その言葉に、ヴィヴィアンが甲高い声で笑った。
「まあ、ジュリアン様ったら、お優しいのね。あんな華もなければ愛嬌もない方のことなど、もうお忘れになって。あの方の時代は、あの古臭いドレスと一緒に終わったのですわ。これからの王国を導くのは、ジュリアン様と、わたくしのような未来を見据えた力ですもの。ね?」
周囲から、追従の笑いが起こる。
彼らは誰も知らない。自分たちが嘲笑している「堕ちた星屑」が、今まさに天穹を創るための光を放ち始めたことなど、知る由もなかった。
セラフィナは、アトリエの窓から、無数の光がきらめく王都の夜景を見下ろしていた。
あの夜会の屈辱から、まだ数ヶ月しか経っていない。だが、世界はすっかり姿を変えていた。
いや、世界が変わったのではない。
自分が、世界を変え始めたのだ。
彼女の胸に、静かだが燃えるような闘志が満ちてくる。
これはまだ、序章に過ぎない。本当の戦いは、これから始まるのだ。
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