ホームレスは転生したら7歳児!?気弱でコミュ障だった僕が、気づいたら異種族の王になっていました

たぬきち

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 震える膝を押さえながら、階段をゆっくりと降りていく。
 人の声はするけど、すごく小さな声だった。下に行けば行くほど空気の流れを感じる。
 そっと階段の隙間から下を覗くように見てみると、そこには床一面に散らばったガラス片と、家具に隠れている冒険者たちの姿があった。受付嬢たちもカウンターに身を隠している。ターニャの姿もそこにあった。

(なんだこれ…。何かに襲撃でもされたのか?)

 静まり返ったギルドにいる人はみんな急な出来事で混乱しているようだった。俺はそっとターニャの隠れているカウンターの方まで行って、声をかけて状況を聞くことにした。

「ターニャさん、ターニャさん!どうしたんですか?これ。何があったんですか?」

「あ、アレン君?無事なの?よかったわぁ。なんかね、急に窓ガラスが全部一気に割れたのよ。それでみんなパニックになっちゃって…」

「聞こえました。ものすごい音でしたね…。でも、ターニャさんが無事でよかったです。敵は…、犯人は誰なんですか?」

「わからないのよ。そこにはの。本当に、何の前触れもなくて急な出来事だったから…アレン君も危ないから隠れてて!」

 誰もいなかった?例の切り裂き魔と同じじゃないか。正体不明の攻撃…。これも切り裂き魔がやったって言うのか?切り傷程度の可愛いイタズラじゃなかったのか?

『急に狂暴化して死傷者でもでたらそれこそ大ごとになるわ。』

 どっかの自警団副団長が言った言葉を思い出した。フェリシアの顔に嫌味な表情の補正までかかって見えるその姿は、悔しいが素直に彼女の方が俺よりも分析力や危機管理能力が高かった、という事を認めざるを得ない。

「はぁ…。俺よりもミアやフェリシアの方が未来を知っているんじゃないのか?」

 そんな小言を言った時だった。

【あれ?お兄さんはどっちなの?】

 急に声が聞こえた。無邪気な…子供みたいな声だった。

「だれだ!?」

 俺はあたりを見渡すも、声が聞こえそうなところに誰もいない。

【やっぱり…僕の声が聞こえてるんだ】

 再び声が聞こえた。あたりを見回すも、やはり誰もいない。

「ターニャさん、声、聞こえますか?」

「こ、こえ??ですか?」

「はい、さっきから子供みたいな、なんか声が聞こえるんですけど、聞こえないですか!?」

「や、やめてくださいよ!!こんな時に怪談なんて…あ、アレン君の声以外は何も聞こえませんよ!おおお、大人をからかわないでください!!」

 どうやら聞こえていないようだ。カウンターの下に潜り込んでしまったあたり、冗談ではなく本当に聞こえていないらしい。周りを見ても、テーブルに隠れている冒険者たちも怪訝そうな顔で俺を見ている。

「おい!どこにいるんだ?姿を見せてくれないか?」

【あはは!嫌だよ!お兄さんがこっち側なら、僕のことなんてすぐつかまえられるよ!】

 声は走り去るような感じで、少しずつ遠くなっていった。方角的に外へ出ていったらしい。

(敵意は…なさそうだけど…誘われてるのか?)

「ターニャさん、上にステラがいるんです。後お願いします」

「え?あと…って、どうするつもりですか!?」

 俺は返事をすることなく、すぐに声がした方に走り出した。

 ギルドから外へ出ると、笑い声が聞こえる方向へ走った。姿が見えない敵。あいつが切り裂き魔の犯人で間違いないだろう。ただ、気になることがあるとすれば、あいつは何を言っていたんだ?
 こっち側?こっち側とは何だ?この世界は前世と明らかに何かが違う。

 俺は息を切らして声が聞こえた方へ走って行った。ギルドからだいぶ離れてしまった。小さな川を渡ったところで俺は体力がなくなりその場にへたり込んでしまった。喉を鳴らしながら呼吸をして、肩が大きく上下する。

【だらしないなぁ…お兄さんはどうしてそんな匂いがするの?】

 声が近くで聞こえた。姿は見えないが、地面を何かが歩いているのか砂がほんのわずかに動くのが見える。

「こ、ここまで走れば…誰でも、…こうなるだろう。少し休ませてくれ」

 俺はその場に横たわった。目には見えないが、明らかにそこに何かがいる。気配だけは感じることができた。
 少し…数分の間横になっていると、相手も特に何か言うわけではなくそこにジッとしていた。俺を品定めでもしているのか、何も言わず、動かずそこにただ気配だけあった。

「ねぇ。そこにいるんだろ?お前は…きみはいったいなにものなんだ?」

【そんなことより教えてよ。お兄さんはこっち側なの?なんでその匂いがするの?】

 またこっち側…。何のことだ?匂いってなんだ?こいつはなにを言っている?

「待ってくれ…待て待て。何を言っているかわからないんだ。ゆっくり、ひとつひとつ教えてくれ。こっち側ってなんのことだ?においってなに?」

【匂いは匂いさ。お兄さんからは僕らと同じ匂いがするんだ。お兄さんはどこの殿からきたの?】

「ま、魔宝殿!?」

【そう、お兄さんからは魔宝殿のにおいがする。だから僕たちと同じこっち側でしょ?】

「まてまてまて、俺は魔宝殿に行ったこともないし、魔宝殿の物をもってもいない。匂いなんかするわけないだろう」

 思いもよらない言葉が出てきた。魔宝殿の匂い…。俺から?そもそも、魔宝殿のにおいがわかって、『こっち側』と言っているあたり、この見えない敵も魔宝殿絡みなのか?だとしたら、こいつは俺なんかが相手をできるようなやつじゃなくて、とんでもなく強いんじゃ…。

【だって、お兄さんの魔力は人間の物じゃないよね?僕の声が聞こえるのがその証拠だよ】

 魔力が人間の物じゃない?どういうことだ?魔力ってのは別に全体的にとりあえず魔力って呼ぶんじゃないのか?

「本当に悪いんだけど、君の声は聞こえるし、話もできるんだけど僕は君が言っている『こっち側』ではないと思うんだ。それに、君の声が聞こえるのが証拠って、どういうことなのか教えてくれる?」

【それは、僕たち魔の眷属の声が聞こえる、という事はもうお兄さんは魔族か魔に準ずるもの。ってことだからでしょ?】

「ま、魔族!?」

 聞いたことがない名前がまた飛び出してきた。俺がいた前世では聞いたことがない。そんなおとぎ話や夢物語みたいな…なんだ魔族って。

【あれ?本当に知らないの?…おかしいなぁ。お兄さんは同族だと思ったのに…。まぁいいや。僕は白銀の魔狼フェンリル。月の祝福を受けた神獣の末裔だよ。刮目せよ!!】

「ま、まぶしいっ!!」

 目の前で急に太陽のような閃光が現れた。姿を隠してたナニカの仕業のようだ。眩しさに目を開けていられず、思わず顔を背けてしまう。


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