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おっさんフワフワす
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魔王との対面が終わると、俺はそのまま客室へ案内された。
さっきの異常な歓迎と、魔王の清楚な雰囲気がまだ頭から離れず、なんだかずっとフワフワした気分だ。
いやいや、油断するなよ。魔王領だぞ? さっきのは見せかけで、裏ではきっと人間を拷問したり、洗脳したりしてるに違いない。そういうもんだろ、悪の魔王軍ってのは……。
そんな警戒心を抱えながら、案内された廊下を進んでいると──
「ん?」
何かが視界の端に引っかかった。
廊下の隅、壁にもたれるようにして、誰かが倒れている。
ローブのすそがだらしなく伸びていて、靴も片方脱げている。
近くの壁には、何か液体のようなものが投げつけられたような跡があり、割れた瓶の残骸が転がっていた。
……クソッ、やっぱりそうか……!
思わず足を止める。
それは人間の男だった。白衣を羽織った中年の研究者っぽい風貌の男。
顔色は悪く、ピクリとも動かない。
まさか……魔王軍の連中、人間を連れてきて……見せしめに? いや、まさか、死んでるとか……!
全身に緊張が走る。
俺は意を決して、その男のもとへ駆け寄った。
「おい、大丈夫か!? 生きてるか!?」
体を軽く揺すると──
ふわっと、鼻にツンとくる強烈な臭い。
「……うわ、酒くさっ……!」
次の瞬間、
「んぁ……新入りか……」
男が寝ぼけ眼で顔を上げた。半開きの目で、俺を見てにやっと笑う。
「ここは天国だぞ……死ぬまで楽しめよ……うへへ……」
そう言って、またぐーすか寝はじめた。
完全に酔っ払いだった。
……なんなんだ、このおっさん。
周囲を見回すと、廊下の奥の広間に人影が見える。
中を覗くと、そこには、同じような白衣や作業服を着た人間たちが、思い思いに酒を飲み、寝転がり、カードや将棋? チェスのようなゲームに興じている光景が広がっていた。
中には、ご機嫌で踊ってる奴までいる。
「……は?」
思わず声が漏れた。
誰一人、拷問されていない。誰一人、鎖に繋がれていない。
むしろ、バカンスに来た科学者のオフ会みたいな空気だった。
「どういうことだよ……」
案内役の魔族が、少しだけ困ったように肩をすくめた。
「彼らは、あなたと同様に魔王陛下の庇護を受けている“研究者の方々”です」
「俺と一緒? 攫ってきたってことか?」
「攫って、とは聞こえが悪いですが、否定はしません。ですが皆さま、今ではこのように、喜んで滞在しております」
確かに喜んでいるように見えるけど……これは、あれか? 有能な科学者を攫ってきて人間側の科学の発展を妨げるっていう魔王軍の恐ろしい作戦か?
「もちろん、魔王陛下のために仕事もしていただいています。研究、実験に必要な資材や検体は出来る限り無償で提供していますし、寝食や報酬も満足いくものを用意しています」
マジか、研究者にとっては天国みたいな所だな。
「堕落していく方も多いですが、寛大な魔王陛下様は、そういった方々も見限ることなくサポートしております」
それがさっきの酒浸りか……確かに天国だな。
「ここが、あなた様のお部屋になります。ご自由にお使い下さい」
そう言って通された部屋には、豪華な天蓋付きのベッドと小綺麗な家具一式、そして小さな角が生えた可愛いメイド姿の女の子の人形……人形?
──いや、違う。今、まばたきしたよな。
「わっ……!? い、生きてるのか!?」
俺の声に、少女は無言でカチャリと銀の盆を掲げた。
その仕草があまりに無機質で、人形っぽさが逆に強まっていた。
「あの子は?」
俺がそう聞くと、案内人は──
「どうぞご自由にお使い下さい」と、深くお辞儀をしてそそくさと何処かへ行ってしまった。
さっきの異常な歓迎と、魔王の清楚な雰囲気がまだ頭から離れず、なんだかずっとフワフワした気分だ。
いやいや、油断するなよ。魔王領だぞ? さっきのは見せかけで、裏ではきっと人間を拷問したり、洗脳したりしてるに違いない。そういうもんだろ、悪の魔王軍ってのは……。
そんな警戒心を抱えながら、案内された廊下を進んでいると──
「ん?」
何かが視界の端に引っかかった。
廊下の隅、壁にもたれるようにして、誰かが倒れている。
ローブのすそがだらしなく伸びていて、靴も片方脱げている。
近くの壁には、何か液体のようなものが投げつけられたような跡があり、割れた瓶の残骸が転がっていた。
……クソッ、やっぱりそうか……!
思わず足を止める。
それは人間の男だった。白衣を羽織った中年の研究者っぽい風貌の男。
顔色は悪く、ピクリとも動かない。
まさか……魔王軍の連中、人間を連れてきて……見せしめに? いや、まさか、死んでるとか……!
全身に緊張が走る。
俺は意を決して、その男のもとへ駆け寄った。
「おい、大丈夫か!? 生きてるか!?」
体を軽く揺すると──
ふわっと、鼻にツンとくる強烈な臭い。
「……うわ、酒くさっ……!」
次の瞬間、
「んぁ……新入りか……」
男が寝ぼけ眼で顔を上げた。半開きの目で、俺を見てにやっと笑う。
「ここは天国だぞ……死ぬまで楽しめよ……うへへ……」
そう言って、またぐーすか寝はじめた。
完全に酔っ払いだった。
……なんなんだ、このおっさん。
周囲を見回すと、廊下の奥の広間に人影が見える。
中を覗くと、そこには、同じような白衣や作業服を着た人間たちが、思い思いに酒を飲み、寝転がり、カードや将棋? チェスのようなゲームに興じている光景が広がっていた。
中には、ご機嫌で踊ってる奴までいる。
「……は?」
思わず声が漏れた。
誰一人、拷問されていない。誰一人、鎖に繋がれていない。
むしろ、バカンスに来た科学者のオフ会みたいな空気だった。
「どういうことだよ……」
案内役の魔族が、少しだけ困ったように肩をすくめた。
「彼らは、あなたと同様に魔王陛下の庇護を受けている“研究者の方々”です」
「俺と一緒? 攫ってきたってことか?」
「攫って、とは聞こえが悪いですが、否定はしません。ですが皆さま、今ではこのように、喜んで滞在しております」
確かに喜んでいるように見えるけど……これは、あれか? 有能な科学者を攫ってきて人間側の科学の発展を妨げるっていう魔王軍の恐ろしい作戦か?
「もちろん、魔王陛下のために仕事もしていただいています。研究、実験に必要な資材や検体は出来る限り無償で提供していますし、寝食や報酬も満足いくものを用意しています」
マジか、研究者にとっては天国みたいな所だな。
「堕落していく方も多いですが、寛大な魔王陛下様は、そういった方々も見限ることなくサポートしております」
それがさっきの酒浸りか……確かに天国だな。
「ここが、あなた様のお部屋になります。ご自由にお使い下さい」
そう言って通された部屋には、豪華な天蓋付きのベッドと小綺麗な家具一式、そして小さな角が生えた可愛いメイド姿の女の子の人形……人形?
──いや、違う。今、まばたきしたよな。
「わっ……!? い、生きてるのか!?」
俺の声に、少女は無言でカチャリと銀の盆を掲げた。
その仕草があまりに無機質で、人形っぽさが逆に強まっていた。
「あの子は?」
俺がそう聞くと、案内人は──
「どうぞご自由にお使い下さい」と、深くお辞儀をしてそそくさと何処かへ行ってしまった。
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