ホームレスは転生したら7歳児!?気弱でコミュ障だった僕が、気づいたら異種族の王になっていました

たぬきち

文字の大きさ
26 / 26

26

しおりを挟む
「お兄さん、いつまで目を閉じてるの?」

 少しずつ目を開けると、さっきまでの閃光は消えていた。一瞬でも閃光を見たせいでまだ目がチカチカする。それに声が今までは耳の奥の方に直接響いて聞こえていたように感じていたのが、それが普通に聞こえるようになった。

「ふぇ、フェンリル…それが君の名前なのかい?」

「そうだよ。僕はフェンリル。月の祝福を受けた狼だよ」

 月の祝福を受けた狼。…ずっと昔にミアに絵本で読んでもらった事がある。この世界には月の女神から祝福を受けた狼の一族がいるって。戦争で家族を亡くした少女が、森の奥で出会った白い小さな狼、フェンリルの子供に助けられて、自分も人助けをしたいと思うようになって、少女は人生をかけて、世界を彷徨う中で人助けをして、最後に奴隷商人に騙されて孤独の中死んでいく。不憫に思ったその狼は自分の命を犠牲にして、運命を一度だけ変えることができる不思議な能力を使って少女が戦争に巻き込まれる前の時代に生まれ変わらせて、戦争が起きる前に家族と国を出ていって幸せな人生を送ることができました。
 という絵本だった気がする。ものすごく小さい時にミアが読んでくれた絵本で、当時は大好きだったのに、今まで忘れてた。

「僕に畏怖するかい?か弱き者よ」

 目を開けると、死ぬ…。俺は本能的に直視してはいけないと思いながらも、その姿を見たいという好奇心に負け、ゆっくりとフェンリルの姿を見た。
 そこには純白の銀色の毛並みで、鋭い牙に大きな口、黄色く鋭い獲物を睨みつけるような瞳、なによりも人間を見下ろすほどの大きな体…。なんてものはなく、目の前にいるのは小さな黒猫だった。

「フェン…リ‥ル?」

「あぁー!!お前、今『白くないじゃん』とか、『ちっさ!!』とか、『踏みつぶせそう』とか、『そもそも猫じゃん』とかおもったろ!!最後の最後には、『俺でも勝てる』とかおもったろ!!せっかくかっこいいセリフ言ったのに台無しじゃん!」

 上を見上げるとそこはうす暗くなった空だった。星が瞬いているだけで、生き物の姿は何もいない。ゆっくりと視線を下げていくと、その辺の路地裏で見たことありそうなサイズの黒猫が目の前に一匹座っていた。
 ただ違っていたのは、確かにその口からは人間の言葉を話している事だった。なんか思った事思ってないこと被害妄想前回の様子だけど、この猫…フェンリルも気にしているらしい。伝説の神獣…のようなイメージがあったが思ったよりも庶民的な獣らしい。

「いやいや、そこまで思っていないよ。ただ、目を開けたら踏みつぶされて殺されるかも…。って思ったから」

「そんなことはしないよ。僕は知恵のある者だからね。その辺の安い魔獣と一緒にしないでよ」

 安い魔獣…ちょっと魔獣業界に詳しくないからわからないけど、まぁ自分は格上、という事が言いたいのだろう。
 ただ、思ったよりもとっつきやすいやつでよかった。

「そういえばさ、ギルドの窓ガラス、割ったのは君?なんであんなことしたの?」

「あれは、お兄さんの匂いが漫延してて、どうしたらいいかわからなくなっちゃったんだよ。僕はお兄さんの匂いに引き寄せられて魔宝殿からここに来たんだ。ずっとお兄さんのことを探してたんだよ。」

「俺のことを?なんで?」

「う~んと…会いたかった。…うん、ただ会いたかったんだよ!無性に!」

「見ず知らずの俺に…か?」

「そうなんだよ。不思議だよね。なんか無性に会いたくて、懐かしいというか、同じ同族に匂いというか、気になるって言うか。気が付いたら1人で魔宝殿にいてさ。なんか心の中がザワって感じで、…なんかそんな感じ!」

 よくわからないが、間接的にあのギルドの窓ガラスが割れたのは俺のせいかもしれない。

「あのさ、この町の人が怪我をして困ってるんだけど、それも君のせい?」

「あ~、あれは魔力が欲しくてつい爪でひっかいちゃったんだ。食べ物がないからとりあえず空腹を満たそうかと思って少しずつもらってたんだけど、だめだった?」

 町の人が怪我をしてしまったのも自分のせい!?ここ最近多発している切り裂き魔の犯人はコイツ、それでその原因は俺にあいたくなったからという理由で、お腹が減ったから魔力をもらいました。ってことか!?このことがフェリシアにバレたら、俺も同罪になったりしないか?『アレンがいなければこんな被害はなかった!』とか言いだすぞアイツは!

