48 / 130
おっさんたち奮起す
しおりを挟む
魔法競技大会の前日、訓練棟にある一番大きな校庭が特設競技場としてお披露目され、前夜祭が催された。
屋台や新しい魔法の発表や、新方式の魔術講義など目白押しだった。
こう見ると、体育祭とか文化祭のノリなんだなって安心する。そんな気負わなくても大丈夫そうかな?
ついでに一日目の対戦表も発表され、校庭は悲喜こもごもだった。
「僕たちの対戦相手はKクラスですね……」
「マジか……」
スイランとトレスが、落ち込んだ声を漏らした。
「なんだよ、強いクラスなのか? Kクラスってことは上から14番目くらいか? 上位クラスでは低いランクなんじゃないのか?」
「そうですね、実力的には低いかもしれませんが……」
「実力拮抗の上位クラスにおいて、ランクが低いということは、そういうことです」
言葉を濁すスイランとステラ。
「素行が悪いってことか?」
「はい、あくまで噂ですが」
「おいおい、噂で他のクラスを悪く言うもんじゃないぞ。俺達だって他のクラスからしたら素行が悪いと思われているかもしれないしな」
これだから若いもんは──だが、俺のフォローは脆くも崩れ去る。
「おいおい、本当に出るのかよ。そっちは魔法使えるやつ、何人いるんだ?」
「嘘だろ、ほんとにおっさんが一人混ざってんだけど」
「え、あれって教師じゃなくて生徒なの? ウケるんだけど」
「へぇー、あんなのが魔法大会に出るなんて、学園も寛容になったもんだなぁ!」
「本気でやる気あるのかよ、冗談は顔だけにしとけよな」
軽口と嘲笑がこれでもかと飛んでくる。ほぼ俺のことじゃないかな? まぁ間違ってはいないけど、面と向かって言われると傷つくな。
スイランが言うには、初日の相手となるKクラスのメンバー達のようだ。
先頭にいたのはガラの悪い男子生徒五人。一人目は全身を黒革で固めた筋骨隆々の大男で、顔には切り傷のようなタトゥーが刻まれている。二人目は金髪モヒカン、片耳に骨のようなイヤーカフをつけており、笑うたびに犬歯が見える。三人目は常に飴を舐めている無精ひげの男で、気だるげな視線が逆に不気味だ。四人目は二丁の魔法短剣を腰に下げた痩身の男。目つきが鋭く、いつも指を鳴らしている。五人目は身長こそ低いが、その分異常に幅広い肩と、鋼のような腕を持つ重量級の魔術師だ。
そして彼らの背後にいたのは、褐色肌のギャル二人組。片方は腰まで届く白銀の髪をポニーテールに結い、大胆なアレンジ制服を着崩した派手顔の少女。もう一人は金のカチューシャをつけた、つり目で口元に常に笑みを浮かべたタイプ。軽く跳ねた髪とつやつやのリップが特徴的だった。
ビックリするぐらい分かりやすい奴らだ。ほんとにこれが上位クラスか?
「──言わせておけば……許さないにゃ」
ライミが小さく唸り声をあげた。尻尾が怒ってる。
「……聞き捨てなりませんね」
エネッタの眉が吊り上がり、腕を組む。
「あ~知ってるわぁこの子。どっかのド田舎王国の姫なんだっけ? 家で大人しく姫様ごっこでもしてれば良かったのに。なぁにを勘違いしちゃったんだろうね~、ボコボコに負かすのが楽しみだわ」
褐色ギャルが姫様のことを挑発した。これはさすがに許せない。
「お前たちなぁ……」
おっさんのありがたい説教を食らわせてやろうと思ったが、姫様が俺の肩に手を乗せた。
「電次郎様、挑発に乗ってはいけません。もう戦いは始まっていますわ。この侮辱の報いは、競技内で償ってもらいましょう」
ただのおてんば姫かと思ってたけど、しっかりしてるとこもあるんだな。見直した。
「キモっ、しらけるわ~つまんない奴ら」
「どうせ勝つのはオレたちだ。雑魚を揶揄うのはやめとけ」
「時間の無駄だよな。帰ろうぜ」
姫様の毅然とした態度に、Kクラスの連中は人込みへと消えて行った。
「俄然やる気が出てきたにゃん」
ライミが拳を握った。
「僕も……電次郎さんを馬鹿にされて黙っているわけにはいきません」
スイランが静かに前に出る。
「記録照合完了しました。Kクラス七名。氏名、モリス、ミノ、ギリアン、チャチャ、ワルダー、アチャウコフスキ、ヨウセム。排除者リストに加えました」
ステラ……排除者リストって物騒な……でも、その情報量には驚くばかりだ。それに普段大人しいステラの怒りが伝わってくる。
「汚いチャラさっすね、最悪っす」
トレスも怒っているようだ。
いつもすまし顔のジェダくんも、Kクラスの背中を睨んでいるように見えた。
なんだかんだで、全員が静かに燃えているようだ。
明日が楽しみだぜ。
屋台や新しい魔法の発表や、新方式の魔術講義など目白押しだった。
こう見ると、体育祭とか文化祭のノリなんだなって安心する。そんな気負わなくても大丈夫そうかな?
