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第4章
84,蜂蜜とパンケーキとレーネさんと
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蜂蜜は2つの太陽が中天から傾き、それなりに傾斜がつくころには全て濾過し終わった。
1つの濾過装置に対して全MPを1度に使い――もちろん1桁は必ず残す――じっくりと濾過して出来た蜂蜜は素晴らしい出来だ。
待っている間に蜂蜜を入れておくための容器をアルに購入しにいってもらったり、レーネさんと念話でお喋りなどをして退屈せずに済んだ。
「結構な量が出来たねぇ~。時間もおやつタイムとしてはちょうどいいだろうし、ネーシャ達にオヤツをもっていってあげよう!」
「畏まりました、オヤツはどのようなものに致しますか?」
「そうだねぇ~。ここは定番のパンケーキにたっぷり蜂蜜を乗せるタイプでいこうか!」
「畏まりました。それでは宿のマスターに厨房を貸してもらえるように交渉してまいります」
木の容器に入った蜂蜜をアルと半分ずつアイテムボックスに仕舞うと、さっそく厨房に向かう。
レーネさんも楽しそうにその後をついてくる。
厨房はお昼時が終わり、夕方の仕込みまでの時間人気が少なくなるので問題なく借り受けることが出来た。
材料は容器を購入する際に一緒に買ってきてもらっていたので、さっそくアルが調理を始める。
すぐに甘いパンケーキ特有の香りがし始め、木の皿の上に完全な真円を描いた狐色のパンケーキが積み上げられていく。
厚さもそこそこでオヤツにしては食べ応えがありそうだ。
少ないよりはいいし、余ったらアイテムボックスにいれておけば劣化しないのでいつでも食べられる。
そのためそれなりの量をアルが作っていく。
木の皿に積み上げられたパンケーキが10段を越える前にアイテムボックスに収納し、違う皿にまた積み上げられていく。
仕舞う際に、間近でその食欲をそそる香りを嗅いでしまいつまみ食いしたい衝動に駆られたが、ネーシャ達と一緒に食べるんだ、となけなしの気力を振り絞ってなんとか我慢した。
たかがパンケーキといえど、それはアルの作る列記とした料理。
通常のパンケーキのわけがないのだ。
材料の購入もお任せだったし、手際が異常にいいので何をどう使っているのかよくわかっていない。
だが出来上がってくるソレは、パンケーキの形を再現した何か別のものだ。
もちろんパンケーキを超える何かだ。
つまみ食いを我慢できたオレを褒めてほしい。
まったくもってアルの料理は危険だぜぇ……。
ちなみにレーネさんはアルの作るパンケーキにずっと目を奪われ続けていた。つまみ食いするようなことはなかったけどね。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「ふわぁぁぁぁ~……」
「おいひぃ~……」
「はわぁ~」
勝手知ったるランカスター家のリビングでは女性陣が幸せな声を響かせている。
もちろんその幸せの源はアル特性のパンケーキ。
そしてそれにかかるは今日濾過した蜂蜜。
狐色の真円にかかる宝石のような黄金はまさに最強のコンビだ。
一口食べただけで蜂蜜の濃厚な甘味と芳醇な香り、次に襲ってくるのはパンケーキとは信じがたいほどの美味なる反撃。
パンケーキ単体でも十分美味しいソレに、レーネさん曰く高級店で販売されている以上の蜂蜜をたっぷり惜しみなくかけて食べているのだ。
最早この光景は必然といえるかもしれない。
リビングにいるのは女性陣――ネーシャ、ユユさん、レーネさん、一応オレ。男性はアルだけだ。
トトさんとランカスターさん――ゴーシュさんにも声をかけたのだが、今忙しいと断られてしまった。
一応2人の分のパンケーキと蜂蜜はユユさんに渡してあるが、この美味しさを知ったユユさんが我慢できるかどうか甚だ疑問だ。
