病弱令嬢ですが愛されなくとも生き抜きます〜そう思ってたのに甘い日々?〜

白川

文字の大きさ
7 / 22
本編

5 謎の力をもつ執事の登場

しおりを挟む
 あの後はイザークさまと長い時間二人きりで過ごし、舞踏会の終わりを告げる挨拶だけ行うと、お気遣いから促してくださり部屋へと帰った。
 果たしてそれで良かったのかいささか疑問ではあるけれど、正直あれが精一杯だったので有り難い。


 ────コンコンコン。
「はい、どうぞ」
 部屋に入ってきたのは真っ白な髪と真っ白な瞳の、透き通るように美しい男性だった。

「朝から失礼いたします。わたくしイザークさまの専属執事を務めております、リューヌと申します。イザークさまがご不在時に何かございましたら、いつでも私にお申し付けください」
 うやうやしいお辞儀の後、リューヌさんはそう言った。
「リューヌさん、ご親切にありがとうございます」
「あぁ、お辞めください。アイリスさまはこのような下の者に頭を下げてはなりませんよ」
「ですが、」 

 ほんの少しだけ、はっきりとした口調で遮られただけなのに、リューヌさんの声は有無を言わさせない謎の力があった。

「分かりましたわ」
「ふふ、では私のことはリューヌとお呼びください。敬称は不要ですから」 
 優しく物腰柔らかいはずなのに、圧を感じる。
「リュ、リューヌ」
「はい。アイリスさま」
 甘い声音と笑顔がまさに飴と鞭といった感じだ。

(さすが長年イザークさまの専属執事を任されてるだけあるわ。逆らえない不思議な力をお持ちね……。)


「本日、イザークさまは訓練場にいらっしゃいますが見に行かれますか?」
「私のような素人がいると、本気で訓練されている方々からすればお邪魔ではありませんか?」
「午後の限られた時間での訓練であれば、一部の方に公開しておりますので特段問題はないですよ。ですが、お身体が辛ければお部屋でお休みになられるのもよろしいかと」
 昨日の今日で身体は重いけれど、イザーク様のことはもちろん、国のために精進してくださっている騎士団の方々を知る貴重な機会だと思った。

是非ぜひ行かせていただきたいです」
「承知いたしました。過度な負荷をなるべく避ける為に、きちんとしたお席をご用意いたしますのでご安心ください」
「すみません、ありがとうございます」
 柔らかな雰囲気だったのに、急にリューヌの目が鋭い光を見せる。

くせなのでしょうか?謝るのはお辞めください。難しいのなら徐々にで良いですから、なくしていきましょう」
「は、はい」
 驚いて少しどもってしまった。
「失礼いたしました。ではまた午後、馬車のご準備ができましたらお呼びいたします。エマさん、私も同車させていただきますが、ご案内は任せて宜しいですか?」
「はい、お任せください」 
 そんなやり取りをするとリューヌは足早に出ていった。



 部屋に少しの静寂が流れる。
「ねえ、エマ。もしかして、リューヌのこと気になっているの?」
「そんなこと御座いませんよ。どうしてそう思われたのですか」
 エマに切り出すと蜂蜜色の瞳が見開いた。
「だって、何だかいつもと少し違うように見えたから」

「リューヌさんは、とても素晴らしい方で執事やメイドは皆、彼のようになりたくて憧れているのです。……多少ご指導は恐ろしいですが」
 エマが何かを思い出したように身震いする様子を見て、想像してしまう。
 私すら言い表せない圧のようなものを感じたのに、執事やメイドの後輩たちに、と考えたら……。
 エマと一緒に顔が青白くなった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

しつこい公爵が、わたしを逃がしてくれない

千堂みくま
恋愛
細々と仕事をして生きてきた薬師のノアは、経済的に追い詰められて仕方なく危険な仕事に手を出してしまう。それは因縁の幼なじみ、若き公爵ジオルドに惚れ薬を盛る仕事だった。 失敗して捕らえられたノアに、公爵は「俺の人生を狂わせた女」などと言い、変身魔術がかけられたチョーカーを付けて妙に可愛がる。 ジオルドの指示で王子の友人になったノアは、薬師として成長しようと決意。 公爵から逃げたいノアと、自覚のない思いに悩む公爵の話。 ※毎午前中に数話更新します。

恐怖侯爵の後妻になったら、「君を愛することはない」と言われまして。

長岡更紗
恋愛
落ちぶれ子爵令嬢の私、レディアが後妻として嫁いだのは──まさかの恐怖侯爵様! しかも初夜にいきなり「君を愛することはない」なんて言われちゃいましたが? だけど、あれ? 娘のシャロットは、なんだかすごく懐いてくれるんですけど! 義理の娘と仲良くなった私、侯爵様のこともちょっと気になりはじめて…… もしかして、愛されるチャンスあるかも? なんて思ってたのに。 「前妻は雲隠れした」って噂と、「死んだのよ」って娘の言葉。 しかも使用人たちは全員、口をつぐんでばかり。 ねえ、どうして?  前妻さんに何があったの? そして、地下から聞こえてくる叫び声は、一体!? 恐怖侯爵の『本当の顔』を知った時。 私の心は、思ってもみなかった方向へ動き出す。 *他サイトにも公開しています

悪役令嬢と誤解され冷遇されていたのに、目覚めたら夫が豹変して求愛してくるのですが?

いりん
恋愛
初恋の人と結婚できたーー これから幸せに2人で暮らしていける…そう思ったのに。 「私は夫としての務めを果たすつもりはない。」 「君を好きになることはない。必要以上に話し掛けないでくれ」 冷たく拒絶され、離婚届けを取り寄せた。 あと2週間で届くーーそうしたら、解放してあげよう。 ショックで熱をだし寝込むこと1週間。 目覚めると夫がなぜか豹変していて…!? 「君から話し掛けてくれないのか?」 「もう君が隣にいないのは考えられない」 無口不器用夫×優しい鈍感妻 すれ違いから始まる両片思いストーリー

新婚初夜に『白い結婚にしてほしい』と言われたので論理的に詰めたら夫が泣きました

ささい
恋愛
「愛人がいるから、白い結婚にしてほしい」 政略結婚の初夜にそう告げた夫ルーファス。 妻カレンの反応は—— 「それ、契約不履行ですよね?」 「あなたの感情論、論理的に破綻してますよ?」 泣き落としは通じない。 そして初夜の翌朝、夫は泣いていた。 逃げ道は全部塞がれ、気づけば毎日論破されていた。 これは、論破され続けた夫がなぜか幸せになる話。

【完結】鈍感令嬢は立派なお婿さまを見つけたい

楠結衣
恋愛
「エリーゼ嬢、婚約はなかったことにして欲しい」 こう告げられたのは、真実の愛を謳歌する小説のような学園の卒業パーティーでも舞踏会でもなんでもなく、学園から帰る馬車の中だったーー。 由緒あるヒビスクス伯爵家の一人娘であるエリーゼは、婚約者候補の方とお付き合いをしてもいつも断られてしまう。傷心のエリーゼが学園に到着すると幼馴染の公爵令息エドモンド様にからかわれてしまう。 そんなエリーゼがある日、運命の二人の糸を結び、真実の愛で結ばれた恋人同士でいくと幸せになれると噂のランターンフェスタで出会ったのは……。 ◇イラストは一本梅のの様に描いていただきました ◇タイトルの※は、作中に挿絵イラストがあります

『魔王』へ嫁入り~魔王の子供を産むために王妃になりました~【完結】

新月蕾
恋愛
村の人々から理由もわからず迫害を受けていたミラベル。 彼女はある日、『魔王』ユリウス・カルステン・シュヴァルツに魔王城へと連れて行かれる。 ミラベルの母は魔族の子を産める一族の末裔だった。 その娘のミラベルに自分の後継者となる魔王の子を産んでくれ、と要請するユリウス。 迫害される人間界に住むよりはマシだと魔界に足を踏み入れるミラベル。 個性豊かな魔族たちに戸惑いながらも、ミラベルは魔王城に王妃として馴染んでいく。 そして子供を作るための契約結婚だったはずが、次第に二人は心を通わせていく。 本編完結しました。 番外編、完結しました。 ムーンライトノベルズにも掲載しています。

王太子妃クラリスと王子たちの絆【完】

mako
恋愛
以前の投稿をブラッシュアップしました。 ランズ王国フリードリヒ王太子に嫁ぐはリントン王国王女クラリス。 クラリスはかつてランズ王国に留学中に品行不良の王太子を毛嫌いしていた節は 否めないが己の定めを受け、王女として変貌を遂げたクラリスにグリードリヒは 困惑しながらも再会を果たしその後王国として栄光を辿る物語です。

【完結】騎士団長の旦那様は小さくて年下な私がお好みではないようです

大森 樹
恋愛
貧乏令嬢のヴィヴィアンヌと公爵家の嫡男で騎士団長のランドルフは、お互いの親の思惑によって結婚が決まった。 「俺は子どもみたいな女は好きではない」 ヴィヴィアンヌは十八歳で、ランドルフは三十歳。 ヴィヴィアンヌは背が低く、ランドルフは背が高い。 ヴィヴィアンヌは貧乏で、ランドルフは金持ち。 何もかもが違う二人。彼の好みの女性とは真逆のヴィヴィアンヌだったが、お金の恩があるためなんとか彼の妻になろうと奮闘する。そんな中ランドルフはぶっきらぼうで冷たいが、とろこどころに優しさを見せてきて……!? 貧乏令嬢×不器用な騎士の年の差ラブストーリーです。必ずハッピーエンドにします。

処理中です...