しがない電気屋のおっさん、異世界で家電召喚ライフしてたら民から神格化され魔王から狙われる

長月 鳥

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おっさんたち奮起す

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 魔法競技大会の前日、訓練棟にある一番大きな校庭が特設競技場としてお披露目され、前夜祭が催された。
 屋台や新しい魔法の発表や、新方式の魔術講義など目白押しだった。
 こう見ると、体育祭とか文化祭のノリなんだなって安心する。そんな気負わなくても大丈夫そうかな?
 ついでに一日目の対戦表も発表され、校庭は悲喜こもごもだった。

 「僕たちの対戦相手はKクラスですね……」
 「マジか……」
 スイランとトレスが、落ち込んだ声を漏らした。
 「なんだよ、強いクラスなのか? Kクラスってことは上から14番目くらいか? 上位クラスでは低いランクなんじゃないのか?」
 「そうですね、実力的には低いかもしれませんが……」
 「実力拮抗の上位クラスにおいて、ランクが低いということは、そういうことです」
 言葉を濁すスイランとステラ。

 「素行が悪いってことか?」
 「はい、あくまで噂ですが」
 「おいおい、噂で他のクラスを悪く言うもんじゃないぞ。俺達だって他のクラスからしたら素行が悪いと思われているかもしれないしな」
 これだから若いもんは──だが、俺のフォローは脆くも崩れ去る。

 「おいおい、本当に出るのかよ。そっちは魔法使えるやつ、何人いるんだ?」
 「嘘だろ、ほんとにおっさんが一人混ざってんだけど」
 「え、あれって教師じゃなくて生徒なの? ウケるんだけど」
 「へぇー、あんなのが魔法大会に出るなんて、学園も寛容になったもんだなぁ!」
 「本気でやる気あるのかよ、冗談は顔だけにしとけよな」
 軽口と嘲笑がこれでもかと飛んでくる。ほぼ俺のことじゃないかな? まぁ間違ってはいないけど、面と向かって言われると傷つくな。

 スイランが言うには、初日の相手となるKクラスのメンバー達のようだ。
 先頭にいたのはガラの悪い男子生徒五人。一人目は全身を黒革で固めた筋骨隆々の大男で、顔には切り傷のようなタトゥーが刻まれている。二人目は金髪モヒカン、片耳に骨のようなイヤーカフをつけており、笑うたびに犬歯が見える。三人目は常に飴を舐めている無精ひげの男で、気だるげな視線が逆に不気味だ。四人目は二丁の魔法短剣を腰に下げた痩身の男。目つきが鋭く、いつも指を鳴らしている。五人目は身長こそ低いが、その分異常に幅広い肩と、鋼のような腕を持つ重量級の魔術師だ。
 そして彼らの背後にいたのは、褐色肌のギャル二人組。片方は腰まで届く白銀の髪をポニーテールに結い、大胆なアレンジ制服を着崩した派手顔の少女。もう一人は金のカチューシャをつけた、つり目で口元に常に笑みを浮かべたタイプ。軽く跳ねた髪とつやつやのリップが特徴的だった。
 ビックリするぐらい分かりやすい奴らだ。ほんとにこれが上位クラスか?

 「──言わせておけば……許さないにゃ」
 ライミが小さく唸り声をあげた。尻尾が怒ってる。
 「……聞き捨てなりませんね」
 エネッタの眉が吊り上がり、腕を組む。

 「あ~知ってるわぁこの子。どっかのド田舎王国の姫なんだっけ? 家で大人しく姫様ごっこでもしてれば良かったのに。なぁにを勘違いしちゃったんだろうね~、ボコボコに負かすのが楽しみだわ」
 褐色ギャルが姫様のことを挑発した。これはさすがに許せない。
 「お前たちなぁ……」
 おっさんのありがたい説教を食らわせてやろうと思ったが、姫様が俺の肩に手を乗せた。
 「電次郎様、挑発に乗ってはいけません。もう戦いは始まっていますわ。この侮辱の報いは、競技内で償ってもらいましょう」
 ただのおてんば姫かと思ってたけど、しっかりしてるとこもあるんだな。見直した。

 「キモっ、しらけるわ~つまんない奴ら」
 「どうせ勝つのはオレたちだ。雑魚を揶揄うのはやめとけ」
 「時間の無駄だよな。帰ろうぜ」
 姫様の毅然とした態度に、Kクラスの連中は人込みへと消えて行った。

 「俄然やる気が出てきたにゃん」
 ライミが拳を握った。
 「僕も……電次郎さんを馬鹿にされて黙っているわけにはいきません」
 スイランが静かに前に出る。
 「記録照合完了しました。Kクラス七名。氏名、モリス、ミノ、ギリアン、チャチャ、ワルダー、アチャウコフスキ、ヨウセム。排除者リストに加えました」
 ステラ……排除者リストって物騒な……でも、その情報量には驚くばかりだ。それに普段大人しいステラの怒りが伝わってくる。
 「汚いチャラさっすね、最悪っす」
 トレスも怒っているようだ。
 いつもすまし顔のジェダくんも、Kクラスの背中を睨んでいるように見えた。
 
 なんだかんだで、全員が静かに燃えているようだ。
 明日が楽しみだぜ。
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