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「今日のテストは、森で採れる薬草などを集めるフィールドワークです!みなさん、グループに分かれて下さ~い」
森の入り口で担任のメラニー先生の声が響いた。
ミアと別れた後、記憶を頼りに学校の教室へ行き、みんなが席に付いたところで、空いていた席に座った。覚えている顔、記憶にはほとんどない顔、様々だったが、今は学校へ通い始めて数ヶ月くらいの時系列らしい。確かに言われてみればフィールドワークなんて授業があった。昨日の夜ミアと勉強していたのは野草の事について、だったらしい。
領主の息子が言うのもなんだが、このような田舎の土地では自給自足することもある。野草、鉱石の採取は割と誰でもやっているから珍しいものではない。
ただ、今朝ミアが物騒なことを言っていたが、いくらお昼とはいえ森の中に入って大丈夫なんだろうか。
「ほらアレン君、ちゃんとグループのみんなと一緒にいてね~」
「は、はい。すいません」
メラニー先生は俺の背後に立つと、両肩に手を当てながらグループメンバーのもとへ運んでくれた。面倒見のいいおばちゃん先生で、たしか家庭の都合ですぐに転勤してしまった気がする。
20年前のこの日、俺はなにしてたんだ?
「おいアレン、迷子になって足を引っ張るなよ?ちゃんとついて来いよ?」
他の子どもより二回りほど体格が大きな子供が偉そうに話しかけてきた。こいつは見覚えがある。確か…
「う、うん。…大丈夫。ちゃんとついていくよ」
誰だっけ…。たしか、クラスでもいじめっ子の部類だった気がする。俺もこいつによくいじめられて、物を取られたり、壊されたり、悪口言われたり、叩かれたり…告げ口するともっとエスカレートするんだよな。
誰にも言えなくて、結局学校に行きたくなくなっちゃって、何年後か忘れたけどミアたちを困らせた記憶がある。
「ちぇっ!ステラちゃんがお前を誘いたいって言ったからチームに入れたんだ!感謝しろよ!」
そうだ、確か仲がいい友達なんていなくて、独りぼっちだったのをステラが声をかけてくれたんだ。それで…。
(それで、どうしたんだっけ?)
記憶がすっぽり抜け落ちている感じがする。このフィールドワークが終わったらどうなるんだっけ?
「エルドくん、そんなこと言わないで……。アレンくんと仲良くしてほしいの……いいよね?」
「ほら、エルド。ステラが呼んだのはアレンなのよ?ステラが名指ししたのは“お前じゃなくてアレン”なんだから、
少しくらい仲良くしてあげなさいよ。」
そ、そうなのか!?俺、この時はステラに好かれてた!?グループ組むときにステラが俺を誘おうとしていたなんて今初めて知ったんだが!?
「お、お姉ちゃんっ!ちがうの、そういうんじゃなくて……!アレンくんがひとりだと寂しいかなって……思っただけなの!ほんとに、それだけなんだから……!」
哀れみだったー!!天国から地獄とはこの瞬間の事だ。舞い上がっていたのが情けない。そうだ。20年前の記憶にそんな都合のいい、女の子から…特にステラから声をかけてもらった、誘ってもらった記憶があれば覚えていただろう。ついでにこいつはエルドという名前らしい。別にいじめっ子のことなどどうでもいい。今はせっかくステラがそばにいるんだからステラを眺めようではないか。
「はい、みんなちゅうもーく!」
かわいいステラを目に焼き付けようと見惚れていたとき、メラニー先生は森の入り口に立つと子供たちに向けて大きな声を出した。ザワザワと話していた子供たちも、おしゃべりをやめて注目している。
「今日は、森に自生している食べられるもの、薬草として使えるものを皆さんに集めてきてもらいます!森に入る前に一人ひとつ、袋を持っていって下ください!絶対に途中で食べたりしないで、ここに持ち帰って、先生方に鑑定してもらってから、お家に持って帰ってくださいねー、わかりましたかー?」
『はぁーい!』
大体の内容はつかめた。ようは食べられる草、薬になるものを持ち帰ればいいのであろう。簡単な事だ。こちとら昨日までホームレスのおっさんだったんだぞ。森以外でも食えるものは探すことができる自信がある!