今ならユユさんの食いしん坊ということで話が終わるだろうし。
見た目も美しいけど、その破壊力は見た目以上でありまさに無双級の戦力だ。
だがやはり食してみなければわからないことはあるのだ。この味を1度でも体験してしまったら、おかわりが存在するのなら我慢なんて難しいだろう。
現にオレは直径15cm、厚さ4cmにもなるパンケーキを2枚。ネーシャは3枚。ユユさんは6枚。レーネさんは13枚食べている。
夕飯? ちょっと君は座ってなさい、というレベルの話だ。
普段遠慮がちなレーネさんもアルの作り出す芸術を超えた無差別爆撃の前には我先にと他の2人と争うように夢中で食べていたくらいだ。
ちなみにユユさんに渡してある分以外の残りはもうない。
30枚くらい焼いたはずなのに、しかも昼食でも、夕食でもなく、ただのオヤツなのにこの結果である。アルは本当に恐ろしい子だ。
蜂蜜も遠慮なくふんだんに使いまくったので、3分の1くらいなくなった。
まぁまだ3分の2くらいあるので別段問題ない。補給もそれほど難しくないのでバカみたいにかけて食べてしまった。
今日の夕食はアイテムボックス行きかもしれない。
「ふぅ~……。美味しかったぁ~……。
ところでネーシャ。仕事の方は順調?」
「はふひゅんほうえふ! はっふまふ――」
口いっぱいにパンケーキを頬張って可愛いリスになっている狐っ娘が一生懸命喋っているけど何言ってるのかわからない。誰か翻訳ぷり~ず。
「ネーシャ。まずは口の中の物を飲み込んでから喋りなさい」
「むぐむぐ……はい! すみません、お嬢様、アル先輩、皆様。お見苦しい所をお見せしました」
皆に食後の紅茶――色は前世とはまったく違う蛍光色――を配っているアルがネーシャの所にも置くと注意する。
置かれた紅茶でパンケーキを一気に流し込むと頭の上の耳をぴこぴこ動かしながら席から立ち、頭を軽く下げスカートを摘み膝を折るネーシャ。
アルの教育の賜物か、まだぎこちないながらも綺麗なカーテシーをする。
最後のセリフは割と棒読みだったけど、それでもずいぶん成長したと思う。
毎日アルの教育を真面目に受けているだけはある。
そんなネーシャの成長っぷりについつい頬が緩んでしまう。
席に戻ったネーシャはさっきの一人前のメイドさんの皮がすぐに剥げ、今日教わったことを嬉々として話し始める。
やっぱりネーシャはまだまだだ。でも少しずつ確実に成長しているし、ユユさんにも今日も褒められたみたいだし、本人も楽しそうなのでよかった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
すっかりまったりムードと満腹感から最早仕事を再開する気力が沸かなくなってしまったユユさんが今日は終わり! と宣言してそのまま話に花を咲かせる。
話題はやはり初対面となるレーネさんだ。
本人はネーシャやユユさんの顔も見れないくらいだが、この2人はそういうのをまったく気にしないようだ。
最初はあわあわと慌ててオレに視線でヘルプを求めてくる感じだったけど、それなりにフォローしているとだんだん慣れてきたのか、話せないまでも相槌を打ったり、頷いたりして自分でがんばりだした。
ぼっち有段者のレーネさんからすればかなり勇気を出しているんだろう。
ユユさんとネーシャが大らかで話せなくてもまったく気にしないのもあるんだろう。2人ともいい子だからね。
このまま少しずつでも慣れてくれると嬉しい。
オレだけしか喋れないのではやはり可哀想だし、レーネさんのためにもならない。
ネーシャやユユさんならそんなレーネさんのリハビリにもなるし、2人も楽しそうなので問題ないだろう。
ネーシャの器用さとものすごい上達ぶりを力説しているユユさんと、レーネさんばりに顔を真っ赤にしつつもはにかんで嬉しそうにしているネーシャ。
