しがない電気屋のおっさん、異世界で家電召喚ライフしてたら民から神格化され魔王から狙われる

長月 鳥

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おっさん涙す

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 スイランがトレスに決闘を申し込んだと聞いて、急いで訓練棟の第一演習場に向かった。

 一体なぜ?
 もしかして、俺の家電に細工したことを気にしているのか?

 ステラの調査で知ったが……魔法痕ってやつは、誰が魔法を使ったのか確実に割り出せる。元の世界で言うDNA鑑定みたいなもんだ。
 それで、スイランが俺のVRヘッドセットに幻覚魔法を仕掛けたのは間違いない。

 でも、俺は気にしなかった。
 トレスがスイランをイジメていて、それの仕返しのつもりでやったんだろう……教室で自分から白状もしたっぽいが、誰も相手にしなかったらしい。

 でも、それで良かった。
 トレスだって根っからの悪い奴じゃないのは知っている。

 親が厳しくて、貴族階級で自分より身分の低い人間の扱い方をそういうふうに指導されてきたからだって、トレスは言っていた。そして、スイランに悪いことをしていたと反省もしていた。

 もちろん、トレスもスイランもどっちも悪い。
 だが、二人ともまだ若い。
 これは若気の至り、誰しもが通る道。
 おっさんは、長く生きてきたから分かる。
 二人の過ちは時間が解決してくれる。

 くたびれたおっさんの評価なんて、二人の未来に比べたら些細な事だと思った。だから俺はスイランを責めなかったし、トレスにも俺が全て悪いと謝った。

 クレーム処理や信頼回復のための仕事は慣れっこだったしな……。

 だけど、二人の気持ちは違ったらしい。

 きっと、二人とも苦しかったんだろうな……今は見守るしかないか。

 しかし、スイランの魔法は攻撃に向いていないと、あいつ自身から聞いていた。
 逆にトレスは攻撃特化型、しかも炎系統……どう考えてもスイランに勝ち目はない。


 ♦-/-/-//-/-/--/-/-/--/♦


 案の定、戦いは一方的だった。

 トレスが手加減しているのは誰の目にも明らかだった。

 ボロボロになっていくスイラン。
 やがて、トレスは魔法を放つことも止めた。

 まるで、拳で語り合おうとでも言っているように見えた。
 そして、だんだん二人の顔がイキイキとしてきた。
 笑っていた。楽しそうだった。

 ずっと、会話しながら殴り合っている。
 なにを話しているんだろう。

 そして、決着が訪れる。

 勝ったのは、ボロボロのスイランだった。

 まるで、俺とライミの決闘のときのように会場がどよめいた。

 トレスは確かに「俺の負けでいい」、そう言った。

 そして、なぜか二人は俺の観戦していた俺の所に駆け寄り。
 「電次郎さんの実演販売、俺達も手伝わせてください」
 そう、言った。

 おっさんの余計な心配なんて、二人には無用だったってこった。
 まいったな、なんだか涙が止まらなくなって。返す言葉を失ってしまった。

 そして、次の日から早速二人は俺の家電を体を張って使ってくれて、安全性や利便性を証明する手伝いをしてくれた。

 そんなこんなで、だいぶ生徒たちの家電を見る目も変わりかけた矢先、俺は自分の退学の噂を耳にする。
 そして、ほどなくして処分が下される日が決まった。

 「力になれなくてごめんなさい」スイラン
 「アニキぃ、すまねぇ」トレス
 「にゃー、居なくなると寂しいにゃ」ライミ
 「困ります。私が先生に怒られてしまう……」ステラ

 特に、この四人は俺との別れを惜しんでくれた。

 「電次郎さんは、目的があってここに来たのに……」
 スイランは、言葉を詰まらせた。

 「安心しろ、別にここじゃなくたって、俺の目的は果たせるさ。あてにしてた人も、全然力になってくれなかったしな」
 ミカちゃんの師匠にはがっかりだぜホント。

 まぁ、言った通りだ。
 ここに居られないのであれば別の場所で、解決策を探すさ。なんなら本当に魔王に直談判してやる。
 家電で魔王城を笑顔で溢れさせてやる。

 そうやって、思い出話に花を咲かせていると、校内放送が響いた。

 「全校生徒の皆様へのご連絡です。ただいまより転校生の紹介を行いますので第一競技等校庭にお集まりください。くりかえします~」
 転校生? 全校生徒に集まれって?

 「なんでしょう、こんなの初めてです」
 ステラは難しそうな顔をした。

 全校生徒で転校生の出迎え?
 なんかすげぇ奴でも転校してくんのか?
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