「あ”~~~」

 俺はフェリシアとミアの顔を想像すると拒否反応が出て頭を抱えながら再び地面に倒れこんだ。
 フェリシアに切り裂き魔の犯人を捕まえました!と報告しても信用されるまで大変だし、コイツが『お兄さんに会うためにきたんだよ』なんて爆弾落とす可能性もある。ミアに話してもこんな怪しい猫を受け入れてくれるとは思い難い…。人の言葉を話す以上、生かしておくのは危険でしかない。このままフェンリルというくらいだから町の外に逃がしてやって魔宝殿へ追い返した方がいいのだろうか…。

 そうだ!それがいい、魔宝殿に帰ってもらおう!

「フェンリル!話があるんだ!」

 俺が起き上がると、顔を洗っていたフェンリルがチラッと俺の方に視線を移す。視線が合った瞬間に、前世の記憶が甦った。

「今日から君はクロだ!僕の大切な家族だよ!」
 黒い猫に鈴のついた首輪をつけている前世の俺だ。10歳くらいか、今の俺よりも小さい。
 そうだ、屋敷の敷地で寝ていた猫に興味があって、一人じゃ寂しい、と思って話し相手が欲しかったんだ。それで、猫を拾ったんだ。

 サイズ感はちょっと違うけど、この猫はクロだ。出会うのが2年遅かったからクロが少し大きくなったのか…。まさか前世で拾った猫がフェンリルで、こいつもガキの道楽に黙って付き合ってくれていたのか。

「どうした?お兄さん。何か言いたいことが僕にあるんでしょ?」

 前世で相手をしてもらった猫の正体に気が付いた俺は『魔宝殿に帰れ』なんて言う事が言えなくなった。前世で世話になったんだ。今はステラやミア、フェリシアだっている。あの時と違って一人ぼっちではないんだ。もしかしたら、2年前フェンリルは屋敷の庭にいたのかもしれない。ただ、俺の生き方が変わっていたから出会えなかっただけでこいつはまた俺に会いに来てくれたのかもしれない。

「…ど、どうするの? このあと」

「どうするって?」

「俺に会って、用は終わったんだよね?フェンリル、君はこの後どうするの?魔宝殿に帰るの?」

 大きなあくびをして、再び顔を洗いだしたフェンリルは少しイヤそうに言った。

「あそこ、嫌いなんだよね。くさいし、つまんないし、独りぼっちでさ。お話し相手もいないし…」

 こいつも、前世の俺と同じなのか。居場所がなくて、独りぼっちで、伝説の獣かもしれないけど、孤独なんだ。
 俺はフェンリルに手を差し出した。

「お手? 犬じゃないんだけど…?!」

「あはは!違うよ、違う。お手じゃなくて、握手を求めたんだ。よかったら、俺の家に来ない?俺と一緒に冒険をしようよ!」

 明らかに不機嫌そうになったフェンリルのリアクションとセリフに驚いて大笑いをしてしまう。人間相手に手を出されても、『お手』とは思わないけど、フェンリルは見た目が猫だからそう感じてしまうのかもしれない。
 やっぱりちょっと変わってる。なんか怖くないし、仲良くなれそうな気がする。この猫のことをもっと知りたい。

「あぁ、そうか人間は手を握る習慣があるみたいだね。いいよ。お兄さんといると楽しそうだし、僕はお兄さんのことが好きだから!」

 フェンリルは僕の差し出した手に右足を載せてくれて、固い握手をすると同時に、僕たちは淡い金色の光に包まれた。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

落ちこぼれ職人、万能スキルでギルド最強になります!

