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体の意志

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「おい、どこに行くつもりだ、おれはこっちに行きたいんだ」
右足は言う。
「何言ってんのさ、こっちのドーナツ屋を寄って帰るルートが一番いいよ」
左足が言う。
「あぁ、ほんとにめんどくさい事になった」
本体(頭)の俺が言う。
最近俺の体のパーツ達が意志を持ち出した、体のリーダーである頭の俺に対して反抗するようになったし、ストライキを起こすなんてこともしてくる。
一度昼飯に何を食うかで揉めた時は、右足と左足が一致団結して1歩も動くことが出来なかった。
結局左足が食いたいと言ったラーメンを食いに行くことになった。
「なぁ、俺、ムラムラしてきたぜぇ...」
ペニスが言う。
こいつはいつも突然発情する、場所や時間を問わずこうなるので非常に厄介である。
「もう!!レディがいる前でそんな下品な事を言わないで!!」
右手が言う。
こいつはよく分からんが女らしい。
「そうだぞペニス君、そんなんだから君はいつまでたっても童貞なんだ」
左手が俺にまで被害が来る正論を言う。
「おいお前ら!!もうくちゃくちゃだよ!!一回静かにしてくれ!!」
「うわ!!本体が怒った!!」
左足が言う。
「別にいいさ、言わしておけ、本体と言っても俺らが力を貸さなければ何も出来ないんだからな」
右足が言う。
「くっ...」
こいつら、痛いところをついてくる。
今までが意思などを持っていなかったから好き勝手に体のパーツを使えていただけなのだ。
結局俺の意見はひとつも採用されず、左足の提案したドーナツ屋やがある道を通って家へと帰った。
「ねぇ、早く口を開けてよ、ドーナツが入らないわ」
右手がドーナツを持ち口に押し当ててくる。
「これを食ったら晩飯が食えなくなるだろ」
右手を説得する。
「あら、口答えするのかしら?私がいないとペニス君を誰が慰めるのかしら?」
このクソ女が...。
仕方なくドーナツを食う。
「あぁ!味が伝わってくる!!甘くて美味しいわぁ」
「おい、夕食の焼肉もきちんと食べてくれよ、ずっと楽しみにしていたんだからな」
左手が言う。
「えぇ、外食にするのぉ、僕もう歩き疲れたよぉ」
左足が言う。
「なんだと?私に口答えするのか?」
まただ、また始まった。
こいつらはよく喧嘩する、俺の意思など全く無視してお互いに殴る蹴るの大乱闘を繰り広げるので、喧嘩がおさまる頃には俺はいつもアザだらけになっている。
「はぁはぁはぁ、わかった、行くよ」
爪で引っかかれて血が出たことを決め手に勝負は終わった。痛い。

「よーし、寝るぞぉ」
各パーツに言う。
「はぁ、また一人で寝るのかよ、早く女と寝てぇよ」
ペニスが言う。
「あなたが小さすぎるのも女ができない理由の一つよ」
右手が言う。
「グッ、そんなこと言うなよぉ」
やかましくて寝れやしない。
1時間経ってようやく各パーツが眠り始めた、やっと静かになった。
「はぁ、こんな生活もう耐えられない、俺の体なのに体が俺の意思通りに動いてくれない」
その晩は枕を濡らして寝た。

次の日、やけに体が軽かった。
「おーい、電気をつけてくれ」
パーツに呼びかける。
「........」
誰も答えない。
おかしい、いつもならもっと寝ていたいと文句が飛んでくるはずだ。
そんなことを考えているとちょうど朝日が部屋に入り込み、辺りを照らした。
「え?まじかよ...」
鏡を見た俺は衝撃を受けた。
体が本体である頭を残して全て消え去っていたのである。
「ん?なんだこれ?」
枕元に置き手紙があった。

「私たちはあなたの元を離れることにしました。意志を持った私たちにとって、あなたと、そして他のパーツとひとつになって暮らすことはとても窮屈です。
あなたには悪いですが、私達にも個人の意思があるのです。あなたの体のパーツ一同より」

「ははは、ははははは!!!やった!!やったぞ!!これで自由になったんだ!!」
俺は嬉しさのあまり泣いた、流れる涙をぬぐえないのが少しウザかったが、それよりも自由を手に入れれたことが嬉しすぎた。

今の俺は本体残し施設で支援を受けながら生活をしている。
ここには俺と同じように体のパーツに本体を残して消えられたもの達がいる。
頭だけの生活は少々不便ではあるがサポートもあるし、前の生活よりはかなり快適になった。
「あぁ、他の人たちも早く体から自由になればいいのに...」
バルコニーで夕日を眺めながら、俺はそう思った。
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