しがない電気屋のおっさん、異世界で家電召喚ライフしてたら民から神格化され魔王から狙われる

長月 鳥

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ステラ分解す(ステラ視点)

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 ふぅ、ビックリした。ノート見られてないよね? 早くご主人様……いえ、ライオネット先生のところに向かわなきゃ。
 「ライオネット先生、持ってきました」
 「上出来だステラ、あとで褒美をやろう」
 「ありがとうございます先生」
 やった。ご褒美がもらえる。

 わたしは電次郎から借りてきたスムージーミキサーと美顔スチーマーを先生の机の上に置いた。
 すると先生はわたしに分解するよう言った。
 電次郎によると、外装はプラスチックという物質らしい。薄くて軽いのになかなか割れない頑丈で不思議な素材だ。金属のネジを外すと、中には見たことのない小さな板と細かい部品、そして細い糸のような紐が何本も張り巡らされている。これに電次郎が放つ“電力”というものを流すと、強力な音と滑らかな軌道を描き先端が勢いよく回転する。こんな構造、見たことも聞いたこともない。
 「……この素材、魔鉱でもないし、魔力の流路もないな。これが何故動くんだ……」
 先生の声は、いつもより少しだけ弾んで聞こえた。  その横顔を見るだけで、わたしの胸が少し熱くなる。

 ──ライオネット先生。
 学園でもっとも美しく、もっとも知的で、そしてもっとも恐れられている存在。  けれど、今目の前にいる彼女は……まるで少女のように楽しそうだった。
 「電流と呼ばれるエネルギーが、導線という細い管を通って動くそうです」
 私は嬉しくなって、電次郎から集めた情報を提供した。
 「……導線? 魔力媒介でもないのに、力が流れるのか」
 「そうです。しかも一度流れ始めたら、魔力みたいに“集中”や“感情”に影響されないようです」
 私の説明に、先生は目を輝かせる。

 「そう……安定させて誰にでも使えるようにすれば、戦争にも使えそうね」
 その案に、私は一瞬だけ手を止めた。
 でも先生が望むなら、戦争孤児だった私だけど、全力で協力する。
 「いいわよステラ、次を見せて」
 「次は美顔スチーマーです」
 「顔を美しくする魔道具ね……」
 先生の目がより一層輝いて見えた。これ以上綺麗になってどうしようというのだろう。
 
 「分解しますか?」
 「ちょっと待って、まずは電力と雷系統の魔法の違いについて確認しましょう。ステラは雷系得意よね?」
 「はい」と、自信をもって言えるほどの魔力じゃない、初歩の魔法なら使えるくらいだ。
 「雷属性の魔法を当ててみましょう。動くかもしれない」
 「わかりました」
 私は指先に魔力を集中させ、一番弱い出力で魔法を放った。
 
 ──パチンッ。
 美顔スチーマーが一瞬光ったかと思うと、焦げ臭い匂いとともに白い煙が立ち上った。

 「……あっ」
 「…………やっちゃったわね」
 分解し、中を確認すると内部の小さな板が焦げていた。
 「ど、どうしましょう、先生!? 電次郎さんに返さなきゃいけないのに……!」
 「うーん……」
 先生は煙を仰ぎながら、さほど気にしていない様子で首を傾げた。
 「……あとは任せたわ、ステラ」
 「えっ!? 先生!?」
 「あの人、きっと許してくれるわよ? あなたが泣けば」
 「そんな……!」
 ──でも、そんな強引なところも。
 私は、嫌いじゃない。

 「やっぱりあの男じゃないと動かせないようね……」
 先生が電次郎のことを考えていると思うと、なんだか悔しくなった。
 「次は、ここにあの男を連れてきてくれる?」
 「……ここに、ですか?」
 私と先生だけの秘密の部屋なのに。
 「でも、ここが露見したら、色々とマズいのでは?」
 ここには、他の先生方に言えないような実験道具が沢山ある。
 いくら解明のためとはいえ、リスクが高すぎる気もするけど──。

 「いざとなったら、どうとでもなるわよ。今までだってそうでしょ?」
 「はい……そうですね」
 ああ、悪いご主人様……。
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