たまごころ
ファンタジー
ギルド最弱の鍛冶師レオンは、仲間に「役立たず」と笑われて追放された。 途方に暮れる彼の前に現れたのは、伝説の鍛冶書と、しゃべる鉄塊(?)。 鍛冶・錬金・料理・魔道具――あらゆるクラフトスキルを吸収する《創精鍛造》を極め、万能職人へと覚醒! 素材採取から戦闘まで、すべて自作で挑む“ものづくり異世界成り上がり譚”が今、始まる。 裏切った元仲間? 今さら後悔しても遅いぞ!

RPGのストーリー開始前に殺されるモブに転生した俺、死亡フラグを回避してラスボス助けたら女主人公が現れてなぜか修羅場になった。

白波 鷹(しらなみ たか)【白波文庫】
ファンタジー
――死亡フラグのあるモブに転生した。なぜか男主人公の姿で。 王国に孤児院の子供達を殺された少女ミュライトがラスボスのRPG『プリテスタファンタジー』。 物語後半でミュライトと主人公は互いに孤児院出身であることが分かり、彼女を倒した主人公がその死を悲しむ絶望的なエンディングからいわゆる「鬱ゲー」と呼ばれているゲームでもある。 そして、そんなゲームの物語開始前にミュライトと同じ孤児院に住んでいた子供に転生したが…その見た目はなぜか男主人公シュウだった。 原作との違いに疑問を抱くものの、このままストーリー通りに進めば、ミュライトと主人公が戦って悲惨なエンディングを迎えてしまう。 彼女が闇落ちしてラスボスになるのを防ぐため、彼女が姉のように慕っていたエリシルの命を救ったり、王国の陰謀から孤児達を守ろうと鍛えていると、やがて男主人公を選んだ場合は登場しないはずの女主人公マフィが現れる。 マフィとミュライトが仲良くなれば戦わずに済む、そう考えて二人と交流していくが― 「―あれ? 君たち、なんか原作と違くない?」 なぜか鉢合わせた二人は彼を取り合って修羅場に。 こうして、モブキャラであるはずのシュウは主人公やラスボス達、果ては原作死亡キャラも助けながらまだ見ぬハッピーエンドを目指していく。 ※他小説投稿サイトにも投稿中

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す

紅月シン
ファンタジー
 七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。  才能限界0。  それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。  レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。  つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。  だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。  その結果として実家の公爵家を追放されたことも。  同日に前世の記憶を思い出したことも。  一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。  その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。  スキル。  そして、自らのスキルである限界突破。  やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。 ※小説家になろう様にも投稿しています

地味スキル「ためて・放つ」が最強すぎた!~出来損ないはいらん!と追い出したくせに英雄に駆け上がってから戻れと言われても手遅れです~

かくろう
ファンタジー
【ためて・放つ】という地味スキルを一生に一度の儀式で授かってしまった主人公セージ。  そのせいで家から追放され、挙げ句に異母弟から殺されかけてしまう。  しかしあらゆるものを【ためる】でパワフルにできるこのスキルは、最高ランクの冒険者すらかすんでしまうほどのぶっ壊れ能力だった!  命からがら魔物の強襲から脱したセージは、この力を駆使して成り上がっていく事を決意する。  そして命の危機に瀕していた少女リンカニアと出会い、絆を深めていくうちに自分のスキルを共有できる事に気が付いた。 ――これは、世界で類を見ない最強に成り上がっていく主人公と、彼の元へ集まってくる仲間達との物語である。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

最凶と呼ばれる音声使いに転生したけど、戦いとか面倒だから厨房馬車(キッチンカー)で生計をたてます

わたなべ ゆたか
ファンタジー
高校一年の音無厚使は、夏休みに叔父の手伝いでキッチンカーのバイトをしていた。バイトで隠岐へと渡る途中、同級生の板林精香と出会う。隠岐まで同じ船に乗り合わせた二人だったが、突然に船が沈没し、暗い海の底へと沈んでしまう。 一七年後。異世界への転生を果たした厚使は、クラネス・カーターという名の青年として生きていた。《音声使い》の《力》を得ていたが、危険な仕事から遠ざかるように、ラオンという国で隊商を率いていた。自身も厨房馬車(キッチンカー)で屋台染みた商売をしていたが、とある村でアリオナという少女と出会う。クラネスは家族から蔑まれていたアリオナが、妙に気になってしまい――。異世界転生チート物、ボーイミーツガール風味でお届けします。よろしくお願い致します! 大賞が終わるまでは、後書きなしでアップします。

処理中です...