49 / 130
Zクラス快勝す
しおりを挟む
──魔法競技大会、一日目《フォーカス・ストライク》。
第一試合:Zクラス【スイラン】 vs Kクラス【モリス】
スイランは静かに目を閉じ、深く息を吸い込んだ。
攻撃的な魔法が得意なタイプではない彼だが、そのひたむきな性格と集中力は、精緻な幻影魔法を極めるに足る素養を備えていた。
魔力を丁寧に編み上げて作り出したのは、美しい光の弓と矢。
その矢は、まるで祈るような所作でしなやかに弓に番えられ、静かに引かれ──そして放たれた光の矢は、一筋の軌跡となって空を駆ける。
その軌道は、まるで誰かが定規で描いたような完璧なカーブを描き、光を纏って煌めきながら、的の中心に吸い込まれるように突き刺さった。
モリスは狙いを逸らし、惜しくも外周に着弾。
「勝者Zクラス、スイラン!」
そのアナウンスを聞き、俺は引くほど叫び喜んだが、ステラに「落ち着いて下さい。次の試合に影響がでます」と、諭され反省した。
第二試合:Zクラス【トレス】 vs Kクラス【ギリアン】
VRゴーグルを装着したトレスは、開始直前まで緊張した面持ちで、落ち着かない様子だった。
でも、袖をまくった掌にバツ印を描き、それをじっと見つめて飲み込むように息を整えると、すっと目が据わった。
「練習通りやれば絶対に大丈夫だ……」彼はそう小声で何度か繰り返しながら、足を一歩前へ出した。
飛び回る的が、ギリアンの前を横切った瞬間── トレスは呼吸と共に火球を放った。 光と熱を纏った魔法弾が一直線に飛翔し、見事に的の中心を撃ち抜いた。
「よしっ!」 満面の笑みでガッツポーズ。
勝利の余韻に浸るように、トレスは軽く拳を掲げた。
対するギリアンは焦りからか、魔力制御を誤り、火球はわずかに的を逸れて着弾した。
「勝者Zクラス、トレス!」
こっちを振り向いてガッツポーズするトレスを抱きしめてやりたかったが、まだ最後の試合が残っている。ここは我慢だ。
第三試合:Zクラス【エネッタ】 vs Kクラス【アチャウコフスキ】
姫様は軽やかに競技場に歩み出ると、暗視スコープを静かに装着した。
幻影的の揺らぎに臆することなく、姿勢を正し、息を整える。
「余裕でしたわね」
そう言い放った次の瞬間、水の魔力が静かに収束され、細く鋭利な水流が放たれた。
それは肉眼では捉えきれないほどの速度で飛び、幻影的の中心を正確に撃ち抜く。
暗視スコープを外し、長い髪をなびかせながら姫様は颯爽と競技場を後にする。
──水圧を活かした魔法ってのも、案外強力なのかもしれないな。
「勝者Zクラス、エネッタ!」
うぉぉぉぉ、全勝だぁぁぁ‼
会場にどよめきが走る。
Kクラスの面々が、唖然としたまま呆けていた。
「……なんなんだあのクラス……」
「完全に、想定外だ……」
「というかナニあの魔道具……卑怯じゃない?」
言い掛かりのような文句も聞こえてきたけど無視しよう。
魔法ならなんでもアリな大会だからな、俺の家電は魔法で召喚されている。審判の講師たちもそれを分かっているから何も言わないのだ。
ふっ……これが家電の力ってやつだよKクラス諸君──
と、自慢してやりたかったけど、ここは勝者の余韻に浸らせてもらおう。
「みんな、よくやった。最高だぜ」
俺はスイランとトレス、エネッタを抱き寄せ褒め称えた。
「電次郎さんのおかげです」
「アニキの魔道具、やっぱ最高っすね」
「わたくしのは実力が八割ですわ」
「みんなの特訓の成果だ。誇っていい」
♦-/-/-//-/-/--/-/-/--/♦
──大会までの放課後、俺達は毎日特訓に明け暮れた。
訓練場所は、学園の裏手にある空き地。人目につかず、少しばかり家電を使っても怒られない場所。
