ホームレスは転生したら7歳児!?気弱でコミュ障だった僕が、気づいたら異種族の王になっていました

たぬきち

文字の大きさ
4 / 26

4

しおりを挟む
 お屋敷から出てからほどなくして、学校が見えてきた。この土地は人口が少なく、子供も少ない。それでも、父が子供に教育をすることで才能の早期発見になる、という事で王国へ多額の寄付をして作ったらしい。今から何年も先の未来でそのことを知った。

 木造建ての校舎には領地に住む子供の他、読み書きができない者もふくめ、主に15歳以下の子供が集まり、基礎的な学習を行う。まさかまたここに来ることがあるとは…。
 前世では散々だったな。勉強や運動が苦手、なにか特技があるわけではないし、不定期に行われるテストはかなり苦痛だった記憶がある。現に今日もテストと言っていたし。今日がいつ、どのタイミングなのか分からないが、中身は30歳なんだ。別にいまさら臆することもないだろうが。

『おはよー!』
『おはようございまーす!』

 子供の声が遠くに聞こえてきた。俺はミアの手をつないでいるのが少し恥ずかしくなり、そっと手の力を緩めて抜け出そうとするが、ミアに握り返されてしまう。

「み、ミアお姉ちゃん…。その…」

 恥ずかしいから手を放せ、というのは棘があるし7歳の子供は言わないだろう。そもそも今朝あんな顔を赤らめていたのにまるでなかったことのように接してくるのは、さすが大人というか、手馴れているというか、今の俺みたいな7歳の子供を本気で相手にするわけもないか。

「アレン様、まだここから学校までは少し距離がございます。この領地は旦那様がお守りくださっていますが……それでも、物騒な噂がないわけではございません。魔物だけでなく、人さらいや盗賊の類が現れたという話も耳にしております。ですので、どうかもう少しだけ手を繋がせてくださいませ。アレン様の身に、なにかあってからでは遅うございますから」

 人さらいや盗賊が出るのか。この辺りは思ったよりも物騒なんだな。もう少し平和だと記憶していたんだが…。

「う、うん……わかったよ、ミアお姉ちゃん。おしえてくれてありがとう」

「はいっ!アレン様のお役に立てて、ミアは……とても嬉しゅうございます!」

 ミアは一瞬驚いたような顔をしたが、すぐに嬉しそうに笑っていた。こんな笑顔を向けられたのは何年ぶりだろうか…。蔑んだ目、軽蔑した視線、人間として扱われていない目をたくさん見てきた。彼女の笑顔を見ると胸がドキドキとしてくる。自分でもわかるくらいチョロい…。

「アレン!」

 ため息をついた直後に、背後から女の子の声が聞こえた。
 振り向くと女の子が2人。1人は腕を組んで睨むような鋭い目つき。もう1人はその後ろに隠れるようにしている丸いたれ目気味の淡い水色の瞳。綺麗な白銀のフワッとした髪。覚えている。小さい時に同級生だった憧れのステラだ。

「す、ステラ……? ほんとに、ステラなの?」

「えっと…う、うん……。アレン君おはよう」

 背中に隠れていた彼女はゆっくりとでてくると、首を傾け、不思議そうな顔をしながら答えた。なつかしい。あの時のままだ。声も、キレイだった白銀の髪も、透き通るような水色の瞳も、あのころのままだ。
 昔は恥ずかしくて顔もロクに見られなくて、いつも横顔や後ろ姿、誰かと話している彼女を遠目に見ているだけで、こんな近距離で話したことなんて数えるくらいしかない。

「お、お、おはよう、ステラ!きょ、今日はすごくいい日になりそうな気がするんだ!なんか……そう思ったんだ!」

 なにを言ってるんだ、俺は。明らかに好きな子がいてなんかうまい事言えないで舞い上がってるガキじゃないか。30年生きてきて女の子にかける言葉すら満足に出てこないのかよ。

「そ、そうかな?あの……変なアレン君」

 困った顔で笑うステラを見て、つられて笑ってしまう。幸せだなぁ、と顔の筋肉が全部緩み切っている時に、ふと視界の隅に鬼の形相でこちらを睨みつける女子を見た。

「ねぇ……私を完全無視して、2人とも、なんだか楽しそうじゃないの!……ねぇ、?」

「ひ、ひぃぃっ……!ご、ごめん、フェリシア!ぼ、僕、君を無視したわけじゃないんだよ……!いきなり睨まれたから、怒ってるのかと思って……えっと……今日も、いい天気だね、フェリシア……」

「ふんっ!!いまさら何よ!バカアレン!!ステラ、いくわよっ!」

「ま、待って……お姉ちゃんっ……!!」

 俺とミアの間をズカズカと歩いていくフェリシア。その後ろを小さく身を隠すようなそぶりで歩くステラを俺たちは黙って見送った。
 フェリシア…。そうだ。ステラの双子の姉で、性格と目つき以外はほとんどステラと一緒で、いつも『優しければかわいいのになぁ』と思ってたけど、実際は気が強くて、ステラとは似ても似つかなかったんだ…。気が強い人が好きじゃない僕は距離を取っていた気がする。
 ただ、30年後にステラは伯爵家に嫁いだ、という話は聞いてたけどフェリシアは?…今までずっと忘れていた。

「アレン様……今のは、フェリシアお嬢様に対して少しひどいかと存じます。あのような扱いを受ければ、どなたでもお怒りになりますよ……」

「ち、ちがう!今のは本当にっ…!!」

 なんとミアに説明すればいいかわからず、俺は言葉に詰まった。本当に忘れていた、ステラに見惚れていた、とでも言う気か?

