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泣き虫ライミ告白す②(ライミ視点)
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なぜだ。なぜ、オレの攻撃が当たらない。
素早さなら自信があった。獣人族の中でも、牙獣種の中でも、オレは速さを誇っていた。 だが、こいつ──轟電次郎は、そのすべてをかわす。
目線も、重心も、まったく揺るがない。
まるで──全部読まれているみたいだ。
……やはり、こいつも雷属性の使い手か?
神経を伝達する体の組織に雷魔法を流し、反応速度を十倍、いや数十倍にまで高める技。 牙獣種に伝わる奥義、それを使っているとでもいうのか?
「……しかも、速さだけじゃない。軸がぶれない。動きに迷いがない……」
オレの知っている誰よりも、早い。
なのに、あいつは──
「なんだよ、強いっていうから心配したけど。サンダルのが強かったな」
──あっけらかんと、そう言った。
サンダル? まさか、狂戦士サンダルフォンのことを言っているのか?
いや、ありえない……サンダルフォンは、獣人族の中でも伝説に語られる戦士。 何十人を相手に無傷で勝利したという逸話すらある。
そのサンダルと渡り合った? はったりにもほどがある。
「スタンブレードを使うのも気が引けるしなぁ……」
オレの攻撃を軽く避けながら、あいつはそんなことをブツブツ呟いていた。
……なめてるのか?
「トレス!」
おじさんは演習場の端で見物していたクラスメイトを呼んだ。
「この試合……負けたら、どうなるんだ?」
「試合を拒否した場合と同じで評価が下がるっす」
「そうか……」
おっさんは、そう言うと思いつめた顔をした──
本気、本気を出す気か?
今まで回避に専念していた力を攻撃に回したら──
脳裏に、敗北の気配を感じてしまった──
ふざけるな、オレは負けない。負けられない。
くそっ、まただ、また涙が溢れる。
嫌だ。
負けたくない。
泣きたくない。
「俺の負けだ。これで試合は終わりでいいな?」
「は?」
聞き違いでなければ、おっさんが負けを認めた。
なぜ?
「お前、なんでそんなに戦いたかったのに、そんなに悲しそうなんだ? いや、俺も争いなんて嫌いだし、できればどんな相手にも笑っていてほしいって思うんだけどさ。サンダルと戦ったときはちょっと楽しかったぜ。あいつも笑ってたしな」
「何が言いたい」
「嫌なら無理して戦わない方法もあるんじゃないか?」
「意味が分からない……戦わずして得られる物があるというのか?」
「バカだなお前、あるに決まってるだろ」
「バカ……」
「ああ、すまん。でも強い弱いだけで物事を判断するのは良くないと思うぞ」
新入生、しかもおじさんに、オレの……いや、
わたしの全てを否定された気がした。
「なぜだ……評価を落としてまで、なぜ負けを選んだ」
「悪いな、みんなはこの学校で勉強して、評価されて偉くなりたいんだろうけど……俺は違うんだ。別の目的があってここに居る。だから評価なんて気にしないし、争いも嫌いだって言ったろ? 女の子を傷付けるなんてもってのほかだしな」
別の目的? 己を磨く以外に、ここに居る理由があるというのか?
「じゃあ、教室に戻ろうぜ。もう色々あって疲れちったよ。ウン十年ぶりに教室で居眠りでもしてみっかな」
そう言って、おじさんは背中を向けた。
無防備な背中……だけど、大きく見える……。
「ライミの奴、また泣いてるよ」
「あいつ、勝っても負けても涙を流すよな」
「目の病気なんじゃないの?」
「ほら、動物って本能であんまり瞬きしないらしいし」
「ネコだしな」
野次馬たちの声が聞こえた。
泣き虫ライミ──
それがわたしのあだ名だった。
狩猟、縄張り争い、傭兵──
それが獣人族の生業。
男でも女でも関係ない。
強くなければ生きて行けない……そうやって厳しい父親の元で育ってきた。
村で一番の猛者と言われた父親の血を引いているからだろうか、わたしも村の男達に引けを取らない能力を持っていた。
一対一の戦いも、獲物を狩る技術も、誰よりも優れていた。
だけど、どんなに強くなっても、誰に勝っても、悲しかった。
この気持ちは一体なんなんだ。
考えれば考えるほどに寂しさが増していった。
それを忘れようとひたすらに鍛錬し、村で一番になり。
認められて、ここへ入学した。
もっと、広い世界で、もっと強くなれ。
お前には、その才能がある──みんなの期待を背に、わたしはさらに鍛錬を重ねた。
でも、上には上がいた。
さすが最高峰の魔法学校だ。来て良かった、そう思えた。
それでも、悲しみは消えなかった。
いや、むしろ涙することが増えた。
勝ち負けを繰り返し、強くなっていると自覚できていたのに……。
それが、父親の望むもの……わたしの生きる意味だと思っていたのに……。
素早さなら自信があった。獣人族の中でも、牙獣種の中でも、オレは速さを誇っていた。 だが、こいつ──轟電次郎は、そのすべてをかわす。
目線も、重心も、まったく揺るがない。
まるで──全部読まれているみたいだ。
……やはり、こいつも雷属性の使い手か?
