10 / 31
4-3
しおりを挟む
俺は仕上げたスープを食卓へ運び、パンを並べた。
「美味しそうですね」
「冒険者のほうが、もっといいもん食ってんじゃないのか?」
「いいえ。あの頃から、トキオミさんの作ってくださるお料理が、一番美味しかったです」
「……あの頃……って、修学旅行ごっこのポップコーンとポテトチップスの話……じゃないよな?」
「もちろんそれも含みますけど、僕はトンジールが好きです」
そういえば、如月が味噌汁が飲みたいとか言い出して、味噌探しからやらされた。
結局、味噌はなかったが、発酵調味料の概念はあったので、料理長と試行錯誤して味噌を完成させた。
「まぁ、そもそも入ってる肉がトンじゃねぇけどな……」
「トキオミさんが作られたミソ、料理長が王宮を辞する時にレシピを残さなかったので、今ではもう再現できないそうです」
「ええっ! 料理長、引退したのっ?」
「いえ、所属先が王宮ではなく、聖女様付きになられまして」
「どゆこと?」
「実は、トキオミさんが追放されたあとに、聖女様の食事に異物混入事件がありまして」
「だって……悪意のある者は結界に阻まれるんじゃないの?」
「一度結界内に入った者を、弾くことは難しいそうです」
「で、異物混入って、なにが入ってたの?」
「媚薬です。レオン殿下は、未だ聖女様を娶る気ですから」
「懲りねぇなぁ、あのすっとこどっこい」
俺の発言に、テオが笑った。
「それで、聖女様が食事はご自身のおられる離宮で別に作ると言われて。料理長は、トキオミさん支持派でしたから、即座に離宮付きになられました」
「待てよ。それって俺がいなくなってからの話だよな? 俺がいなくなってすぐに王宮離れたテオが、なんで知ってんの?」
「トキオミさんの方法を、マネさせてもらいました」
「俺の? ……ああ、伝書鳩!」
王宮での不穏な空気を感じた時に、俺はいつか必ず王宮から追い出されると考えた。
そう易々と追い出されるつもりはなかったが、相手は政治を生業にしている百戦錬磨の狐狸妖怪だ。
一介の教師ごときが、そうそう無双は出来ないだろう。
だから最低限、離れた時の連絡手段が必要だと考えた。
そこで思いついたのが、伝書鳩だったのだ。
鳩はいなかったが、色々調べたら人間の魔力を好む野鳥がいた。
その鳥に如月の魔力を覚えさせて、どこで放っても必ず如月の元へ戻るように仕込んだのだ。
王宮から追い出される時、ショルダーバッグの所持は許されたので、その中に鳥を連れてでることは出来た。
マダムに救われたあと、布に生活が落ち着いた旨を記して飛ばした。
残念ながら、所番地がないので居場所は知らせようがなかったが……。
「だが、あれは一回コッキリの使い捨てだぞ?」
テオが空に手をかざすと、不意に空間が歪むように空気がざわめき、腕に鷹ほどの鳥が現れたことにびっくりする。
「それ……」
「はい。エコーバードです」
「確か……谷間で襲ってくる魔獣……だったよな? 襲いかかる直前まで、姿が見えないとかなんとか……」
「鳴き声を谷間に響かせて、自分の居場所を悟らせない、頭のよい魔獣ですよ」
「それ……を?」
「テイムしました」
テオはポケットからなにかを取り出し、ペットに "上手にお手が出来たご褒美" をやるみたいに、口元に差し出している。
そして、まるで鷹匠が鷹を放つように腕を振ると、エコーバードは再びすうっと姿を消した。
「それ、手練れのパーティーなら撃退出来るけど、捕まえるのすごく難しいって話じゃなかったか?」
「僕は、運が良かったんです」
サラッと一言で流されたくない。
「簡単に言うが、テイムって、魔物を屈服させて契約を結ぶとかって……」
「はい。初めのうちは、トキオミさんと同じように、小さな鳥を使っていたんですが……。途中で襲われたりしたので、攻撃されず、なおかつ王宮の者に見つからないものをと思って、エコーバードを選びました」
簡単に言ってくれる──。
テイムという魔法があることを知った時、伝書鳩をテイム出来ればと考えてかなり頑張ったが、俺はもちろん、聖女たる如月だって習得できなかったのに。
──どうなってんだ、このイケメン君は……?