そうか、20年前は知識もなかったから、可もなく不可もなく、という結果で終わったせいで特に思い出がなかったのかもしれないな。今回は目立たない程度にステラにいいところが見せられればいいのだが。
森の入り口で担任のメラニー先生の声が響いた。
ミアと別れた後、記憶を頼りに学校の教室へ行き、みんなが席に付いたところで、空いていた席に座った。覚えている顔、記憶にはほとんどない顔、様々だったが、今は学校へ通い始めて数ヶ月くらいの時系列らしい。確かに言われてみればフィールドワークなんて授業があった。昨日の夜ミアと勉強していたのは野草の事について、だったらしい。
領主の息子が言うのもなんだが、このような田舎の土地では自給自足することもある。野草、鉱石の採取は割と誰でもやっているから珍しいものではない。
ただ、今朝ミアが物騒なことを言っていたが、いくらお昼とはいえ森の中に入って大丈夫なんだろうか。
「ほらアレン君、ちゃんとグループのみんなと一緒にいてね~」
「は、はい。すいません」
メラニー先生は俺の背後に立つと、両肩に手を当てながらグループメンバーのもとへ運んでくれた。面倒見のいいおばちゃん先生で、たしか家庭の都合ですぐに転勤してしまった気がする。
20年前のこの日、俺はなにしてたんだ?
「おいアレン、迷子になって足を引っ張るなよ?ちゃんとついて来いよ?」
他の子どもより二回りほど体格が大きな子供が偉そうに話しかけてきた。こいつは見覚えがある。確か…
「う、うん。…大丈夫。ちゃんとついていくよ」
誰だっけ…。たしか、クラスでもいじめっ子の部類だった気がする。俺もこいつによくいじめられて、物を取られたり、壊されたり、悪口言われたり、叩かれたり…告げ口するともっとエスカレートするんだよな。
誰にも言えなくて、結局学校に行きたくなくなっちゃって、何年後か忘れたけどミアたちを困らせた記憶がある。
「ちぇっ!ステラちゃんがお前を誘いたいって言ったからチームに入れたんだ!感謝しろよ!」
そうだ、確か仲がいい友達なんていなくて、独りぼっちだったのをステラが声をかけてくれたんだ。それで…。
(それで、どうしたんだっけ?)
記憶がすっぽり抜け落ちている感じがする。このフィールドワークが終わったらどうなるんだっけ?
「エルドくん、そんなこと言わないで……。アレンくんと仲良くしてほしいの……いいよね?」
「ほら、エルド。ステラが呼んだのはアレンなのよ?ステラが名指ししたのは“お前じゃなくてアレン”なんだから、
少しくらい仲良くしてあげなさいよ。」
そ、そうなのか!?俺、この時はステラに好かれてた!?グループ組むときにステラが俺を誘おうとしていたなんて今初めて知ったんだが!?
「お、お姉ちゃんっ!ちがうの、そういうんじゃなくて……!アレンくんがひとりだと寂しいかなって……思っただけなの!ほんとに、それだけなんだから……!」
哀れみだったー!!天国から地獄とはこの瞬間の事だ。舞い上がっていたのが情けない。そうだ。20年前の記憶にそんな都合のいい、女の子から…特にステラから声をかけてもらった、誘ってもらった記憶があれば覚えていただろう。ついでにこいつはエルドという名前らしい。別にいじめっ子のことなどどうでもいい。今はせっかくステラがそばにいるんだからステラを眺めようではないか。
「はい、みんなちゅうもーく!」
かわいいステラを目に焼き付けようと見惚れていたとき、メラニー先生は森の入り口に立つと子供たちに向けて大きな声を出した。ザワザワと話していた子供たちも、おしゃべりをやめて注目している。
「今日は、森に自生している食べられるもの、薬草として使えるものを皆さんに集めてきてもらいます!森に入る前に一人ひとつ、袋を持っていって下ください!絶対に途中で食べたりしないで、ここに持ち帰って、先生方に鑑定してもらってから、お家に持って帰ってくださいねー、わかりましたかー?」
『はぁーい!』
大体の内容はつかめた。ようは食べられる草、薬になるものを持ち帰ればいいのであろう。簡単な事だ。こちとら昨日までホームレスのおっさんだったんだぞ。森以外でも食えるものは探すことができる自信がある!
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