幼女と執事が異世界で

天界

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第3章

55,竜虎相まみえる

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 アルとネーシャに解体と回収を任せると突撃して返り討ちに遭いそうになった男を連れてハッシュがやってきた。


「嬢ちゃん、すげぇんだな……」

「助かったよ……。酒場では……その……すまなかった……」

「あー、別に気にしないでください。これも護衛の任務内ってことで」

「そういってくれると助かる。恐らくあのでかいヤツはこの群のボスだろう。
 岩食いペンギンはボスを倒されると散り散りに逃げるから、もう大丈夫だろう。
 だが念のため討伐依頼は取り下げて巣の調査とアレがボスじゃない場合も含めて調べてもらうつもりだ。
 出来れば嬢ちゃんに受けてほしいんだが、指名してもいいか?」

「えっと……。すみません。巣の調査となると林道というか、あの森の方に入っていかないといけないですよね?」

「あぁ、そうなるな。あー……あの子が心配なのか」

「はい、今はまだ危険なところにいくつもりはないのですみません」

「だったら誰かに預けるなりしたらいいんじゃないのか?」

「おい、ランド! 嬢ちゃん達には嬢ちゃん達の都合があるんだ、無理言うな」

「だ、だけどよぉ」

「いや、すまなかったな。さっきの話は忘れてくれ。代わりといっちゃなんだがラッシュの街までの護衛を引き受けてくれないだろうか? もちろん報酬は今回の護衛に上乗せするし、ギルドには事後報告依頼とするからよ」

「構いませんけど、こっち方面に来る予定の乗合馬車は今壊れてて帰るのが大変ですよ?」

「そ、そうなのか? それは困ったな。だが早くギルドに依頼を出したいしな……」


 皆と相談してくるといって離れていったハッシュを見送り、素材の回収をしようと振り返ると、シートの上には魔結晶が1つ乗っているのが見えた。


「お、魔結晶だ! ボスから出たのかな? ラッキー」

「答えは是。その通りにございます」

「おめでとうございます、お嬢様! あたし始めて見ました!」

「うん、ありがとう。2人共」


 さっそく鑑定を使ってみる。


        ■□■□■□■□■□■□■□■□■□

 魔結晶【人鳥】
 ペンギン系魔物の体内で結晶化した魔力の塊。
 非常に希少で、魔結晶を生成するまでに到った魔物はかなり強くなる。
 空いているスロットに装着することにより、付与効果を与える。
 付与効果土耐性【弱】

        ■□■□■□■□■□■□■□■□■□


 人鳥……。
 ペンギンの和名だっけ? うろ覚えだ……。
 効果は土耐性【弱】か。弱かぁ……。

 ラージラビットから出た魔結晶と比べるとどうしても見劣りしてしまう効果だ。
 魔結晶にはやはりピンキリがあるようだ。せっかくでたのになんだか喜べない。
 こんなしょぼい効果だと売っても二束三文なんじゃないのかなぁ……。

 もしかしたら何かに使えるかもしれないのでとりあえず保留ということで素材を回収していく。
 念のためアルの近くでリール村の男達に見えないようにアイテムボックスに詰め込んでいく。
 とはいっても数もそんなに多くなかったので素材も少なくすぐに済んだ。

 魔結晶以外は特に新しい素材もなく、今回も肉が大目だったので帰ったらアルかマスターに何か作ってもらうのもいいかもしれない。


「嬢ちゃん、いいかい?」

「あ、はい」


 どんな肉料理が出来るかと妄想していると相談を終えたのかハッシュが戻ってきた。あの自殺志願者男は今回は付き添わないようだ。まぁさっきは助けてもらった感謝と酒場で怒鳴った謝罪を言いに来ただけだろうし。


「さっきのラッシュの街までの護衛の話だが頼めるか? もちろん片道だけでいい」

「はい、構いませんよ。どうせ帰るつもりですし」

「じゃあすまないが頼む。帰りは乗合馬車が直るまで待って戻らせるつもりだ。
 とりあえず村に戻ろう。ここまでの護衛の報酬とラッシュの街までの護衛のギルドへの事後報告書類を作らないとな」

「わかりました。一応魔物が出るといけないので来たときと同じようにしていきましょう」

「まぁ俺達は毎日ここへ通ってるから大丈夫だとは思うんだが、ここは嬢ちゃんの指示に従わせてもらうよ」

「まだ岩食いペンギンが近くにいないとも限りませんからね」

「あぁそうだったな。例えボスが倒されてすぐに逃げるといっても帰り道でばったりなんてこともあるかもしれんしな。さすが冒険者だな!」

「あはは……」


 ガッハッハ、と大きな声で笑うハッシュに続くようにその背後にいた男達も楽しげに笑い出す。
 そんなハッシュに肩をバンバン、と叩かれたあと無事リール村に戻った。






      ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆






「じゃあよろしく頼む」

「はい、任されました」

「いってくるっす、親方!」


 採掘場までの護衛の報酬とラッシュの街までの護衛の報酬に葡萄ジュースの大樽を2樽ほど貰い、ギルドに事後報告するための書類を2枚貰った。
 この事後報告書があればギルドを通さない依頼であっても、ギルドを通した依頼での貢献度よりはずいぶん下がるが次のランクへの貢献度がもらえる。
 もちろん不正防止の為に村や街などの村長や町長クラスのある程度信頼のおける人物のサインがなければいけない。このサインも魔力で個人識別できるという優れものだ。

 ラッシュの街までの護衛対象はもし襲われて逃げる際の足の速さなどを考慮にいれて、採掘場にひとっ走りした足自慢のニールがいくことになった。

 まぁ転移しまくりだから足の速さとか関係ないんだけどね。
 すでに氷の槍で岩食いペンギンを瞬殺しているのを見せていたりするので別に隠す必要もないだろうと、帰りも転移で帰ることに決めている。正直歩いて帰るのは時間もかかるしめんどくさい。

 ニールをPT編成でPTに加入させると、本人もハッシュ達もずいぶん驚いていた。
 普通冒険者はPT編成を取得しないものだからだ。特に魔法使いと思われているオレはそんな余分なものを取得するくらいなら魔力やMPに振った方がマシだからすごく意外だったようだ。
 まぁ苦笑してついほしくてと言ったら納得していた。

 PT機能は非常に有用だ。
 だからギルドに行かなければPT編成できないのは手間だし、いつでもPT編成しなおせるのは魅力だろう。
 それでも1ポイントという重みがのしかかり取らない人が多い。だが実のところポイントが足りなくて次のレベルアップまで余っていたりするとつい取ってしまう人もそれなりにいるそうだ。
 そういうこともあり、見た目年齢とはまるで違う戦闘力を持っているオレに岩食いペンギンを退治してもらったとはいえ、若干の怯えが見えていたのが親しみに切り替わっていた。
 目を逸らす格好の材料が出てきたからだともいえるが。


