その「好き」はどこまで本気ですか?

沙夜

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プロローグ

ランチだけなら

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スマートフォンの画面を、隣にいたエイミーが覗き込んでくる。

「ランチに誘われたの!? 朱音、なんて返事する気!?」
「なんてって……」

どうするべきか、頭が高速で回転する。相手は、エイミーに見せられて嫌というほど理解した、超有名モデル。昨夜のことは、きっと気まぐれ。このランチの誘いだって、社交辞令の延長線上に過ぎないのかもしれない。

でも。

(ランチだけ、なら……)

夜、彼の家へ行くのとは訳が違う。昼間。人の目がある場所。それなら、何か間違いが起こる可能性は限りなく低いはずだ。それに、あのミステリアスな彼をもう少しだけ知ってみたい、という好奇心が、私の理性に勝り始めていた。

「……断る理由もないし」
「当たり前でしょ!」

エイミーに背中を押され、私は覚悟を決めて文字を打ち込む。

『ぜひ。いつがご都合よろしいですか?』

送信ボタンを押すと、すぐに既読がついた。そして、間髪入れずに返信が来る。

『ありがとう。俺は来週の月・水・金なら空いているけど、朱音の都合はどうかな』

提示された曜日と自分の研究スケジュールを照らし合わせる。ちょうど、論文の資料集めが一段落する日があった。

『水曜日か金曜日なら』
『わかった。じゃあ、その二日間は一緒に食べよう』

返ってきたメッセージに、私は思わず「え?」と声を漏らした。
一日、ではなく、二日間?
私が戸惑っていると、エイミーが「なにそのイケメンムーブ!」と騒いでいた。

普通、どちらか一日に絞るのではないだろうか。彼の真意は全く読めない。
けれど、その強引で、少しだけ不器用にも思える誘い方に、胸の奥がじんわりと温かくなるのを感じた。悪い気は、しない。正直に言えば、嬉しかった。

私は小さく息を吸い込むと、返信画面に指を滑らせた。

『わかりました。楽しみにしています』

送信済み、の文字を見つめながら、とんでもない約束をしてしまったかもしれない、と、今更ながらに思った。
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