神経を伝達する体の組織に雷魔法を流し、反応速度を十倍、いや数十倍にまで高める技。 牙獣種に伝わる奥義、それを使っているとでもいうのか?
「……しかも、速さだけじゃない。軸がぶれない。動きに迷いがない……」
オレの知っている誰よりも、早い。
なのに、あいつは──
「なんだよ、強いっていうから心配したけど。サンダルのが強かったな」
──あっけらかんと、そう言った。
サンダル? まさか、狂戦士サンダルフォンのことを言っているのか?
いや、ありえない……サンダルフォンは、獣人族の中でも伝説に語られる戦士。 何十人を相手に無傷で勝利したという逸話すらある。
そのサンダルと渡り合った? はったりにもほどがある。
「スタンブレードを使うのも気が引けるしなぁ……」
オレの攻撃を軽く避けながら、あいつはそんなことをブツブツ呟いていた。
……なめてるのか?
「トレス!」
おじさんは演習場の端で見物していたクラスメイトを呼んだ。
「この試合……負けたら、どうなるんだ?」
「試合を拒否した場合と同じで評価が下がるっす」
「そうか……」
おっさんは、そう言うと思いつめた顔をした──
本気、本気を出す気か?
今まで回避に専念していた力を攻撃に回したら──
脳裏に、敗北の気配を感じてしまった──
ふざけるな、オレは負けない。負けられない。
くそっ、まただ、また涙が溢れる。
嫌だ。
負けたくない。
泣きたくない。
「俺の負けだ。これで試合は終わりでいいな?」
「は?」
聞き違いでなければ、おっさんが負けを認めた。
なぜ?
「お前、なんでそんなに戦いたかったのに、そんなに悲しそうなんだ? いや、俺も争いなんて嫌いだし、できればどんな相手にも笑っていてほしいって思うんだけどさ。サンダルと戦ったときはちょっと楽しかったぜ。あいつも笑ってたしな」
「何が言いたい」
「嫌なら無理して戦わない方法もあるんじゃないか?」
「意味が分からない……戦わずして得られる物があるというのか?」
「バカだなお前、あるに決まってるだろ」
「バカ……」
「ああ、すまん。でも強い弱いだけで物事を判断するのは良くないと思うぞ」
新入生、しかもおじさんに、オレの……いや、
わたしの全てを否定された気がした。
「なぜだ……評価を落としてまで、なぜ負けを選んだ」
「悪いな、みんなはこの学校で勉強して、評価されて偉くなりたいんだろうけど……俺は違うんだ。別の目的があってここに居る。だから評価なんて気にしないし、争いも嫌いだって言ったろ? 女の子を傷付けるなんてもってのほかだしな」
別の目的? 己を磨く以外に、ここに居る理由があるというのか?
「じゃあ、教室に戻ろうぜ。もう色々あって疲れちったよ。ウン十年ぶりに教室で居眠りでもしてみっかな」
そう言って、おじさんは背中を向けた。
無防備な背中……だけど、大きく見える……。
「ライミの奴、また泣いてるよ」
「あいつ、勝っても負けても涙を流すよな」
「目の病気なんじゃないの?」
「ほら、動物って本能であんまり瞬きしないらしいし」
「ネコだしな」
野次馬たちの声が聞こえた。
泣き虫ライミ──
それがわたしのあだ名だった。
狩猟、縄張り争い、傭兵──
それが獣人族の生業。
男でも女でも関係ない。
強くなければ生きて行けない……そうやって厳しい父親の元で育ってきた。
村で一番の猛者と言われた父親の血を引いているからだろうか、わたしも村の男達に引けを取らない能力を持っていた。
一対一の戦いも、獲物を狩る技術も、誰よりも優れていた。
だけど、どんなに強くなっても、誰に勝っても、悲しかった。
この気持ちは一体なんなんだ。
考えれば考えるほどに寂しさが増していった。
それを忘れようとひたすらに鍛錬し、村で一番になり。
認められて、ここへ入学した。
もっと、広い世界で、もっと強くなれ。
お前には、その才能がある──みんなの期待を背に、わたしはさらに鍛錬を重ねた。
でも、上には上がいた。
さすが最高峰の魔法学校だ。来て良かった、そう思えた。
それでも、悲しみは消えなかった。
いや、むしろ涙することが増えた。
勝ち負けを繰り返し、強くなっていると自覚できていたのに……。
それが、父親の望むもの……わたしの生きる意味だと思っていたのに……。
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