「ではこれで」

「おう、気をつけてな! ニール、しっかり依頼してこいよ!」

「わかってますよ、親方ぁ」


 ハッシュを先頭にたくさんの男達に見送られてリール村を出発。
 街道に戻ってからさっそく転移して移動することにした。


「じゃあニールさん。転移しますので~」

「え、転移?」

「はい、みんないくよ~。複数転移Lv1」

「うぉあ! す、すげー!」


 瞬き1つする間もなく視界が入れ替わり転移が完了するとニールが飛び上がって歓声を上げる。
 それを苦笑しつつも、微笑ましく思いながらも連続で転移していく。

 何度も転移してはしゃぐニールが面白かったくらいで帰り道も特に何事もなく、まだ乗合馬車も直っていないのか誰ともすれ違うことなくラッシュの街近くまで到着した。


「あれ? もう転移しないんすか? もう少しですよ?」

「うん、街の近くでは使わないようにしてるんだ」

「そうなんですかー、なんでですかね?」


 転移が使えることや岩食いペンギンとの戦闘を見ているニールは6歳児にしか見えないオレにすっかり敬語だ。


「ラッシュの街は結構大きいでしょ? だから目立つのも面倒だからかなー」

「でも冒険者だったら目立った方が仕事が来るんじゃないですかねぇ」

「ほら、うちは危ない仕事とか請けるつもりないからさ」

「あー……そうっすね!」

「うん、というわけで内緒ね」

「わかりやした、姐さん!」

「あはは……」


 どうでもいいけど慕ってくれるのは嬉しいけど姐さんはやめてほしい……。
 その後も目を輝かせながらはしゃぐ子供のように色々聞いてくるニールに苦笑しつつ、適当に返答しているとすぐに冒険者ギルドについた。


「じゃあ俺はさっそく依頼してくるっす。ありがとうございました、姐さん!」

「うん、帰り道気をつけてね」

「任せてくれっす! それじゃあまたリール村近くまで来たら顔出してほしいっす! 大歓迎っすよ!」

「わかった。またねー」

「またっすー!」


 ギルド前で護衛終了の微妙な挨拶を交わし別れる。
 とはいっても行く場所はあまり変わらない。ニールは近場の受付に行って依頼の変更と新しい依頼を行い、オレはエリザベートさんを呼んでもらう。

 なぜわざわざエリザベートさんを呼ぶかというと……。


「ワタリちゃああああああん!」

「ただいまです、エリザベートさん」

「怪我はない!? 大丈夫だった!? 無理してない!?」

「あはは、大丈夫ですよ。ついでにちょっと退治してきましたから!」

「だ、だめでしょ! 危ないじゃない! ワタリちゃんの可愛い顔や体に傷がついたらどうするの!? あ、でもワタリちゃんは回復……」

「エリザベートさぁーん」

「あ、う……。ご、ごめんなさい、内緒だったわね」

「まぁいいですけどー。人も全然いませんし」


 お昼過ぎて今は特に人がいない時間帯のようでニールと最低限の職員以外は誰もいない。
 受付も2人だけ。受付の奥で作業している人もまばらで2人くらいだ。
 そんな少ない人数でもエリザベートさんを呼んでもらったのは当然彼女から帰ってきたらすぐ自分を呼ぶように何度も何度も念を押されたからだ。
 まぁオレとしても知り合いの方がいいし何も問題ない。問題ない……はず。


「とにかく、怪我はないのね? 無理もしてないのね?」

「大丈夫ですよ~。私だけじゃなくてアルもネーシャも怪我1つありませんよ」

「よかったわぁ……。今日はほんと生きた心地がしなかったんだから……」

「そ、そこまでですか……」

「そうよ! 当たり前じゃない! まったくワタリちゃんはわかってないわ……。私がどれだけワタリちゃんのことを心配したか!」

「す、すみません?」

「まったくもう! これに懲りたら私の家で暮らしましょう! そうしましょう! それがいいわ! さぁ善は急げよ!」

「そこまでにございます」

「くっ! また邪魔をするの!?」

「そこまでにございます」

「今日こそあなたを倒してワタリちゃんを私のものにしてやるんだからーッ!」

「あーまた始まった……。ネーシャ行こうか?」

「えっ……。えっ……? いいんですか、お嬢様?」

「いいのいいの。いつものことだから、もう慣れちゃった。だからネーシャも慣れてね~」

「は、はい……」


 ふしゃー、がおーと竜虎相まみえる状態の2人とオレを交互に見てあわあわしているネーシャに真面目に相手すると疲れるよ~、と適当に言っておく。

 エリザベートさんに依頼処理してもらおうと思っていたのにまったくもう、と思いながらも竜虎状態の2人を見て苦笑している受付のお姉さんのカウンターに向かうのだった。

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