「ご、ごめん……。僕、フェリシアがちょっと苦手で……。ステラが話しかけてくれたことがうれしくて、つい舞い上がっちゃって。学校に着いたら、フェリシアにはちゃんと謝るよ……」

 考えた結果、素直に謝ってしまった方が角が立たないと判断した。下手な言い訳も良くない。実際にフェリシア嬢をないがしろに扱ってしまったのは事実だ。没落予定の貴族だとしても、謝罪をしなければいけまい。

「アレン様……本当に立派でございます!そんなにしっかりお考えになれるとは、ミア、感激いたします……!帰りましたら、旦那様やお母様にこのご様子をご報告せねばなりませんね。なので、ミアはここで失礼したいと思います。お気をつけていってらっしゃいませ」

 気が付けば学校の目の前だった。
 ミアは一礼すると、僕がなにか声を発する前に全速力で屋敷へ戻って行ってしまった。
 聞き分けが良すぎるのは、今の俺には分不相応という事らしい。多少のわがままを言うくらいがちょうどいいのか…。子供というのも難しい。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

落ちこぼれ職人、万能スキルでギルド最強になります!

たまごころ
ファンタジー
ギルド最弱の鍛冶師レオンは、仲間に「役立たず」と笑われて追放された。 途方に暮れる彼の前に現れたのは、伝説の鍛冶書と、しゃべる鉄塊(?)。 鍛冶・錬金・料理・魔道具――あらゆるクラフトスキルを吸収する《創精鍛造》を極め、万能職人へと覚醒! 素材採取から戦闘まで、すべて自作で挑む“ものづくり異世界成り上がり譚”が今、始まる。 裏切った元仲間? 今さら後悔しても遅いぞ!

社畜サラリーマン、異世界でパンと魔法の経営革命

yukataka
ファンタジー
過労死寸前の30代サラリーマン・佐藤健は、気づけば中世ヨーロッパ風の異世界に転生していた。与えられたのは「発酵魔法」という謎のスキルと、前世の経営知識。転生先は辺境の寒村ベルガルド――飢えと貧困にあえぐ、希望のない場所。「この世界にパンがない…だと?」健は決意する。美味しいパンで、人々を笑顔にしよう。ブラック企業で培った根性と、発酵魔法の可能性。そして何より、人を幸せにしたいという純粋な想い。小さなパン屋から始まった"食の革命"は、やがて王国を、大陸を、世界を変えていく――。笑いあり、涙あり、そして温かい人間ドラマ。仲間たちとの絆、恋の芽生え、強大な敵との戦い。パン一つで世界を救う、心温まる異世界経営ファンタジー。

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

地味スキル「ためて・放つ」が最強すぎた!~出来損ないはいらん!と追い出したくせに英雄に駆け上がってから戻れと言われても手遅れです~

かくろう
ファンタジー
【ためて・放つ】という地味スキルを一生に一度の儀式で授かってしまった主人公セージ。  そのせいで家から追放され、挙げ句に異母弟から殺されかけてしまう。  しかしあらゆるものを【ためる】でパワフルにできるこのスキルは、最高ランクの冒険者すらかすんでしまうほどのぶっ壊れ能力だった!  命からがら魔物の強襲から脱したセージは、この力を駆使して成り上がっていく事を決意する。  そして命の危機に瀕していた少女リンカニアと出会い、絆を深めていくうちに自分のスキルを共有できる事に気が付いた。 ――これは、世界で類を見ない最強に成り上がっていく主人公と、彼の元へ集まってくる仲間達との物語である。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

八百万の神から祝福をもらいました!この力で異世界を生きていきます!

トリガー
ファンタジー
神様のミスで死んでしまったリオ。 女神から代償に八百万の神の祝福をもらった。 転生した異世界で無双する。

暗殺者から始まる異世界満喫生活

暇人太一
ファンタジー
異世界に転生したが、欲に目がくらんだ伯爵により嬰児取り違え計画に巻き込まれることに。 流されるままに極貧幽閉生活を過ごし、気づけば暗殺者として優秀な功績を上げていた。 しかし、暗殺者生活は急な終りを迎える。 同僚たちの裏切りによって自分が殺されるはめに。 ところが捨てる神あれば拾う神ありと言うかのように、森で助けてくれた男性の家に迎えられた。 新たな生活は異世界を満喫したい。

処理中です...