しがない電気屋のおっさん、異世界で家電召喚ライフしてたら民から神格化され魔王から狙われる

長月 鳥

文字の大きさ
28 / 130

おっさん衝突す

しおりを挟む
 学園に来て、一週間──。
 そろそろインスーラが、俺のことを探しにボルトリアへ行っているころか。

 ドローンをどこまでも飛ばせることが分かったから、ボルトリアへも何度か向かわせたけど、何かにぶつかって辿り着けないんだよな……ミカちゃんたち大丈夫だろうか。
 「お守がおらんから結界に集中できる。クレアもサンダルもおるんじゃ、王都はなんの心配もいらんよ」って言ってたけど、ちょっと心配だ──
 心配している暇があったら、鍛錬せぇ、って言われそうだけどな。

 「部屋には慣れましたか?」
 悶々としている俺を気遣ってか、スイランが話しかけてきた。
 学園は基本的に寮生活で、ランクの低いクラスはルームシェアとなっている。スイランは俺のルームメイトだ。
 丁度、空きがあったからって、こんなおっさんと一緒の生活を名乗り出てくれるなんて、なんて良い子なんだろうと思った。
 最初はおどおどしていたけど、トレスが大人しくなったからだろうか、最近は良く笑う様になった気がする。料理も掃除も得意、俺の家電にも興味津々だ。部屋は広いし、なかなか快適な学園生活を送っている。

 ミカちゃんの師匠にも接触した。
 名前はセレン。  やっぱりエルフ族で、年齢は──噂によると三百歳近いらしい。
 「昔は“賢者セレン”って呼ばれてたらしいっすよ」とトレスが言ってた。  だが、今ではやる気ゼロのおじいちゃん。
 教室に来ても「今日は自習だ」と言って、そのまま魔導書を枕に昼寝してるのが日課になりつつある。
 生徒たちは呆れつつも、セレンが本気を出した時の“とんでもなさ”を知っているらしく、妙に逆らわない。
 電力の制御方法を聞いたけど「興味ない」って、一方的に門前払いされるだけだし、どうしたもんか。
 ──まぁ、聞けばここの講師は凄い人たちばかりらしいから、セレンの他に力になってくれそうな人を見つけるしかないかな。

 そんなこんなで、少しずつこの学園での暮らしが形になりつつあった矢先──。
 
 寮の廊下を歩いていたら、誰かが走ってきて、ドンとぶつかった。
 「わっ……す、すみませんっ……!」
 小さな声とともに、地面にバラバラと教科書やノートが落ちる。
 その中の一冊に、見覚えのある名前が──『轟電次郎日記♡』。
 「……日記?」
 背筋がぞくりとした。
 この子、確かうちのクラスの女の子……たしか名前はステラ。
 メガネが隠れるくらいの淡い紫の長い髪が印象的でおとなしそうな感じで、いつも熱心になにかを書き留めている子……。
 その子が俺の観察日記? しかもハート付き……。

 「す、すいません」
 ステラはノートを拾い上げると、走り去って行った……と、思ったら小走りで戻ってきた。
 「あ、あの、お願いがあるんですけど」
 顔を上げずに小さな声だった。
 「な、なんでしょう」
 「魔道具をひとつ、お借りできませんか?」
 「魔道具? ああ、家電のこと? いいけど、俺が持ってないと動かないよ?」
 「構いません」
 「一応、理由を聞いてもいい?」
 その問いに、ステラは一瞬だけこちらを見上げた。メガネ越しの視線は揺れていたが──次の瞬間、彼女はスイッチが入ったかのように語り出した。
 「前回お使いになっていたスムージーミキサー。あの構造と稼働音、そして冷却魔力を使用せずに果実を滑らかに撹拌する力は異常です。刃の回転数と出力を魔力なしで制御できるなんて……魔道具の設計者が聞いたら卒倒します」
 なるほど、家電に興味ありってことか。

 「それに、美顔スチーム──あれは魔力の圧縮蒸気でもなく、純粋な水の粒子を加熱して気化させていたんですよね? 肌に触れたときのしっとり感、温度と湿度のバランス……あれはライオネット先生が喉から杖が出るほど欲しがるはずです」
 ライオネット先生?

 「極めつけは、ドローン。あの飛行速度、制御可能な距離、映像伝送の安定性、魔力干渉を受けない通信手段……私、正直、震えました」
 「お、おう……」
 ステラは小さな身体で真剣に語り続けていたが、気づけば自分の話しぶりにふっと我に返ったようで、口を押さえて目をそらした。

 「……すみません、つい」
 “つい”で済ませていいレベルじゃねぇ観察力だな……でも、俺の家電を異世界視点で分析すれば、もしかしたら電力と魔力の違いや、漏れ漏れの俺の電力の解明につながるかもしれんな。
 
 俺はステラの頼みを聞き入れてスムージーミキサーと美顔スチーマーを貸し出した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

神様転生~うどんを食べてスローライフをしつつ、領地を豊かにしようとする話、の筈だったのですけれど~

於田縫紀
ファンタジー
大西彩花(香川県出身、享年29歳、独身)は転生直後、維持神を名乗る存在から、いきなり土地神を命じられた。目の前は砂浜と海。反対側は枯れたような色の草原と、所々にぽつんと高い山、そしてずっと向こうにも山。神の権能『全知』によると、この地を豊かにして人や動物を呼び込まなければ、私という土地神は消えてしまうらしい。  現状は乾燥の為、樹木も生えない状態で、あるのは草原と小動物位。私の土地神としての挑戦が、今始まる!  の前に、まずは衣食住を何とかしないと。衣はどうにでもなるらしいから、まずは食、次に住を。食べ物と言うと、やっぱり元うどん県人としては…… (カクヨムと小説家になろうにも、投稿しています) (イラストにあるピンクの化物? が何かは、お話が進めば、そのうち……)

異世界に転生したので幸せに暮らします、多分

かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。 前世の分も幸せに暮らします! 平成30年3月26日完結しました。 番外編、書くかもです。 5月9日、番外編追加しました。 小説家になろう様でも公開してます。 エブリスタ様でも公開してます。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。 何も成し遂げることなく35年…… ついに前世の年齢を超えた。 ※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。 ※この小説は他サイトにも投稿しています。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

処理中です...