「美味しそうですね」
「冒険者のほうが、もっといいもん食ってんじゃないのか?」
「いいえ。あの頃から、トキオミさんの作ってくださるお料理が、一番美味しかったです」
「……あの頃……って、修学旅行ごっこのポップコーンとポテトチップスの話……じゃないよな?」
「もちろんそれも含みますけど、僕はトンジールが好きです」
そういえば、如月が味噌汁が飲みたいとか言い出して、味噌探しからやらされた。
結局、味噌はなかったが、発酵調味料の概念はあったので、料理長と試行錯誤して味噌を完成させた。
「まぁ、そもそも入ってる肉がトンじゃねぇけどな……」
「トキオミさんが作られたミソ、料理長が王宮を辞する時にレシピを残さなかったので、今ではもう再現できないそうです」
「ええっ! 料理長、引退したのっ?」
「いえ、所属先が王宮ではなく、聖女様付きになられまして」
「どゆこと?」
「実は、トキオミさんが追放されたあとに、聖女様の食事に異物混入事件がありまして」
「だって……悪意のある者は結界に阻まれるんじゃないの?」
「一度結界内に入った者を、弾くことは難しいそうです」
「で、異物混入って、なにが入ってたの?」
「媚薬です。レオン殿下は、未だ聖女様を娶る気ですから」
「懲りねぇなぁ、あのすっとこどっこい」
俺の発言に、テオが笑った。
「それで、聖女様が食事はご自身のおられる離宮で別に作ると言われて。料理長は、トキオミさん支持派でしたから、即座に離宮付きになられました」
「待てよ。それって俺がいなくなってからの話だよな? 俺がいなくなってすぐに王宮離れたテオが、なんで知ってんの?」
「トキオミさんの方法を、マネさせてもらいました」
「俺の? ……ああ、伝書鳩!」
王宮での不穏な空気を感じた時に、俺はいつか必ず王宮から追い出されると考えた。
そう易々と追い出されるつもりはなかったが、相手は政治を生業にしている百戦錬磨の狐狸妖怪だ。
一介の教師ごときが、そうそう無双は出来ないだろう。
だから最低限、離れた時の連絡手段が必要だと考えた。
そこで思いついたのが、伝書鳩だったのだ。
鳩はいなかったが、色々調べたら人間の魔力を好む野鳥がいた。
その鳥に如月の魔力を覚えさせて、どこで放っても必ず如月の元へ戻るように仕込んだのだ。
王宮から追い出される時、ショルダーバッグの所持は許されたので、その中に鳥を連れてでることは出来た。
マダムに救われたあと、布に生活が落ち着いた旨を記して飛ばした。
残念ながら、所番地がないので居場所は知らせようがなかったが……。
「だが、あれは一回コッキリの使い捨てだぞ?」
テオが空に手をかざすと、不意に空間が歪むように空気がざわめき、腕に鷹ほどの鳥が現れたことにびっくりする。
「それ……」
「はい。エコーバードです」
「確か……谷間で襲ってくる魔獣……だったよな? 襲いかかる直前まで、姿が見えないとかなんとか……」
「鳴き声を谷間に響かせて、自分の居場所を悟らせない、頭のよい魔獣ですよ」
「それ……を?」
「テイムしました」
テオはポケットからなにかを取り出し、ペットに "上手にお手が出来たご褒美" をやるみたいに、口元に差し出している。
そして、まるで鷹匠が鷹を放つように腕を振ると、エコーバードは再びすうっと姿を消した。
「それ、手練れのパーティーなら撃退出来るけど、捕まえるのすごく難しいって話じゃなかったか?」
「僕は、運が良かったんです」
サラッと一言で流されたくない。
「簡単に言うが、テイムって、魔物を屈服させて契約を結ぶとかって……」
「はい。初めのうちは、トキオミさんと同じように、小さな鳥を使っていたんですが……。途中で襲われたりしたので、攻撃されず、なおかつ王宮の者に見つからないものをと思って、エコーバードを選びました」
簡単に言ってくれる──。
テイムという魔法があることを知った時、伝書鳩をテイム出来ればと考えてかなり頑張ったが、俺はもちろん、聖女たる如月だって習得できなかったのに。
──どうなってんだ、このイケメン君は……?
33
あなたにおすすめの小説
【完結】自称ワンコに異世界でも執着されている
水市 宇和香
BL
「たとえ異世界に逃げたとしたって、もう二度と逃さないよ」
アザミが高校二年生のときに、異世界・トルバート王国へ転移して早二年。
この国で二十代半ばの美形の知り合いなどいないはずだったが、
「キスしたら思いだしてくれる? 鳥居 薊くん」
その言葉で、彼が日本にいたころ、一度だけキスした同級生の十千万堂 巴波だと気づいた。
同い年だったはずのハナミは、自分より七つも年上になっていた。彼は王都から辺境の地ーーニーナ市まではるばる、四年間もアザミを探す旅をしていたらしい。
キスをした過去はなかったこととして、二人はふたたび友人として過ごすようになった。
辺境の地で地味に生きていたアザミの日常は、ハナミとの再会によって一変し始める。
そしてこの再会はやがて、ニーナ市を揺るがす事件へと発展するのだった…!