──ちなみにこの訓練器材、全部俺の私物だ。 近所の大学生にサバゲーマニアがいて、よくVRと暗視スコープを持ってきては“おっさん、これでFPSの反射神経鍛えましょうよ!”と勝手にうちの店で試遊会を始めるような奴だった。 親戚には測量士もいて、地上型のレーザースキャナを扱うからって言われて何度か機器調達を頼まれたこともある。 結果、色々と余ってた。……うち、電気屋だからな。
「いいか、お前ら。魔力を的に当てるこの競技、要は“当たればいい”んじゃない。狙ったタイミングで、正確に撃つこと。それができれば勝てる」
俺は段ボールから家電を取り出して並べていく。
「まずこれが、レーザー距離計。的までの正確な距離を測ってくれる。風の影響まで考慮できるデータ付きの優れものだ」
親戚の測量士に頼まれて扱ったことがある地上型レーザースキャナが再び日の目を見るなんて思わなかったぜ。
それを見たスイランが目を輝かせる。
「すごい……これ、魔法弓の射距離を調整するときに使えますね」
「こっちは暗視スコープ。幻影ターゲットに使え。視覚を惑わされても、熱反応は消せないんだよな」
ステラが興味深そうにスコープを覗き込む。
「なるほど……幻影にも、かすかに魔力の熱痕が残るんですね。これなら探知できます」
近所の大学生がサバゲーにハマってて、取り寄せてやったゴツイスコープだ。これがあれば暗闇でも安心だと思って出したが、幻影的にも効果がありそうだなんて意外だな。
「で、これはドローン。移動的の模擬用。空中でランダムに飛ばすから、それを狙う練習だ」
「来た来た! 次っ、左上!」
トレスが嬉しそうに魔法を放つ。光の矢が飛び、ドローンの真横をかすめた。
「あとこれ。レーザーポインター付きヘッドセット。照準の感覚を体で覚えるのに使え」
ジュダが感心したようにうなずく。
「照準を視覚とリンクさせるのは、氷の彫刻魔法と似てます。これ、精度が格段に上がりますよ」
姫様も負けじと装着し、すぐさまポーズを決める。
「ふふ、これが魔導具というものですのね! 面白いですわ、電次郎様!」
地味な訓練だが、効果は抜群だった。
みんなは、正確な距離感、照準、幻影の看破、そして移動的への反応速度を、短期間で飛躍的に高め、そして本番へと挑んだのだ。
第一試合:Zクラス【スイラン】 vs Kクラス【モリス】
スイランは静かに目を閉じ、深く息を吸い込んだ。
攻撃的な魔法が得意なタイプではない彼だが、そのひたむきな性格と集中力は、精緻な幻影魔法を極めるに足る素養を備えていた。
魔力を丁寧に編み上げて作り出したのは、美しい光の弓と矢。
その矢は、まるで祈るような所作でしなやかに弓に番えられ、静かに引かれ──そして放たれた光の矢は、一筋の軌跡となって空を駆ける。
その軌道は、まるで誰かが定規で描いたような完璧なカーブを描き、光を纏って煌めきながら、的の中心に吸い込まれるように突き刺さった。
モリスは狙いを逸らし、惜しくも外周に着弾。
「勝者Zクラス、スイラン!」
そのアナウンスを聞き、俺は引くほど叫び喜んだが、ステラに「落ち着いて下さい。次の試合に影響がでます」と、諭され反省した。
第二試合:Zクラス【トレス】 vs Kクラス【ギリアン】
VRゴーグルを装着したトレスは、開始直前まで緊張した面持ちで、落ち着かない様子だった。
でも、袖をまくった掌にバツ印を描き、それをじっと見つめて飲み込むように息を整えると、すっと目が据わった。
「練習通りやれば絶対に大丈夫だ……」彼はそう小声で何度か繰り返しながら、足を一歩前へ出した。
飛び回る的が、ギリアンの前を横切った瞬間── トレスは呼吸と共に火球を放った。 光と熱を纏った魔法弾が一直線に飛翔し、見事に的の中心を撃ち抜いた。
「よしっ!」 満面の笑みでガッツポーズ。
勝利の余韻に浸るように、トレスは軽く拳を掲げた。
対するギリアンは焦りからか、魔力制御を誤り、火球はわずかに的を逸れて着弾した。
「勝者Zクラス、トレス!」
こっちを振り向いてガッツポーズするトレスを抱きしめてやりたかったが、まだ最後の試合が残っている。ここは我慢だ。
第三試合:Zクラス【エネッタ】 vs Kクラス【アチャウコフスキ】
姫様は軽やかに競技場に歩み出ると、暗視スコープを静かに装着した。
幻影的の揺らぎに臆することなく、姿勢を正し、息を整える。
「余裕でしたわね」
そう言い放った次の瞬間、水の魔力が静かに収束され、細く鋭利な水流が放たれた。
それは肉眼では捉えきれないほどの速度で飛び、幻影的の中心を正確に撃ち抜く。
暗視スコープを外し、長い髪をなびかせながら姫様は颯爽と競技場を後にする。
──水圧を活かした魔法ってのも、案外強力なのかもしれないな。
「勝者Zクラス、エネッタ!」
うぉぉぉぉ、全勝だぁぁぁ‼
会場にどよめきが走る。
Kクラスの面々が、唖然としたまま呆けていた。
「……なんなんだあのクラス……」
「完全に、想定外だ……」
「というかナニあの魔道具……卑怯じゃない?」
言い掛かりのような文句も聞こえてきたけど無視しよう。
魔法ならなんでもアリな大会だからな、俺の家電は魔法で召喚されている。審判の講師たちもそれを分かっているから何も言わないのだ。
ふっ……これが家電の力ってやつだよKクラス諸君──
と、自慢してやりたかったけど、ここは勝者の余韻に浸らせてもらおう。
「みんな、よくやった。最高だぜ」
俺はスイランとトレス、エネッタを抱き寄せ褒め称えた。
「電次郎さんのおかげです」
「アニキの魔道具、やっぱ最高っすね」
「わたくしのは実力が八割ですわ」
「みんなの特訓の成果だ。誇っていい」
♦-/-/-//-/-/--/-/-/--/♦
──大会までの放課後、俺達は毎日特訓に明け暮れた。
訓練場所は、学園の裏手にある空き地。人目につかず、少しばかり家電を使っても怒られない場所。
──ちなみにこの訓練器材、全部俺の私物だ。 近所の大学生にサバゲーマニアがいて、よくVRと暗視スコープを持ってきては“おっさん、これでFPSの反射神経鍛えましょうよ!”と勝手にうちの店で試遊会を始めるような奴だった。 親戚には測量士もいて、地上型のレーザースキャナを扱うからって言われて何度か機器調達を頼まれたこともある。 結果、色々と余ってた。……うち、電気屋だからな。
「いいか、お前ら。魔力を的に当てるこの競技、要は“当たればいい”んじゃない。狙ったタイミングで、正確に撃つこと。それができれば勝てる」
俺は段ボールから家電を取り出して並べていく。
「まずこれが、レーザー距離計。的までの正確な距離を測ってくれる。風の影響まで考慮できるデータ付きの優れものだ」
親戚の測量士に頼まれて扱ったことがある地上型レーザースキャナが再び日の目を見るなんて思わなかったぜ。
それを見たスイランが目を輝かせる。
「すごい……これ、魔法弓の射距離を調整するときに使えますね」
「こっちは暗視スコープ。幻影ターゲットに使え。視覚を惑わされても、熱反応は消せないんだよな」
ステラが興味深そうにスコープを覗き込む。
「なるほど……幻影にも、かすかに魔力の熱痕が残るんですね。これなら探知できます」
近所の大学生がサバゲーにハマってて、取り寄せてやったゴツイスコープだ。これがあれば暗闇でも安心だと思って出したが、幻影的にも効果がありそうだなんて意外だな。
「で、これはドローン。移動的の模擬用。空中でランダムに飛ばすから、それを狙う練習だ」
「来た来た! 次っ、左上!」
トレスが嬉しそうに魔法を放つ。光の矢が飛び、ドローンの真横をかすめた。
「あとこれ。レーザーポインター付きヘッドセット。照準の感覚を体で覚えるのに使え」
ジュダが感心したようにうなずく。
「照準を視覚とリンクさせるのは、氷の彫刻魔法と似てます。これ、精度が格段に上がりますよ」
姫様も負けじと装着し、すぐさまポーズを決める。
