ホームレスは転生したら7歳児!?気弱でコミュ障だった僕が、気づいたら異種族の王になっていました

たぬきち

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「アレンちゃん、おはよう。昨夜はずいぶん一生懸命お勉強してたでしょう?ちゃんと起きられたのね、ほんとうに偉いわ」

 食卓には亡くなったはずの両親がテーブルで朝食をとっている姿を見て、俺は動けなくなった。
 10年以上見ていない両親…。俺は自分の目から涙が溢れるのを感じると、母の元へ走り、思い切り抱きついて静かにむせび泣いた。
 母のにおい、ぬくもり…。何もかもが懐かしい。

「おかあさま、…おかあさま」

 同じ言葉を無我夢中で言い続けていると、父親が心配そうな面持ちで隣に膝をついてくれて、頭をそっと撫でてくれた。

「ミア、どういうことだ?アレンがこれほど泣き叫ぶなど……ただ事じゃない。何があったのか、説明してくれ」

「旦那様……申し訳ございません。わ、私にも……何が起きているのか、まだよくわからなくて……。ただ、今朝のアレン様は、いつもとは少し……様子が違われました。いつものようにベッドでお休みになっていたはずなのですが……目を覚まされた途端、ひどく取り乱されて……」

 3人は心配そうに僕…俺の事を見ていた。ひとしきり泣いて落ち着いた俺は、父の手を握りながら、

「だ、だいじょうぶ……です。ご、ごめんなさい……みんなを心配させちゃって……。その……じ、じつは……こ、こわい夢を見て……お、思い出したら……怖くなってしまって……」

 そう、きっと夢だ。俺はまだ7歳。子供だ。ここにいる俺が本物で、長い夢でも見てたんだ。そうに違いない。
 自分に言い聞かせながら深呼吸をすると、母が涙を拭いてくれた。父も、普段はなんか苦手だったけど、こんなに心配してくれるなんて…。

「ふふ……きっと、頑張りすぎちゃったのね。大丈夫よ、アレンちゃん。お父さんとお母さんの自慢の息子なんだから……今日のテストも、きっと上手くいくわ」

「ああ、その通りだ。アレンなら大丈夫だ。……さあ、せっかくの朝食が冷めてしまうぞ。落ち着いたら、早く食べて支度をしなさい」

「うん!ありがとうございます!」

 俺はミアの元へ戻り、自分の用意された席に座り、並べられた料理に手を伸ばす。並べられた料理はどれも小さい時、よく見たものばかりだ。
 向かいに両親がいて、隣にミアがいる。だんだんと思い出してきた。父は以前は冒険者だったけど、剣の腕よりも商才があり母の一族がやっていたルーシェン商会を継いでいる。寄付や慈善活動などが積み重なり、このあたりの土地の国から譲り受けて、管理、運営を任されているんだ。母の一族は昔から商人の一族で、父が…父が…。

(あれ?父が…何をしたら規模が大きくなったんだっけ?)

 俺はスープを飲みながら記憶が抜け落ちている事に気づいた。
 ルーシェン商会は古い商会でこそあるが、そこまで大きな商会ではなく地味な感じだった。それが父の何かがあり、急に成長し王国から土地や貴族の地位まで頂いて今の生活になった。というのはなんとなく覚えているんだけど…。

「どうした、アレン。そんなに難しい顔をして……テスト、心配なのか?」

 父が心配そうにこちらを見ている。母も、なんとなく不安そうな表情だった。
 ここで、なにか感づかれたり、バレるわけにはいかない。今の俺は7歳なんだ。30歳だったのは夢。夢の世界の記憶を思い出そうとしても仕方ないじゃないか。自然体でいないと。

「あ、あの、そ、そうなんです!早く学校に行って……そ、そうですね、もう少し予習を……しないと……かなぁ?
えっと……ごちそうさまでした! 行ってきます……!」

 俺はわざとらしい言い方をして残ったスープを飲み干すと、両親に何も言わせることなく慌ただしく部屋を出ていく。

「ア、アレン様!お待ちくださいませっ!」

「どうしたの?ミアお姉ちゃん?」

 玄関を出ようとしたときに、ミアが慌てて後ろから俺の手をつかんできた。

「本日は、私も学校まで一緒に参ります。アレン様のご様子がいつもと少し違いますし、何かあってからでは遅いかと思いまして……。旦那様たちの許可は、すでにいただいておりますので、よろしいですね?」

 ち、父たちの許可を取っているのならこれで断るとなんか怪しまれそうだし、断るにしても断る理由も特にないし、ここは黙って言う事を聞いておいた方がいいかもしれない。
 それに、久しぶりの登校だし、大人のミアがいてくれたら安心だ。

「うん!一緒に行こう!」

 俺はミアに手をつかまれたまま、屋敷を出た。

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