ついでに一日目の対戦表も発表され、校庭は悲喜こもごもだった。
「僕たちの対戦相手はKクラスですね……」
「マジか……」
スイランとトレスが、落ち込んだ声を漏らした。
「なんだよ、強いクラスなのか? Kクラスってことは上から14番目くらいか? 上位クラスでは低いランクなんじゃないのか?」
「そうですね、実力的には低いかもしれませんが……」
「実力拮抗の上位クラスにおいて、ランクが低いということは、そういうことです」
言葉を濁すスイランとステラ。
「素行が悪いってことか?」
「はい、あくまで噂ですが」
「おいおい、噂で他のクラスを悪く言うもんじゃないぞ。俺達だって他のクラスからしたら素行が悪いと思われているかもしれないしな」
これだから若いもんは──だが、俺のフォローは脆くも崩れ去る。
「おいおい、本当に出るのかよ。そっちは魔法使えるやつ、何人いるんだ?」
「嘘だろ、ほんとにおっさんが一人混ざってんだけど」
「え、あれって教師じゃなくて生徒なの? ウケるんだけど」
「へぇー、あんなのが魔法大会に出るなんて、学園も寛容になったもんだなぁ!」
「本気でやる気あるのかよ、冗談は顔だけにしとけよな」
軽口と嘲笑がこれでもかと飛んでくる。ほぼ俺のことじゃないかな? まぁ間違ってはいないけど、面と向かって言われると傷つくな。
スイランが言うには、初日の相手となるKクラスのメンバー達のようだ。
先頭にいたのはガラの悪い男子生徒五人。一人目は全身を黒革で固めた筋骨隆々の大男で、顔には切り傷のようなタトゥーが刻まれている。二人目は金髪モヒカン、片耳に骨のようなイヤーカフをつけており、笑うたびに犬歯が見える。三人目は常に飴を舐めている無精ひげの男で、気だるげな視線が逆に不気味だ。四人目は二丁の魔法短剣を腰に下げた痩身の男。目つきが鋭く、いつも指を鳴らしている。五人目は身長こそ低いが、その分異常に幅広い肩と、鋼のような腕を持つ重量級の魔術師だ。
そして彼らの背後にいたのは、褐色肌のギャル二人組。片方は腰まで届く白銀の髪をポニーテールに結い、大胆なアレンジ制服を着崩した派手顔の少女。もう一人は金のカチューシャをつけた、つり目で口元に常に笑みを浮かべたタイプ。軽く跳ねた髪とつやつやのリップが特徴的だった。
ビックリするぐらい分かりやすい奴らだ。ほんとにこれが上位クラスか?
「──言わせておけば……許さないにゃ」
ライミが小さく唸り声をあげた。尻尾が怒ってる。
「……聞き捨てなりませんね」
エネッタの眉が吊り上がり、腕を組む。
「あ~知ってるわぁこの子。どっかのド田舎王国の姫なんだっけ? 家で大人しく姫様ごっこでもしてれば良かったのに。なぁにを勘違いしちゃったんだろうね~、ボコボコに負かすのが楽しみだわ」
褐色ギャルが姫様のことを挑発した。これはさすがに許せない。
「お前たちなぁ……」
おっさんのありがたい説教を食らわせてやろうと思ったが、姫様が俺の肩に手を乗せた。
「電次郎様、挑発に乗ってはいけません。もう戦いは始まっていますわ。この侮辱の報いは、競技内で償ってもらいましょう」
ただのおてんば姫かと思ってたけど、しっかりしてるとこもあるんだな。見直した。
「キモっ、しらけるわ~つまんない奴ら」
「どうせ勝つのはオレたちだ。雑魚を揶揄うのはやめとけ」
「時間の無駄だよな。帰ろうぜ」
姫様の毅然とした態度に、Kクラスの連中は人込みへと消えて行った。
「俄然やる気が出てきたにゃん」
ライミが拳を握った。
「僕も……電次郎さんを馬鹿にされて黙っているわけにはいきません」
スイランが静かに前に出る。
「記録照合完了しました。Kクラス七名。氏名、モリス、ミノ、ギリアン、チャチャ、ワルダー、アチャウコフスキ、ヨウセム。排除者リストに加えました」
ステラ……排除者リストって物騒な……でも、その情報量には驚くばかりだ。それに普段大人しいステラの怒りが伝わってくる。
「汚いチャラさっすね、最悪っす」
トレスも怒っているようだ。
いつもすまし顔のジェダくんも、Kクラスの背中を睨んでいるように見えた。
なんだかんだで、全員が静かに燃えているようだ。
明日が楽しみだぜ。
6
あなたにおすすめの小説
神様転生~うどんを食べてスローライフをしつつ、領地を豊かにしようとする話、の筈だったのですけれど~
於田縫紀
ファンタジー
大西彩花(香川県出身、享年29歳、独身)は転生直後、維持神を名乗る存在から、いきなり土地神を命じられた。目の前は砂浜と海。反対側は枯れたような色の草原と、所々にぽつんと高い山、そしてずっと向こうにも山。神の権能『全知』によると、この地を豊かにして人や動物を呼び込まなければ、私という土地神は消えてしまうらしい。
現状は乾燥の為、樹木も生えない状態で、あるのは草原と小動物位。私の土地神としての挑戦が、今始まる!
の前に、まずは衣食住を何とかしないと。衣はどうにでもなるらしいから、まずは食、次に住を。食べ物と言うと、やっぱり元うどん県人としては……
(カクヨムと小説家になろうにも、投稿しています)
(イラストにあるピンクの化物? が何かは、お話が進めば、そのうち……)
異世界に転生したので幸せに暮らします、多分
かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。
前世の分も幸せに暮らします!
平成30年3月26日完結しました。
番外編、書くかもです。
5月9日、番外編追加しました。
小説家になろう様でも公開してます。
エブリスタ様でも公開してます。
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~
きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。
前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。
ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者
哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。
何も成し遂げることなく35年……
ついに前世の年齢を超えた。
※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。
※この小説は他サイトにも投稿しています。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる