しがない電気屋のおっさん、異世界で家電召喚ライフしてたら民から神格化され魔王から狙われる

長月 鳥

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Zクラス快勝す

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 ──魔法競技大会、一日目《フォーカス・ストライク》。

 第一試合:Zクラス【スイラン】 vs Kクラス【モリス】
 スイランは静かに目を閉じ、深く息を吸い込んだ。
 攻撃的な魔法が得意なタイプではない彼だが、そのひたむきな性格と集中力は、精緻な幻影魔法を極めるに足る素養を備えていた。
 魔力を丁寧に編み上げて作り出したのは、美しい光の弓と矢。
 その矢は、まるで祈るような所作でしなやかに弓に番えられ、静かに引かれ──そして放たれた光の矢は、一筋の軌跡となって空を駆ける。
 その軌道は、まるで誰かが定規で描いたような完璧なカーブを描き、光を纏って煌めきながら、的の中心に吸い込まれるように突き刺さった。
 モリスは狙いを逸らし、惜しくも外周に着弾。
 「勝者Zクラス、スイラン!」
 そのアナウンスを聞き、俺は引くほど叫び喜んだが、ステラに「落ち着いて下さい。次の試合に影響がでます」と、諭され反省した。

 第二試合:Zクラス【トレス】 vs Kクラス【ギリアン】
 VRゴーグルを装着したトレスは、開始直前まで緊張した面持ちで、落ち着かない様子だった。
 でも、袖をまくった掌にバツ印を描き、それをじっと見つめて飲み込むように息を整えると、すっと目が据わった。
 「練習通りやれば絶対に大丈夫だ……」彼はそう小声で何度か繰り返しながら、足を一歩前へ出した。
 飛び回る的が、ギリアンの前を横切った瞬間──  トレスは呼吸と共に火球を放った。  光と熱を纏った魔法弾が一直線に飛翔し、見事に的の中心を撃ち抜いた。
 「よしっ!」  満面の笑みでガッツポーズ。
 勝利の余韻に浸るように、トレスは軽く拳を掲げた。
 対するギリアンは焦りからか、魔力制御を誤り、火球はわずかに的を逸れて着弾した。
 「勝者Zクラス、トレス!」
 こっちを振り向いてガッツポーズするトレスを抱きしめてやりたかったが、まだ最後の試合が残っている。ここは我慢だ。

 第三試合:Zクラス【エネッタ】 vs Kクラス【アチャウコフスキ】
 姫様は軽やかに競技場に歩み出ると、暗視スコープを静かに装着した。
 幻影的の揺らぎに臆することなく、姿勢を正し、息を整える。
 「余裕でしたわね」
 そう言い放った次の瞬間、水の魔力が静かに収束され、細く鋭利な水流が放たれた。
 それは肉眼では捉えきれないほどの速度で飛び、幻影的の中心を正確に撃ち抜く。
 暗視スコープを外し、長い髪をなびかせながら姫様は颯爽と競技場を後にする。
 ──水圧を活かした魔法ってのも、案外強力なのかもしれないな。
 「勝者Zクラス、エネッタ!」
 うぉぉぉぉ、全勝だぁぁぁ‼

 会場にどよめきが走る。
 Kクラスの面々が、唖然としたまま呆けていた。
 「……なんなんだあのクラス……」
 「完全に、想定外だ……」
 「というかナニあの魔道具……卑怯じゃない?」
 言い掛かりのような文句も聞こえてきたけど無視しよう。
 魔法ならなんでもアリな大会だからな、俺の家電は魔法で召喚されている。審判の講師たちもそれを分かっているから何も言わないのだ。
 ふっ……これが家電の力ってやつだよKクラス諸君──
 と、自慢してやりたかったけど、ここは勝者の余韻に浸らせてもらおう。

 「みんな、よくやった。最高だぜ」
 俺はスイランとトレス、エネッタを抱き寄せ褒め称えた。
 「電次郎さんのおかげです」
 「アニキの魔道具、やっぱ最高っすね」
 「わたくしのは実力が八割ですわ」
 「みんなの特訓の成果だ。誇っていい」

♦-/-/-//-/-/--/-/-/--/♦

 ──大会までの放課後、俺達は毎日特訓に明け暮れた。
 訓練場所は、学園の裏手にある空き地。人目につかず、少しばかり家電を使っても怒られない場所。
 ──ちなみにこの訓練器材、全部俺の私物だ。  近所の大学生にサバゲーマニアがいて、よくVRと暗視スコープを持ってきては“おっさん、これでFPSの反射神経鍛えましょうよ!”と勝手にうちの店で試遊会を始めるような奴だった。  親戚には測量士もいて、地上型のレーザースキャナを扱うからって言われて何度か機器調達を頼まれたこともある。  結果、色々と余ってた。……うち、電気屋だからな。
 「いいか、お前ら。魔力を的に当てるこの競技、要は“当たればいい”んじゃない。狙ったタイミングで、正確に撃つこと。それができれば勝てる」
 俺は段ボールから家電を取り出して並べていく。
 「まずこれが、レーザー距離計。的までの正確な距離を測ってくれる。風の影響まで考慮できるデータ付きの優れものだ」
 親戚の測量士に頼まれて扱ったことがある地上型レーザースキャナが再び日の目を見るなんて思わなかったぜ。
 それを見たスイランが目を輝かせる。
 「すごい……これ、魔法弓の射距離を調整するときに使えますね」
 
 「こっちは暗視スコープ。幻影ターゲットに使え。視覚を惑わされても、熱反応は消せないんだよな」
 ステラが興味深そうにスコープを覗き込む。
 「なるほど……幻影にも、かすかに魔力の熱痕が残るんですね。これなら探知できます」
 近所の大学生がサバゲーにハマってて、取り寄せてやったゴツイスコープだ。これがあれば暗闇でも安心だと思って出したが、幻影的にも効果がありそうだなんて意外だな。

 「で、これはドローン。移動的の模擬用。空中でランダムに飛ばすから、それを狙う練習だ」
 「来た来た! 次っ、左上!」
 トレスが嬉しそうに魔法を放つ。光の矢が飛び、ドローンの真横をかすめた。
 「あとこれ。レーザーポインター付きヘッドセット。照準の感覚を体で覚えるのに使え」
 ジュダが感心したようにうなずく。
 「照準を視覚とリンクさせるのは、氷の彫刻魔法と似てます。これ、精度が格段に上がりますよ」
 姫様も負けじと装着し、すぐさまポーズを決める。
 「ふふ、これが魔導具というものですのね! 面白いですわ、電次郎様!」
 地味な訓練だが、効果は抜群だった。
 みんなは、正確な距離感、照準、幻影の看破、そして移動的への反応速度を、短期間で飛躍的に高め、そして本番へと挑んだのだ。
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