★執着美形攻め×内弁慶な地味平凡
※完結まで毎日更新予定です!(現在エピローグ手前まで書き終わってます!おたのしみに!)
※感想や誤字脱字のご指摘等々、ご意見なんでもお待ちしてます!
美形×平凡、異世界、転移、執着、溺愛、傍若無人攻め、内弁慶受け、内気受け、同い年だけど年の差
悪魔はかわいい先生を娶りたい
ユーリ
BL
天界にて子供達の教師を勤める天使のスミレは、一人だけ毎日お弁当を持ってこない悪魔のシエルという生徒を心配していた。ちゃんと養育されているのだろうかと気になって突撃家庭訪問をすると…??
「スミレ先生、俺の奥さんになってくれ」一人きりの養育者×天使な教師「いくらでも助けるとは言いましたけど…」ふたりの中を取り持つのは、小さなかわいい悪魔!
【完結】冷血孤高と噂に聞く竜人は、俺の前じゃどうも言動が伴わない様子。
N2O
BL
愛想皆無の竜人 × 竜の言葉がわかる人間
ファンタジーしてます。
攻めが出てくるのは中盤から。
結局執着を抑えられなくなっちゃう竜人の話です。
表紙絵
⇨ろくずやこ 様 X(@Us4kBPHU0m63101)
挿絵『0 琥』
⇨からさね 様 X (@karasane03)
挿絵『34 森』
⇨くすなし 様 X(@cuth_masi)
◎独自設定、ご都合主義、素人作品です。
【完結】テルの異世界転換紀?!転がり落ちたら世界が変わっていた。
カヨワイさつき
BL
小学生の頃両親が蒸発、その後親戚中をたらいまわしにされ住むところも失った田辺輝(たなべ てる)は毎日切り詰めた生活をしていた。複数のバイトしていたある日、コスプレ?した男と出会った。
異世界ファンタジー、そしてちょっぴりすれ違いの恋愛。
ドワーフ族に助けられ家族として過ごす"テル"。本当の両親は……。
そして、コスプレと思っていた男性は……。
うちの前に落ちてたかわいい男の子を拾ってみました。 【完結】
まつも☆きらら
BL
ある日、弟の海斗とマンションの前にダンボールに入れられ放置されていた傷だらけの美少年『瑞希』を拾った優斗。『1ヵ月だけ置いて』と言われ一緒に暮らし始めるが、どこか危うい雰囲気を漂わせた瑞希に翻弄される海斗と優斗。自分のことは何も聞かないでと言われるが、瑞希のことが気になって仕方ない2人は休みの日に瑞希の後を尾けることに。そこで見たのは、中年の男から金を受け取る瑞希の姿だった・・・・。
【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件
白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。
最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。
いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。
小悪魔系世界征服計画 ~ちょっと美少年に生まれただけだと思っていたら、異世界の救世主でした~
朱童章絵
BL
「僕はリスでもウサギでもないし、ましてやプリンセスなんかじゃ絶対にない!」
普通よりちょっと可愛くて、人に好かれやすいという以外、まったく普通の男子高校生・瑠佳(ルカ)には、秘密がある。小さな頃からずっと、別な世界で日々を送り、成長していく夢を見続けているのだ。
史上最強の呼び声も高い、大魔法使いである祖母・ベリンダ。
その弟子であり、物腰柔らか、ルカのトラウマを刺激しまくる、超絶美形・ユージーン。
外見も内面も、強くて男らしくて頼りになる、寡黙で優しい、薬屋の跡取り・ジェイク。
いつも笑顔で温厚だけど、ルカ以外にまったく価値を見出さない、ヤンデレ系神父・ネイト。
領主の息子なのに気さくで誠実、親友のイケメン貴公子・フィンレー。
彼らの過剰なスキンシップに狼狽えながらも、ルカは日々を楽しく過ごしていたが、ある時を境に、現実世界での急激な体力の衰えを感じ始める。夢から覚めるたびに強まる倦怠感に加えて、祖母や仲間達の言動にも不可解な点が。更には魔王の復活も重なって、瑠佳は次第に世界全体に疑問を感じるようになっていく。
やがて現実の自分の不調の原因が夢にあるのではないかと考えた瑠佳は、「夢の世界」そのものを否定するようになるが――。
無自覚小悪魔ちゃん、総受系愛され主人公による、保護者同伴RPG(?)。
(この作品は、小説家になろう、カクヨムにも掲載しています)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる