乙女ゲームの断罪シーンの夢を見たのでとりあえず王子を平手打ちしたら夢じゃなかった

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「あー、あの殿下?一応理由を聞いてもいいですか?」

「あぁ、実は……俺たちはどうやら魅了の魔法にかかってしまっていたらしい」

「そうですか」

 なんだ、そんなことか。
 そんなのよくある話じゃない。

 ヒロインが攻略対象者を魅了してしまうあれですね。
 よくある設定だけど、このゲームにもあったかな? あぁ、そういえば。

"ヒロインは皆を惹きつける魅力がある"

 この魅力の設定が魅了の魔法なのだろうか。
 チラリとオー令嬢をみる。オー令嬢は正気に戻った攻略対象者をみてホッとした表情をしているた。
 どうやらオー令嬢がかけた魔法ではないらしい。

 では誰が……? こういう時に怪しいのは他のヒロイン候補じゃない? でもこれ以上、面倒事に関わりたくはないから考えないでおこう。

「ありがとうございました、聖女様。やはり、ラテ様が本当の聖女様だったのですね。いつも私を助けてくださっていただなんて……! 私、もう本当にこの人たちが嫌で嫌で嫌で……!」

 え、今なんて……。聖女? 私が? しかも今さりげなくこの人たちのこと嫌って言いませんでしたか? しかも三回も。

 はっ。
 もしかして私の右手ってゴッドハンド?
 聖女の力で浄化してしまった?

 でもそれ絶対違うから。そんな設定なかったからね。処刑されて死んでしまうラテにそんな設定必要がないもの。

 オー令嬢はきらきらと目を輝かせながら私を見ている。しかも少し涙ぐんでいる。
 うん、ごめん。今のは聞かなかったことにするわ。

「ラテ嬢、婚約破棄されたのならぜひ私の国へ来てはもらえ……ぐはっ」

「え? 今、誰か何か言いました?」

「うふふ。何も言っていませんよ、ラテ様」

 オー令嬢はにっこりと笑って右手を後ろへ隠した。
 オー令嬢の右手は誰かを思いっきり殴り飛ばして少し赤くなっているのを王子は見てしまい、若干引いた。

「ラテ、すまない。婚約破棄のことだが、それはなかったことにし——」

「あ、そうでした殿下! 殿下の方から婚約破棄を申し出てくれてとーっても助かりました。これでもう私たちは他人ですね!」

 にっこりと殿下へ微笑んであげる。
 王子が婚約者とか面倒でしかない。

 そのうち現実へと戻るかもしれない。
 いつ夢が覚めるのか分からないからできるだけ自由でいたい。

「いや、そういうわけには。ラテ、君が聖女だとわかった今、なおさら婚約——」

「まぁ~~~!! 殿下、先ほど皆の前で言ったことをもうお忘れですか? 愛する人を見つけたと言ったではありませんか」

 私はわざとらしく大きな声で言った。
 周りの人たちにも聞こえるように。

 みながうんうん、と頷いている。

「いや、だからそれは魅了に……」

「えぇ! 私も聞きましたわ。殿下の愛する人が"誰なのか"は知りませんが、婚約破棄すると確かに言いましたわ」

 オー令嬢、その愛する人とはあなたのことでは? あ、でも愛する人がオー令嬢だとは一言も言っていない、か?

 オー令嬢はうふふ、と笑っている。
 うわー、オー令嬢絶対二重人格だよ。

「私のラテ様にこんなひどいことをするなんて……いったいどなたかしら? ねぇ、殿下。犯人を探すべきだと思いません?」

「え? あぁ、そうだ、な……?」

 殿下はオー令嬢に押され気味だ。

「いえ、結構です。私は気にしていませんし。それよりもう帰っていいですか?」

 もういいよね? 帰りたい。早く寝たい。
 ここからさらに犯人探しが始まるとか面倒くさい。

 もういいじゃない、解決解決!
 めでたしめでたし!

「あ、そうだ、弟くん。家まで案内してもらえるかしら?」

 だってどこに家があるのか知らないから。

「お、弟くん……? 姉さん、その呼び方はあんまりです。やはり、僕のこと怒っているのですね……」

 弟くんはしょぼんとしてしまった。
 大丈夫、怒ってないから。怒るべきは本物のラテであって、私は何もされていないから。

「さぁ、帰ろうか」

 弟くんの手を握って会場のドアへと向かう。

「では私は屋敷までの護衛を……」

 先ほど私に剣を向けた未来の騎士団長。

「いえ、結構です。信頼していませんので」

 私の言葉にショックを受けた未来の騎士団長は膝から崩れ落ちる。
 弟くんを引っ張ってすたすた歩く私に後ろから声が掛けられるけど無視して歩く。

「ラテ様、待ってください」

「ラテ、どうかもう一度話を」

「ラテ嬢、どうか今までのことは」

 私と弟くんを避けるように会場にいた人たちは道を開ける。
 まだ後ろから何か言ってるけれどそんなことは今はどうでいい。

 今一番私が気にしていることってなんだと思う?

 弟くんの手をぎゅっと握る。
 繋いでいる手からは温もりを感じる。
 どう考えても、リアルな感触に、感じる温かさ。

 

"私はどうしたら元の世界に戻れるのか!?"




 これはまだ序章。
 今日の出来事はラテ嬢にとってプロローグでしかないことをもちろん誰も知らない。


ー完?ー


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