釣られて真っ赤になっているレーネさんと静かにオレの後ろで給仕に徹しているアル。
そんな和やかな空間に心休まる一時を感じながら陽が完全に傾くまで姦しい声は続いた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「今日は……とても……楽しかったです」
ともすれば聞こえないくらいに小さな声だけど、はっきりとレーネさんは念話ではなく声に出してそういった。
彼女の少し赤くなりながらも嬉しそうにはにかんだ笑顔にこちらも笑顔で返し、海鳥亭の前で別れる。
赤から黒にその景色を徐々に変え始めている町並みをパーカーのフードを被った大きな人が歩いていく。
その後姿は他人の視線を内心で怖がっているあの人見知りのレーネさんとは少し違った。
今日彼女には2人も友人が増えたのだ。
その嬉しさに一時的にでも他人の視線が気にならなくなっているのだろう。
ゆっくりと焦らずこのまま続けていずれは人見知りも治ればいいと思う。
本人次第な面も多分にあるが、オレにも手伝えることはいっぱいあるのだ。今日のように彼女に喜んでもらえることはたくさんある。
すっかりあの白くて赤くて大きくて可愛い人が大好きになっている自分がいる。
レーネさんは色々と損な性格をしているけど、知ってしまえば嫌いになんてなれるわけがない。
そんな彼女が人見知りを克服できればきっと大人気になること間違いなしだ。
今はまだ自分が独り占めできていることに若干の優越感を感じつつも部屋へと戻ると、扉の前にはエリザベートさんが居た。
ただノックをするそぶりを見せ、叩く前にその手を下ろし、またノックをしようとして下ろすを繰り返している。
なんとなく声をかけるのを躊躇われていたが、アルが冷たい目になっているのに気づいて慌てて声をかけることにした。
「エリザベートさん、こんばんは。どうしたんですか? いつもはノックなんてしないのに」
「ぁ……ワタリちゃん……部屋じゃなかったのね……」
さっきの様子からわかっていたが、返って来た言葉からはまったく覇気がなくいつものエリザベートさんとは雲泥の差だ。
このパターンは厄介ごとだろうか。
でもエリザベートさんの場合はオレの事になると沸点が急激に下がるというか、非常に過保護になるので厄介かどうかは微妙に判断がつかない。
「とりあえず中に入りましょうか。用件は中でしましょう」
「ぁ……うん……」
どうにもこうにもテンションの低いエリザベートさんを促して部屋に入るが、やはり彼女の口はかなり重くなっているようだ。
これは厄介ごとで当たりかもしれない。
少し気を引き締めるとエリザベートさんもその重くなっている口をゆっくりと開き始めた。
========
名前:ワタリ・キリサキ BaseLv:5 性別:女 年齢:6 職業:魔法使いLv7
装備:黒狼石の短剣 笹百合のミスリルの篭手[火耐Lv5 風耐Lv5] 鬼百合のミスリルの靴[麻痺耐Lv5 毒耐Lv5] 鈴蘭のミスリルの胸当て[鈍化耐Lv5 石化耐Lv5 幻覚耐Lv5] 黄百合のミスリルベルト[土耐Lv5 水耐Lv5] 月陽のネックレス 狐の木彫りのペンダント
HP:200/200
MP:140/140#(+7)[+3]
筋力:35
器用:35
敏捷:65<+30>
魔力:36<+1>
回復力:41#[+6]
運:5
状態:健康
所有:アル#(従者) ネーシャ#(奴隷)
所持職業:町民Lv1 戦士Lv1 冒険者Lv1 治療師Lv12 魔法使いLv7
残りポイント:0
所持スキル
成長率増加Lv10 スキルリセット ステータス還元
ウイユベール共通語翻訳#(自動筆記翻訳付き) 鑑定 クラスチェンジ
筋力増加Lv5 敏捷増加Lv5 器用増加Lv5
魔力増加Lv5 回復力増加Lv5 HP増加Lv5 MP増加Lv10
初級魔法:体力回復 毒回復 麻痺回復 石化回復
初級魔法:火 初級魔法:水
物理防御盾Lv2 魔法防御盾Lv1
単独転移Lv1 複数転移Lv1 詠唱省略Lv3
気配察知Lv1 アイテムボックス拡張Lv5 PT編成
1つの濾過装置に対して全MPを1度に使い――もちろん1桁は必ず残す――じっくりと濾過して出来た蜂蜜は素晴らしい出来だ。
待っている間に蜂蜜を入れておくための容器をアルに購入しにいってもらったり、レーネさんと念話でお喋りなどをして退屈せずに済んだ。
「結構な量が出来たねぇ~。時間もおやつタイムとしてはちょうどいいだろうし、ネーシャ達にオヤツをもっていってあげよう!」
「畏まりました、オヤツはどのようなものに致しますか?」
「そうだねぇ~。ここは定番のパンケーキにたっぷり蜂蜜を乗せるタイプでいこうか!」
「畏まりました。それでは宿のマスターに厨房を貸してもらえるように交渉してまいります」
木の容器に入った蜂蜜をアルと半分ずつアイテムボックスに仕舞うと、さっそく厨房に向かう。
レーネさんも楽しそうにその後をついてくる。
厨房はお昼時が終わり、夕方の仕込みまでの時間人気が少なくなるので問題なく借り受けることが出来た。
材料は容器を購入する際に一緒に買ってきてもらっていたので、さっそくアルが調理を始める。
すぐに甘いパンケーキ特有の香りがし始め、木の皿の上に完全な真円を描いた狐色のパンケーキが積み上げられていく。
厚さもそこそこでオヤツにしては食べ応えがありそうだ。
少ないよりはいいし、余ったらアイテムボックスにいれておけば劣化しないのでいつでも食べられる。
そのためそれなりの量をアルが作っていく。
木の皿に積み上げられたパンケーキが10段を越える前にアイテムボックスに収納し、違う皿にまた積み上げられていく。
仕舞う際に、間近でその食欲をそそる香りを嗅いでしまいつまみ食いしたい衝動に駆られたが、ネーシャ達と一緒に食べるんだ、となけなしの気力を振り絞ってなんとか我慢した。
たかがパンケーキといえど、それはアルの作る列記とした料理。
通常のパンケーキのわけがないのだ。
材料の購入もお任せだったし、手際が異常にいいので何をどう使っているのかよくわかっていない。
だが出来上がってくるソレは、パンケーキの形を再現した何か別のものだ。
もちろんパンケーキを超える何かだ。
つまみ食いを我慢できたオレを褒めてほしい。
まったくもってアルの料理は危険だぜぇ……。
ちなみにレーネさんはアルの作るパンケーキにずっと目を奪われ続けていた。つまみ食いするようなことはなかったけどね。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「ふわぁぁぁぁ~……」
「おいひぃ~……」
「はわぁ~」
勝手知ったるランカスター家のリビングでは女性陣が幸せな声を響かせている。
もちろんその幸せの源はアル特性のパンケーキ。
そしてそれにかかるは今日濾過した蜂蜜。
狐色の真円にかかる宝石のような黄金はまさに最強のコンビだ。
一口食べただけで蜂蜜の濃厚な甘味と芳醇な香り、次に襲ってくるのはパンケーキとは信じがたいほどの美味なる反撃。
パンケーキ単体でも十分美味しいソレに、レーネさん曰く高級店で販売されている以上の蜂蜜をたっぷり惜しみなくかけて食べているのだ。
最早この光景は必然といえるかもしれない。
リビングにいるのは女性陣――ネーシャ、ユユさん、レーネさん、一応オレ。男性はアルだけだ。
トトさんとランカスターさん――ゴーシュさんにも声をかけたのだが、今忙しいと断られてしまった。
一応2人の分のパンケーキと蜂蜜はユユさんに渡してあるが、この美味しさを知ったユユさんが我慢できるかどうか甚だ疑問だ。
今ならユユさんの食いしん坊ということで話が終わるだろうし。
見た目も美しいけど、その破壊力は見た目以上でありまさに無双級の戦力だ。
だがやはり食してみなければわからないことはあるのだ。この味を1度でも体験してしまったら、おかわりが存在するのなら我慢なんて難しいだろう。
現にオレは直径15cm、厚さ4cmにもなるパンケーキを2枚。ネーシャは3枚。ユユさんは6枚。レーネさんは13枚食べている。
夕飯? ちょっと君は座ってなさい、というレベルの話だ。
普段遠慮がちなレーネさんもアルの作り出す芸術を超えた無差別爆撃の前には我先にと他の2人と争うように夢中で食べていたくらいだ。
ちなみにユユさんに渡してある分以外の残りはもうない。
30枚くらい焼いたはずなのに、しかも昼食でも、夕食でもなく、ただのオヤツなのにこの結果である。アルは本当に恐ろしい子だ。
蜂蜜も遠慮なくふんだんに使いまくったので、3分の1くらいなくなった。
まぁまだ3分の2くらいあるので別段問題ない。補給もそれほど難しくないのでバカみたいにかけて食べてしまった。
今日の夕食はアイテムボックス行きかもしれない。
「ふぅ~……。美味しかったぁ~……。
ところでネーシャ。仕事の方は順調?」
「はふひゅんほうえふ! はっふまふ――」
口いっぱいにパンケーキを頬張って可愛いリスになっている狐っ娘が一生懸命喋っているけど何言ってるのかわからない。誰か翻訳ぷり~ず。
「ネーシャ。まずは口の中の物を飲み込んでから喋りなさい」
「むぐむぐ……はい! すみません、お嬢様、アル先輩、皆様。お見苦しい所をお見せしました」
皆に食後の紅茶――色は前世とはまったく違う蛍光色――を配っているアルがネーシャの所にも置くと注意する。
置かれた紅茶でパンケーキを一気に流し込むと頭の上の耳をぴこぴこ動かしながら席から立ち、頭を軽く下げスカートを摘み膝を折るネーシャ。
アルの教育の賜物か、まだぎこちないながらも綺麗なカーテシーをする。
最後のセリフは割と棒読みだったけど、それでもずいぶん成長したと思う。
毎日アルの教育を真面目に受けているだけはある。
そんなネーシャの成長っぷりについつい頬が緩んでしまう。
席に戻ったネーシャはさっきの一人前のメイドさんの皮がすぐに剥げ、今日教わったことを嬉々として話し始める。
やっぱりネーシャはまだまだだ。でも少しずつ確実に成長しているし、ユユさんにも今日も褒められたみたいだし、本人も楽しそうなのでよかった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
すっかりまったりムードと満腹感から最早仕事を再開する気力が沸かなくなってしまったユユさんが今日は終わり! と宣言してそのまま話に花を咲かせる。
話題はやはり初対面となるレーネさんだ。
本人はネーシャやユユさんの顔も見れないくらいだが、この2人はそういうのをまったく気にしないようだ。
最初はあわあわと慌ててオレに視線でヘルプを求めてくる感じだったけど、それなりにフォローしているとだんだん慣れてきたのか、話せないまでも相槌を打ったり、頷いたりして自分でがんばりだした。
ぼっち有段者のレーネさんからすればかなり勇気を出しているんだろう。
ユユさんとネーシャが大らかで話せなくてもまったく気にしないのもあるんだろう。2人ともいい子だからね。
このまま少しずつでも慣れてくれると嬉しい。
オレだけしか喋れないのではやはり可哀想だし、レーネさんのためにもならない。
ネーシャやユユさんならそんなレーネさんのリハビリにもなるし、2人も楽しそうなので問題ないだろう。
ネーシャの器用さとものすごい上達ぶりを力説しているユユさんと、レーネさんばりに顔を真っ赤にしつつもはにかんで嬉しそうにしているネーシャ。
釣られて真っ赤になっているレーネさんと静かにオレの後ろで給仕に徹しているアル。
そんな和やかな空間に心休まる一時を感じながら陽が完全に傾くまで姦しい声は続いた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「今日は……とても……楽しかったです」
ともすれば聞こえないくらいに小さな声だけど、はっきりとレーネさんは念話ではなく声に出してそういった。
彼女の少し赤くなりながらも嬉しそうにはにかんだ笑顔にこちらも笑顔で返し、海鳥亭の前で別れる。
赤から黒にその景色を徐々に変え始めている町並みをパーカーのフードを被った大きな人が歩いていく。
その後姿は他人の視線を内心で怖がっているあの人見知りのレーネさんとは少し違った。
今日彼女には2人も友人が増えたのだ。
その嬉しさに一時的にでも他人の視線が気にならなくなっているのだろう。
ゆっくりと焦らずこのまま続けていずれは人見知りも治ればいいと思う。
本人次第な面も多分にあるが、オレにも手伝えることはいっぱいあるのだ。今日のように彼女に喜んでもらえることはたくさんある。
すっかりあの白くて赤くて大きくて可愛い人が大好きになっている自分がいる。
レーネさんは色々と損な性格をしているけど、知ってしまえば嫌いになんてなれるわけがない。
そんな彼女が人見知りを克服できればきっと大人気になること間違いなしだ。
今はまだ自分が独り占めできていることに若干の優越感を感じつつも部屋へと戻ると、扉の前にはエリザベートさんが居た。
ただノックをするそぶりを見せ、叩く前にその手を下ろし、またノックをしようとして下ろすを繰り返している。
なんとなく声をかけるのを躊躇われていたが、アルが冷たい目になっているのに気づいて慌てて声をかけることにした。
「エリザベートさん、こんばんは。どうしたんですか? いつもはノックなんてしないのに」
「ぁ……ワタリちゃん……部屋じゃなかったのね……」
さっきの様子からわかっていたが、返って来た言葉からはまったく覇気がなくいつものエリザベートさんとは雲泥の差だ。
このパターンは厄介ごとだろうか。
でもエリザベートさんの場合はオレの事になると沸点が急激に下がるというか、非常に過保護になるので厄介かどうかは微妙に判断がつかない。
「とりあえず中に入りましょうか。用件は中でしましょう」
「ぁ……うん……」
どうにもこうにもテンションの低いエリザベートさんを促して部屋に入るが、やはり彼女の口はかなり重くなっているようだ。
これは厄介ごとで当たりかもしれない。
少し気を引き締めるとエリザベートさんもその重くなっている口をゆっくりと開き始めた。
========
名前:ワタリ・キリサキ BaseLv:5 性別:女 年齢:6 職業:魔法使いLv7
装備:黒狼石の短剣 笹百合のミスリルの篭手[火耐Lv5 風耐Lv5] 鬼百合のミスリルの靴[麻痺耐Lv5 毒耐Lv5] 鈴蘭のミスリルの胸当て[鈍化耐Lv5 石化耐Lv5 幻覚耐Lv5] 黄百合のミスリルベルト[土耐Lv5 水耐Lv5] 月陽のネックレス 狐の木彫りのペンダント
HP:200/200
MP:140/140#(+7)[+3]
筋力:35
器用:35
敏捷:65<+30>
魔力:36<+1>
回復力:41#[+6]
運:5
状態:健康
所有:アル#(従者) ネーシャ#(奴隷)
所持職業:町民Lv1 戦士Lv1 冒険者Lv1 治療師Lv12 魔法使いLv7
残りポイント:0
所持スキル
成長率増加Lv10 スキルリセット ステータス還元
ウイユベール共通語翻訳#(自動筆記翻訳付き) 鑑定 クラスチェンジ
筋力増加Lv5 敏捷増加Lv5 器用増加Lv5
魔力増加Lv5 回復力増加Lv5 HP増加Lv5 MP増加Lv10
初級魔法:体力回復 毒回復 麻痺回復 石化回復
初級魔法:火 初級魔法:水
物理防御盾Lv2 魔法防御盾Lv1
単独転移Lv1 複数転移Lv1 詠唱省略Lv3
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