「ふふ、これが魔導具というものですのね! 面白いですわ、電次郎様!」
地味な訓練だが、効果は抜群だった。
みんなは、正確な距離感、照準、幻影の看破、そして移動的への反応速度を、短期間で飛躍的に高め、そして本番へと挑んだのだ。
10
あなたにおすすめの小説
神様転生~うどんを食べてスローライフをしつつ、領地を豊かにしようとする話、の筈だったのですけれど~
於田縫紀
ファンタジー
大西彩花(香川県出身、享年29歳、独身)は転生直後、維持神を名乗る存在から、いきなり土地神を命じられた。目の前は砂浜と海。反対側は枯れたような色の草原と、所々にぽつんと高い山、そしてずっと向こうにも山。神の権能『全知』によると、この地を豊かにして人や動物を呼び込まなければ、私という土地神は消えてしまうらしい。
現状は乾燥の為、樹木も生えない状態で、あるのは草原と小動物位。私の土地神としての挑戦が、今始まる!
の前に、まずは衣食住を何とかしないと。衣はどうにでもなるらしいから、まずは食、次に住を。食べ物と言うと、やっぱり元うどん県人としては……
(カクヨムと小説家になろうにも、投稿しています)
(イラストにあるピンクの化物? が何かは、お話が進めば、そのうち……)
異世界に転生したので幸せに暮らします、多分
かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。
前世の分も幸せに暮らします!
平成30年3月26日完結しました。
番外編、書くかもです。
5月9日、番外編追加しました。
小説家になろう様でも公開してます。
エブリスタ様でも公開してます。
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~
きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。
前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。
ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者
哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。
何も成し遂げることなく35年……
ついに前世の年齢を超えた。
※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。
※この小説は他サイトにも投稿しています。
異世界ほのぼの牧場生活〜女神の加護でスローライフ始めました〜』
チャチャ
ファンタジー
ブラック企業で心も体もすり減らしていた青年・悠翔(はると)。
日々の疲れを癒してくれていたのは、幼い頃から大好きだったゲーム『ほのぼの牧場ライフ』だけだった。
両親を早くに亡くし、年の離れた妹・ひなのを守りながら、限界寸前の生活を続けていたある日――
「目を覚ますと、そこは……ゲームの中そっくりの世界だった!?」
女神様いわく、「疲れ果てたあなたに、癒しの世界を贈ります」とのこと。
目の前には、自分がかつて何百時間も遊んだ“あの牧場”が広がっていた。
作物を育て、動物たちと暮らし、時には村人の悩みを解決しながら、のんびりと過ごす毎日。
けれどもこの世界には、ゲームにはなかった“出会い”があった。
――獣人の少女、恥ずかしがり屋の魔法使い、村の頼れるお姉さん。
誰かと心を通わせるたびに、はるとの日常は少しずつ色づいていく。
そして、残された妹・ひなのにも、ある“転機”が訪れようとしていた……。
ほっこり、のんびり、時々ドキドキ。
癒しと恋と成長の、異世界牧場スローライフ、始まります!
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる