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おっさんたち作戦会議す②
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「四日目の競技はポータル・ランか詳細は……」
俺が言うと、ステラが手元の資料を開きながら頷いた。
「この競技は、男女ペアで挑む幻覚空間突破型レースです。相手クラスのペアと同時にスタートし、二人目が先にゴールした方が勝ちになりますが、評価点については一番最初にゴールした個人につくみたいですね」
「徒競走みたいなもんか」
「ただの競走じゃないですよ」
スイランが腕を組み続けた。
「途中には幻覚魔法による精神干渉ゾーン、強化結界、魔力障壁、そして物理的な落とし穴や吹き飛ばしトラップなどが配置されています」
「妨害もアリだって話だったよな」 トレスが目を輝かせる。
「ええ、ルール上“直接的な魔法攻撃は禁止”ですが、間接的な干渉──たとえば風で視界を遮る、地面を凍らせるなどはOKです」 ステラがそう補足した。
「精神干渉ゾーンってのが気になるな」
「最も代表的なのは“記憶型幻覚”です」 ステラが少し表情を曇らせた。
「自分の過去、トラウマや後悔に関する幻覚が目の前に出現し、行動を妨げてきます。ペアの片方が影響を受けても、もう片方が引っ張って進めば突破可能です」
「男女ペアの理由もソレですね、感受性の差が前提になっている気がします」 スイランの分析に、みんな納得した表情を見せた。
「ペア同士の信頼が重要かもしれないな……」
「任せてくださいまし。わたくし、電次郎様の手を決して離しませんから!」
俺の発言に姫様が、そう続けた。
「いや、俺が出るなんて決まってないからな。しかも、なぜ当然のようにペア扱いなんだ。」
「電にゃんが出るなら、にゃーも出るにゃ」 なぜかライミも被せて来るし。
「電次郎さんが出るのはオススメできません」 スイランは否定してくれた。でもなんで?
「電次郎さんの電力が魔力と違うマナだとすると……いや、そもそもマナかどうかも怪しいので、魔法による精神干渉が体に及ぼす影響は計り知れません」
「そ、そうなの?」 初耳だな。
「確かに、精神崩壊にも繋がりかねませんわね」 姫様も怖いこと言う。
「じゃあ、辞退しようかな……」
「それは早計では?」 ステラが冷静な口調で割り込み、話を続けた。
「電力が魔力と違うのなら、魔力による干渉が無意味な可能性もあります」
「それって、幻覚とか精神攻撃が効かないってことにゃ?」
「はい、あくま可能性ですが、試してみる価値はあるかと」 ステラは俺があげたボイスレコーダーに記録しながら提案している……あとでライオネット先生に教える気じゃないだろうな。
「それなら、今ここで試すのもアリですね」
スイランはそう言うと、俺の掌に魔法陣のような模様を書きだした。それはVRヘッドセットに施したものと同じ幻覚魔法だと言った。
「腕が千切れる幻覚を施しました」
スイランはさらりとそう言った。みんなの視線が、一斉に俺の右腕に集まる。
……でも、何も起きない。
「どんなチート能力っすかアニキ!」
場がざわめきに包まれた。
トレスが一番驚いていた。同じ幻覚魔法で発狂した人の意見は説得力がある。
「僕の魔法が不十分なことも考えられますが、新しい発見ですね。有効かもしれません」
スイランの助言通り、俺が四日目の走者になった。相方は、女子三人でじゃんけんをしてステラに決まった。
ライミと姫様は「ステラは参加の意思もなかったのに」と、不満を言っていたが、ステラは小声で「近くで観察できるチャンス」と呟いていた。俺は勝てれば誰でもいいんだけどな。
「最後の競技はマナ・ラグナロクか、これは七人全員での団体戦だな」
「全員の魔法を“結集”させて、一撃の破壊力を競う競技です」 スイランが前に出る。
「会場中央に“結晶核”と呼ばれる魔導装置があり、それに各チームが魔力を注ぎ込んで、最も高威力の魔法を発動させたチームが勝利します」
「ただし、魔力をただ注ぎ込めばいいというわけではない……っていう競技だろ?」
この競技大会の方向性が分かってきたからな。
「いいえ、ただ全力で魔法を放つだけの単純な競技です」
「ああ、そうなんだ……じゃあ作戦も何もないな」
「ええ、上位クラスには絶対に勝つことができない競技です……」
スイランの声が小さくなった。上位クラスとはよっぽどの力の差があるんだな……けど
「なにも考えずに全力を出せるんだ。それで負けたら本望じゃないか?」
「……そうですね」 スイランの目に少し光が灯った気がした。
「やってやるにゃ」 ライミは最初っから最後までやる気満々だな。
「ほどほどにですね」 ステラは、そう言いつつも、過去の競技結果をボイスレコーダーに記録している。
「なんか楽しくなってきたぜ」 トレスのテンションは、いつもより高めだ。
「わたくしの成り上がり冒険譚開幕にはうってつけですわ」 姫様の自信はどこから湧いて出てくるのやら。
「良いメンバーですね」 ジェダくんは、暖かな視線をみんなに送っている。
「よし、じゃあ今日から放課後は毎日特訓だな」
俺のその提案に、微妙な顔をしたやつも居たけど、なんだかんだで毎日全員揃って特訓に参加してくれた。
俺が言うと、ステラが手元の資料を開きながら頷いた。
「この競技は、男女ペアで挑む幻覚空間突破型レースです。相手クラスのペアと同時にスタートし、二人目が先にゴールした方が勝ちになりますが、評価点については一番最初にゴールした個人につくみたいですね」
「徒競走みたいなもんか」
「ただの競走じゃないですよ」
スイランが腕を組み続けた。
「途中には幻覚魔法による精神干渉ゾーン、強化結界、魔力障壁、そして物理的な落とし穴や吹き飛ばしトラップなどが配置されています」
「妨害もアリだって話だったよな」 トレスが目を輝かせる。
「ええ、ルール上“直接的な魔法攻撃は禁止”ですが、間接的な干渉──たとえば風で視界を遮る、地面を凍らせるなどはOKです」 ステラがそう補足した。
「精神干渉ゾーンってのが気になるな」
「最も代表的なのは“記憶型幻覚”です」 ステラが少し表情を曇らせた。
「自分の過去、トラウマや後悔に関する幻覚が目の前に出現し、行動を妨げてきます。ペアの片方が影響を受けても、もう片方が引っ張って進めば突破可能です」
「男女ペアの理由もソレですね、感受性の差が前提になっている気がします」 スイランの分析に、みんな納得した表情を見せた。
「ペア同士の信頼が重要かもしれないな……」
「任せてくださいまし。わたくし、電次郎様の手を決して離しませんから!」
俺の発言に姫様が、そう続けた。
「いや、俺が出るなんて決まってないからな。しかも、なぜ当然のようにペア扱いなんだ。」
「電にゃんが出るなら、にゃーも出るにゃ」 なぜかライミも被せて来るし。
「電次郎さんが出るのはオススメできません」 スイランは否定してくれた。でもなんで?
「電次郎さんの電力が魔力と違うマナだとすると……いや、そもそもマナかどうかも怪しいので、魔法による精神干渉が体に及ぼす影響は計り知れません」
「そ、そうなの?」 初耳だな。
「確かに、精神崩壊にも繋がりかねませんわね」 姫様も怖いこと言う。
「じゃあ、辞退しようかな……」
「それは早計では?」 ステラが冷静な口調で割り込み、話を続けた。
「電力が魔力と違うのなら、魔力による干渉が無意味な可能性もあります」
「それって、幻覚とか精神攻撃が効かないってことにゃ?」
「はい、あくま可能性ですが、試してみる価値はあるかと」 ステラは俺があげたボイスレコーダーに記録しながら提案している……あとでライオネット先生に教える気じゃないだろうな。
「それなら、今ここで試すのもアリですね」
スイランはそう言うと、俺の掌に魔法陣のような模様を書きだした。それはVRヘッドセットに施したものと同じ幻覚魔法だと言った。
「腕が千切れる幻覚を施しました」
スイランはさらりとそう言った。みんなの視線が、一斉に俺の右腕に集まる。
……でも、何も起きない。
「どんなチート能力っすかアニキ!」
場がざわめきに包まれた。
トレスが一番驚いていた。同じ幻覚魔法で発狂した人の意見は説得力がある。
「僕の魔法が不十分なことも考えられますが、新しい発見ですね。有効かもしれません」
スイランの助言通り、俺が四日目の走者になった。相方は、女子三人でじゃんけんをしてステラに決まった。
ライミと姫様は「ステラは参加の意思もなかったのに」と、不満を言っていたが、ステラは小声で「近くで観察できるチャンス」と呟いていた。俺は勝てれば誰でもいいんだけどな。
「最後の競技はマナ・ラグナロクか、これは七人全員での団体戦だな」
「全員の魔法を“結集”させて、一撃の破壊力を競う競技です」 スイランが前に出る。
「会場中央に“結晶核”と呼ばれる魔導装置があり、それに各チームが魔力を注ぎ込んで、最も高威力の魔法を発動させたチームが勝利します」
「ただし、魔力をただ注ぎ込めばいいというわけではない……っていう競技だろ?」
この競技大会の方向性が分かってきたからな。
「いいえ、ただ全力で魔法を放つだけの単純な競技です」
「ああ、そうなんだ……じゃあ作戦も何もないな」
「ええ、上位クラスには絶対に勝つことができない競技です……」
スイランの声が小さくなった。上位クラスとはよっぽどの力の差があるんだな……けど
「なにも考えずに全力を出せるんだ。それで負けたら本望じゃないか?」
「……そうですね」 スイランの目に少し光が灯った気がした。
「やってやるにゃ」 ライミは最初っから最後までやる気満々だな。
「ほどほどにですね」 ステラは、そう言いつつも、過去の競技結果をボイスレコーダーに記録している。
「なんか楽しくなってきたぜ」 トレスのテンションは、いつもより高めだ。
「わたくしの成り上がり冒険譚開幕にはうってつけですわ」 姫様の自信はどこから湧いて出てくるのやら。
「良いメンバーですね」 ジェダくんは、暖かな視線をみんなに送っている。
「よし、じゃあ今日から放課後は毎日特訓だな」
俺のその提案に、微妙な顔をしたやつも居たけど、なんだかんだで毎日全員揃って特訓に参加してくれた。
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