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走り続ける電車
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電車に乗った。
特に目的地がある訳でもなく、することも無い、ただ、今は電車に揺られたかった。
俺はほとほと人生というものに疲れた、生きていればいいことがある、前だけ向いて生きればいい。俺に対してそんな綺麗事を言ってきた人達もいた、別に本人たちは悪気があって言っている訳では無いし、逆に俺を励まそうとする善意からそう言ってきたのだろう。
だが、順風満帆で幸せな人生を送っているやつのポジティブな言葉など、逆に惨めな気持ちになるだけだ。
とにかくそっとしておいて欲しかった。
ほっといて欲しかった。
そう本人たちに伝えたこともあったが、逆に気を使ってポジティブな言葉を投げかけてくるだけだった。幸せに生きているヤツらに俺の気持ちなど分からないのだ。
電車はいい。電車の揺れる音や、乗車している客の他人感、電車にいると多少は心が安らぐ。
この世間で生きていくのは辛い、じっとしていると、世間の痛みや闇に飲まれそうになる。
電車はそんな世間を駅と駅で繋いでいる。その世間と世間を移動しているこの空間は、なんだか世間から切り離された、特別な空間のように感じる。
ガタンゴトン、ガタンゴトン
ふと気づいた、自分はもう2時間以上は電車に乗っている。にも関わらず、この電車はどの駅にも止まらない。
まるで本当に世間から切り離され、別の世界を永遠に走り続けているようだ。乗客の様子もどこかおかしい、皆電車に揺られるだけで、動こうとしない。この異変に気づいてキョロキョロしているのは自分だけだ。
なんだなんだこの状況は、つかの間の癒しを求めて電車に乗ったのに、それすら許されないというのか。
軽くパニックに陥っていると、別の車両から中年の駅員が歩いてきた。
俺はこの状況が一体何なのか知りたくて、その男に話かけた。
「すみません、この電車は一体いつ駅に着くのですか。もう二時間以上は走り続けているようですが...?」
男は無機質な声でこう答えた。
「駅?そのような目的地はありませんよ?この電車はただ宛もなく走り続けるだけです。第一この電車を選んで乗ってきたのはあなた自身でしょう?」
そう言って男は電車の奥へと消えてしまった。
もう何時間もこの電車に乗っている、窓を割ろうとしたり、運転手に止めてもらおうとしたが、窓はビクともしないし、電車の奥にいけどもいけども、運転室には辿り着かなかった。
ほかの乗客から助けを借りようと、座っている奴らに片っ端から話しかけたが、どれも魂のない抜け殻のような状態で、まともに話せるような奴はいなかった。
これは本格的にこの電車からは抜け出せないらしい。もう諦めるしかないのか?
いや、諦めるも何も、元の世界に帰れたところでなんになる?あの駅員の言っていた通りだ、俺はこの腐った世間から離れたくて、避難する形でこの電車に乗った。今のこの状況は世間から離れたいという俺の願いを叶えてくれている。
そう思うと、さっきまで必死に脱出を試みていたのがバカみたいに思えてきた。
そうだ、この空間こそ理想だ、誰も干渉してこないし、ただ電車に揺られるだけ。
きっとこの乗客達も、俺のような考えから電車に乗り、そしてこの空間を気に入り、順応したのであろう。この乗客達は俺と同じく人生に疲れた同士なのだ。
俺は席につき、この乗客達と同じようにただ電車に揺られることにした。
今ではどれほどの時間ここに居るのか分からない、だがそんなことはどうでもいい、この空間では時間など関係ない。
ガタンゴトン、ガタンゴトン
電車はただ走り続けるだけだ。
特に目的地がある訳でもなく、することも無い、ただ、今は電車に揺られたかった。
俺はほとほと人生というものに疲れた、生きていればいいことがある、前だけ向いて生きればいい。俺に対してそんな綺麗事を言ってきた人達もいた、別に本人たちは悪気があって言っている訳では無いし、逆に俺を励まそうとする善意からそう言ってきたのだろう。
だが、順風満帆で幸せな人生を送っているやつのポジティブな言葉など、逆に惨めな気持ちになるだけだ。
とにかくそっとしておいて欲しかった。
ほっといて欲しかった。
そう本人たちに伝えたこともあったが、逆に気を使ってポジティブな言葉を投げかけてくるだけだった。幸せに生きているヤツらに俺の気持ちなど分からないのだ。
電車はいい。電車の揺れる音や、乗車している客の他人感、電車にいると多少は心が安らぐ。
この世間で生きていくのは辛い、じっとしていると、世間の痛みや闇に飲まれそうになる。
電車はそんな世間を駅と駅で繋いでいる。その世間と世間を移動しているこの空間は、なんだか世間から切り離された、特別な空間のように感じる。
ガタンゴトン、ガタンゴトン
ふと気づいた、自分はもう2時間以上は電車に乗っている。にも関わらず、この電車はどの駅にも止まらない。
まるで本当に世間から切り離され、別の世界を永遠に走り続けているようだ。乗客の様子もどこかおかしい、皆電車に揺られるだけで、動こうとしない。この異変に気づいてキョロキョロしているのは自分だけだ。
なんだなんだこの状況は、つかの間の癒しを求めて電車に乗ったのに、それすら許されないというのか。
軽くパニックに陥っていると、別の車両から中年の駅員が歩いてきた。
俺はこの状況が一体何なのか知りたくて、その男に話かけた。
「すみません、この電車は一体いつ駅に着くのですか。もう二時間以上は走り続けているようですが...?」
男は無機質な声でこう答えた。
「駅?そのような目的地はありませんよ?この電車はただ宛もなく走り続けるだけです。第一この電車を選んで乗ってきたのはあなた自身でしょう?」
そう言って男は電車の奥へと消えてしまった。
もう何時間もこの電車に乗っている、窓を割ろうとしたり、運転手に止めてもらおうとしたが、窓はビクともしないし、電車の奥にいけどもいけども、運転室には辿り着かなかった。
ほかの乗客から助けを借りようと、座っている奴らに片っ端から話しかけたが、どれも魂のない抜け殻のような状態で、まともに話せるような奴はいなかった。
これは本格的にこの電車からは抜け出せないらしい。もう諦めるしかないのか?
いや、諦めるも何も、元の世界に帰れたところでなんになる?あの駅員の言っていた通りだ、俺はこの腐った世間から離れたくて、避難する形でこの電車に乗った。今のこの状況は世間から離れたいという俺の願いを叶えてくれている。
そう思うと、さっきまで必死に脱出を試みていたのがバカみたいに思えてきた。
そうだ、この空間こそ理想だ、誰も干渉してこないし、ただ電車に揺られるだけ。
きっとこの乗客達も、俺のような考えから電車に乗り、そしてこの空間を気に入り、順応したのであろう。この乗客達は俺と同じく人生に疲れた同士なのだ。
俺は席につき、この乗客達と同じようにただ電車に揺られることにした。
今ではどれほどの時間ここに居るのか分からない、だがそんなことはどうでもいい、この空間では時間など関係ない。
ガタンゴトン、ガタンゴトン
電車はただ走り続けるだけだ。
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