頭の中が少々お花畑の子爵令嬢が朝から茶番を始めたようです

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「そうだ、それと」

 まだ何かありましたかしら。ララさんの教科書が破かれたっていう話はどこへいってしまったのかしら。

「昨日だって、リカルド様に話しかけていたミナ様とエナ様にも意地悪をしたじゃないですか!」

 えーと、昨日ですか?
 あぁ、思い出しました。

 名前を出された二人の令嬢の顔が引き攣る。

 まさかその時に何があったのか言ってしまうのではと、二人の顔色が悪くなっていく。このままではまずいと察した二人が「そのことは言わないでっ」「お願いだから何もしないで」とララさんに縋る。

 何を勘違いしたのか、頭の中にお花でも咲いているのかララさんは「まぁ、大丈夫ですよ! 私はお二人の味方ですからっ!」と言っている。

「グレイス様がいくらリカルド様の婚約者だからって二人が話しかける権利を奪うことはできないはずですっ! 違いますか!?」

「そうですね、私にそんな権利はもちろんありませんわ。リカルド様は皆さんに平等に接してくれるお方ですし、ここは学園ですもの。ですがこちらのお二人は……」

 ミナ様とエナ様は頭をぶんぶんと横に振っている。この場で言われたくはないのだろう。

「それこそ、この場で言う必要のないことです」

 私の言葉に二人はほっとした表情を見せた。

 二人は「リカルド様」と呼んでいたのだ。いくら学園の中でも王族であるリカルド様のことは「リカルド殿下」と呼ばなくてはならない。

 そして腕も触っていたのだ。リカルド様がいくらお優しくても、理由もなく体に触れることなどあってはならない。

 リカルド様とお呼びしていいのは婚約者である私だけ。

 なので、先ほどからリカルド様と言ってしまっているララさんはマナー違反になるのだけれど、そのことに全く気が付いていない。

 何度か注意したけれど無理だった。「どうしてそんな意地悪なこと言うんですかぁっ」って。

 ミナさんとエナさんの失態をここで晒すわけにもいかないし、両家の耳に入るのも避けたい。

「ミナ様とエナ様がリカルド様の腕に絡みついていたことに嫉妬されているんじゃないですか!? リカルド様が怒っていないのに、どうしてグレイス様が怒るんですかっ」

 あぁ、言ってしまった。しかも、触っていたことがいつのまにか腕に絡みついたことになっている。

 ミナさんとエナさんは、「ごめんなさい、でも、そこまではしていなくてっ」「殿下にはちゃんと謝罪をしましたっ!」と言ってクラスメイトへの誤解を解いている。

 お二人はあの時すでにリカルド様に謝罪をして、もうすでに許されているのに。
 
「そうだ、思い出した!」

 まだあるんですか、ララさん。もうやめましょう? なぜか私ではなく他の方が害を被っているのですから。

 それこそ私のせいで他の人たちが傷付いてしまっているこの状況はおかしいだろう。

「ララさん、もうやめてください。最初の話からだいぶ逸れているではありませんか」

「いいえ、やめません! ここまできたのですから、あなたへのみんなの不満を今言わないでいつ言うのですか!」

 完全に話が逸れているではないですか。

「……私への不満、ですか?」

「そうです! みんな、あなたに不満があるんですよ! リカルド様の恋人だからって何をしても許されるなんて思わないでくださいっ!」

 そこまで言われるほど私は恨まれるようなことをしたのだろうか。

「あの、みなさんは私に何かご不満が……」

 そう言ってクラスメイトたちを見てみるが、「あるわけないですよっ!」「そんなことありません!」と返してくれる。

 けれどララさんは違うようだ。

「ほら、ほら! そういうところですよ! リカルド様の婚約者なんだから、不満があったって言えるわけないじゃないですかっ! それなのに「何かご不満が……?」って。不満なんてないわよね? って無言の圧力なわけですよ!」

 いったいどうしたのか、今日はいつもより口がよく回るようで。
 でも、たしかに先ほどの聞き方はよくなかったかもしれない……。不満があったって言えるわけがないのに。少し考えれば分かることだった。

「みなさん、申し訳ありません。私の考えが浅はかでした」

 私が頭を下げると、みんな戸惑っているようだった。クラスメイトは「本当にそんなこと思ってませんからっ」と言ってくれるけれど……。

「そうですよ、グレイス様っ! 謝ればみんなちゃーんと、許してくださるんですからっ」

 なぜかララさんはとても嬉しそうだ。本気で私を改心させようとか思っていたのでしょうか。

「あ、それでさっきの続きなんですけど……」

 あぁ、もうやめてくださいませ。
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