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魔王あいさつす
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バンボルトが魔王城に降り立つと、重苦しい城門が開いた。
その直後──
「……なんだこれは」と、思わず声が漏れた。
真紅の絨毯がまっすぐ伸びている。しかも、よく見ると金糸が織り込まれていて、模様もやたら凝ってる。その両脇にはズラッと魔族たちが並んでいて、全員が片膝をつき、頭を下げていた。
「ようこそ、偉大なる客人よ……!」
先頭にいた女官らしき人物が、恭しく手を差し出してくる。
「え? 客人? 俺のこと?」
俺はすぐさま振り返り、バンボルトの顔を見る。客人ってお前のことじゃないのか?
だけど、バンボルトは腕を組んで、そっぽを向いた。
俺とバンボルトの他に誰も居ないし
何かの間違いじゃないかと思って、後ずさろうとした瞬間――
「行けよ。客人だろうが」
舌打ちしたバンボルトに背中を強く押された。
やっぱり俺が客人ってことなのかよ……一体どうなってんだ。
冷たい視線を感じて、辺りを見回すと、インスーラの奴も居た。
唇をわずかに噛み、眼鏡越しにじっと俺を観察していた。
「……不本意だが、形式は守らせてもらう。だが、これがいつまでも続くと思わないことだな」
形式? 魔王城では攫ってきた奴を、まずは歓迎する風習でもあるのか?
古びたホルンのような楽器が鳴り響き、グイグイと背中を押されながら絨毯を歩いていくと、城の奥にある扉の間に来た。
鬼? とも違う、なんだか邪悪な生き物が彫られたその扉が開く。
現れたのは、一人の女性だった。
黒い長髪に、白い肌。額からはしなやかに曲がった角が生えている。肩が大きく開いた鋲付きの上着に、黒と赤を基調としたブーツ。衣装はまさに「魔王」って感じの戦闘スタイルなのに、その顔は、驚くほど優しげだった。
それだけじゃない。
あの目元、口元。雰囲気まで、なぜか懐かしい感じがした。
前の世界の、近所の花屋にいたあのお姉さんだ。季節の花に詳しくて、たまにおまけしてくれて、でもちょっと不器用なところがある人。
そういや、お姉さんの電子レンジを修理中に感電して、ここに来たんだっけか? なんだか遠い記憶に感じる。
そのお姉さんの面影が、なんだか今この目の前の“魔王”と重なっていた。
「はじめまして。わたくし……いや、我が、この地の主――魔王、ルクス=ヴァル=オームです」
たどたどしいけれど、とても澄んだ声で彼女はそう名乗った。
「え、えーっと……魔王って、もっとこう……ガツンと来るタイプかと思ってました」
何を言ってるんだ俺は……。もっと恐ろしいことが待ち受けているんじゃないかって緊張と、魔王のギャップが激しくて、自分でも訳が分からなくなっている。
けれど、魔王はくすりと笑った。
「よく言われます。でも、そういうのは、どうにも性に合わなくて」
その笑顔は、どこか人間くさくて、あたたかかった。
その直後──
「……なんだこれは」と、思わず声が漏れた。
真紅の絨毯がまっすぐ伸びている。しかも、よく見ると金糸が織り込まれていて、模様もやたら凝ってる。その両脇にはズラッと魔族たちが並んでいて、全員が片膝をつき、頭を下げていた。
「ようこそ、偉大なる客人よ……!」
先頭にいた女官らしき人物が、恭しく手を差し出してくる。
「え? 客人? 俺のこと?」
俺はすぐさま振り返り、バンボルトの顔を見る。客人ってお前のことじゃないのか?
だけど、バンボルトは腕を組んで、そっぽを向いた。
俺とバンボルトの他に誰も居ないし
何かの間違いじゃないかと思って、後ずさろうとした瞬間――
「行けよ。客人だろうが」
舌打ちしたバンボルトに背中を強く押された。
やっぱり俺が客人ってことなのかよ……一体どうなってんだ。
冷たい視線を感じて、辺りを見回すと、インスーラの奴も居た。
唇をわずかに噛み、眼鏡越しにじっと俺を観察していた。
「……不本意だが、形式は守らせてもらう。だが、これがいつまでも続くと思わないことだな」
形式? 魔王城では攫ってきた奴を、まずは歓迎する風習でもあるのか?
古びたホルンのような楽器が鳴り響き、グイグイと背中を押されながら絨毯を歩いていくと、城の奥にある扉の間に来た。
鬼? とも違う、なんだか邪悪な生き物が彫られたその扉が開く。
現れたのは、一人の女性だった。
黒い長髪に、白い肌。額からはしなやかに曲がった角が生えている。肩が大きく開いた鋲付きの上着に、黒と赤を基調としたブーツ。衣装はまさに「魔王」って感じの戦闘スタイルなのに、その顔は、驚くほど優しげだった。
それだけじゃない。
あの目元、口元。雰囲気まで、なぜか懐かしい感じがした。
前の世界の、近所の花屋にいたあのお姉さんだ。季節の花に詳しくて、たまにおまけしてくれて、でもちょっと不器用なところがある人。
そういや、お姉さんの電子レンジを修理中に感電して、ここに来たんだっけか? なんだか遠い記憶に感じる。
そのお姉さんの面影が、なんだか今この目の前の“魔王”と重なっていた。
「はじめまして。わたくし……いや、我が、この地の主――魔王、ルクス=ヴァル=オームです」
たどたどしいけれど、とても澄んだ声で彼女はそう名乗った。
「え、えーっと……魔王って、もっとこう……ガツンと来るタイプかと思ってました」
何を言ってるんだ俺は……。もっと恐ろしいことが待ち受けているんじゃないかって緊張と、魔王のギャップが激しくて、自分でも訳が分からなくなっている。
けれど、魔王はくすりと笑った。
「よく言われます。でも、そういうのは、どうにも性に合わなくて」
その笑顔は、どこか人間くさくて、あたたかかった。
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