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エララとカシアンが去った後の闘技場は、異様な静寂に包まれていた。
数千の観衆は、歴史的な決闘の結末をまだ咀嚼できずにいた。
ただ、乾いた空気の底で、さざ波のように囁きが広がり始める。
やがてそれは、無視できないほどの大きなうねりとなって、会場全体を支配した。
「王子が……負けた、のか……?」
呆然とした声が響く。
「あの追放された公爵令嬢に……手も足も出ずに……」
信じられないといった囁きが続く。
「あれは剣術なのか? まるで魔法のようだった……」
興奮と困惑が入り混じった言葉が飛び交った。
貴賓席では、国王アルベリクが玉座から静かに立ち上がった。その顔には、一切の感情が浮かんでいない。
だが、その氷のような無表情こそが、最大の怒りを示していることを、長年彼に仕える者たちは知っていた。
国王は、地に膝をつき、未だ呆然と虚空を見つめる息子、アラリックに一度だけ冷たい視線を投げかけた。
言葉はなかった。
ただ、失望と侮蔑だけが、その瞳に満ちていた。
そして、彼は一言も発することなく踵を返し、その場を後にした。
その無言の退席は、千の叱責よりも重く、アラリックの心を打ちのめした。
「父上……!」
絞り出すような声は、誰の耳にも届かない。空虚な闘技場の天井へと吸い込まれて消えた。
残されたのは、絶対的な「力」の信奉者が、その力の及ばぬ「理」の前に完膚なきまでに敗れ去ったという、動かしがたい事実だけだった。
*
王宮の自室に戻ったアラリックは、獣のような咆哮を上げた。
「なぜだ! なぜ僕の剣があの女に届かないッ!」
ガシャン、と耳障りな音が響く。
自慢の愛剣を壁に叩きつけ、銀の装飾が施された調度品を次々となぎ倒していく。
これまで彼の周囲を固めていた側近たちは、遠巻きにその惨状を見つめるだけで、誰一人として止めようとはしない。
彼らの目に浮かぶのは、かつての畏敬ではなかった。
憐憫と、そして見限るような冷ややかさだった。
「力こそが正義だ! 速さこそが真実だ! 僕が……僕がこの国で最も強いはずだった!」
彼の叫びは、もはや誰の心にも響かない。
虚しく部屋中にこだまするだけだった。
彼が信じてきた公理は、エララという静かなる変数によって、あまりにもあっけなく覆されたのだ。
その日から、アラリックの周囲から人が引いていくのは早かった。
これまで彼の武力と次期国王という地位に媚びへつらっていた貴族たちは、まるで潮が引くように彼から距離を置き始めた。
彼らは、より確実な権力へと鞍替えしようと画策し始める。
アラリックが最も軽蔑していた、力ではなく、計算高さで動く者たちだ。
彼が主催する夜会には空席が目立ち、彼の言葉に熱心に耳を傾ける者はいなくなった。
アラリック王子という、巨大に見えた恒星は、その輝きの源を失い、誰からも顧みられない冷たい惑星へと急速に転落していく。
それは、彼自身が招いた、必然の軌道だった。
*
その影響は、彼が新たな婚約者として選んだイゾルデ嬢にも及んだ。
勝利者の隣で輝くはずだった彼女は、今や敗者の女として、社交界の嘲笑の的となっていた。
「ご覧になって? イゾルデ様よ」
扇の影で、冷ややかな声が囁かれる。
「まあ、まだあんなに華やかなドレスをお召しになる気力がおありなのね」
嘲るような視線が彼女に注がれた。
「王子様に見限られるのも時間の問題ですわ。何しろ、王子様が捨てたお相手は、王子様ご自身を打ち負かすほどの傑物だったのですから」
かつて彼女がエララに向けていたものと、まったく同じ種類の、しかし何倍も悪意に満ちた視線が、今はイゾルデの全身に突き刺さる。
「……っ!」
イゾルデは、屈辱に顔を赤らめ、握りしめた扇がみしりと音を立てた。
彼女が手に入れたはずの地位は、砂上の楼閣だったのだ。
アラリックという地盤が崩れれば、その上に立つ彼女もまた、為す術なく崩れ落ちるしかない。
彼女の周りから、取り巻きの令嬢たちが一人、また一人と姿を消していく。
残されたのは、憐れな敗残者という、彼女が最も嫌悪する称号だけだった。
*
そして、その必然の結末は、エララを見捨てた実家、ヘムロック公爵家にも容赦なく訪れた。
「公爵、貴殿はとんでもない愚行を犯したな」
国王アルベリクに謁見の間へ呼び出されたエララの父は、玉座からの冷たい声に身を縮こまらせた。
「我が息子アラリックの愚かさは、いずれ私が正す。だが、あの類稀なる才能を持つ娘を、くだらぬ噂と己の保身のために切り捨て、辺境へ追いやった貴殿の罪もまた重い」
国王は、静かに言葉を続ける。
「エララ嬢が示した『数律剣術』。あれは、我が国の軍事体系すら変えうる、計り知れぬ価値を持つものだ。それを……貴殿は自らの手で手放したのだぞ。見る目のない、とはこのことだ」
返す言葉もなかった。
王家の不興を買うことを恐れ、娘の心を切り捨てた。その結果、王家から「愚か者」の烙印を押されるという、これ以上ない皮肉。
公爵家は、社交界での信用を完全に失墜させた。
これまで築き上げてきた政治的影響力は、日ごとに削られていく。
誰もが陰で囁いた。
「王妃となるべき至宝を、ゴミのように捨てた公爵家」と。
その代償は、あまりにも大きかった。
*
王都がそうした必然の混乱に揺れる頃、エララはカシアンと共に、穏やかなフェイランの地へと帰還していた。
領地の門をくぐると、噂を聞きつけた領民たちが、彼女たちを温かく出迎えた。
「お嬢! よくぞご無事で!」
声を上げたのは、鍛冶師のボルグだった。
その隣には、薬師や革細工師、農夫たちの顔も見える。
彼らの表情には、貴族に対するような畏怖はない。
ただ、自分たちの仲間が、誇らしい偉業を成し遂げて帰ってきたことを喜ぶ、純粋な親愛の情が満ちていた。
「ただいま戻りました、ボルグ。皆様も、お変わりなく」
エララは、馬上から穏やかに微笑んだ。
その笑みは、王都で見せたことのない、心からの安らぎに満ちたものだった。
その夜、カシアンの館にあるエララの私室で、暖炉の炎がぱちぱちと音を立てていた。
カシアンが、王都から届いた手紙の束をテーブルに置く。
そのほとんどは、エララの剣術に興味を持った貴族や騎士団からのものだった。
だが、その中に一通だけ、見慣れた紋章が押された封筒があった。
ヘムロック公爵家の、鷲の紋章。
「……父からですわね」
エララは静かにつぶやいた。
カシアンは何も言わず、ただ静かに彼女の傍らに立つ。
彼女がどんな選択をしようと、彼はそれを受け入れるつもりだった。
エララは、その手紙を手に取った。
追放される日、父が投げつけた冷たい言葉が脳裏をよぎる。
『これ以上、我らに恥をかかせるな』
指先が微かに震えたが、それは悲しみや怒りからではなかった。
ただ、過去という名の、すでに解き終えた方程式の最後の項を処理するための、ごく小さな揺らぎに過ぎない。
彼女は、封蝋を破ることなく、ゆっくりと立ち上がった。
そして、燃え盛る暖炉の前まで歩み寄ると、その手紙を、そっと炎の中へと差し入れた。
一瞬のためらいもなかった。
羊皮紙は、端からゆっくりと茶色く変色し、やがて赤い舌のような炎に舐められて、黒い灰へと姿を変えていく。
『どうか戻ってきてほしい』
きっと、そんな言葉が綴られていたのだろう。
都合のいい懇願が。
だが、その言葉がエララの目に触れることは、もうない。
彼女は、ただ静かに、父からの最後の繋がりが燃え尽きていく様を見つめていた。
それは、過去との完全な決別を意味する、静かで厳かな儀式だった。
すべての文字が灰に帰り、最後の火の粉が闇に消えたとき、エララの背後に立ったカシアンが、そっと彼女の肩に手を置いた。
その温もりが、冷えた空気を伝って、エララの心にじんわりと染み渡る。
「これで、良かったのです」
エララは振り返らずに言った。
「過去を記述していた方程式は、解き終えました。残った剰余項に、心を悩ませる必要はもうありませんわ」
その声には、一片の後悔もなかった。
彼女はゆっくりと振り返り、カシアンを見上げる。
その灰色の瞳には、暖炉の炎が映り込み、確かな意志の光を宿していた。
「さあ、カシアン様。王都での証明は終わりました。これからは、このフェイランで解くべき、新しい問題に取り掛かりましょう。この地には、まだ解かれていない、美しい問いがたくさんありますわ」
その言葉に、カシアンは深く、そして優しい笑みを返す。
「ああ、もちろんだ。君の知恵を、この地のために貸してほしい」
ざまぁ、などという言葉は、彼女の辞書にはない。
ただ、世界が本来あるべき姿へと収束していく、必然の理が働いただけのこと。
過去の残滓は燃え尽きた。
彼女の前には、未来という名の、どこまでも広がる白紙の設計図が待っている。
その隣には、彼女の描く線を、世界で最も美しいと信じてくれる人がいる。
それだけで、もう十分だった。
数千の観衆は、歴史的な決闘の結末をまだ咀嚼できずにいた。
ただ、乾いた空気の底で、さざ波のように囁きが広がり始める。
やがてそれは、無視できないほどの大きなうねりとなって、会場全体を支配した。
「王子が……負けた、のか……?」
呆然とした声が響く。
「あの追放された公爵令嬢に……手も足も出ずに……」
信じられないといった囁きが続く。
「あれは剣術なのか? まるで魔法のようだった……」
興奮と困惑が入り混じった言葉が飛び交った。
貴賓席では、国王アルベリクが玉座から静かに立ち上がった。その顔には、一切の感情が浮かんでいない。
だが、その氷のような無表情こそが、最大の怒りを示していることを、長年彼に仕える者たちは知っていた。
国王は、地に膝をつき、未だ呆然と虚空を見つめる息子、アラリックに一度だけ冷たい視線を投げかけた。
言葉はなかった。
ただ、失望と侮蔑だけが、その瞳に満ちていた。
そして、彼は一言も発することなく踵を返し、その場を後にした。
その無言の退席は、千の叱責よりも重く、アラリックの心を打ちのめした。
「父上……!」
絞り出すような声は、誰の耳にも届かない。空虚な闘技場の天井へと吸い込まれて消えた。
残されたのは、絶対的な「力」の信奉者が、その力の及ばぬ「理」の前に完膚なきまでに敗れ去ったという、動かしがたい事実だけだった。
*
王宮の自室に戻ったアラリックは、獣のような咆哮を上げた。
「なぜだ! なぜ僕の剣があの女に届かないッ!」
ガシャン、と耳障りな音が響く。
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これまで彼の周囲を固めていた側近たちは、遠巻きにその惨状を見つめるだけで、誰一人として止めようとはしない。
彼らの目に浮かぶのは、かつての畏敬ではなかった。
憐憫と、そして見限るような冷ややかさだった。
「力こそが正義だ! 速さこそが真実だ! 僕が……僕がこの国で最も強いはずだった!」
彼の叫びは、もはや誰の心にも響かない。
虚しく部屋中にこだまするだけだった。
彼が信じてきた公理は、エララという静かなる変数によって、あまりにもあっけなく覆されたのだ。
その日から、アラリックの周囲から人が引いていくのは早かった。
これまで彼の武力と次期国王という地位に媚びへつらっていた貴族たちは、まるで潮が引くように彼から距離を置き始めた。
彼らは、より確実な権力へと鞍替えしようと画策し始める。
アラリックが最も軽蔑していた、力ではなく、計算高さで動く者たちだ。
彼が主催する夜会には空席が目立ち、彼の言葉に熱心に耳を傾ける者はいなくなった。
アラリック王子という、巨大に見えた恒星は、その輝きの源を失い、誰からも顧みられない冷たい惑星へと急速に転落していく。
それは、彼自身が招いた、必然の軌道だった。
*
その影響は、彼が新たな婚約者として選んだイゾルデ嬢にも及んだ。
勝利者の隣で輝くはずだった彼女は、今や敗者の女として、社交界の嘲笑の的となっていた。
「ご覧になって? イゾルデ様よ」
扇の影で、冷ややかな声が囁かれる。
「まあ、まだあんなに華やかなドレスをお召しになる気力がおありなのね」
嘲るような視線が彼女に注がれた。
「王子様に見限られるのも時間の問題ですわ。何しろ、王子様が捨てたお相手は、王子様ご自身を打ち負かすほどの傑物だったのですから」
かつて彼女がエララに向けていたものと、まったく同じ種類の、しかし何倍も悪意に満ちた視線が、今はイゾルデの全身に突き刺さる。
「……っ!」
イゾルデは、屈辱に顔を赤らめ、握りしめた扇がみしりと音を立てた。
彼女が手に入れたはずの地位は、砂上の楼閣だったのだ。
アラリックという地盤が崩れれば、その上に立つ彼女もまた、為す術なく崩れ落ちるしかない。
彼女の周りから、取り巻きの令嬢たちが一人、また一人と姿を消していく。
残されたのは、憐れな敗残者という、彼女が最も嫌悪する称号だけだった。
*
そして、その必然の結末は、エララを見捨てた実家、ヘムロック公爵家にも容赦なく訪れた。
「公爵、貴殿はとんでもない愚行を犯したな」
国王アルベリクに謁見の間へ呼び出されたエララの父は、玉座からの冷たい声に身を縮こまらせた。
「我が息子アラリックの愚かさは、いずれ私が正す。だが、あの類稀なる才能を持つ娘を、くだらぬ噂と己の保身のために切り捨て、辺境へ追いやった貴殿の罪もまた重い」
国王は、静かに言葉を続ける。
「エララ嬢が示した『数律剣術』。あれは、我が国の軍事体系すら変えうる、計り知れぬ価値を持つものだ。それを……貴殿は自らの手で手放したのだぞ。見る目のない、とはこのことだ」
返す言葉もなかった。
王家の不興を買うことを恐れ、娘の心を切り捨てた。その結果、王家から「愚か者」の烙印を押されるという、これ以上ない皮肉。
公爵家は、社交界での信用を完全に失墜させた。
これまで築き上げてきた政治的影響力は、日ごとに削られていく。
誰もが陰で囁いた。
「王妃となるべき至宝を、ゴミのように捨てた公爵家」と。
その代償は、あまりにも大きかった。
*
王都がそうした必然の混乱に揺れる頃、エララはカシアンと共に、穏やかなフェイランの地へと帰還していた。
領地の門をくぐると、噂を聞きつけた領民たちが、彼女たちを温かく出迎えた。
「お嬢! よくぞご無事で!」
声を上げたのは、鍛冶師のボルグだった。
その隣には、薬師や革細工師、農夫たちの顔も見える。
彼らの表情には、貴族に対するような畏怖はない。
ただ、自分たちの仲間が、誇らしい偉業を成し遂げて帰ってきたことを喜ぶ、純粋な親愛の情が満ちていた。
「ただいま戻りました、ボルグ。皆様も、お変わりなく」
エララは、馬上から穏やかに微笑んだ。
その笑みは、王都で見せたことのない、心からの安らぎに満ちたものだった。
その夜、カシアンの館にあるエララの私室で、暖炉の炎がぱちぱちと音を立てていた。
カシアンが、王都から届いた手紙の束をテーブルに置く。
そのほとんどは、エララの剣術に興味を持った貴族や騎士団からのものだった。
だが、その中に一通だけ、見慣れた紋章が押された封筒があった。
ヘムロック公爵家の、鷲の紋章。
「……父からですわね」
エララは静かにつぶやいた。
カシアンは何も言わず、ただ静かに彼女の傍らに立つ。
彼女がどんな選択をしようと、彼はそれを受け入れるつもりだった。
エララは、その手紙を手に取った。
追放される日、父が投げつけた冷たい言葉が脳裏をよぎる。
『これ以上、我らに恥をかかせるな』
指先が微かに震えたが、それは悲しみや怒りからではなかった。
ただ、過去という名の、すでに解き終えた方程式の最後の項を処理するための、ごく小さな揺らぎに過ぎない。
彼女は、封蝋を破ることなく、ゆっくりと立ち上がった。
そして、燃え盛る暖炉の前まで歩み寄ると、その手紙を、そっと炎の中へと差し入れた。
一瞬のためらいもなかった。
羊皮紙は、端からゆっくりと茶色く変色し、やがて赤い舌のような炎に舐められて、黒い灰へと姿を変えていく。
『どうか戻ってきてほしい』
きっと、そんな言葉が綴られていたのだろう。
都合のいい懇願が。
だが、その言葉がエララの目に触れることは、もうない。
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すべての文字が灰に帰り、最後の火の粉が闇に消えたとき、エララの背後に立ったカシアンが、そっと彼女の肩に手を置いた。
その温もりが、冷えた空気を伝って、エララの心にじんわりと染み渡る。
「これで、良かったのです」
エララは振り返らずに言った。
「過去を記述していた方程式は、解き終えました。残った剰余項に、心を悩ませる必要はもうありませんわ」
その声には、一片の後悔もなかった。
彼女はゆっくりと振り返り、カシアンを見上げる。
その灰色の瞳には、暖炉の炎が映り込み、確かな意志の光を宿していた。
「さあ、カシアン様。王都での証明は終わりました。これからは、このフェイランで解くべき、新しい問題に取り掛かりましょう。この地には、まだ解かれていない、美しい問いがたくさんありますわ」
その言葉に、カシアンは深く、そして優しい笑みを返す。
「ああ、もちろんだ。君の知恵を、この地のために貸してほしい」
ざまぁ、などという言葉は、彼女の辞書にはない。
ただ、世界が本来あるべき姿へと収束していく、必然の理が働いただけのこと。
過去の残滓は燃え尽きた。
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